翌日。
「痛い………」
神代タケルは寝込んでいた。
電気眼魔の激しい電撃を食らった彼はエジソン魂で克服したのはいいもののムサシ魂の状態で受けた電撃は後遺症が残るほどだった。
「幽霊なのに痺れるって一体………いだだだ……」
一先ず持っている黒電話で学校には遅れるという旨を殺せんせーに伝えておいた。
「………そういや今日新しい先生が来るって言ってたような……あがが……」
◎◎◎◎◎
午前中のうちに感電が回復したタケルは急いで学校に向かっていた。
「授業進んでるのかな~。誰かにノート見せてもらわないと………」
「あれ。タケル君? 大丈夫なの?」
校舎に着いたタケルに気づいた矢田桃花が声をかける。
「ああ。もう問題ないよ。けど………なんか教室の雰囲気がおかしくないかな」
「あー。それなんだけどさ………」
話を聞くところによると、教師という名目で派遣された暗殺者、イリーナ・イェラビッチという人物が原因だと言う。
「プロとしては確かに凄いとは思うんだけど……どうもちょっと苦手かな……」
「………そうなんだ。……凄い人程クセって強いからね……」
「まあ手入れされてたけどね……。だから殆ど授業は出来てないから大丈夫だと思うよ」
「そっか。眼魔は?」
「そっちは特に問題ないかな」
それを聞いて安心したタケルは矢田と共に教室に向かった。
◎◎◎◎◎
「(うーん。ピリピリしてるな………)」
そんな前情報を持った上でタケルが見たイリーナはかなり苛立っていた。
「(……なあ、殺せんせーの手入れって何したんだ?)」
「(………大人用の手入れって言ってた)」
それを聞いて複雑な顔になるタケル。
しかし授業が行えない状況が続くのは流石に不味い。
「………先生。授業してくれないなら殺せんせーと交代してくれませんか? 一応俺ら今年受験なんで……」
代表して磯貝が言う。が、イリーナはそんな彼らを軽く嘲った。
「はん! あの凶悪生物に教わりたいの? 地球の危機と受験を比べられるなんて……ガキは平和でいいわね~」
実際は加えてタケルの事情がある彼らが楽観的という訳ではないのだが、イリーナはそんなことは知らない。
「それに聞けばあんた達E組ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて今更しても意味ないでしょ」
この言葉にクラス全員に青筋が走る。
「じゃあこうしましょ、私が暗殺に成功したら一人五百万分けてあげる! 無駄な勉強するよりずっと有益でしょ。だから黙って私に従い………」
ビシッ。
投げつけられた消しゴムが跳ね返って教卓に落ちる。
それが皮切りだった。
「……出てけよ」
誰かがボソリと呟く。そして………。
「出てけくそビッチ!!」
「殺せんせーと代わってよ!!」
「なっ……何よあんた達その態度っ、殺すわよ!?」
「上等だよ殺ってみろコラァ!!」
一斉ブーイングと共に紙屑やボールペンが投げつけられる。
流石に不味いと思ったのかそれを止めたのはタケルだった。
「やめろ皆!! 怒りに任せてどうにかなるのか!?」
「タケル………」
「ふん。何よ死人のくせしていいかっこぶりかしら?」
"死人のくせに"。
その言葉がタケルに突き刺さった。
「死んだ人間がしゃしゃり出てくるんじゃないわよ。大人しくあの世でのうのうと暮らしていなさいっての」
「ッ……………!」
「ふざけるな!!!」
途端、クラスの怒りが更に増す。
「タケルはこのクラスの為に戦ってくれているんだ!!」
「生き返りたい自分よりも私達を守ることを優先してくれてるの!!」
「そんなタケルにそんな言い草は無いだろ!?」
「タケルに謝れ!!」
「なっ、ちょっ……!」
最早怒りが収まらないクラスに見ていた烏間は頭を抱えた。
◎◎◎◎◎
「………………」
「タケルちゃん」
「陽菜乃さん……なんでちゃん付け……?」
「さっきのこと気にしてるの?」
「うん」
"結局は死人"。
本来であれば彼は此処に居てはならない存在である。
それが生き返りたいと願い、生きる人間に干渉するのは間違っているのではないか。
「…………結局は俺の我が儘なんだよな……神代タケルは……俺のやってることは許されるのかな」
「…………それは私には分からないよ。けど、タケルちゃんのおかげで助けられた人はいるでしょ?」
「…………俺が助けられた人……」
「昨日だってタケルちゃんが居なかったら愛実ちゃん……それにクラスの皆があの眼魔に殺されていたかもしれない。だから、少なくともタケルちゃんが私達を助けてくれたのは間違いじゃないよ」
「…………そう、かな」
「私達だってタケルちゃんを蘇らせたい。それも我が儘なんだと思う。けど、それを諦めたくは無いからさ。だからタケルちゃんも頑張ってね?」
「…………そうだな。俺はクラスの仲間を守るって決めたんだ。………ありがとう陽菜乃さん」
タケルが笑顔を見せると倉橋もニッコリと笑った。
そんな二人を烏間に連れられたイリーナは見ていた。
「……………」
「神代君も、戦う者として、そしてこのクラスの生徒の一人として、二つの立場を両立している。そして彼にはそれを成し遂げる為の覚悟もある」
「………………そう」
「だからお前の侮辱にクラスの皆は激しく怒ったんだ」
自分が言ってしまった軽率な言葉にイリーナは深く反省した。
その時。
[グギャアアアア!!]
