今回は説明回です
翌日。教室にて、
「マジでそんなことあったのかよ」
「本当だって!! この眼でみたんだから!!」
クラスの皆に昨日の事を語る茅野。
だがクラスメートは半信半疑である。
「そう言われてもなぁ。そんな特撮みたいなことがあるか?」
「うちの教室もある意味特撮みたいなものだけどね………」
杉野友人の言葉にツッコミを入れる渚。
と、此処で話題になったタケルが入ってきた。
殺せんせーと烏間も共にいる。
「「「………………」」」
教卓前に立ったタケルに静まり返る教室。
と、烏間が問いかけた。
「………いいんだな?」
「はい。よくよく考えたら殺せんせーがいる時点で俺は大したこと無いですから」
「そんな事はないと思いますがねぇ……」
そんな軽い会話があった後でタケルは語り初めた。
「………まず大前提として話しておきたい。俺は………もう、死んでる」
「「「!?」」」
「今の俺は幽霊みたいなものなんだ。だから……」
タケルが壁に向かって歩くとその体がそのまま壁をすり抜ける。
更に戻ってくるとふわりと宙に浮いた。
「こんな感じで、霊体になれば幽霊みたいなこともできる。普通の人間のように生身にもなれるけど……」
トリックの無い正真正銘の超常現象にクラスがざわめく。
「………そもそもなんで神代は死んだんだ?」
「それにどうして幽霊になったの?」
「それはな………」
◎◎◎◎◎
3月末に刀怪人に殺されたタケルは気付くと川辺に倒れていた。
「………あれ。俺は死んだんじゃ……」
「確かにお前は死んでいるぞ」
「うわ!? 誰だ!?」
見るとそこにいたのは何やら怪しげな老人だった。
「ワシは………そうだな、仙人のような存在じゃ」
「じゃあ仙人おっちゃんか」
とりあえず適当な名前を付けておくことにした。
「で、おっちゃんは俺に何か用? ていうか俺やっぱり死んだのか!?」
「ああ。だがお前には死なれては困るのだ」
「なんでだ?」
「お前を殺した存在。あれは眼魔という」
「眼魔………?」
自身を殺した存在に傷が疼くような感覚が走る。
もっとも、既に死んでる訳だが。
「そうじゃ。そして奴等は現実世界で悪行を行おうとしているんじゃ。そして奴等を倒せるのはお前だけだ」
「俺だけ……?」
「無論ただとは言わん。お前には生き返るチャンスをやろう」
「生き返るチャンス!!」
タケルはまだ14歳。死ぬにはあまりに若すぎる。まだやりたいこともたくさんあるのだ。
「お前には戦士、"仮面ライダーゴースト"になる力をやろう。その力を使って眼魔を倒しつつ、生き返るために必要な眼魂を探すんだ」
「な、なんかよく分からないけど戦っていけば生き返れるんだな?」
「まあ簡単に言うとな」
「………分かった。その依頼、受けるよ」
◎◎◎◎◎
「「「…………」」」
「最初は一人で変身して戦ってたんだけど烏間先生にたまたま戦ってるところを目撃されて、で、事情を話してこのクラスに来ることになったんだ」
「流石に既に死んでいる人間が今までと同じクラスに通い続けるわけにはいかない。このクラスは元々国家機密が存在する状況だから神代君としても都合がいいんだ」
しばらく静まってた教室だったがやがて倉科陽菜乃が手を挙げた。
「あの……その生き返る方法って?」
「ああ。それはこれだ」
と、タケルは二つの目玉を置いた。
黒と赤の二色の目玉。
「これは"眼魂(アイコン)"という。これには人の魂が入っているんだ。ちなみに黒いのは俺の魂が入っている。これは命の無い俺にとっては生命線であり、ゴーストに変身する必須アイテムだ」
「じゃ………赤いのには宮本武蔵の魂が?」
昨日の戦闘を見ていた渚が訪ねるとタケルは頷いた。
「歴史上の偉人の魂が宿った眼魂を"英雄眼魂"と呼ぶ。ゴーストの時に使うことで英雄の力を借りることができる他、これを15個集めて特定の条件を満たせば生き返ることができるらしい」
「つまりドラ〇ンボール的な原理ね!!」
漫画好きの不破優月が突然叫ぶ。
それに驚いたタケルは苦笑いをする。
「特定の条件って?」
「そこまでは分からない。ただ英雄眼魂は"その英雄に対して強い思いを持つ人"から生まれるんだ。実際俺は宮本武蔵に憧れていたからこれが出てきた」
「じゃあ……眼魔って奴等を倒しながら英雄に強い思いを持つ人を15人探していかなきゃいけないの?」
「ああ。しかも眼魔も眼魂を狙ってる。15個集まればどんな願いも叶えられるからな」
改めて聞くとかなり厳しい条件だ。
「更に期限がある。一年以内……来年の三月までにそれが出来ないと俺は消滅する」
「一年以内!?」
「まあ尤も、それに関しては私の暗殺のリミットもありますからねぇ。あまり大差無いでしょう」
確かに、眼魂を集めて復活できても殺せんせーを暗殺できなければ結局地球ごと滅びるのだ。
だが逆に殺せんせーを暗殺できたとしてもタケルには完全な死の可能性があるということでもある。
「そんなの絶望的じゃねえか!!」
「普通ならな。ただ仙人のおっちゃんはこのクラスに居れば眼魂を入手するチャンスが増えるって言ってた。だから……」
と、ここでタケルは少し躊躇ってから口を開いた。
「もしかしたら皆のうちの誰かから英雄眼魂が生まれるかもしれない。そしたら眼魔は容赦なく襲ってくる………」
「………確かにアイツらならやりかねないだろうね」
「…………皆は俺が眼魔から守る。だから………俺に力を貸してほしい!!」
頭を下げるタケル。
殺せんせーと烏間はその様子を静かに伺っていた。
「…………僕は協力するよ」
と、最初に言ったのは渚だった。
「渚? いいのか?」
「うん。僕は昨日タケル君に助けてもらった。なら、その恩を返したいし、それに友達を見捨てるわけにはいかないよ」
「そうだな。その通りだ」
と、磯貝も立ち上がる。
「同じ暗殺をする仲間なんだ。力を貸す理由はそれで充分だ」
「私も! ちゃんと守ってくれるんだよね?」
「勿論だ。この命に誓う!!」
「いや既に死んでるっしょ」
「あ、いや言葉の綾でな……!?」
「俺も力を貸すぜ!!」
「私も協力する!」
と、多くのクラスメートが協力する意思を示してくれた。
「皆……! ありがとう!!」
「ヌルフフフ。先生も可能な限り協力しましょう。私はどんな生徒だろうと決して見捨てませんからね」
「ありがとう。殺せんせー……!」
こうして、E組は担任教師の暗殺と英雄眼魂の捜索、及び眼魔への対策を目的として活動を始めるのだった。
神代タケルの所有眼魂
[01 ムサシ]
=一個