仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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呪縛の時間

夏休み最後の日のお祭り。

千葉や速水が射的で出禁を食らったり、カルマが糸くじを脅したり磯貝が金魚を荒稼ぎしたり(食うらしい)と、色々荒稼ぎをしていた。

なおタケルはちゃっかり浴衣の倉橋とデートを楽しんでいたりする。

 

そんな中、殺せんせーにある生徒から告げられた言葉。

 

「E組を……抜ける?」

 

◎◎◎◎◎

 

二学期始業式、殺せんせーの暗殺期限、そしてタケルの命のリミットまで……あと六ヶ月。

 

「さて……式の終わりに皆さんにお知らせがあります」

 

放送担当の荒木が語る。

その衝撃のニュースを。

 

「今日から……三年A組に一人仲間が加わります。昨日まで彼はE組にいました」

 

「「「!?」」」

 

「しかし、たゆまぬ努力の末に好成績を取り、本校射に戻ることを許可されました。では彼に喜びの言葉を聞いてみましょう! 竹林孝太郎君です!!」

 

何故竹林が!? E組の皆の戦慄を余所に竹林は語る。

E組の環境を地獄と語り、本校舎に戻りたかったという思いを話した。

 

「こうして戻ってこられた事を心底嬉しく思うと共に、二度とE組に堕ちる事のないよう頑張ります。以上です」

 

と、浅野の拍手に触発され、体育館全体に歓声が響いた。

 

「竹林………」

 

他のE組のメンバー同様に呆然とするタケル。

故に、彼の服の中の眼魂の一つが光ったことに気づかなかった。

 

◎◎◎◎◎

 

「なんなんだよあいつ!! 百億のチャンス捨ててまで抜けるとか信じらんねー!!」

 

「しかもここの事地獄とかほざきやがった!!」

 

「言わされたにしたってあれは無いよね!!」

 

変わり果ててしまった竹林に憤る前原達。

顔こそ冷静だが片岡も静かに怒っていた。

 

「竹林君の成績が急上昇したのは確かだけど、それは此処で殺せんせーに教えられてこそだと思う。それさえ忘れちゃったのなら……私は彼を軽蔑するな」

 

「とにかくああまで言われたら黙ってらんねー!! 放課後一言言いに行くぞ!!」

 

「…………………」

 

「タケル? どうしたの?」

 

「…………まただ」

 

鷹岡や寺坂の時にも感じた未来予知。

それは―――――。

 

「竹林を連れ戻すのは賛成だ。でないとヤバイことになる」

 

◎◎◎◎◎

 

放課後、下校中の竹林に接触、磯貝が切り出した。

 

「説明してもらおうか。なんで一言の相談もないんだ?」

 

「何か事情があるんですよね? 夏休み旅行でも竹林君いてくれてすごく助かったし! 普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!」

 

「賞金百億、殺りようによっちゃもっと上乗せされるらしいよ。分け前いらないんだ竹林。無欲だね~」

 

奥田とカルマの言葉を受け、暫く黙った後に口を開いた。

 

「………精々十億円。僕の力で担える役割じゃ……分け前は十億がいいところだね」

 

竹林の実家は総合病院。

兄二人も揃って東大医学部。

十億程度、竹林の家族は働いて稼げる額なのだ。

出来損ないの竹林は家族としては扱われない。

 

「昨日初めて親に成績の報告が出来たよ。トッフクラスの成績を取ってE組から抜けれる事を………。頑張ったなの一言を貰うためにどれだけ血を吐く思いで勉強したか!」

 

「…………………」

 

同じく親との関係に悩んでいた神崎は黙っていた。

 

「僕にとっては地球の終わりより、百億よりも、家族に認められる方が大事なんだ」

 

「竹林………」

 

と、その時、フーディーニ眼魂が吉田に入り込んだ。

 

「うぐ!?」

 

「吉田!? いや、フーディーニ!?」

 

『ハリー・フーディーニ推参!』

 

鎖を体に纏ったフーディーニ吉田が竹林に近づいた。

 

