「大丈夫か。タケル」
謎の青いライダーは助け出したタケルに声をかけた。
「俺は大丈夫………それよりなんで此処に……?」
「タケル!!」
と、そこに磯貝、片岡、渚、杉野、奥田、矢田、不破、寺坂、イトナが駆け寄ってきた。
「皆!! よかった、無事だったんだ」
「それは此方の台詞だっての」
「そうだな………他の皆は?」
「………ごめん。千葉、速水、中村、前原、吉田、神崎が敵の手に落ちた」
「それに………英雄の村の人々は皆眼魂に変えられて連れていかれたわ」
「そうか………くそ…」
悔しさの余り、拳を痛いほどに握り締めるタケル。
そんな彼に青いライダーは静かに手を肩に置いた。
「元気を出せ。奪われたからと言って殺される訳じゃない。取り戻せばいいだけだ」
「………うん。そうだね」
「ていうか誰だよ。この青いライダーは」
「ああすまない。自己紹介が遅れたね」
と、青いライダーは変身を解き、雄々しい大丈夫の姿を露にした。
「私は神代竜。神代タケルの父親だ。息子が何時も世話になっている」
「「「え、えええっ!?」」」
「タケルの………」
「お父さん!?」
◎◎◎◎◎
此処は竜が使っている隠れ家。そこにタケル達は連れてこられた。
「父さん……なんでこんな所に……?」
「………仙人が話していない事まで私が語るわけにはいかないのでな……この世界は私や仙人が用意していた眼魔世界に対抗するための措置の一つだったんだ」
「対抗するための……措置?」
仙人の口振りから竜と仙人が顔見知りだろうという予測はついていたタケルは前提条件を素直に受け入れた。
「眼魔世界のかつての大帝、アトラスの第一子、"アイギス"が故人だということは知っているか?」
「うん。名前は今知ったけど、それが完璧な眼魔の世界を作るきっかけになったって」
「そうだ。そして第二子アビスの台頭。彼を止めるために仙人と私はアイギスをタケル、お前と同じようにゴーストにした」
元々、ゼロゴーストはそのアイギスが変身するライダーだったのだ。
しかし、
「一度死んでいたアイギスは復活してまた死を経験することを恐れた。そして私の忠告も聞かず………」
「……全世界の存在を不滅のゴーストにする」
「「「!!?」」」
「陽菜乃が言ってた。それが多分アイギスの目的なんだと思う」
その言葉に竜は頷く。
「だが、それを成す為には十五英雄によってもたらされる願いを叶える力では足りない。故にアイギスは"究極の眼魂"を完成させようとしている」
「究極の眼魂?」
「その為には百個の英雄眼魂と鍵となる二つの英雄眼魂が必要となる。全ての英雄を指揮できる圧倒的な軍人、ナポレオン・ボナパルドと眼魂の進化を促す進化論の提唱者、チャールズ・ダーウィン」
「!! それで陽菜乃が!?」
恐らくだがダーウィン眼魂は倉橋自身から生成された眼魂である。
それを裏付けするかのように竜は頷いた。
「アイギスは究極の眼魂に必要な眼魂を生み出せる人間を次々とこの世界に引き込み、その上で倉橋さんを拉致して強制的にゴーストに変え、ゼロゴーストの力を彼女に譲り、仕上げとして君達を襲わせたんだ」
「そんな………」
あまりの自体に倉橋と特に親しい矢田が竜に突っかかる。
「どうすれば!? どうやれば陽菜乃ちゃんを助けられるんですか!?」
「倉橋さんの体は究極の眼魂の為に必要らしく、アイギスが残している。ゼロゴーストを倒し、体をアイギスから取り返せば倉橋さんは救えるだろう」
そしてつまりそこには英雄眼魂に変えられた皆もいるという事だ。
「アイギスの計画はなんとしてでも止めなくてはならない。この事態を招いた責任者として私は行く」
「父さん……俺も行くよ」
と、タケルも立ち上がる。
「陽菜乃は大切な人だし、連れ去られた皆も俺の大切な仲間だから、俺が助けたいんだ」
「タケルだけじゃないですよ親父さん」
と、杉野が前に出れば他の八人も立つ。
「こんなことしてくれやがったんだ。落とし前はきっちり着けてやる」
「それに、私達だってこんな状況を見過ごせるわけありません」
「俺たちの世界は俺たちが守る!!」
彼らの真摯な目を受けて竜もやがて頷いた。
「分かった。明日の朝出発する。今はしっかり休んでおきなさい」
「「「「はい」」」」
彼らを見届けた竜はタケルに優しく語りかけた。
「本当に良い仲間を得たな」
「うん」
◎◎◎◎◎
翌朝、早速出発の時間となった。
「結構山道を通るんですね」
「普通の道を通って下手に遭遇されると厄介だ。だが……結構険しい道もあるというのにかなり手慣れているな」
「そりゃあ訓練とかしてますからね」
「訓練………ああ、あの超生物の件か」
実はタケルの持つ闘魂ブースト眼魂は竜の魂の片割れであり、それを介して竜は人間世界の様子を見ていたのだ。
「にしてもこの道……どれくらい続くんですか?」
「塔までは三時間はかかる。さっきはああ言ったが敵と遭遇する危険性もゼロじゃない。気を引き締めていけ」
「「「はい」」」
殺せんせーや烏間がいないこの状況下、竜という存在は生徒達にとってはかなり心強いものだった。
「…………タケル? どうしたの?」
「いや……ちょっと残念だなって」
「残念?」
「やっと父さんに会えたのにこんな大事件の真っ只中だからさ……もっと落ち着いた時に色々話したかったなって」
「…………タケル」
と、その時、
『やはり来たか!』
「「「!!」」」
シャドウゴーストレッドとイエロー。それに従えられた眼魔軍団が現れた。
「やはり待ち伏せさせられていたか……!」
『英雄達がそちらから来てくれるとは都合が良い。やってしまえ!!』
「やるしかないのか!!」
「行くぞ、タケル!!」
[カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!]
