仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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眼魔の時間

タケルも初めて踏み入れた眼魔の世界。

そこは、赤黒く不気味な空に覆われた世界だった。

 

「ここが……眼魔の世界………」

 

あまりに人間世界とは違うその風景にタケルは少し怯える。

 

「ッ……負けるな俺……!」

 

奥の方に見える目玉の紋様が刻まれた塔らしきものが所謂中枢だろうと目をつけたタケルはそこに向かうことにした。

 

◎◎◎◎◎

 

「………なあ」

 

現実世界、イトナは渚に声をかけた。

 

「何? イトナ君」

 

「あいつは………神代タケルは何故英雄の眼魂を集めているんだ?」

 

「あ、そうか知らなかったね。実は………」

 

渚はタケルの身の上の状況を語った。

3月末に眼魔に殺されたタケルは生き返る為に十五個の英雄眼魂を集めていたこと。

1年という命のリミットがあるにも関わらず、仲間や人々の命を守るために戦っているタケルの心の強さ。

 

「そうか………」

 

「イトナ君が六月に言ってたタケル君が強いって事は正しいと思う。でもタケル君は、人のために自分の命を使うことができる。だからきっと何よりも強いんだ」

 

「…………俺じゃあ勝てないわけだ」

 

ただただ強さだけを得て振るっていたイトナと、確固たる信念と覚悟を貫き通すために力を使うタケル。

ノブナガ眼魂の使い方を間違えているという言葉はそういうことを示していたのだろう。

 

「…………何のために、か………」

 

「焦らなくていいよ。イトナ君はまだスタートラインに立ったばかりなんだから」

 

「………そうだな」

 

◎◎◎◎◎

 

中枢に向かうタケル。

と、その途中で眼魔に遭遇した。

 

『侵入者発見』

 

「スペリオルが二体か……なら!」

 

[カイガン! ベンケイ! 兄貴ムキムキ仁王立ち!]

 

闘魂を素体にした状態でベンケイを纏う。

そしてガンガンセイバーハンマーモードを手に取った。

 

「ぬぅん!!」

 

『ぬごおっ!?』

 

「うおりゃあ!!」

 

『ぐっはあ!?』

 

ジャックとの戦闘時に比べ力を底上げしたタケル。

重量のあるハンマーを軽々と振り回し、スペリオルに叩きつける。

 

「時間をかけるつもりはない。一気に決める!」

 

[ダイカイガン! オメガボンバー!]

 

炎を纏った六つの武器が飛び出す。

そしてそれをハンマーで打ち飛ばし、スペリオルにぶつけた。

 

『ぬぐぉあああ!!?』

 

『くそ!!』

 

「ッ!! 一体逃げたか!! くそ………!」

 

出来ることなら追いかけて仕留めたいが、今はそれどころではない。

移動を再開するタケルだった。

 

◎◎◎◎◎

 

「何……? ゴーストが侵入しただと……?」

 

逃走した眼魔スペリオルは玉座に座る男にタケルのことを報告した。

 

「目的は分からぬが……妙な事を起こされては困る。何より………完璧な世界には不純物は必要ない」

 

そういうと男は片手を挙げてある人物を呼び出した。

以前、ジャギアと呼ばれていた男だった。

 

「ゴーストの対処を任せる。お前の好きにするがよい」

 

「はっ!!」

 

「大帝」

 

と、そこにイレーザーが姿を現す。

 

「少々試したいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

「………好きにしろ」

 

◎◎◎◎◎

 

「此処は……?」

 

タケルが立ち入ったのは研究室のような場所だった。

 

「眼魂が沢山置いてある……全部眼魔の眼魂か……?」

 

怪しげな場所を見て回るタケル。

と、その目がひとつのものを捉えた。

 

「なんだこれ………?」

 

それは、見たところは眼魂だった。

しかし、その大きさは普通の眼魂の三倍以上はあった。

 

「これがおっちゃんの言ってた特別な眼魂……?」

 

触れようとすると、その大きな眼魂が軽く電気を放った。

 

「ッ!! 凄いパワーだな………」

 

しかし、タケルはそれをしっかりと掴む。

 

「使わせてもらう……!」

 

持ってみるとその眼魂はまだ未起動状態らしく、石灰や石のようだった。

 

『侵入者発見!』

 

「ってヤベ、見つかった!!」

 

[カイガン! ツタンカーメン! ピラミッドは三角! 王家の資格!]