『先程から話を聞かせてもらったが下らない! 実に下らなくてつまらない!』

 

「なに……?」

 

『要は貴様は親という鎖に縛られている。下らん! たかがそんな小さな鎖を引きちぎれない貴様は実につまらない!』

 

「フーディーニ!! 言い過ぎだ!! 竹林にだって」

 

『考えがあるとでも? その発送自体が不毛だと言っているのだよ』

 

「貴方に………僕の何が分かる……!」

 

怒りを見せる竹林だがフーディーニは特に気にした様子を見せない。

 

『私に言いたいことがあるなら鎖を解いてからにしたまえ。もっとも、その時には私に言いたいことなど無くなっているだろうがね』

 

そう言いながら去っていくフーディーニ吉田。

 

『それと一つ忠告しよう竹林孝太郎。君は今とは比べ物にならない迷いを抱えることになるだろう』

 

◎◎◎◎◎

 

「フーディーニって厳しいね………」

 

「タケルの時の話も聞いたが英雄じゃ一番のスパルタかもな………」

 

「まあ仕方ないだろうな………フーディーニは人生そのものがスパルタだったから」

 

死んだ母に会わせてほしいと願ったフーディーニは霊能師を訪ねたが、その全てが偽物だった経緯を持つ。

 

と、殺せんせーが入ってきた。真っ黒になって。

 

「アフリカに言って日焼けしました。これで先生は完全に忍者!! 人込みで行動しても目立ちません」

 

「恐ろしく目立つわ!!」

 

本物の忍者が聞いたら怒りそうだ。

 

「そもそも何のために!?」

 

「勿論、竹林君のアフターケアです」

 

自分の意思で出ていった竹林を引き留めることはできないが、新しい環境に馴染めているのか見守る義務があると言う。

 

「………俺らもちょっと様子見に行ってやっか」

 

「暗殺も含め危なっかしいんだよあのオタクは」

 

「何だかんだ同じ相手を殺しに行ってた仲間だしな」

 

「抜けんのはしょーがないけど、竹ちゃんが理事長の洗脳でヤな奴になったらやだな~」

 

「………殺意が結ぶ絆ですね」

 

 

 

烏間に教えられたカモフラージュ技術で植木に紛れる生徒達。

 

「結構うまくやってるみたいじゃない」

 

「むしろ普段より愛想よくね?」

 

「ケ、だから放っとけって言ったんだあんなメガネ」

 

「なんだかんだで一番気がかりだったのはお前だろ寺坂」

 

「変なこというなよ神代!」

 

どうやらバレている(主に黒い物体)ようだが、気にしない。

と、浅野に呼ばれた竹林は理事長室に向かった。

 

「………カーテンで中が見えませんねぇ」

 

「任せてくれ………コブラケータイ」

 

アニマルモードになったコブラケータイが理事長室の窓に近づく。

そしてそれを経由してコンドルデンワーで様子をうかがう。

 

[明日は私がこの学校の前身である私塾を開いた日なんだ]

 

「理事長の声だ」

 

「私塾………?」

 

[椚ヶ丘ではそれを創立記念日として集会を行う。君にはそこでもう一度……全校の前でスピーチをして欲しいんだ]

 

「また竹林にスピーチを……?」

 

[…………!?]

 

「「「!!?」」」

 

竹林同様にコブラケータイから送られてきた画像を見て戦慄する。

 

E組の更正を目的とした竹林が皆の生活の全てを監視・再教育するためのE組管理委員会の立案書だった。

 

[これは君が強者に生まれ変わる為の儀式だ。かつての友を支配することで強者としての振る舞いを身に付けるんだ]

 

[………………!]

