「ツタンカーメンゴースト……!」
「これが僕の英雄眼魂……」
『ヨソミヲスルナァァァァ!!!』
「ッ!!」
鷹岡眼魔の豪腕を闘魂ゴーストが受け止める。
そのまま力比べに発展する。
『僕はずっと君のことを観察していたんだ。二ヶ月前に君があの男と戦ったときからね』
「そうなんだ………」
渚の周囲を旋回しながら飛び回るツタンカーメン。
どうやら彼は英雄の中でも一番幼さそうだ。
『けど、さっきの君は中々よかったよ。もしあのまま殺意のまま動いてたら僕は君を乗っ取っていたけど』
「う、うわあ………」
何気に大ピンチだったことに若干鳥肌が立つ渚だった。
『ま、いいものを見せてもらったし、自分より強い相手をよく倒したね。ご褒美に君の言うことに何でも答えてあげるよ』
「ほ、本当!?」
『大王は嘘つかない♪』
既に渚が彼に頼むことは決まっていた。
「なら……タケル君の力になってあげてください!」
『まっかせて! 僕の力であの化物をあっという間に倒してあげるよ!』
ツタンカーメンは闘魂ゴーストと組み合っている鷹岡眼魔に体当たりで弾き飛ばす。
そしてゴーストドライバーに吸い込まれ、眼魂に変化した。
「ツタンカーメン……!」
『君も、渚君に負けないくらいの戦いを見せてよね』
「分かってますよ……変身!」
[カイガン! ツタンカーメン! ピラミッドは三角! 王家の資格!]
闘魂状態でツタンカーメンパーカーゴーストを装着。
ノースリーブのゴーストはガンガンハンドを召喚、その先端にコブラケータイが合体した鎌モードを構える。
『オオオオオオオオ!!』
「はっ、だあっ!」
向かってくる鷹岡眼魂を鎌で鋭く切り裂くツタンカーメンゴースト。
その激しい斬撃に逆に追い込まれていく。
「うおらっ!! だあっ!!」
『グオァァァァァ!?』
ナイフをものともせずに何度も何度も切りつける。
利用されたクラスメートの、傷つけられた渚の分の怒りを叩き込むように。
『キィサァマァァァァァァァァ!!!』
「終わりだ鷹岡………呪いの中で懺悔しろ!!」
[ダイカイガン!]
鎌の先端に込めたエネルギーを大きく振って力を込める。
そして一気に振り抜き、ピラミッド型のエネルギー弾を放つ。
『ス、スイコマレル!?』
そのエネルギーが鷹岡眼魔を吸い込んで閉じ込める。
[メガマブシー! メガマブシー!]
そしてサングラスラッシャーに二つの眼魂を装填。
[闘魂ダイカイガン!]
「燃え上がれ。俺の命!」
[メガオメガシャイン!!]
[オメガファング!!]
ガンガンハンドとサングラスラッシャーから放つ二つの斬撃がピラミッドごと鷹岡眼魔を切り裂いた。
『グガアアアアァ!!!?』
元に戻った鷹岡は地面に落下。そのまま気を失った。
「……………なんだったんだ」
と、何処からか拍手が聞こえる。
「誰だ!!」
そこにいたのは奇妙なゴーグルを着けた軍服姿の男だった。
「いやいや。お見事でした仮面ライダーゴースト。私眼魔幹部のイレーザーと申します」
「イレーザー……だと?」
ここ数日の眼魔が発したその名前に警戒を強めるタケル。
「おっと。貴方と戦うつもりはありません」
奇妙なイントネーションで喋るイレーザー。
と、倒れ伏した鷹岡を一瞥に満足そうに頷いた。
「私は既に十分な成果を得られました。もうこの場所に用はない。計画を進めるとしましょう」
「待て!! 計画ってなんだ!!」
「さあなんでしょうねえ。いずれまた会い見えましょう。仮面ライダー」
そう言うとイレーザーは消える。
タケルはその場所をずっと見続けていた。
◎◎◎◎◎
「どうしよう………」
鷹岡から予備の薬を奪ったはいいが、それだけでは全く足りない。
と、
「フン、テメー等に薬なんぞ必要ねぇ」
そこにガストロ、グリップ、スモッグが現れた。
直ぐ様臨戦態勢を取る生徒達。
「……………お前達の雇い主は既に倒した。俺は十分回復したし生徒達も十分強い。これ以上互いに被害が出ることはやめにしないか?」
「ん、いーよ」
「あきらめ悪ィな! 此方だって薬がなくてムカついて……………え?」
ガストロ曰く、鷹岡の敵討ちは契約には含まれておらず、そもそも薬は必要ないらしい。
「お前らに持ったのは指示された物とは別の食中毒菌を改良したものだ。あと三時間くらいは猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒となる」
