夏休みもあと数日。
そんなある日が勉強していると吉田からメッセージが届いた。
[少し見せたいものかあるからうちに来てくれないか]
「吉田の家ってバイク関係だったよな………俺バイクは詳しくないぞ」
そうは言いつつも吉田の家に向かうタケル。
夏のミッションでは共に潜入したがそこまで親しい関係という訳ではない人物からの呼び出しに懸念を抱きつつも吉田モーターズに到着した。
「おう。来たか神代!」
「来たぞ吉田。で、見せたいものってなんだ?」
「ああ。着いてきてくれ」
そう言って吉田が向かったのはとあるガレージ。
その戸を開けるとそこにあったのは、
「………青いバイク…?」
鎖が巻かれたオフロードバイク。正面のヘッドライト部分には角があった。
「何故かこのガレージにあったのよ。うちにはこんなバイク今まで無かったんだがよ」
「………確かに不思議だけどなんで俺を呼んだんだ?」
「ここ見てみろ」
吉田が指差したのはバイクの側面。
そこに刻まれていたのは、目玉の文様。
「ゴーストマーク!?」
「だからお前に関係するものだと思ったんだよ」
「成る程…………ちなみにこのバイクはなんて言うんだ?」
「近くにメモがあってな。それが正しけりゃ[マシンフーディー]って言うらしいぜ」
「マシンフーディー………」
タケルがバイク、マシンフーディーに触れる。
と、その時。
ヴォン!
「「!?」」
突然マシンフーディーが起動、エンジンがかかる。
「神代! あぶねぇ!!」
そしてタケルを押し飛ばす形で吉田が庇う。
そろギリギリの隣を縫ってマシンフーディーが走り出した。
「大丈夫か神代!」
「あ、ああ大丈夫………ていうかなんだあれ!?」
誰も乗っていないにも関わらず、エンジン全開で旋回するマシンフーディー。
と、再び二人の方へ走り込んできた。
「うおっ!!」
「中々苦戦しておるようじゃのう」
「あ、おっちゃん!? なんで此処に!?」
「そんなことはどうでもよい。あの英雄は中々に過激じゃのう」
「英雄……? ってまさか!?」
マシンフーディーという名称。そして鎖、ゴーストマーク。そして英雄。
これらから導き出される答えは一つ。
「脱出王、ハリー・フーディーニか!!」
「その通り。奴は頑固者だから中々厳しいぞ」
そう言って仙人は消えた。
「吉田! あのバイクは英雄、フーディーニだ!!」
「フーディーニってなんだよ!?」
「超有名なマジシャンだよ!! 脱出系のマジックが得意だったことから脱出王とか奇術王とも呼ばれてる!」
「マジシャンだぁ!? なんでそんな奴がバイクになってるんだよ!?」
と、マシンフーディーが鎖を射出。タケルを縛り付けた。
「ううっ!?」
「神代!」
上手く動けないタケルに再び突っ込むマシンフーディー。
「うおっ!!」
それをなんとかかわすタケル。
「これが貴方の試練か! フーディーニ!」
再び突撃してくるマシンフーディー。
車輪が地面を擦り、凄まじい火花が散る。
「ッ!! うぐっ!?」
後輪を叩きつけられたタケルは吹き飛ばされて地面を転がる。
「くそ………!」
死にはしないとはいえ痛みは感じる。
タケルの体力は徐々に削られてきた。
「鎖のせいで上手く動けない……!」
「神代!!」
突っ込んでくるマシンフーディーを迎え撃つタケル。
と、その時、
「うぉらあああああぁぁ!!」
「吉田!?」
マシンフーディーに吉田が飛び乗った。
暴れるバイクに跨がり、必死にブレーキをかける。
「何やってるんだ吉田! 危ないぞ!」
「こいつは元々うちにあった。ならこれはうちの責任なんだよ!!」
「だからって生身のお前じゃ………」
「手前のケツは手前で拭う!」
吉田のバイク操縦の技術でマシンフーディーが僅かに制御された。
「吉田!! こっちだ!!」
「おう!!」
最大までブレーキをかけつつタケルの方へハンドルを切る吉田。
そしてタケルは正面からそれを受け止めた。
「うぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「止まれぇぇぇぇぇぇ!!!」
摩擦で激しい火花が散る。
徐々に押されていくタケルだが最後はその動きを止めた。
それと同時に彼を縛っていた鎖が弾けた。
「………止まったのか」
「そうみてぇだな………うおっ!?」
と、吉田から群青色の眼魂が飛び出した。
「! これがフーディーニ眼魂………!」
「やったな神代!」
「ああ………っと悪い。もしもし? 千葉か?」
コブラケータイに着信があったので応答するタケル。
「タケル! 今川岸に大量の眼魔が現れた!!」
「なんだって!?」
「俺と速水と不破で相手しているけどキリがない! 救援を頼む!」
「分かった! 吉田、悪いが言ってくる!」
「待ちなタケル! こいつも持ってけ」
吉田が指したのはマシンフーディー。
「英雄眼魂集めてんだろ? だったらお前にやるよ」
「吉田……ありがとう!」
タケルはマシンフーディーに乗り、現場に急行した。
◎◎◎◎◎
「もう! キリがない!」
「というか増えてない!?」
グリム不破が拳や蹴りで、ビリー速水がピストル連射で眼魔コマンドを倒す。
「何かあるんだ……眼魔を発生させるきっかけが!」
弓を放ち、眼魔を倒しながら千葉が周囲を見る。
と、此処でタケルが駆けつけた。
「タケル君!! そのバイクは………?」
「後で話すよ。変身!」
[闘魂カイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い立つゴースト!]