 

「あの理事長、これが目的か!!」

 

「浅野も関わっているよな……! くそ!!」

 

「竹林は強者の鎖に捕らわれている………フーディーニが言ってたのはこれか……!」

 

「どうしよう。このままじゃ…………」

 

「先生に任せてください。脱出王ではありませんが先生が竹林君の鎖を解いてみせましょう

 

やはり殺せんせーは頼れる先生だった。

 

◎◎◎◎◎

 

翌日、全校集会で竹林が前に立った。

 

「大丈夫かな竹林………」

 

「殺せんせー、屋上に張り付いてるよ」

 

「…………胸騒ぎだ」

 

と、千葉が呟いた。

 

「竹林から殺気を感じる、何か……大事なものをメチャクチャに壊してしまいそうな」

 

「………竹林……」

 

フーディーニ眼魂もタケルの服から見守っている。

 

「……僕の……やりたいことを聞いてください。僕のいたE組は……弱い人たちの集まりです。学力と言う強さがなかった為に本校射の皆さんから差別待遇を受けてます」

 

竹林のスピーチに緊張が走るE組。

と、

 

 

「でも僕は、そんなE組が、メイド喫茶の次くらいに居心地良いです」

 

 

「「「!!!?」」」

 

『どうやら鎖は解けたようだな』

 

フーディーニ眼魂は満足そうに頷いた。

 

「僕は嘘をついていました。強くなりたくて、認められたくて……でも、E組の中で役立たずの上、裏切った僕を、クラスメート達は何度も様子を見に来てくれた」

 

やはりばれていたようで思わず苦笑い。

 

「先生は僕のような要領の悪い生徒でも分かるよう、手を替え品を替え工夫して教えてくれた」

 

と、竹林はそっと管理委員会立案の紙を退かす。

 

「世間が認める明確な強者を目指す皆さんを正しいと思うし尊敬します。でももうしばらく僕は弱者でいい。弱いことに耐え、弱いことを楽しみながら強い者の首を狙う生活に戻ります」

 

浅野が竹林を壇上から下ろそうとする。

が、竹林は理事長室からくすねてきた私立学校のベスト経営者を表彰する盾を取り出した。

そして竹林は懐から取り出した打撃用ナイフで、

 

 

盾を粉砕した。

 

 

「………浅野君の言うには、過去これと同じことをした生徒がいたとか。前例から考えば、E組行きですね。僕も」

 

呆然とする生徒を尻目に去っていく竹林。

そこに浅野が絡んだ。

 

「待てよ。救えないな君は、強者になるせっかくのチャンスを与えてやったのに」

 

「強者? 怖がってるだけの人に見えたけどね。君も皆も」

 

「……………!!!」

 

◎◎◎◎◎

 

集会の後、理事長の前にタケルは立った。

 

「………神代君か。何か用かな?」

 

「いえ、無礼を承知で一言言いたいことがありまして」

 

「何かな」

 

と、タケルの目が変わり、鋭い目付きに変わった。

 

 

「二度と俺の仲間を利用するな」

 

 

そういうとタケルは礼をして去っていく。

その後ろ姿を理事長は睨んでいた。

 

 

 

その後の体育、授業で新たな要素を学ぶことになった。

それが火薬である。

 

「危険な使用を行わないように火薬の安全な取り扱いを一名に完璧に覚えてもらう。俺の許可とその一名の監督が火薬を使うときの条件だ。さあ誰か覚えてくれる者は?」

 

国家資格の本まで出されて躊躇う生徒達。

しかし一人だけ前に出た。

 

「暗記できるか? 竹林君」

 

「ええ、二期OPの替え歌にすればすぐですよ」

 

 

 

 

神代タケルの所有眼魂

[01 ムサシ][02 エジソン][03 ロビンフット][04 ニュートン][05 ビリー・ザ・キッド]

[06 ベートーベン][07 ベンケイ][09 リョウマ][10 ヒミコ]

[11 ツタンカーメン][12 ノブナガ][13 フーディーニ][14 グリム][15 サンゾウ]

=十四個

対話済眼魂=八個

 

残り、六ヶ月




二話続けてフーディーニの話。
原作で竹林の話にちょくちょく出ていた鎖がヒントになりました。

ちょっとプリンの話は飛ばして次回はケイドロ。
泥棒………つまり?

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