「「!?」」
上空に巨大な目のような紋様が浮かび上がり、そこから巨大な竜のような怪物が飛び出した。
「な、何あれ!?」
「グンダリ………、眼魔の使う怪物だ!!」
グンダリは急降下で接近。手のような尻尾でイリーナを捕らえると上空に飛翔した。
「ッキャアアアア!!」
「イリーナ先生!!」
と、グンダリを見つけた他の生徒達も駆け寄ってきた。
「な、あれも眼魔か!?」
「ビッチ先生が捕まってるぞ!!」
「早く助けないと………!」
変身しようとしたタケルに前原陽斗が待ったをかけた。
「タケル。ビッチ先生はお前に酷いことを言ったんだぜ? それを助けるのか?」
「助けるさ。この世に見捨てていい命なんて無い。それに…………それが俺のやりたいこと、覚悟だ!!」
タケルらしい言葉にクラス皆が笑った。
「けどどうやってあんなデカイ奴と戦うんだ?」
「任せてくれ。変身!」
[カイガン! オレ! レッツゴー!・覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!]
ゴーストに変身したタケルはとあるものを呼び出した。
「ゴーストライカー!! キャプテンゴースト!!」
現れたのが黒いユニコーンのようなバイクと宙に浮かぶ幽霊船。
「最早なんでもありだな……」
「行くぞ!!」
キャプテンゴーストとゴーストが乗ったゴーストライカーが合体、巨大な"イグアナゴーストライカー"が完成した。
「可愛い!!」
「倉橋さん!?」
「可愛い……かな?」
ゴーストライカーは木々や校舎の屋根を飛び渡ってグンダリに接近。
グンダリに飛び付き、鋭い爪で引っ掻いた。
その隙にグンダリの背中を走り、イリーナの元に走るゴースト。
「大丈夫ですか。先生」
「え、ええありがとう神代。…………その、ごめんなさい」
「気にしてないですよ。ただ………」
剣、ガンガンセイバーで尾の指のような部分を切り落とす。
「人生に無駄なことなんて無いんです。どんなことでも、命を燃やしてやりきれば、必ず成果は得られます」
「………………」
イリーナを解放したゴーストは彼女を抱えて地上に降りた。
「大丈夫か?」
「烏間先生。イリーナ先生を頼みます」
と、イグアナゴーストライカーがグンダリを森に叩き落とした。
「命…………燃やすぜ!!」
[ダイカイガン!]
イグアナゴーストライカーに飛び乗ったタケルが印を組み、力を込める。
そして目の紋様から発生したエネルギーが右足に収束、キックの威力を高める。
[オレ! オメガドライブ!]
地上で悶えるグンダリに向け、イグアナゴーストライカーの頭からジャンプしたゴーストが全力の飛び蹴りを叩き込む!!
「ハアアアアアアッ!!!」
[ギャアアアアアアア!!!]
ゴーストのライダーキックはグンダリを貫き、爆発を引き起こした。
そして、反省したイリーナは改めて英会話の教師として此処に留まることにした。
しかしクラス全員からは"ビッチ"のイメージが離れず、憐れに思ったタケル以外は"ビッチ先生"と呼ぶことになったのだった。
神代タケルの所有眼魂
[01・ムサシ][02・エジソン]
=二個
グンダリは眼魔の指示で現実世界に来襲し、眼魂を狙ってきます。
ユルセン出す機会が無かった………。
もういいかな。出してほしいって意見があれば今後検討しますが。