仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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仁王立ちの時間

七月も中盤に入ると猛暑となる。

冷房のないE組教室にとってはかなりきつい状況下になる。

なお幽霊である為に体温が低く冷たいタケルの側には常に誰かしらが寄ってくる。

そんなE組の為に殺せんせーは専用のプールを作成した。

しかし、そのプールが新たな波乱を巻き起こす事になる。

 

 

「酷いな………」

 

プールが滅茶苦茶にされていたのだ。

 

「あーあー……こりゃ大変だ」

 

「ま、いーんじゃね? プールとかめんどいし」

 

ニヤニヤと笑う寺坂や村松、吉田大成に気付いた渚が彼らを怪訝そうに見る。

 

「んだよ渚。なに見てんだよ。まさか……俺らが犯人とか疑ってんのか? くだらねーぞその考え」

 

「まったくです。犯人探しなどくだらないからやらなくていい」

 

と、そこに殺せんせーが現れ、プールを完全に修復した。

 

「はいこれで元通り!! いつも通り遊んでください」

 

「「「はーい!」」」

 

「…………ちっ」

 

◎◎◎◎◎

 

「寺りんの様子がおかしい?」

 

「うん」

 

倉橋や木村、矢田と昼食を取っていたタケルは寺坂についての見解を話していた。

 

「何か……自分の意思で行動していないような気がする。プールの破壊にしたって彼らには利益もないからな」

 

「ほっとけよ。いじめっ子のアイツはただ面白くないだけなんだろ」

 

「…………けど、何か嫌な予感が」

 

「お悩みのようだな」

 

「あっ、仙ちゃん!」

 

久しぶりに登場した仙人。ノブナガやサンゾウは唐突な登場だったので、予言の暇が無かったのだろうか。

 

「うーん。倉橋ちゃんだけだよ仙ちゃんと呼んでくれるのは!」

 

「仙人のおっちゃん。悩み相談でもしてくれるのか?」

 

「いやしないが」

 

ズルッとこける四人。

 

「その代わり耳寄りな情報だよ~ん。ムッキムキな仁王立ちの豪傑が誕生するぞ~?」

 

「ムッキムキの仁王立ち………?」

 

「武蔵坊弁慶か!」

 

仙人は両手で丸を作ってから消えた。

 

「ムッキムキ………じゃあ、寺坂が弁慶?」

 

「まっさかぁ」

 

◎◎◎◎◎

 

翌日、何故か殺せんせーは泣いていた。

 

「何理由も無く泣いてるのよ………」

 

「いいえ、鼻なので涙じゃなくて鼻水です」

 

「紛らわしい!」

 

夏風邪でも引いたのだろうか。

と、そこに寺坂が入ってくる。

 

「おお寺坂君!! 今日は登校しないのかと心配でした!! 昨日君がキレた事ならご心配なく!! もう皆気にしてませんよね? ね?」

 

「う、うん……汁まみれになっていく寺坂の顔の方が気になる」

 

昨日何があったのかタケルがカルマに聞くとどうやら癇癪を起こして殺虫剤のようなスプレーを撒き散らしたらしい。

 

「(スプレー……?)」

 

と、寺坂が殺せんせーの触手を振り払って宣告した。

 

「おいタコ。そろそろ本気でブッ殺してやンよ。放課後プールに来い。てめーらも全員手伝え!! 俺がこいつを水のなかに叩き落としてやッからよ!!」

 

「「「……………」」」

 

しかし、寺坂に賛同する声はない。

 

「………寺坂。お前はずっと皆の暗殺には協力して来なかったよな。それをいきなりお前の都合で命令されて……皆が皆ハイやりますって言うと思うか?」

 

「ケッ。別にいいぜ来なくても。そん時ゃ俺が賞金百億独り占めだ」

 

出ていった寺坂に吉田や村松までもが呆れ、大多数の生徒は行かない選択をとった。

が、結局殺せんせーの粘液に捕まって全員いくことになる。

 

「………………!!」

 

と、タケルの脳裏に鷹岡の時と同じような衝撃的なビジョンが見えた。

 

「タケル? どーしたの?」

 

