さて、ケイドロの翌日、殺せんせーが教室に入ると、
「汚物を見る目!?」
原因は新聞の見出しである。
[巨乳専門の下着ドロ多発]
[犯人は黄色い頭の大男]
[ヌルフフフという笑い声]
[現場には謎の粘液]
「これ完全に殺せんせーよね」
「正直がっかりだよ。こんなことしてたなんて」
「ちょ、ちょっと待ってください!! 先生全く見に覚えがありません!!」
一応アリバイはあるらしいが意味がなく、唯一庇った磯貝も過去の所業で自白を促す始末である。
「先生は潔白です失礼な!! いいでしょう!! 今から机の中のグラビア全部捨てます!!」
そういって職員室の大量のグラビアを取り出す殺せんせー。
その中に、ブラジャーが………。
「!!」
「マジか……」
「ちょっと!! みんな見て!!」
岡野が持ってきた出席簿には女子の名前の横にアルファベット、即ち全員のカップ数が調べてあった。
しかも最後のページには町中のFカップ以上のリストがあった。
「ちょ、ま、そんなはずは……! そ、そうだ、い、今からバーベキューしましょう皆さん! 放課後やろうと準備しておいたんです!」
そういって取り出した串にもブラジャーが刺さっていた………。
「やべぇぞこいつ………」
「信じらんない……」
「不潔………」
その後、一日中生徒達の冷たい視線を浴び続けた殺せんせーはかなり落ち込んでいた。
「きょ、今日の授業は……ここまで……
トボトボと去っていく殺せんせー。
「本当にやったのかな。こんなシャレにならない犯罪を」
「しないだろ」
と、タケルが割り込んだ。
「俺らが笑ってごまかせる程度ならともかく、こんな教師生命に響くほどの事は絶対にやらかさないと思うな」
「俺もそう思うよ。あの教師バカの怪物にしたら俺らの信用を失うことをするなんて暗殺されんのと同じくらい避けたいことだと思うけどね」
「………うん。僕もそう思う」
「………でも渚、そしたらいったい誰が……」
と、タケルからゴエモン眼魂とグリム眼魂が飛び出し、それが前原と不破に入った。
『泥棒を語るたぁふてぇ奴よ!!』
『犯人はあのセンセーの偽物だね!! 物語にはお約束の!!』
「ゴエモン……それに…グリム弟?」
「あ、そうかグリム兄弟だから………」
と、不破が首がかくんとなり、グリム兄に変わった。
『体色や笑い方を真似してるということは犯人はその情報を得てる何者かであろうな』
『いずれにせよぉ、ゴエモン様としちゃあこんなもん捨て置くわけにゃあ、あいかねぇなぁあ!!』
「俺も賛成。真犯人ボコってタコに貸し作ったろーじゃん?」
◎◎◎◎◎
夜中、グリム不破、ゴエモン前原、タケル、寺坂、渚、カルマ、茅野はとある施設に潜入した。
「なんで真犯人はこの建物を次に選ぶと?」
『決まってらい!! あっしの泥棒の勘って奴よぉ!!』
『正確に言えば此処では巨乳のアイドルグループが合宿しているらしいからな。現に彼処に干してあるだろう?』
理知的なグリム兄弟は推理ごとにも強いらしい。
と、反対側に同じことを考えていたらしい殺せんせーがいた。
………むしろ彼の方が真犯人に見えるが。
と、カルマが何かに気づいた。
「あっちの壁、誰か来る」
黄色いヘルメットの大男、やはり犯人は別にいた。
その謎の男が下着に手を伸ばしたその時、殺せんせーが飛びかかった。
「捕まえたー!! よくもナメたマネしてくれましたね!! 押し倒して隅から隅まで手入れしてやるヌルフフフフフ!!!」
「…………なんか下着ドロより危ないことしてるみたい」
『いよぅし!! あっしもあの偽りの泥棒野郎を、ぁ成敗してくれようぞ!!』
「待ったゴエモンさん!! 確かあの人……」
殺せんせーがヘルメットを取ると、真犯人の正体は烏間の部下、鶴田だった。
「なんで……あなたがこんな………」
と、干されていた洗濯物のシーツが展開された。
「国に掛け合って烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シーツの檻の中まで誘ってもらった」
現れたのはシロ、そして触手を強化したイトナだった。
「さあ。殺せんせー。最後のデスマッチを始めようか」
「イトナ!! シロ!!」
「まずフィールドを劇的に変化させ、それから襲う。君達の戦法を使わせてもらったよ」
此処で悟る。
全てはシロが仕組んだ計画であったということに。
生徒の信頼を失いかけて動揺した殺せんせーはまんまとその計画に引っ掛かったのだ。
「いっつもいやらしいとこから手ぇ回して……!」
「それが大人ってものさ。そうだ! 中の様子が見えないと不安だろう。私の戦術を細かく解説してあげよう」
シーツに似せて囲ったのは対先生繊維の強化布で戦車の突進でも破れない。
イトナの触手には対先生物質でできたグローブが着けられている。
そしてイトナは常に上から攻撃を仕掛けており、殺せんせーは逃げられない。
「これで仕留められないようではね」
「させるか!! 変身!!」
[闘魂カイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い立つゴースト!]
