仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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狂気! 放て音の必殺技!

見張りを倒し、九階を突破した一行。

烏間も力半分まで回復した。

そして律を通して最上階の様子を探る。

顔は見えないがテレビでウイルスに感染した皆を見ている様子が分かった。

そんな彼に皆が沸々と怒りが沸く。

そして殺せんせー曰く彼は殺し屋ではないと言う。

いずれにしろ後一人。

 

だが…………。

 

「(あの男が言っていた科学者が確認できない………もう撤退したのか……?)」

 

懸念を抱きつつも時間はない為、最上階にかけ上がる。

見張りから奪ったカードキーを使用して進入。

ナンバ歩行で静かに近づき、状況を確認。

側に置かれたスーツケースに爆弾が仕掛けられており、男の手元に起爆リモコンが置かれている。

 

作戦は可能な限り接近し、遠くで気づかれた場合烏間が腕を撃つ。その隙に皆が拘束する手筈だ。

 

皆が飛びかかろうとしたその時。

 

 

「かゆい」

 

 

「「「……!」」」

 

聞き覚えのある声だった。

 

「思い出すとかゆくなる。でもそのせいかな。いつも傷口が空気に触れるから……感覚が鋭敏になってるんだ」

 

バッ、と男がばら蒔いたのは大量のリモコン。

元々殺せんせーを相手にするつもりだったが故に奪われないようにしていたのだという。

 

「……防衛省の機密費――暗殺に使うはずの金をごっそり抜いて……俺の同僚が姿を消した。…………どういうつもりだ!」

 

 

 

「鷹岡ァ!!!」

 

 

 

「悪い子達だ………恩師に会うのに裏口から来る。父ちゃんはそんな子に教えたつもりはないぞ」

 

鷹岡の顔は自らがかきむしった傷だらけになっていた。

そして目は最早正気ではない。

 

「仕方ない。夏休みの補修をしてやろう」

 

◎◎◎◎◎

 

鷹岡はゆっくりと立ち上がり、屋上へ上がった。

下手に逆らえない一行は大人しく従う。

 

「気でも違ったか鷹岡。防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒達をウィルスで脅すこの凶行……!」

 

「おいおい。俺は至極まともだぜ! おとなしく二人にその賞金首を持って来させりゃ俺の暗殺計画はスムーズに仕上がったのにな」

 

鷹岡曰く、茅野に動けない殺せんせーを抱いて対先生弾が入れてあるバスタブに入ってもらい、その上からセメントで生き埋めにする。

爆裂すれば茅野は無事では済まないので殺せんせーは溶かされるしかないという寸法だ。

 

「………許されると思いますか? そんな真似が」

 

鷹岡がこの凶行に至ったには経緯がある。

先月の任務失敗により、職場の非難と渚によって植え付けられた敗北が彼を狂気に走らせたのだ。

 

「………へー。つまり渚君はあんたの恨み晴らすために呼ばれたわけ。その体格差で本気で勝って嬉しいわけ? 俺ならもーちょっと楽しませてやれるけど?」

 

「イカれやがって。テメーが作ったルールの中で渚に負けただけだろうが。言っとくけどな、あの時テメーが勝ってようが負けてようが俺等テメーのこと大ッ嫌いだからよ」

 

「ジャリ共の意見なんて聞いてねぇ!! 俺の指先でジャリが半分経るって事忘れんな!!」

 

最早狂気に満たされた鷹岡は何をするか分からない。

それを分かっている渚は殺せんせーを茅野に預け、鷹岡が指示する通りにヘリポートに向かう。

 

「渚」

 

「タケル君…………」

 

「お前は狂うなよ。下手したら飲まれる」

 

「………わ、分かった」

 

タケルの忠告を聞いてから渚は上がる。

梯子は鷹岡が外し、誰も上がれない。

 

「この前のリターンマッチだ」

 

「…………待って下さい鷹岡先生。戦いに来たわけじゃないんです」

 