「……………いや」

 

「おっちゃんの言ってたことが気になってんのか? 寺坂があの弁慶なわけないだろ?」

 

「それは……そんなことないと思うけど」

 

◎◎◎◎◎

 

寺坂の作戦は生徒をプールの全体に配置、そこで殺せんせーを突き落として皆に刺させるつもりらしい。

 

「…………………」

 

先程のビジョンを見たタケルは警戒してプールに入らず影から見ている。

 

「………覚悟はできたかモンスター」

 

「勿論できてます。鼻水も止まったし」

 

「ずっとテメーが嫌いだったよ。消えてほしくてしょうがなかった」

 

「ええ、知ってます。暗殺の後でゆっくり二人で話しましょう」

 

寺坂がピストルの引き金を引く。

 

 

と、プールの堰が爆破された。

 

 

「なっ!?」

 

「やっぱりか!!」

 

[カイガン! サンゾウ! 猿・豚・河童! 天竺を突破!]

 

直ぐ様サンゾウゴーストに変身したタケルは神通力で孫悟空、猪八戒、沙悟浄を召喚した。

 

「救助を頼む!!」

 

三体のお供は激流に飛び込んで生徒の救助に向かう。

加えてランタン型のガジェット、クモランタンにも救助を頼み、サンゾウゴースト自身も空中浮遊で倉橋を助け出した。

 

「陽菜乃!! 大丈夫か!?」

 

「う、うん」

 

孫悟空が磯貝、猪八戒が前原、沙悟浄は片岡と岡野を助け出し、他の生徒は殺せんせーが助けるが水を吸って触手が膨れ上がり、スピードを失っている。

 

「……何これ?」

 

「カルマ!!」

 

と、爆音を聞き付けてカルマが駆けつけてきた。

 

「俺は……なにもしてねぇ………話が違げーよ……イトナを呼んで突き落とすって聞いてたのに……」

 

「………!!」

 

と、カルマは察した、寺坂はシロとイトナにまんまと操られていたということに。

 

「俺のせいじゃねーぞカルマァ!! こんな計画やらす方が悪いんだ!! 皆が流されてったのも全部奴等が………」

 

ゴッ、と、寺坂をカルマが殴った。

からかいのない、容赦のない一撃。

 

「流されたのは皆じゃなくてお前だろ。人のせいにするヒマあったら自分の頭で何したいか考えたら?」

 

◎◎◎◎◎

 

「皆!! 無事か!?」

 

「うん。ありがとうタケル君!! けど………」

 

殺せんせーは水を吸って体が鈍り、姿を現したイトナに押されていた。

 

「水だけのせいじゃねー」

 

「寺坂!」

 

と、寺坂が指差す先には村松、吉田、原がおり、既に触手の射程範囲。これを気にして殺せんせーはなお一層集中できないのだ。

 

「もし神代が助けにいくつもりならその隙に眼魂を奪うつもりだろ」

 

「のんきに言ってんじゃねーよ寺坂!! 原たちマジであれ危険だぞ!!」

 

「寺坂………お前、あいつらに操られていたのか?」

 

「………あーそうだよ。目標もビジョンもない短絡的な奴は頭のいい奴に操られる運命なんだよ」

 

 

だがよ、と寺坂の目が変わった。

 

 

「操られる相手くらいは選びてえ。だからカルマ!! テメーが俺を操って作戦与えてみろ!」

 

「良いけど……実行できんの? 死ぬかもよ」

 

「やってやンよ。こちとら実績持ってる実行犯だぜ」

 

◎◎◎◎◎

 

「止めにかかろうイトナ。邪魔な触手を全て落とし、その上で"心臓"を」

 

「おいシロ!! イトナ!! よくも俺を騙してくれたな」

 

と、寺坂が割って入った。

 

「まあそう怒るなよ。ちょっとクラスメイトを巻き込んじゃっただけじゃないか」

 

「うるせぇ!! イトナ!! テメェ俺とタイマン張れや!!」

 

上着を脱いだ寺坂がイトナに挑んだ。殺せんせーは止めるが………。

 

「クス。黙らせろ、イトナ」

 

寺坂に迫る触手、しかしそれを寺坂は体を張って受け止めた。

と同時にイトナがくしゃみをしはじめた。

 

寺坂のシャツには昨日撒かれたスプレーが染みついついる。つまりそれは触手持ちのイトナにも有効と言う訳だ。

 

その隙に殺せんせーが原を救い、他の生徒が水に飛び込む。

 

バッシャーーン!!!

