仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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開店! 山の幸の飲食店!

学園祭当日。

山の麓で矢田が客引きを行い、足腰が弱い人は寺坂と吉田がリアカーで送るなどの工夫を行ってはいるが、やはり客足は伸びていない。

 

「まだ一日目、勝負はこれからですよ。菅谷君のポスターに岡島君の食品写真、狭間さんのメニュー解説文、三村君の特設ホームページ。客の興味を引ける材料は揃ってます」

 

「偵察しているが、客の興味を引くのならA組が上手だ」

 

と、ラジコンで偵察していたイトナが言った。

確かにA組はステージを活用したり友人のアイドルやお笑い芸人のイベントを連続して行うことで客の興味を尽きさせない。

 

「しかも五英傑のバンドクオリティ高ぇ。こんな奴等に売り上げで勝つ手あんのか?」

 

とはいえE組側にもわかばパークの皆が来たり、殺せんせーに挑んだ殺し屋達がやってきたりとそれなりに稼ぎはできていた。

 

「で、タケルの方はどうなってるんだ?」

 

「下手に手出しできないように烏間先生と職員室でジャックと話をしてる」

 

◎◎◎◎◎

 

「やはり旨い」

 

「そりゃ何よりだ」

 

どんぐりつけ麺を美味しそうに啜るジャック。

その本当に美味しそうな食べっぷりを見てやはり眼魔にも心があるのだと思うタケルであった。

 

「はい、じゃあ治療するね」

 

「うむ………いっ!!」

 

「ああ、動かないで」

 

「人間の体とは不便なものだ………」

 

倉橋に傷の治療をしてもらうジャック。

包帯やガーゼもつけ終わり、いよいよ本題に入る。

 

「で、何が知りたい」

 

「眼魔の世界と、お前達自身についてだ」

 

「………いいだろう。だが私も全てを知っているわけでは無い。大帝やイレーザーの様に裏で何かをしている者もいる」

 

「ああ。それでもいい」

 

ジャックはつけ麺の容器を下げ、話し始めた。

 

「我々、眼魔の世界の住人は肉体を保存カプセルに入れられ、分離した魂を眼魂という器に容れられる事で活動している。故に我々は食事や睡眠を必要とせず、永遠の時を生きる」

 

「ということは……今のジャックは生身ってこと?」

 

「そうなる。イレーザーに先日、神代タケルに私のコアとなる眼魂を破壊された後、眠っていた私の身体が起こされた」

 

そしてイレーザーに懲罰を受け、命からがら人間の世界へ逃げ延びたというわけである。

 

「そもそもそのシステムは誰が作り上げたんだ?」

 

「前大帝の"アストラ"様だ。前大帝は御自身の妻と長男がお亡くなりになられたことで友人の"イーゼル長官"と共に人が死なない完璧な世界の構築を始めた。だが…………」

 

「その前にちょっといいか? 俺は以前眼魔の世界に行ったとき、保存カプセルの中の人が消えるのを見たんだ」

 

ジャギアと初めて戦った時の話である。

そのあまりの光景にタケルは怯え、敗北を喫したのだった。

 

「私には詳しい話は分からないがイーゼル長官はあのシステムは不完全だと言っていた。………事が起こったのは二年前だ」

 

 

 

当時のジャックはまだ幹部補佐という現在に比べて低い地位だった。

そんな彼が偶然目撃した光景があった。

 

[アビス………]

 

[父上。私は今まで父上の創造した世界が完璧たる神の世界だと思っていました。ですが、そんなものはまやかしだった]

 

[聞け……アビス……嘗て私はお前の兄と母を失い、その哀しみを嘆き、この世界を創った。だが……]

 

[完璧な世界は創れなかった]

 

[ああ。そうだ。完璧な世界など何処にも無いのだ………]

 

[違いますね父上。そんな下らない感傷で行ったからこそ不完全なものになってしまったのです]

 

[何………!?]

 

[私は貴方を見て理解しました。完璧な世界には感情も、個の命も必要ない。必要なのは全てを統治する力のみ]

 

[アビス………!]

 

[アビス! 貴様、力の根源を手に入れるつもりか!!]

 

と、そこに一人の男。イーゼル長官がやってきてアビスを叱る。

 

[イーゼル長官……貴方も最早完璧な世界には不用な存在だ。消えてもらおう]

 

[!? ぐっ、ぐおあああぁぁぁぁぁ!!?]

 

[イーゼル!!]

 

アビスが手をかざすとイーゼルは吹き飛ばされてゲートを潜り、姿を消した。

 

[父上………弱い貴方も最早不用。私の手で葬って差し上げよう]

 

[アビス………ぐっ!!]

 

アビスのレーザーがアストラを貫く。

 

[さようなら。父上]

 

[アビス………私はお前を……愛していたよ……]

 

崩れ落ちたアストラの身体が粒子となって消え、残った眼魂も静かに朽ちた。

 

 

 

「「「……………!」」」

 

「そしてアビス様が大帝となり、私やイレーザーといった者達を従え、完璧な世界を構築する為に人間界への侵出を始めた」

 

「………眼魂がタケルの眼魂を狙ってたのも、完璧な世界を創るって願いを叶えるためだったのかな……」

 

倉橋の考えにジャックは頷く。

 

「私は神代タケルと二度戦ったが、貴様の意思の強さによって敗れた。故にやはりアビス様の提唱する世界は間違っていると思った。それを進言する前にイレーザーに手を打たれたがな………」

 

「……………………」

 

色々と言いたいことはあるが、タケルはそれを堪える。

目の前のジャックに言っても仕方がない。言うならばアビス本人でなければ意味はない。

故にタケルは聞きたかった3つの質問をぶつけることにした。

 

「ジャック……聞いてもいいか?」

 