闘魂ゴーストに変身したタケルは上空を見上げる。
そこには禍々しい目玉の文様が浮かんでいた。
「あれは!?」
「あれが元栓だ。俺に任せろ!」
タケルはゴーストドライバーのレバーを四回入れる。
[闘魂ダイカイガン! ブースト! オオメダマ!]
ドライバーから巨大な眼魂状のエネルギーが飛び出した。
と、それを文様目掛けて蹴り飛ばす!
「だあっ!!」
エネルギーが文様に直撃すると文様は霧散して消し飛んだ。
「よし!」
「おお! やるなタケル!」
「後は…………」
『貴様よくもぉ!!』
と、文様のあった付近から飛行機のような眼魔が飛来してきた。
「あいつが黒幕か!?」
「コマンドを頼む。あいつは俺がやる!!」
『死ねぇい!!』
指先から弾丸を連射する飛行機眼魔。
それをサングラスラッシャーで捌き、ブラスターモードで反撃する。
『当たるものかぁ!!』
「アイツ! ちょろちょろと!!」
「相手が空飛んでたら不利だよ!!」
「せめてこっちも空を飛べれば………」
「なら飛んでやろうじゃないか!!」
タケルは群青色の眼魂を取り出すとセットする。
と、マシンフーディーがひとりでに動きだし、展開してパーカーゴーストに変形した。
「フーディーニ。力を貸してくれ!」
[カイガン! フーディーニ! マジイイジャン! スゲーマジシャン!]
パーカーゴーストが被さり、フーディーニゴーストに変身した。
鎖が巻かれたようなパーカーとフェイス。
最大の特徴はその背中に展開したマシンフーディーを背負っている。
「行くぞ!!」
四つのタイヤのフィンが回転、飛翔した。
「なんで奇術師のフーディーニが飛ぶんだ……?」
「フーディーニは飛行機にも関わりがあったからじゃないかな?」
フーディーニゴーストは飛行機眼魔に接近、体当たりを食らわす。
『ぬおっ!?』
「空中戦で勝負だ!!」
縦横無尽に飛び回り、拳や蹴りを叩き込むフーディーニゴースト。
『貴様ぁ!!』
指から弾丸を連射する飛行機眼魔。
しかしフーディーニゴーストは姿を消してかわす。
『なにぃ!?』
「燃え上がれ。俺の命!」
背中のマシンフーディーを外し、その上に乗る。
そのまま飛行機眼魔の上空まで飛翔した。
[ダイカイガン!]
『な、なんだこれは!?』
フィンから四本の鎖が射出されて飛行機眼魔を拘束する。
そこにフーディーニゴーストが回転を加えたドリルキックを叩き込む!!
[フーディーニ! オメガドライブ!]
「おりゃあああああああ!!」
『ぐっはああああああっ!?』
飛行機眼魔を倒したフーディーニゴーストはマシンフーディーに乗って帰還。
既に眼魔コマンドは千葉達によって全滅させられていた。
[オヤスミー]
「お疲れ様。タケル」
「皆もありがとう。被害が出なかったのは皆のお陰だよ」
「………………けど、なんであんなものが現れたんだろう」
「優月さん?」
と、不破は何か考えているようだった。
「イレーザーっていう眼魔も何か計画しているみたいだし………今の眼魔、眼魂は狙ってなかったよね」
「確かに…………」
「眼魔は何か大きな目的がある……?」
「分からない………けど、人の命を狙うっていうなら、俺は戦う。俺は命を守りたい」
タケルらしい答えに三人は思わず笑った。
神代タケルの所有眼魂
[01 ムサシ][02 エジソン][03 ロビンフット][04 ニュートン][05 ビリー・ザ・キッド]
[06 ベートーベン][07 ベンケイ][09 リョウマ][10 ヒミコ]
[11 ツタンカーメン][12 ノブナガ][13 フーディーニ][14 グリム][15 サンゾウ]
=十四個
対話済眼魂=七個
フーディーニ登場!
バイク繋がりで吉田大成になりました。
マジック繋がりだとちょっと思い付かなかったので。
闘魂フーディーニは本編でも使われてたので自然ですね。
残るはゴエモン一つ!
まあ眼魂自体はまだまだありますけどね。
ガリレオやコロンブス、ナポレオンなど、