仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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デートの時間

夏期離島合宿から帰ってきた次の日。

タケルは椚ヶ丘駅前で待ち合わせをしていた。

 

「ありがとう律、調べてくれて」

 

「いえ、大した労力ではないですから。タケルさんも、いいデートをしてくださいね」

 

「ああ。結果はまた知らせるから。またな」

 

タケルに頼まれてとあるものを調べていた律は最後に激励をしてから通信を切る。

 

「そろそろかな………」

 

時刻は午前十時。

清涼系のブルーカラーで統一したジーンズと半袖。その上から羽織るノースリーブの上着はゴーストのパーカーを意識しているようだ。

 

「今日はそんなに暑くなくてよかったかな…………」

 

「タケル~~!」

 

「ん、陽菜乃!」

 

と、パタパタと陽菜乃が走ってきた。

ふわふわとした緩やかな服とショートスカート。被ったつばの短い麦わら帽子が可愛らしさを強調していた。

 

「ごめんね。待たせちゃった?」

 

「いや、大丈夫。時間ぴったりだしね。行こうか?」

 

「うん! じゃあちょっと行きたいとこあるんだけどいいかな?」

 

「分かった。何処?」

 

しっかりと手を繋いで歩き始める二人。

……………そんな二人を見る怪しい陰。

 

「ヌルフフフフフフ。くっついておるくっついておる」

 

「本当に懲りないね殺せんせー………」

 

「五時間も説法されてたのにね……」

 

ニヤニヤと二人を観察するゴシップタコとそれに巻き込まれた渚と茅野がいた。

 

「あの………殺せんせー。もう僕ら帰っても」

 

「あっ!! 移動を始めました! おいかけましょう!」

 

「……聞いちゃいないね」

 

◎◎◎◎◎

 

ペットショップ。

可愛らしい犬や猫の鳴き声がよく通る店内を二人は見て回ってた。

 

「何か買うのか?」

 

「うん。うちは犬飼っててね。その子のごはんとかブラシとかそういうの」

 

「へぇ。犬いるんだ。犬種は? チワワとかプードルとか」

 

「ドーベルマンだよ」

 

「予想外だな!?」

 

ドーベルマンといえば警察犬としても有名な犬種であり、土佐犬などと並べられる強い犬である。

まさかこのゆるふわ系女子のペットがそんな猛犬だとは思わなかっただろう。

 

「でも生き物は皆好きだよ~。味も含めて」

 

「お、おう………」

 

聞いたところ合宿前、ニュートン眼魂騒動の際にも渚や杉野達と昆虫採集に出掛けてたらしい。

 

「よしっ。これで全部かな。ちょっと待っててね~」

 

「ん、分かった。適当にその辺を見ておくから」

 

と、倉橋がカウンターに向かっている間、ショーウィンドウの動物達を観察する。

 

「……………やっぱりか」

 

が、犬も猫も鳥もハムスターもタケルが近づくと怯えて奥の方へ退いてしまう。

動物は鋭敏な感覚を持つ。故に幽霊であるタケルの事を感じ取るのだろう。

 

「………………」

 

「お待たせタケル~。あれ、どうかした?」

 

「ううん。なんでもないよ。行こうか。荷物持つよ」

 

「え、大丈夫だよ~。軽いから気にしないで」

 

「そう? ならいいけど……」

 

現在十一時。

ペットショップを後にした二人は書店に来た。

今度はタケルの目的のものがあるらしい。

 

「お、あったあった」

 

「偉人の本? 本当にタケルは英雄が好きだね」

 

「陽菜乃だって生き物が好きでしょ。それと同じだよ」

 

タケルが取ったのは毎月刊行される偉人の月刊誌だ。

毎回異なる偉人が掲載されており、タケルは毎月必ず購入、全巻揃えている。

 

「人は何時かは死ぬ。それは代わらない事実だからさ。そんな人生でやりたいことをやり遂げた人ってさ、命を燃やしきったと思うんだ。だから俺は英雄を尊敬してる」

 

「そっかぁ。実は私も尊敬してる偉人はいるんだよ」

 

「え、誰?」

 

「えへへ~。内緒♪」

 

「えー」

 

楽しそうな会話をしながら会計を済ませるタケル。

 

「あ、英雄と言えば眼魂はどうしたの?」

 

「ムサシとノブナガ以外は元の所有者に預けてきたよ。家に置いとくよりもそっちの方が安全だろうし」

 

「そっかー。眼魂と話してる人とかいるかな」

 