「だろうなぁ。この前みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で俺にやられるのは目に見えてる」

 

そこだけは鷹岡が正しい。カルマやタケルならともかく渚では鷹岡が本気でやれば実力差は明確だ。

しかし鷹岡は渚にあることをしてもらおうとしていた。

 

「謝罪しろ。土下座だ。実力が無いから卑怯な手で奇襲した。それについて誠心誠意な」

 

「………………」

 

渚は少し迷ってから膝をつく。

 

「それが土下座かァ!? 頭擦り付けて謝んだよォ!!」

 

「……………僕は、実力が無いから卑怯な手で奇襲しました。ごめんなさい」

 

「おう。その後で偉そうな口も叩いたよな。「出ていけ」とか。ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に向かってたぞ!!」

 

「………ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すみませんでした。本当にごめんなさい」

 

「…………よーし。やっと本心を言ってくれたな。褒美にいいものを見せてやろう」

 

と、鷹岡はスーツケースを持って投げた。

その手にはリモコン。

 

「や、やめろーーー!!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

スーツケースが爆発した。

散乱する薬の残骸。

 

「あはははははは!! そう!! その顔が見たかった!! だが安心しな。お前にだけはウイルスを持ってない。何せお前は今から………」

 

カチャ、と渚はナイフを取る。

息は荒く、目には凶悪な殺意が生まれた。

 

「不味い!!」

 

 

「殺してやる………!」

 

 

 

~いいのかい? 狂気に飲まれたら、僕が出ても知らないよ~

 

 

 

「変し………!」

 

タケルが変身しようとするが、寺坂が投げたスタンガンが渚の後頭部に直撃した。

 

「チョーシこいてんじゃねーぞ渚ァ!! 薬が爆破されたときよ、テメー俺を哀れむような目で見たろ。いっちょ前に他人の気遣いしてんじゃねーぞ!」

 

「寺坂お前!!」

 

寺坂はウィルスに感染していた。しかしそれでも体を張ってここまで来たのだ。

ベンケイのように、体を押してまで。

 

「寺坂の言う通りだ渚!! 言っただろ。狂気に飲まれるなって。渚の手はそんなことをするためにあるものじゃない!!」

 

「渚君、寺坂君のスタンガンを拾いなさい。その男の命と先生の命、その男の言葉と寺坂君、タケル君の言葉。それぞれどちらに価値があるのかを考えるのです」

 

タケルと殺せんせーの言葉に渚が止まる。

そして、

 

 

「やれ、渚。死なねぇ範囲でブッ殺せ」

 

 

寺坂の言葉が渚を正気に戻した。

ナイフを持ち、スタンガンを腰に指す。

 

「一応言っとくが、薬はここに三回分ほど予備がある。人数分には足りないが最後の希望だぜ?」

 

「……………………」

 

しかし、誰が見ても間違いなく不味い。

殺し屋にとって戦闘は本来専門外。

ガストロ、グリップ、スモッグを戦闘に持ち込んで倒したのとは逆に、此方が暗殺を仕掛けようとしても鷹岡が戦闘に引き込む。

 

「! あぐっ!!」

 

「おらどうした。殺すんじゃなかったのか」

 

完全に戦闘モードになった鷹岡は完全に隙がない。

渚がナイフを振るってもそれを容易くいなし、拳を叩きつける。

拳だけでなく、肘も来れば足も来る。

戦闘開始から僅か十秒で渚は傷だらけになった。

 

「さぁて。そろそろ俺もこいつを使うか」

 

と、鷹岡がついにナイフを構えた。

彼の最大の目的、以前見せた渚の笑顔。

その悪夢を恐怖と苦痛の顔で塗り潰す。

 

「烏間先生! もう撃ってください! 渚死んじゃうよあんなの!!」

 

「待て………手出しすんじゃねー」

 

と、茅野を寺坂が止めた。

 

「まだほっとけって寺坂? そろそろ俺も参戦したいんだけど」

 