[カイガン! スペクター! レディゴー! 覚悟! ド・キ・ド・キ・ゴースト!]
竜が変身した"仮面ライダースペクター"はタケルのゴーストのプロトタイプである。
英雄眼魂の使用は不可能だが基本状態でも竜の高い戦闘能力によってタケルのゴーストを遥かに上回る。
「はあっ!!」
「だあっ!!」
襲いかかってくる眼魔を相手に戦う一行。
「絶対に攻撃を食らうな!! 眼魂に変えられてしまうぞ!!」
「「「はい!!」」」
抗戦こそ出来ているが彼らの目的はこの先の塔である。
ここで足止めを食らう訳にはいかないのだ。
そんな彼らに突然の援軍が舞い降りた。
[コネクト、プリーズ]
「「「!?」」」
突然戦場の中央に魔方陣が現れ、そこから弾丸が飛んできた。
「な、なんだ!?」
驚く彼らの前で魔方陣から現れたのは、ルビーの宝石を象った指輪の戦士と、オレンジのような鎧を纏った戦国武将。
『な、何者だ!!』
「……俺は、妖怪任侠、奴良組所属の魔法使い。仮面ライダーウィザード」
「同じく、奴良組所属、仮面ライダー鎧武!!」
「ゴースト以外にも仮面ライダーが………」
「事情はよく分からないが急いでるんだろ? 此処は俺達に任せな」
[ビッグ・プリーズ]
ウィザードが魔方陣に手を突っ込むとその腕が巨大化。それを振るって眼魔を薙ぎ払っていく。
「お次はこれだ」
[コピー・プリーズ]
頭上の魔方陣がウィザードを通過すると分身が誕生。二人のウィザードが同時に発砲して眼魔を撃った。
「ま、ま」
「「「魔法使いだぁぁ!!」」」
ファンタジックなウィザードの魔法に思わず目がキラキラとなる生徒達。
「おいおいあっちの方が人気者じゃねえか。俺だってやれるんだからな!!」
鎧武は両手に刀、無双セイバーと大橙丸を構えて眼魔達に立ち向かう。
「おらっ!! でやっ!! セイハー!!」
次々と眼魔を切り伏せていく鎧武。と、スペリオルの固い皮膚が防いだ。
「くっそ固いな。ならこっちだ!!」
[パイン!]
と、鎧武が錠前を取り出し、解錠。すると上空にファスナーが現れてそこからパイナップルが落ちてくる。
「ぱ、パイン…?」
[パインアームズ! 粉砕! デストロイ!]
それが鎧武に被さると鎧に変形。パイン型の鉄球を振り回してスペリオル達を殴り倒していく。
「おうりゃ!! でりゃあ!!」
「すげぇ………」
「皆!! 今のうちにいくぞ!!」
「あ、ああ!!」
竜に連れられてタケル達は搭の方に向かった。
[オレンジアームズ! 花道! オンステージ!]
「よし、俺達も終わらせるか」
「ああ。そうだな。フィナーレだ!!」
『貴様ら……!』
『図に乗るな!!』
と、シャドウゴーストイエローがガンガンセイバーガンモードを発砲。しかし、
[ディフェンド・プリーズ!]
ウィザードが発生させた炎の魔方陣が障害となって弾いた。
『何!!』
「行くぞ」
[ルパッチマジックタッチゴー!]
[チョーイイネ! キックストライク! サイコー!]
[オレンジ・スカッシュ!]
「だああああっ!!」
「セイハー!!」
『『ぐああああああああああっ!!?』』
魔方陣から発生した炎を纏ったウィザードと輪切りのオレンジ状のオーラを潜り抜ける鎧武のダブルライダーキックがシャドウゴーストに直撃、爆発を起こした。
「ふぃー」
「さて……あとはゴースト達に任せようぜ。帰ったら鴉天狗とか首無に説教されるかもな」
「げ、リクオ庇ってくれないかな………」
アイギスの目的は映画のアルゴスと似た感じでした。
そこに至るきっかけや手段は異なります
補足すると序章のクリスマスパーティーでは既に倉橋さんはゴーストに変えられてました。
そして唐突に登場するウィザードと鎧武
この暗殺ゴーストが終わったら始める「ぬらりひょんの孫とウィザード(+鎧武)のクロスオーバー作品」の為に少し顔見せしてもらいました
そちらの方も此方のクライマックスもお楽しみに