「体育祭の棒倒し?」
貧乏で生活難の磯貝。
彼がE組に落ちたのはバイトが見つかったことによる校則違反。
昨日、浅野達にバイトを続けていたことが発覚。
数日後に行われる体育祭の棒倒しに勝てば見逃してくれるという。
磯貝は責任は全て自分が持つと言うが………。
「イケてねーわ全然!!」
「ええ!?」
「なに自分に酔ってんだアホ毛貧乏!!」
「アホ毛貧乏!?」
『ワシが見込んだ男はいつの間にか小そうなったのう』
「リョウマさん!?」
と、ナイフを持った前原が前に出る。
「A組のガリ勉どもに棒倒しで勝ちゃいいんだろ? 楽勝じゃんか!!」
「そりゃそーだ。むしろバイトが奴等にバレてラッキーだったね」
「日頃の恨み。まとめて張らすチャンスじゃねーか」
「ああ。一人じゃなくて、皆で戦う、だろ?」
三村、寺坂、タケルと続く。
そしてクラス全体が一丸となる。
「倒すどころかへし折ってやろーぜ! なあイケメン!!」
「おまえら………」
その様子に満足そうに頷くリョウマ眼魂。
彼の一番の強みは積み重ねて身につけた人徳。
リーダーには最も大事な資質だ。
「さて……じゃあ作戦を立てないとな。此処は戦の専門家にお話を伺おうか」
「「「戦の専門家?」」」
と、紫色の眼魂がイトナに飛び込んだ。
「うぐ!?」
「お願いします。信長さん」
『ノブナガ、降臨』
陣羽織とマントというかなり荘厳な姿のノブナガイトナ。
『………………』
「の、信長さん?」
『何をしておる。ひれ伏せ! 我は織田信長ぞ!!』
「「「は、ははーっ!!」」」
一斉にひれ伏す生徒達。と、殺せんせー。
『………とは、冗談だが』
ガクッ!
意外とノリの良いノブナガであった。
『話は聞いた。よかろう。我が戦に勝つ戦術を授けてしんぜようぞ』
「ノブナガさん……」
『ただし………我の策は厳しいぞ』
「「「上等!!」」」
◎◎◎◎◎
ノブナガの(厳しい)訓練を乗り越え、体育祭当日。
木村の100m走や原のパン食い競争。前原&岡野の二人三脚など、随所随所で活躍を見せるE組。
が、男子の顔には緊張の色が隠せない。
知ってしまったからだ。勝負を仕掛けた浅野の戦略と、本当の目的を。
アメリカ、フランス、韓国、ブラジルから浅野が呼び寄せた巨漢の外人部隊。
彼らとA組の者達を駆使してE組に中間テストに影響が出るくらいに痛め付けるのが浅野の真の目的だった。
「………二人とも、どう思いますか?」
体育祭の様子を見守るノブナガ眼魂とリョウマ眼魂に問いかけるタケル。
『……確かにあの浅野とか言う者は只者ではない傑物じゃ』
『じゃがのう。悠馬にだって彼に勝る立派な力があるぜよ!』
『そうだ。故に我はかの策を授けた。磯貝悠馬ならば、我の策を十全に使えるであろうとな』
「………俺もです。俺も、磯貝を信じます」
『うむ。ではタケルよ。行ってこい』
「はい!」
「よっし皆!! いつも通りやる気で行くぞ!!」
「「「応!!!」」」
棒倒しのルール。
相手側の支える棒を先に倒した方が勝ち。
殴る、蹴る、武器の使用は禁止。
ただし掴み、棒を支える者が足を使って追い払う。腕や肩のタックルはOKとする。
「試合、開始!!」
防御を捨てて攻めてくるだろうと判断した浅野は攻め込んできたところを潰す陣形をとる。
対してE組は十六人全員が棒を支える[完全防御形態]を取った。
ノブナガ流戦法その壱。
敵を誘き寄せるべし
『(まずは敵を誘い込む。敵が固まっている状況では攻めても崩れないでな)』
「攻撃部隊コマンドF!」
浅野が指示を出すとアメリカ人のケヴィンを中心とした部隊が前に出る。
「くそが!!」
「無抵抗でやられっかよ!!」
突撃してくるケヴィンに対して吉田と村松が反撃に出るが突進一撃で返り討ちにされてしまう。
客席まで10mは吹き飛ばされた二人を見て青ざめる。
「{亀みたいに守ってないで攻めたらどうだ。……フン、と言っても通じないか}」
「{いーんだよこれで}」
と、ケヴィンに対してカルマが挑発し返す。
「{今の二人はE組の中でも最弱……って感じ。ご託はいいから攻めてくれば?}」
「{ほう。ならば見せてもらおうか!}」
棒に突っ込んでくるケヴィンとA組生徒達。
その時、
「今だ皆!! "触手"!!」
棒の防御が全員退いた。
勢い余ってつんのめった部隊を上から抑え込む!
ノブナガ流戦法その弐
面ではなく空間で捉えるべし。
『(戦場は平面的なものと考えず、立体的なものと考えよ。正面だけでなく、空中も視野に入れよ)』
更に棒を半分倒し、その重みで動きを封じる。
「……両翼遊撃部隊、コマンドKだ」
と、浅野の指示で温存部隊が救援に向かう。
「来たぞ! どーする磯貝!」
真ん中に隙があり、戦力が分散してきている今が攻め時である。
「よし出るぞ攻撃部隊! 作戦は"粘液"!!」
特に機動に優れる磯貝、前原、タケル、カルマ、木村、岡島、杉野が中央を突破。
それを見た遊撃部隊が七人を追って防御に戻った。
『ふむ。相手も同じことを考えていたか。守備を解かし、敵を誘い込む。戦の基本故に当然か』
『ほうじゃの。だがおんしはこれの対応も授けておるんじゃろ?』
『然り。我は織田信長ぞ。加えてかの超生物が助言を与えておる』
「そうですねぇ。社会科の勉強がてら助言しました」
攻撃部隊の正面にはフランス人のカミーユとブラジル人のジョゼが待ち構える。
が、しかし磯貝達はそちらに向かわず、客席に逃げた。
ノブナガ流戦法その参。
地形の全てを利用すべし。
『(戦場の地の利を制するものが戦を制す。場の全ての物を利用するのだ)』
「場外なんてルールにはなかった。来なよ。この学校全てが戦場だよ」
「「{……上等だ}」」」
客席まで逃げたE組とそれを追うA組で会場がパニックになる。
『うむ。上出来だ。我が授けた策を上手く使っておる』
『ここからどうなるか………後半に続くぜよ!』
「リョウマさんメタい!?」
初めて前後編という分け方を使いました。
ということで棒倒しです。
偉人としてはノブナガメイン、サブでリョウマですね
戦といえばこの方々でしょう。
メタも出来るリョウマさんw