「カルマ。テメーは練習サボってばっかで知らねぇだろうがよ。渚の奴………まだ何か隠し玉持ってるようだぜ」

 

合宿前、熟練の殺し屋、ロヴロから渚が授けられた必殺技。

その条件は、

所持している武器が2本。

敵が手練れであること。

敵が殺される恐怖を知っていること。

 

 

………よかった。全部揃ってる。

 

 

~見せてみなよ。君の技を~

 

 

笑顔を見せた渚はゆっくりと歩いていく。

その顔にトラウマを感じた鷹岡の動きが鈍る。

 

必殺技、即ち、「必ず殺すための技」。

 

ゆっくりと、ゆっくりと近づいていく渚。

一歩近づく度に鷹岡の意識はナイフに集まり、鼓動は高まり、緊張が高まる。

そして、間合いの僅かに外、

 

ナイフを捨て、両手を前に出し、

 

 

 

パァン!!!!!

 

 

 

「!!!!!!!!!???」

 

極限まで緊張した鷹岡の意識を渚がクラッブの音で破壊。

その数瞬を突き、スタンガンを抜き、それを鷹岡の脇に………。

 

バチィッ!!!

 

「(ウソ………だ……こんな……ガキに………二度も………)」

 

ズシャッと膝を突く鷹岡。

そして渚はその首筋にスタンガンを添える。

 

「(………殺意を教わった。抱いちゃいけない種類の殺意があるってこと、その殺意から引き戻してくれる友達の大事さも、殴られる痛みを、実践の恐怖を、この人からたくさんの事を教わった)」

 

だから、授業への感謝はちゃんと伝えないといけない。

 

「(やめろ………)」

 

なら、

 

「(その顔で終わらせるのだけはやめてくれ)」

 

そういう顔をすべきだろう。

 

「(もう一生その顔が悪夢の中から離れなくなる!)」

 

 

 

鷹岡先生。ありがとうございました。

 

 

 

バチィッ!!

 

 

 

そんな様子を見ている男が一人。

 

「やはり人間は使えない。ここからは私の研究の時間だ」

 

 

 

直後である。

倒れた鷹岡の体内に大量の眼魔眼魂が入り込んだ。

 

「な、なに!?」

 

「うぐぉああああァァアァアァァアァaaaaaaaaa!!!」

 

と、鷹岡が異形の姿に変貌していく。

眼魔のように、しかし鷹岡の風貌も残りつつ、不気味な怪物へと。

 

「鷹岡!?」

 

「渚!! 逃げて!!」

 

『コ、ロシテヤル!!!』

 

鷹岡眼魔は、渚にその豪腕に握られたナイフを降り下ろす!

 

 

[闘魂カイガン! ブースト! 俺がブースト! 奮い立つゴースト!]

 

 

しかしそれを闘魂ゴーストが割り込んで止めた。

 

「タケル君!!」

 

「よくやった渚! 此処からは…………俺のステージだ!」

 

『ジャマスルナァァァ!!』

 

暴れ狂う鷹岡眼魔だが闘魂ゴーストがパンチを叩き込んで押し返した。

そして渚に………否、その中に住む者に呼び掛けた。

 

 

「いい加減に力を貸してくれてもいいだろ? 古代の大王、ツタンカーメン!!」

 

 

タケルが印を結ぶと、渚から発生した水色の煙が収束。

 

『やれやれ、もう少し楽しみたかったけど仕方ないか』

 

現れたのは水色のパーカーゴースト。ツタンカーメンだった。

 

 

 

神代タケルの所有眼魂

[01 ムサシ][02 エジソン][06 ベートーベン]

[12 ノブナガ][15 サンゾウ]

五個/十二個

対話済眼魂、六個




鷹岡戦前半。
人間鷹岡は倒しました。

なんかアイテムを埋め込まれて怪人化ってドーパントみたいになりましたね………。

ツタンカーメンが渚なのは、
渚→殺し屋の才能→死神→鎌→ガンガンハンド→ツタンカーメン
という連想ゲームの結果。
追加で色。

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