 

 

 

その頃現実世界では……。

 

「録画機能も必要だな」

 

「ああ……効率的な改良の分析には不可欠だ」

 

「…………………」

 

イトナのラジコン戦車で女子たちのスカートの中身を撮影しようと盛り上がる男子達の姿があった。

 

 

 

「ダアッ!!」

 

『ぬぅぅぅぅん……』

 

鎌でコマンドを切り裂くツタンカーメンゴースト。

そして残りは纏めて倒す。

 

[オメガファング!]

 

「でりゃああああ!!」

 

眼魔軍団を蹴散らしたタケルはすぐさま離脱する。

 

「どっちに行けば……とりあえずこっちか!?」

 

一心不乱に走る。

やがて、気づくと異様な場所に着いていた。

 

「此処は………?」

 

棺桶のようなカプセルが並ぶ静かな間。

異様な雰囲気の場所に躊躇いながら慎重に進んでいく。

 

「なんだこれ……中に人が入ってる……?」

 

カプセルの窓から見える中身は人間が眠らされている。

 

「さ、拐われた人………?」

 

魂が無い死体のように眠る人々を見てタケルの心に恐怖が募る。

 

「まさか、眼魔の使う眼魂ってこの人達の魂を……!?」

 

 

その時、

 

 

「ッッッッッ!!!!?」

 

カプセルの中の人が朽ちた。

 

「な、な、な……!!?」

 

瞬く間に炭になる体。

その恐ろしい光景にタケルがよろけて膝をつく。

 

「な、な、なんだよ。なんだよこれは!!?」

 

恐怖に駆られ、悲鳴をあげるタケル。

人が消える様を間近に見たのだから無理もない。

 

「……ダメだ。もう、耐えられない……戻らないと……」

 

よろよろと立ち上がったタケルは急いでその場を離れた。

そんな彼を見る者の影に気づかず……………。

 

◎◎◎◎◎

 

「はあ……はあ……はあ………」

 

なんとか建物から脱出したタケル。

かなり精神的に疲弊していた。

 

「くそ………どうなっているんだこの世界は……」

 

とりあえず目的の一つである特別な眼魂は手に入ったので早々の帰還を試みる。

 

「はやく逃げないと……」

 

「逃がさぬよ」

 

「!!」

 

バッと振り替えるとそこにはジャックと同じ服を来た男。

 

「眼魔幹部ジャギア! 貴様を始末する!」

 

[ウルティマ!]

 

「! 変身!!」

 

[カイガン! オレ! レッツゴー! 覚悟! ゴ・ゴ・ゴ・ゴースト!]

 

ジャギアは虎のような姿をした眼魔ウルティマに姿を変える。

オレ魂に変身したゴーストは即座に殴りかかった。

 

「(少しでも気が引けてくれればその隙に逃げる!)」

 

しかし、ジャギアはそれを片手で受け止める。

 

「!?」

 

「ふん!!」

 

「っうああっ!!?」

 

片腕の力だけで投げ飛ばされるゴースト。

ウルティマ。その強さはスペリオル以上だ。

 

「くそ……!」

 

[闘魂カイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い立つゴースト!]

 

闘魂ゴーストに変身しなおし、サングラスラッシャーで斬りかかる。

 

「はっ、だあっ!!」

 

「効かん!!」

 

「ぐ、固い……!」

 

「ふん!」

 

「ぐっああああああ!!?」

 

ウルティマに吹き飛ばされるゴースト。壁を突き破り、地面を転げ、終いには変身が解かれてしまう。

 

「どうやら何かがあって精神が弱っていたようだな」

 

「ぐ………」

 

ジャギアの声が何処か遠くで聞こえる。

意識が遠ざかるような感覚を感じたタケルは力を振り絞って小さくゲートを開いた。

 

「(皆………あとの事は、頼む……!)」

 

そのゲートに全ての眼魂と大型眼魂を投げ込んで閉ざす。

それを成した後、タケルはガクリと気を失った。

 

「………こんなものか」

 

「お見事ですよジャギア。これで私の実験が行えます」

 

と、やってきたイレーザーは手に不気味な眼魂を持っている。

 

「さて……今までは散々邪魔されてきましたからねぇ。我々の人形になっていただきましょうか」

 

[カイガン! ネクロム! ヒウィゴー! 覚悟! 乗っ取りゴースト!]