闘魂ゴーストに変身したタケル。しかし、
「それも想定済み、君の相手は彼にしてもらおうか」
と、シロが指を鳴らすと眼魔が現れた。しかも、
「あの眼魔! タケルが倒した筈の刀の眼魔!!」
「馬鹿な。お前は俺が倒した!!」
『いつぞやの雪辱を晴らさせてもらおう!!』
と、ゴーストに切りかかる刀眼魔。
どうやら以前より強化されているらしく闘魂のパワーに張り合っている。
「くっ……!」
『前のようには行かぬぞ!! 秘剣・燕返し!!』
と、刀眼魔が旋回して飛翔、更に急降下で襲いかかってきた。
「ぐあっ!?」
『どうした! こんなものか!!』
「まだだ………ゴエモンさん!!」
と、ゴエモン前原は即座に答えた。
『応! あっしの力をぉ、ぁ使うがよい!!』
前原から飛び出すゴエモン眼魂。
それがゴーストドライバーに収まった。
「変身!!」
[カイガン! ゴエモン! 歌舞伎ウキウキ乱れ咲き!]
ゴエモン魂を纏うゴースト。
そしてサングラスラッシャーを逆手に構える。
「いよぉ~っと!!」
『見かけ倒しだ!! 燕返し!!』
しかしゴエモンゴーストは刀眼魔の攻撃をカウンターで返した。
『ぬぉああ!?』
「いよっ、とおっ!!」
『燕返し!!』
刀眼魔の攻撃を忍者がごとく素早い身のこなしで回避するゴエモンゴースト。
そして一瞬の隙を突いて切り裂く。
「グリムさん!!」
『任せるがよい/行くよ~!』
と、グリム眼魂が不破から飛び出してサングラスラッシャーに収まる。
更に闘魂ブースト眼魂も装填。
[闘魂ダイカイガン!!]
『燕返し!!』
「りゃあ!!」
満月を背景に交錯する二人、それを制したのはゴーストだった。
[メガオメガシャイン!]
『ぐぉああああ!!』
大爆発する刀眼魔。
そして構えを取るゴエモンゴースト。
「絶景かな、あ、絶景かなぁ!!」
「タケルまでゴエモン化してる………」
「またしても邪魔をするか。神代タケル………」
「悔しそうなとこ悪いけど、そっちも終わりそうだよ」
と、殺せんせーを囲う幕が光輝いている。
エネルギーを圧縮した殺せんせーが放つ光である。
「な、なんだ……このパワーは……」
「覚えておきなさいイトナ君。暗殺教室の先生は………教える度に強くなる」
殺せんせーが放ったのは、まさしくビームである。
超威力のビームはイトナをしかし傷つけずに吹き飛ばした。
そしてそれを優しく受け止める殺せんせー。
「そういうことですシロさん。この手の奇襲はもう私には通じませんよ。彼をE組に預けて大人しく去りなさい」
ついでに下着ドロではないという正しい情報を広めるようにも言っていた。
さらについでに茅野も自分の胸はBだと主張していた。
その時である。
「い……痛い……! 頭が……脳みそが……裂ける……!!」
イトナが苦しみ出したのだ。
それをシロが冷静に分析する。
「ここいらがこの子の限界かな。これだけの私の術策を活かせないようではね」
「な……何を言って……」
「君に情がないわけじゃないが、次の素体を運用するためにも……何処かで見切りをつけないとね」
そう言ってシロは背を向けて去っていった。
「さよならだイトナ。後は一人でやりなさい」
「待ちなさい!! 貴方それでも保護者ですか!!」
「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。なんでもかんでも壊すことしかできないくせに。私は許さない。お前の存在そのものを、どんな犠牲を払ってもいい。お前が死ぬ結果だけが私の望みさ」
シロは憎しみの隠った声で告げる。
「それよりいいのかい? 大事な生徒を放っておいて」
と、わめき声をあげてイトナは逃げ出した。
「イトナ!!」
「俺がなんとかする!! フーディーニ!!」
[カイガン! フーディーニ! マジイイじゃん! スゲーマジシャン!]
フーディーニ魂に変身したゴーストはイトナを追った。
神代タケルの所有眼魂
[01 ムサシ][02 エジソン][03 ロビンフット][04 ニュートン][05 ビリー・ザ・キッド]
[06 ベートーベン][07 ベンケイ][08 ゴエモン][09 リョウマ][10 ヒミコ]
[11 ツタンカーメン][12 ノブナガ][13 フーディーニ][14 グリム][15 サンゾウ]
=十五個
対話済眼魂=九個
イトナ編前半。
ゴエモンの初戦闘はやはり夜だろうということでこうなりました。
これで全部の英雄眼魂を使ったことになりますが……。
いやー長かった。
次はグレイトフルだ!!