三人の殺し屋はわざわざ殺すウィルスを作らなくても交渉はできるはずと事前に話し合っていたのだ。
「……でもそれって、鷹岡の命令に逆らってたって事だよね。金もらってるのにそんなことしていいの?」
「アホか。プロが何でも金で動くと思ったら大間違いだ」
カタギの中学生を大量に殺した実行犯になるか、命令違反がバレる事でプロとしての評価を落とすか。
「どちらが俺等の今後にリスクが高いか、冷静に秤にかけただけよ」
「「「……………!」」」
その後、烏間が呼んだ部隊が到着、鷹岡とその部下は拘束され、逮捕された。
と、ヘリに向かうグリップにカルマが声をかける。
「リベンジマッチやらないんだ。おじさんぬ。俺のこと殺したいほど恨んでないの?」
「……殺したいのはやまやまだが、俺は私怨で人を殺したことは無いぬ。誰かがお前を殺す依頼を寄越す日を待つ。だから狙われる位の人物になるぬ」
グリップはカルマの頭を軽く撫でてからガストロとスモッグに続いてヘリに乗った。
「そーいうこったガキ共! 本気で殺しに来て欲しかったら偉くなれ!! そん時ゃ、プロの殺し屋のフルコースを教えてやるよ」
そういって彼らは去っていった。
彼らなりのエールを残して。
そして迎えのヘリで脱出。ホテル側の誰一人気付かないまま、ミッションは完了した。
皆の元に戻り、もう大丈夫なことを伝え、スモッグに貰った栄養剤を支給し、それぞれがそれぞれの疲れで泥のように眠った。
次の日の朝、タケルは他の皆よりも早く起きて海を眺めていた。
「…………英雄眼魂も十三個まで揃った」
タケルの手元には08と13以外の全ての眼魂がある。
あと少し、それで生き返るための条件が揃う。
「……………」
しかし、タケルは迷っていた。
イレーザーの語った計画。恐らく大量の人を犠牲にするだろう。
もし生き返ると同時にゴーストの力を失ったら?
イレーザーの計画を止められるのは恐らくタケルのみ。
「……………俺は……まだ、ゴーストのままでいい」
残る眼魂は二つ。心を通わせる眼魂はそれを含めて残り八つ。
残る期間は七ヶ月。まだ戦う時間は残っている。
「………父さん。俺は戦うよ。この力で、人間を守る」
握りしめた闘魂ブースト眼魂が輝いた。
その日の夕方。皆がぞろぞろと起きてきた。
彼らが見ているのはコンクリートの巨大なブロック。烏間が指揮を取り、ダメ元で殺せるように固めておくらしい。
「……すげーよな。あと十年で俺等、あんな超人になれんのかな」
「さーな」
「ビッチ先生もああ見えてすごい人だし」
「ホテルで会った殺し屋達もそうだった。長年の経験でスゲー技術身に付けてたり、仕事に対してしっかりした考えがあったり」
「………と思えば鷹岡みたいに。ああはなりたくないなって奴もいて」
「いいなと思った人は追いかけて、ダメだと思った奴は追い越して、多分それの繰り返しなんだろーな。大人になってくって」
「………………俺はそもそも大人になれるのか」
「ちょ、タケル!?」
「黒いこと言うなよな!!」
「冗談だよ」
「冗談に聞こえねーよ!!」
タケルのブラックジョークに一斉に突っ込む皆。
と、コンクリートブロックが爆発した。
が、しかし。結果は皆うすうす分かっていた。
「先生の不甲斐なさから苦労させてしまいました。ですが皆さん、敵と戦いウィルスと戦い、本当によく頑張りました!」
いつもの馴染みのある触手姿に戻った殺せんせーがそこには立っていた。
「では、旅行の続きを楽しみましょうか!」
「旅行の続きったってもう夜だぜ。明日は帰るだけだし」
「一日損した気分だよねー」
「ヌルフフフ。夜だから良いんですよ」
と、殺せんせーは南国服から着替え、幽霊のような白装束になった。
「昨日の暗殺のお返しにちゃんとスペシャルなイベントを用意してます。真夏の夜にやることはひとつですねぇ」
夏休み旅行特別企画。
納涼!! ヌルヌル暗殺肝試し!
神代タケルの所有眼魂
[01 ムサシ][02 エジソン][03 ロビンフット][04 ニュートン][05 ビリー・ザ・キッド]
[06 ベートーベン][07 ベンケイ][09 リョウマ][10 ヒミコ]
[11 ツタンカーメン][12 ノブナガ][14 グリム][15 サンゾウ]
=十三個
対話済眼魂=七個
闘魂ツタンカーメン。
絶対出てこないだろうフォームですけど。
イレーザーは本編のイゴールの立場。
つまりめっちゃ嫌な奴です。
次回の肝試しはいよいよ………!