「磯貝とか千葉辺りはあり得そうだな」

 

 

 

「ぬぬぬ、中々イチャイチャしませんねぇ」

 

「いやしないでしょ。流石に公の場では」

 

「でも楽しそうだね。良かった」

 

穏やかな二人を眺めてほっこりする渚と茅野。

しかし殺せんせーは満足できないようで。

 

「これでは実録小説が盛り上がりません! ここはひとつ先生が背中を押して………」

 

「……………殺せんせー。後ろ」

 

「にゅ? ………………!?」

 

殺せんせーの後ろには、ベンケイ寺坂とリョウマ磯貝、ヒミコ片岡が。

 

『まだ懲りておらんのか』

 

『いくらなんでもしつこすぎやしないかのぅ』

 

『愚かな心は浄化しなければならぬ』

 

「にゅやぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

哀れ三人の英雄に説教される事になった殺せんせー。

 

「………ツタンカーメンさんはいいの?」

 

『面白いから見てようかな♪』

 

「あ、そう………」

 

◎◎◎◎◎

 

正午、昼食時である。

 

「お腹空いたね。何処で食べようか」

 

「大丈夫。律にいいところを探してもらった」

 

そう言って二人が入ったのは駅前から少し離れた場所にあるレストラン。

結構お洒落な所でデートに合った場所を探してくれた律に感謝である。

 

「ここ甘いものが特に美味しいらしいからさ、陽菜乃も気に入るんじゃないかなって」

 

「ホント? 楽しみ~♪」

 

席に着いた二人は早速注文をした。

 

「俺は昼食御膳と食後に餡蜜、陽菜乃は?」

 

「ミックスサンドとサラダと~ヨーグルトベリーパフェで!」

 

注文が届くまでの間、適当なお喋りで時間を潰すことに。

 

「そういえば陽菜乃ってナイフ術三位だっけ」

 

「うん。烏間先生に誉めてもらいたくて頑張ってたらいつの間にか」

 

「一位二位がメグさんとひなたさんなのによく追い付いたな………」

 

「意外と私体力はあるんだよ~。タケルは~?」

 

「ナイフより剣と薙刀の方がいい………」

 

「ガンガンセイバー使えばいいのに」

 

「正直戦い以外ではあんま使いたくない」

 

「あらら~」

 

そんな第三者が聞いていたら全くもって意味不明な会話をしていると食事が運ばれてきた。

 

「デザートもあるから早めに食べないとな」

 

「そうだね。じゃ、いただきまーす」

 

かなり礼儀正しい挙動で食事を進めるタケル。

そんな彼を倉橋は意外そうに見ていた。

 

「食べ方とか綺麗だよねタケルは」

 

「まあ、これでも寺の息子だし基本的な作法は小さい頃から教え込まれた」

 

「お父さんに?」

 

「いや兄弟子に」

 

ちなみにその兄弟子にタケルが彼女が出来たと報告したところ。大騒ぎになったのは言うまでもない。

 

「だからなのかこういうときとか普通に和食を選ぶ癖があるんだよね」

 

「でもタケルらしくていいと思うよ」

 

「そっか」

 

やがてお互いの食事が終わり、デザートの餡蜜とパフェが運ばれてきた。

 

「わ~。美味しそ~。いただきまーす」

 

「意外と大きいけど食べられるの」

 

「デザートは別腹~」

 

「だろうね」

 

言いつつ餡蜜を口に運ぶタケル。

と、

 

「タケル。あーん」

 

「うぇっ!?」

 

「ほらほら早く~」

 

「え~…」

 

一通り回りを見渡して見知った顔がいないことを確認してから(殺せんせーは英雄から説教中)少し恥ずかしそうに食べた。

 

「あむ………」

 

「どう? 美味しい?」

 

「……うん。たまには洋菓子もいいかな」

 

「じゃあ今度は私のオススメの店に行こうよ。そこのケーキも美味しいんだ~」

 

「陽菜乃のオススメか~。そうだね。一度行こうかな」

 

満足そうに頷いた倉橋は食べる手を再開する。

が、今度はタケルが、

 

「陽菜乃。お返し」

 

スプーンに乗せた餡蜜を差し出してきた。

 

「えっ。いいの?」

 

「先にやったのはそっちだからな」

 

「えへへ。じゃあ貰いま~す。あーんっ」

 

口に含んだ倉橋は幸せそうな顔を見せる。

そんな顔をみてタケルも嬉しそうに微笑んだ。

 