 

水を吸ったイトナの触手は殺せんせー同様に膨れる。

 

「…………!」

 

「まだだ………俺にはまだノブナガの力が……!」

 

「寺坂! よくやった!! 後は任せろ!!」

 

と、タケルが前に出る。

既に気合を見せた寺坂からは煙が上がっていた。

印を結ぶと白い煙はパーカーゴーストになる。

 

「ベンケイだ!!」

 

「俺に……英雄眼魂が……」

 

「最初は乱暴者だけど体を張って立てる男。まさにベンケイだな」

 

ベンケイが変化した眼魂を手にしたタケルはすぐさま使用する。

 

「変身!」

 

[カイガン! ベンケイ! 兄貴ムキムキ仁王立ち!]

 

白い僧兵のような姿になり、体格が通常より盛り上がる。

そしてガンガンセイバーとクモランタンが合体したハンマーモードを取った。

 

[ノブナガ!!]

 

イトナが火縄銃を展開し、砲撃を行うが、ベンケイゴーストはそれを真正面から受けた。が、強固な肉体に弾かれて弾丸が通らない。

 

「馬鹿な!?」

 

「うおお!! 強ぇぞベンケイ!!」

 

「この程度か……?」

 

弾幕にも怯まずに接近するベンケイゴースト。

 

「むぅん!!」

 

「ぐはあっ!!」

 

ハンマーでぶん殴られたイトナは大きく吹き飛んだ。

 

「一気呵成!!」

 

[ダイカイガン!]

 

[オメガボンバー!]

 

ベンケイゴーストが地面をハンマーで強く叩くと六つの武器が飛び出し、水飛沫を伴ってイトナに高速で向かう。

 

「がああああっ!!」

 

[オメガスパーク!!]

 

イトナは火縄銃の一斉掃射でそれをかき消すがその隙にベンケイゴーストが接近した。

 

「(攻撃は囮!?)」

 

「うおおっ!!!」

 

ズドン! と拳一発。あまりの衝撃にイトナからノブナガ眼魂が吐き出された。

そしてそれをタケルは取る。

 

「か、返せ……俺の、ノブナガ……!」

 

「イトナ。お前は英雄の力の使い方を間違えている。それが分かるまではこの眼魂は俺が預かる」

 

「……………ッ!!」

 

「してやられたな………戦略が滅茶苦茶にされ、眼魂も奪われるとは…………ここは引こう。神代タケル。ノブナガの眼魂は今は君に預けておくよ」

 

「……………お前のものじゃないだろ」

 

と、シロとイトナは撤退した。

 

「………ふう」

 

「…………神代。悪かった」

 

「気にするなよ。それにありがとうな。お前のお陰で二つの眼魂が手に入ったんだから」

 

「……………そうか……なあ神代。俺も手伝うぜ。眼魂探し」

 

「ああ。よろしくな寺坂」

 

と、そんな寺坂をカルマがからかい、それを寺坂が水に叩き落としたりと、最終的に大騒ぎになった。

 

しかしそれは、寺坂がクラスに馴染み始めた証拠でもあった。

 

 

 

神代タケルの所有眼魂。

[01 ムサシ(対話済)][02 エジソン(対話済)][03 ロビンフット][05 ビリー・ザ・キッド]

[06 ベートーベン][07 ベンケイ][12 ノブナガ][15 サンゾウ]

=八個




ベンケイは寺坂でした。
理由は………説明しなくても分かりますよねw

前回そこまで活躍が無かったサンゾウが今回お供召喚ができました。

今回は一気に二つの眼魂を入手。
次回の期末テストでタケルが集中できるようにです。
夏休み前に半分集められればいいペースでしょうし。

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