仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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・前回同様 映画にちなんだ話です


英雄の村

「う………くう……」

 

光に飲まれたタケルは気を失って何処かに倒れていた。

 

「タケル君! タケル君!」

 

「……ん……あ、渚……んん!?」

 

渚に起こされて目を覚ましたタケルだったが彼の姿に仰天した。

 

「な、な………?」

 

「あ、タケル君はそのままなんだね」

 

「な、渚……? いや、ツタンカーメン……?」

 

先程まで普通の学生服だった筈の渚がまさしくファラオの姿格好になっていたのだった。

 

「僕だけじゃないよ。ほら」

 

「え…………ええっ!?」

 

イトナは陣羽織、速水はカウガール、中村は指揮者、寺坂は僧兵。

タケル以外の全ての生徒達が英雄の格好になっていたのだった。

 

「う、嘘だろ……どうなってんだ」

 

「タケル! こっちも見てみろよ」

 

「? ………な、なんだ此処は!?」

 

袴姿の磯貝に連れられて見た先には様々な国の建物が乱立する奇妙な村があり、そこで英雄の姿をした人々が暮らしている光景だった。

 

「なんだよ……どうなってんだ此処は」

 

「取り合えず行ってみようぜ! 倉橋の事とか聞いてみないと!!」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

◎◎◎◎◎

 

実際に村に入ると実に多くの英雄が暮らしていた。聖徳太子にジャンヌダルク、伊達政宗にライト兄弟、福沢諭吉に夏目漱石もいた。

 

「すげぇ………英雄の村だ」

 

「これ本人なの? それとも私達と同じ?」

 

「さあ………けどこの人達にも英雄眼魂が関わってるのは間違ってない」

 

とりあえず倉橋の行方が知りたいので近くにいた人物に声をかける。

 

「あの……ちょっといいですか?」

 

「おや、新人ですかな?」

 

「し、新人? ていうか………」

 

「「「水戸黄門公………」」」

 

本名は徳川光圀。まさしく知らぬ者などいない偉人である。

 

「あ、あの………金髪のふわふわした髪の女の子を知りませんか?」

 

「或いは黄緑のパーカーを着たゴーストとか」

 

「うむ……悪いが見とらんのう」

 

「そうですか……」

 

「そうじゃのう……これ、幸村」

 

と、水戸黄門が呼び止めたのは真っ赤な鎧に六紋銭の武将。

 

「さ、真田幸村……」

 

「光國の爺ちゃん。なんか用か?」

 

「うむ。おぬしは忍者と親しかったであろう? 少し彼らの人助けに協力してやってはくれぬか?」

 

「おう。了解だぜ。探し人の絵とかはあるか?」

 

「えーと…………あ、ちょっと待ってて」

 

タケルが財布から取り出したのは倉橋と一緒に撮った写真だった。

幽霊なのに写るのかというツッコミはしてはいけない。

 

「この金髪の女の子なんですが………」

 

「ふむ……どっかで見たことあるな」

 

「本当ですか!?」

 

「ああ。……おーい佐助ぇ!!」

 

と、幸村が呼んだのは忍者の猿飛佐助だった。

 

「なんですかい幸村様」

 

「この娘に見覚えは無いか?」

 

「あー。この娘っすか? 確かに見たっすよ」

 

「!! 何処で!?」

 

「えーと、あの塔に向かって歩いていくのを見たっす」

 

「「「塔?」」」

 

猿飛佐助が指差したのは巻き貝のような螺旋状の塔だった。

 

「支配者の塔か……」

 

「なんですかそれ?」

 

「彼処には俺達を此処に連れてきたっていう村の支配者が住んでるって話だ。俺達も下手に近付こうとはしねえな………」

 

 

 

その支配者の塔では……。

 

「アイギス様。予定通り、英雄眼魂の生成者を此方に呼び寄せました」

 

「ご苦労だったな。倉橋陽菜乃」

 

玉座に座るアイギスと呼ばれた男は、倉橋陽菜乃が集めてきた眼魂を手元に置いた。

 

「鍵となる英雄眼魂のうちの一つ、ナポレオン眼魂が手に入った今、もう待つ必要はあるまい………」

 

アイギスはそう言うと、倉橋とシャドウゴースト三人に命じた。

 

「英雄の村を襲撃しろ。残る眼魂を全て奪ってこい」

 

「「「仰せのままに」」」

 