◎◎◎◎◎

 

その後、近くのゲームセンターに入る二人。

と、ここで予想外の人物と接触した。

 

「あれ。神代君、倉橋さん」

 

「有希子さん?」

 

神崎である。彼女に思いを寄せる杉野から意外にもゲームが得意という情報は聞いていたが、実際に見ると中々凄い。

 

「うわあ、点数の桁おかしいよ~」

 

「二人はデート?」

 

「まあな。サンゾウ眼魂は?」

 

「ちゃんと持ってるよ。これ持ってるとなんか男の人に余り声をかけられないんだよね」

 

「「ああ~…」」

 

鷹岡に殴られそうな神崎を庇って飛び出した英雄ゴーストである。大方後光でも発生させて男を退けているのだろう。

どうやら相当に主思いなようだ。

 

「ね、せっかくだから勝負しない?」

 

「勝負ってゲームでか? 勝てる気がしないけどな………」

 

「私も見てみたいな~。ね、タケル?」

 

「よし有希子さん勝負!!」

 

案外チョロいタケルであった。

 

◎◎◎◎◎

 

「有希子さん強すぎだろ……」

 

「なんか……ごめんね。軽々しく見てみたいとか言って」

 

「気にするな。陽菜乃はなんにも悪くない」

 

夕方四時、そろそろ帰る時間である。

 

「最後、タケルはどっか行きたいとこある?」

 

「そうだな………じゃあ一つだけ」

 

そう言って向かったのはとあるたこ焼きの売店。

 

「フミ婆。居る?」

 

「おや。タケル君じゃないか! いらっしゃい」

 

温かく出迎えてくれたのは老齢のおばあさん。

しかし楽しそうに笑うその姿は元気さを感じさせる。

 

「たこ焼き一パックください」

 

「あいよ。そっちの子は彼女さんかい?」

 

「うん。陽菜乃って言うんだ」

 

「は、はじめまして。倉橋陽菜乃です」

 

「そうかいそうかい。タケル君に彼女ができるとはねぇ。中々わんぱくな子だけどよくしてやっておくれ」

 

「ちょ、何言ってんだよフミ婆!」

 

「はい! 精一杯世話させていただきまーす!」

 

「陽菜乃まで! もういいから! フミ婆たこ焼き!」

 

「はいはい。腕によりをかけてつくってあげるからね」

 

フミ婆がたこ焼きを焼いている間、倉橋が話しかけた。

 

「結構知り合いなの?」

 

「俺は子供の時からフミ婆の常連だよ。よくお話をして貰ったり、相談にも乗ってもらったよ」

 

「そうなんだ」

 

「はいよお待たせ。熱いうちにお食べ」

 

「わ、ありがとうございます!」

 

一つ取って少し冷ましてから口に運ぶ。

 

「あち、あち……ん! 美味しい!!」

 

「そうかいそうかい。気に入ってもらえて何よりだよ」

 

「ああ~。やっぱり美味しいな」

 

「ね、タケル。今度クラスの皆も連れてこようよ!!」

 

「お、いいねそれ。フミ婆も儲かるし」

 

「ハッハッハ!! そりゃあ大儲けになりそうだねぇ!」

 

そんなこんなでたこ焼きを食べた二人はフミ婆と別れ、帰路についた。

 

「じゃあこの辺でいいかな」

 

「うん。今日はありがとうタケル。楽しかったよ」

 

「俺の方こそありがとう」

 

「じゃ、お礼しないとね」

 

「お礼って………んっ!?」

 

イリーナ直伝のキス10hit。

あまりの事態にタケルが固まってるうちに倉橋は離れる。

 

「またデートしようねタケル! バイバイ!!」

 

そう言って去っていく倉橋。

それを眺めながらタケルは苦笑した。

 

「敵わないなあホント」

 

 

 

神代タケルの所有眼魂

[01 ムサシ][02 エジソン][03 ロビンフット][04 ニュートン][05 ビリー・ザ・キッド]

[06 ベートーベン][07 ベンケイ][09 リョウマ][10 ヒミコ]

[11 ツタンカーメン][12 ノブナガ][14 グリム][15 サンゾウ]

=十三個

対話済眼魂=七個




デート回でした。
なお殺せんせーは最後まで説教されてました(笑)

そしてフミ婆登場。
サプライズ的な要素ですが出すなら此処だろうと。

夏休みの話はあと二つ。
あの脱出王が登場です!

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