 

◎◎◎◎◎

 

タケルが必死に送った眼魂はE組の教室に降ってきた。

 

「な、なんだ!?」

 

「タケルの眼魂!? と……デカイ眼魂だ」

 

「えっ、タケルはどうしたんだよ!!?」

 

突然の事態に騒ぎ立つE組。

と、眼魂が飛んで話し始めた。

 

『皆の者! タケルが危ない!』

 

『眼魔の世界で敵幹部にやられてしまったぜよ!!』

 

『このままじゃ消滅させられるかもしれん!!』

 

「「「なんだって!?」」」

 

タケルが負けた。

それに動揺する生徒達と殺せんせー。

 

「助けに行かないと!!」

 

「行くって言ったってどうやって!?」

 

「俺達も眼魔の世界に……」

 

「ゲートを開けるのはタケルだけなのよ!?」

 

「タケルでも勝てないような奴に俺達が勝てるのかよ!!」

 

「だからってなにもしない訳にはいかないだろ!?」

 

騒ぎになるE組の中、倉橋は顔を青ざめさせていた。

 

「そんな………タケル………! 嫌………嘘だ……」

 

と、そんな教室に律が声をかけた。

 

「皆さん!! この教室に向かう反応があります!!」

 

「!? 眼魔か!?」

 

「い、いえ、この反応はタケルさん……?」

 

「! なら迎えに行こうぜ!!」

 

「で、ですが………」

 

律の声を聞かず、飛び出したクラスの皆。

 

「………反応はタケルさんですが………何かがおかしい……?」

 

 

 

外に出ると、確かに坂を上がってくるゴーストの姿があった。

 

「!! あれか!?」

 

「なんか変身したままだけど………」

 

「ふらふらしてる………怪我してるのかな……」

 

「とにかく早く迎えないと!」

 

駆け寄ろうとする男子達。

だが、何かに気づいた倉橋が叫んだ。

 

「!!! ダメ!」

 

「「「!?」」」

 

と、ゴーストがガンガンセイバーのガンモードを構え、発砲した。

 

「危ない!!」

 

殺せんせーが間に入ってその弾丸を弾き飛ばす。

 

「タケル!? 何すんだよ!!」

 

「………………」

 

前原の怒声にタケル……否、ゴーストは答えない。

 

「まさか………!」

 

片岡が何かに気付く。

よく見ると普通のゴーストとは異なり緑の配線が走り、頭部は単眼の不気味なものになっている。

 

「タケル! なんとか言えよ!!」

 

「ダメよ木村君!! 今のタケル君は………操られてる!!」

 

「「「なっ!?」」」

 

「その通り」

 

と、イレーザーとジャギアが現れる。

 

「あの時の科学者!! お前がタケルを操っているのか!!」

 

「ええ。今の神代タケル……ネクロムゴーストは私の操り人形。貴方達の仲間等ではありません」

 

「貴様………!」

 

怒りを見せる殺せんせー。

ショックを受ける生徒達を守るように立つ。

 

「タケルが……敵に…?」

 

「嘘だ……そんなの……」

 

「タケル! 目を覚まして! タケル!!!」

 

倉橋が必死に呼び掛けるが、ゴーストは答えない。

 

「無駄ですよ。やりなさいネクロムゴースト」

 

「…………………」

 

ゴーストがゆっくりとガンモードを殺せんせー達に向ける。

 

「ッ!」

 

[オメガシュート!]

 

「危ない!」

 

殺せんせーがビームを放って相殺。

二つのエネルギーがぶつかりあって爆煙が巻き起こった。

 

 

 

神代タケルの所有眼魂

=零個

(ネクロムに操られ状態の為、英雄眼魂は元々の生成者が所有)




眼魔の世界編の第一回目。
朽ちる体や謎の研究所など一通り触れられたかなと。
案の定タケルは恐怖しました。
なので実力を発揮できずにウルティマにあっさり負けてしまいました。

乗っ取る為にだけ使われるネクロム眼魂………。
乗っ取られ状態は出したかったので使いました。

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