 

その様子を柱の影から一人の男が見ていた。

 

「………ついに動き出したか………」

 

◎◎◎◎◎

 

「しかしすげぇな此処。右も左も英雄だらけじゃねえか」

 

「百人近くいるんじゃないかな。それだけの広さはあるよここ」

 

一先ず茶屋で一休みする事になったE組メンバー。

その茶屋を営業するのも千利休だというのだから徹底している。

 

「とりあえず………この村について分かったことを纏めてみよう」

 

様々な英雄達に話を聞いた所、此処に住んでいる英雄達は元々は普通の人間だったらしい。

 

「多分………ていうか確実に英雄眼魂を持ってる人達だよね………」

 

「ああ。この村に来た時点で持っている英雄眼魂が本人と融合、そのままでいると人格とかがその英雄のものに変わっていくという感じか」

 

「一応元々の人間の記憶とかは残ってるみたいだけどね」

 

此処に来た途端に生徒達の姿が変わったのもそういうことだろう。

ムサシは元々タケルから生成された眼魂だが現状は杉野の方が融合率は高いらしい。

 

「倉橋も英雄眼魂を集めてたし………こんなに英雄眼魂を持ってる人を集めて何がしたいんだ……?」

 

「さあ………とりあえず、塔に行こうか」

 

タケルの言葉に全員が頷く。

と、その時、

 

 

「うわああああああ!!」

 

「きゃああああああ!!」

 

「「「!?」」」

 

突然村に悲鳴が響き渡る。

 

「英雄眼魂を集めろ! 一つ残らずだ!!」

 

シャドウゴーストが率いる眼魔軍団が英雄の村を襲撃に来たのだ。

 

「ぐうああっ!!」

 

「がはあっ!!」

 

眼魔やシャドウゴーストにやられた英雄達が次々と眼魂に変えられていく。

たちまち村中が大パニックになった。

 

「!! やらせるか!! 変身!!」

 

[カイガン! ブースト! オレがブースト! 奮い立つゴースト!]

 

闘魂ゴーストに変身したタケルは眼魔に攻撃して英雄達を守ろうとする。

 

「早く逃げてください!!」

 

タケルの後に続くようにE組のメンバーもパーカーゴーストを纏って戦闘に加わる。

 

「おおおっ!!」

 

「でやあ!!」

 

剣撃や射撃、英雄の特殊能力で眼魔軍団を撃退していく。

が、敵のあまりの大群に守りきれず、英雄達がやられてしまっていく。

 

「うわああ!!」

 

「ぐはあああ!!」

 

斬られ、撃たれ、倒れた偉人達は次々と眼魂に変えられて眼魔に回収されていく。

 

『ふん。他愛ない』

 

「くそ………これ以上やらせるか!!」

 

ロビン千葉がアローモードで次々と撃ち抜いていく。

やはり正確な狙撃は一発で複数の眼魔を同時に仕留める程の精密性と威力を誇る。

 

『………奴が厄介か』

 

[ダイテンガン! シャドウ! オメガウルオウド!]

 

「なにっ!? うぐあああっ!!」

 

青いシャドウゴーストが放った飛び蹴りがロビン千葉にヒット。

吹き飛ばされた彼はそのまま眼魂に変えられてしまう。

 

「千葉!?」

 

「!! 凛香後ろ!!」

 

「ッ!? うあっ……!」

 

それに気を取られた一瞬の隙。そこを眼魔スペリオルに攻撃された速水がビリー・ザ・キッドに変わる。

 

「速水!! くっそコイツらぁ!!」

 

「はあっ!!」

 

フーディーニ吉田が鎖を使って敵を纏めて打ち付け、ベートーベン中村が音波を次々と放つ。

 

『邪魔だな。コイツを使ってみるか』

 

[テンガン! ロビンフット!]

 

青いシャドウゴーストが手にいれたロビンフット眼魂を使ってパーカーゴーストを纏う。

そしてそれが放った矢が鎖と音波の隙間を潜り抜け、二人を貫く。

 

「ぐおおっ!?」

 

「んあああっ!!」

 

「中村! 吉田!」

 

二人が変えられた眼魂を黄色いシャドウゴーストが回収する。

 

『やるじゃないか。なら私も』

 

[テンガン! ベートーベン!]