「なんだ」

 

「まず、イレーザーの企んでいる計画とはなんだ」

 

「それは答えられない。元より奴が一人で進めていた計画だ。私はおろかアビス様にも詳細は分からないだろう」

 

「そうか……なら次に、重傷を負った眼魔を助ける方法はあるか?」

 

「眼魔としての身体が残っているのなら、眼魂は破壊されていない。傷の深さによるが時間が経てば自然と回復するだろう」

 

「! そうか!」

 

なら、まだ眠っている画材眼魔もしばらくすれば目覚めるだろう。

 

「よかったな倉橋さん」

 

「はい!」

 

烏間に励まされる倉橋に少し嫉妬しながらもタケルは最後の疑問をぶつけた。

 

「最後に、アビスが引き連れていた炎の怪人、あれはなんだ」

 

「………詳しいことは分からない。だが奴等はガンマイザーと呼ばれている」

 

「ガンマイザー……?」

 

「眼魔の世界の15の守り神………とされている。元々はアストラ様が眼魔世界のシステムを創るためにその力を借りたとされているが………アビス様に従っているということはあの方に力を貸したと考えられるだろう」

 

「世界を創る程の力…15の守り神……もしかして眼魂の願いを叶える力となにか関係が!?」

 

「あるかもな……つまりそのガンマイザーが鍵ってことか………ありがとうジャック」

 

「礼には及ばん。その代わりこのモンブランとやらを食べてみたいのだが」

 

「ああ。どんどん食え!」

 

◎◎◎◎◎

 

二日目。

一日目は結果的にそこそこの売り上げで、このままのペースではA組とは勝負にならない。

 

と、思った矢先、

 

「急げ! 朝の中継に間に合わねーぞ!」

 

「………テレビ局?」

 

「何撮るつもりだ?」

 

「この先にはE組しか………なんだこりゃ!?」

 

先日とは比べ物にならない開店待ちの大行列が出来上がっていた。

 

「大変!! ネットで口コミが爆発的に広がってる!」

 

律が調べてきた所、今一番勢いのあるグルメブロガーの法田ユウジがここの宣伝をしたらしい。

 

この法田ユウジ、実は夏休みの鷹岡の件で渚が女装して潜入した際に女と間違えて惚れ込んだらしい。

一日目に渚目的でやって来たのだが、渚は正体を明かす。その日はさっさと帰ったのだが………。

 

『「欠点や弱点を武器に変える」 店で働く友達がそういってたのを聞いて、偉大な親の影に隠れて甘やかされ、何処かそれを後ろめたく思ってた自分が、なんかアホらしくなりました』

 

「…………渚は、人の心を変えることができたんだな………」

 

「神代タケル。お前も行けばいい」

 

と、その記事を見ていたタケルにジャックが声をかけた。

 

「私も此処に来て価値観が変わった。お前のやりたいことをやれ」

 

「ジャック………」

 

「私は、ひとまずやりたいことを見つけるところから始めようと思う」

 

そう言ってジャックは去っていった。

 

「………また飯食いに来いよ!!」

 

タケルの呼び掛けに手を振って答えるジャック。

それを見送ってからタケルも接客に参加するのだった。

 

◎◎◎◎◎

 

それからは皆必死に働いた。

採って、作って出して、また売って、

知り合いやゆかりのあった人達も沢山来た。

 

 

「いやー。旨いなここのつけ麺! オレンジゼリーも最高だ!」

 

「本当にな。なあ、シュガードーナツは無いのか?」

 

「ちょ、ハルト君メニューに無いもの注文しない! コウタさんも食べ過ぎ!」

 

「固いこと言うなってリクオ! 此処は今日一日しか食べられないんだぜ?」

 

 

「………なんなんだろうあの人達」

 

大きな指輪を着けた少年とオレンジ型の錠前をぶら下げた青年、眼鏡をかけた"良い奴"そうな少年という一行にタケルは思わず首をかしげるのだった。

 

 

 

やがてどんぐり麺も在庫が無くなり、殺せんせーが打ち止めの合図を出した。

 

「これ以上は山の生態系を崩しかねない。植物も鳥も魚も菌類も節足動物も哺乳類もあらゆる生物の行動が"縁"となって恵みになる。この学園祭で実感してくれたでしょうか。君達がどれほど多くの"縁"に恵まれて来たことか」

 

と、タケルから飛び出した全ての英雄眼魂が実体化した。

 

「皆………」

 

「英雄の皆さんも然り、君達は彼らから多くのことを教わりました。それも君達を育んできた縁の一つです」

 

「…………縁、か」

 

英雄の皆、戦った敵、協力してくれた仲間、その全てが繋がっている。

 

『タケル。そして皆の者。この繋がりを決して忘れてはならぬぞ』

 

「………はい」

 

『それと………これより打ち上げであろう? 拙者達もたまには参加しても構わぬか?』

 

「……………勿論ですよ! 皆さんだってこのE組の仲間ですから! そうだよな皆?」

 

「「「勿論!!」」」

 

『感謝するぞ。ではリョウマ。音頭を取れ』

 

『任せるぜよ! 宴の始まりじゃ!!』

 

 

 

こうして、椚ヶ丘学園祭のE組は第三位という結果で幕を下ろした。

 

夕方、英雄も、生徒も、先生も、皆が盛り上がる打ち上げパーティが行われたのだった。




学園祭編。と同時にジャック編。

彼によって眼魔の世界の詳しい詳細が明らかになりましたね。
本編と似ていながらも別物感があるように心掛けました。

ジャックと和解したタケル。眼魔の世界との決着はどうなるのか。

あと途中で登場した謎の一行はこの暗殺ゴーストが終わったのちに始めるライダー作品のチラ見せです。
分かる人は分かるでしょう。

次回は期末試験。

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