 

ベートーベン魂を纏った黄色いシャドウゴーストが音波を放つ。

 

「ぎゃあああっ!!」

 

「がはあああっ!!」

 

「皆さん!! 早く逃げて……きゃあああ!!」

 

「神崎さん!!」

 

英雄達を庇った神崎もまた、敵の凶刃に倒れる。

更に、

 

「うおらっ!! でやあっ!!」

 

『ふん……せい!』

 

「なっ、ごはああっ!!」

 

「前原!!」

 

前原が倒され、ゴエモン眼魂が赤いシャドウゴーストの手に渡る。

 

[テンガン! ゴエモン!]

 

そのままゴエモン魂を着込んだ赤いシャドウゴーストはリョウマ磯貝とヒミコ片岡に向き直った。

 

『次はお前らか?』

 

「お前……よくも俺の親友を……!」

 

「絶対……許さないんだから……!」

 

 

 

「ぐああ!!」

 

「佐助!! ッおわああっ!!」

 

「幸村さん!! くそぉっ!!」

 

[闘魂ダイカイガン! ブースト! オメガドライブ!]

 

怒りと悔しさで放たれた火炎の飛び蹴りが一気に眼魔を倒していく。

 

「はあ……はあ……まだまだ……」

 

「てやあっ!!」

 

「うぐあっ!?」

 

突然の奇襲に闘魂ゴーストは大きく吹き飛ばされる。

 

「ぐ………! ひ、陽菜乃!!」

 

「ふふ。これでようやく戦えるね……たっ!!」

 

「くっ!!」

 

互いのガンガンセイバーがぶつかり合う。

元より戦闘力がE組でも相当高い倉橋と、基本スキルはゴースト以上のゼロゴースト。

 

「でやっ!!」

 

「はあっ!!」

 

総合的な能力ではタケルと互角である。

 

「やっ!!」

 

「ぐ、あああ!!」

 

加えて倉橋が相手だということでタケルは本気を出せないでいる。

 

「く、うおっ!!」

 

降り下ろされたガンガンセイバーを転がってかわすゴースト。

 

「……長引きそうだね。なら」

 

「!? それは……!」

 

ゼロゴーストは橙色の眼魂をドライバーに装填。

 

[カイガン! ダーウィン! 議論、結論、進化論!]

 

系統樹のような模様が全身に描かれたダーウィン魂を纏ったゼロゴースト。

 

「生物学者ダーウィンの眼魂………!」

 

「はっ、たあっ!!」

 

「うっ、くうっ!!」

 

パンチやキック。どれも小柄な倉橋のものとは思えない程に強い。

 

「く、この………」

 

[ダイカイガン! ダーウィン! オメガドライブ!]

 

と、ダーウィンゼロの体が細胞状に変化、そのままゴーストに体当たりを食らわせる。

 

「ぐあっ、く、う、ぐッああああ!!!」

 

細胞に飲まれたゴーストはそのまま爆発。

変身が解除されたタケルはそのまま倒れ込んだ。

 

「ぎ……ぐ、うぅ……」

 

そんなタケルに変身を解いた倉橋が近づく。

 

「なんで……陽菜乃、なんでこんな……何が目的でこんな…!」

 

「私達の目的? そうだね~。全ての存在をゴーストにすることだよ」

 

「………全ての存在を……!?」

 

「そ、人間も眼魔も、永遠に消滅することの無いゴーストにね」

 

言っている事の概要は理解できるが納得が出来ない。なぜ彼女がこんなことを考え出したのか。

 

「今の私はタケルと同じゴーストなんだ。まあ死んだ訳じゃあないんだけどね」

 

「な……!?」

 

「アイギス様によって人工的に作られた霊体ってとこ。本当にスゴいよ。この体は」

 

「……………陽菜乃」

 

「だからタケルもこっちにおいで? 一緒にゴーストの世界を作ろ?」

 

倉橋が差し出す手に迷うタケル。と、

 

 

 

「騙されるな!! タケル!!」

 

 

[ダイカイガン! スペクター! オオメダマ!]

 

突然割り込んできた眼魂状のエネルギーが爆煙を起こし、倉橋の目が眩んでいる隙に何者かがタケルを連れて離脱した。




英雄の村は眼魂を持っていた人達が集められた設定でした。
映画では英雄村のシーンが特に面白かった感。

此方は本家とは異なるメンバーが残りましたね。そして倉橋さんの真意。
真実とまでは行きませんけどね

まさかのスペクター登場 その正体は?

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