仮面ライダー〜アサシン〜ゴースト   作:ファルコン・Σ

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応援歌の時間

「クラス対抗球技大会ですか。健康な心身をスポーツで養う。大いに結構!」

 

七月始めには殺せんせーが言った通り、男子は野球、女子はバスケの球技大会がある。

しかし、トーナメント表にE組は無い。

 

というのもE組は大会のシメのエキシビションに出場し、各部活の選抜メンバーと戦わなければならない。要は見世物である。

 

「でも心配しないで殺せんせー。暗殺で基礎体力ついてるし、いい試合して全校生徒を盛り下げるよ」

 

女子は責任感があり、統率力も抜群の片岡が率いることになった。

男子側は寺坂組が辞退。野球となれば頼れるのは杉野だが………。

 

「………無理だよ。そもそも経験が違うしうちの野球部かなり強ぇーんだ」

 

その理由の主将の進藤一孝は豪速球で高校からも注目されていると言う。

しかも杉野からエースの座を奪った人物だった。

 

「……だくど勝ちたいんだ殺せんせー。前線じゃなくて勝ちたい。武蔵さんやエジソンさんも言っていたけど挑戦すべきだって。………皆とチーム組んで勝ちたい!!」

 

その思いを組んだのか、殺せんせーは早速監督姿になっていた。

 

「最近の君達は目的意識をはっきりと口にするようになりました。殺りたい。勝ちたい。どんな困難な目標に対しても揺るがずに。その心意気に応えて、殺監督が勝てる作戦とトレーニングを授けましょう!!」

 

◎◎◎◎◎

 

そして球技大会当日。いよいよ始まった。

 

「学力と体力を兼ね備えたエリートだけが選ばれた者として人の上に立てる。それが文武両道だ。杉野。お前はどちらも無かった選ばれざる者だ」

 

「………………」

 

「選ばれざる者が表舞台に残っているのは許されない。E組共々二度と表を歩けない試合にしてやるよ」

 

去っていく進藤。と、途中でタケルとすれ違った。

元々タケルはB組なので進藤とはクラスメートだったのだ。

 

「………残念だよ神代。一目置いていた君を潰さないといけないとはね」

 

「残念がることはないさ。けど、あまり油断すると痛い目見るぞ」

 

「ふん。そんなことはあり得ない」

 

なお、殺監督は目立たないために遠近法でボールに紛れ、顔色でサインを出すようだ。

早速青緑、紫、黄土色のサインが来た。

 

「………"殺す気で勝て"ってさ」

 

「………確かに、俺達にはもっとデカイ目標がいるんだからな」

 

「よっしゃ、やるか!!」

 

「おう!!!」

 

戦意を奮い立たせるE組。

しかし、タケルの顔は優れない。

 

~眼魔は時と場所を選ばない。野球を楽しんでる間に洋楽の巨匠が奴等に奪われるかもしれぬな~

 

「(洋楽ってことはベートーベンか……おっちゃんめ、あんなこと言われたら気にもなるだろ………)」

 

しかしタケルとしても杉野の心意気を無駄にしたくない。

一先ずは野球に専念する。

 

最初の打者は木村。その一投目はバットを振ることすらできなかった。

進藤の投球は最速140km。プロ並みの豪速球である。

 

と、ここで殺せんせーが木村に指示を送った。

 

「(………りょーかい)」

 

二球目、140kmの豪速球。

 

それを木村はバントで返した。

 

「何っ!?」

 

直ぐ様持ち前の俊足で一塁に駆け抜けた。見事にセーフ。

 

二番手は渚。これも三塁線に強いバントを放ち、ノーアウトで一二塁を取った。

 

動揺する学校側だが何しろE組の練習相手は殺監督である。

300kmの球を投げ、分身で鉄壁の守備を敷き、囁きで集中を乱す超生物にみっちり鍛えられたのだ。

更に殺監督が進藤を模した投球を行ったお陰でバントだけなら余裕なのだ。

 

三番手の磯貝も同様にバントで抜けた。これでノーアウト満塁である。

 

「……………これなら……」

 

「タケル~!!」

 

「ん!? なんだ!?」

 

と、E組のベンチに一つ目のお化けが現れた。

 

「うわ!? なんだこいつ!?」

 

「ユルセン!?」

 

そのお化けの名はユルセン。一応仙人の化身らしい。

 

「そんなことはどうでもいいぜ! ベートーベンを狙って眼魔が現れたぞ~!! クラスの女子がピンチだぜ~」

 

「なっ!? くっ、でも………!」

 

「タケル! 行ってこい!!」

 

「杉野!?」

 

タケルを激励した杉野は進藤のストレートを大きく打ち返した。

そのまま走者一掃のスリーベース。一気に三点を先制した。

 

「…………おお……」

 

「眼魔を倒すのは神代にしか出来ない。だけどこの野球は俺らでも勝てる。行っておいでよ神代」

 

「後は俺達に任せてくれよ」

 

「カルマ……千葉……ありがとう!! 必ず戻る!!」

 

そう言うとタケルは駆け出していった。

 

そこに向かう途中、とある人物と鉢会わせる。

 

「!? 浅野理事長!?」

 

「おや神代君。何処に行くつもりかな?」

 

「あ、いえ少し急用が出来てしまって……!」

 

「そうかい。なら気を付けて行ってきなさい」

 

「は、はい………」

 

「タケル!! 急げ急げ!!」

 

駆け出していくタケルとユルセン(は、理事長には見えていない)。

そんな彼に向かって理事長はぽつりと呟いた。

 

「…………私は君が羨ましいよ」

 

◎◎◎◎◎

 

「!! 皆!!」

 

女子達を見つけたタケルは直ぐ様駆け寄った。

 

「タケル!!」

 

「………莉桜さんがいない!?」

 

「中村さんは眼魔に連れ去られちゃって……!!」

 

「なっ!? ………分かった。俺が莉桜さんを探してくるから皆は球場に行っててくれ!!」

 

殺せんせーが近くにいる場所の方が安全と判断したタケルはそう指示した。

 

「タケル……莉桜ちゃんをお願い!!」

 

「ああ!! 任せろ!!」

 

眼魔の気配を感知し、その方向に走っていくタケル。

 

「莉桜さんを狙った……てことはベートーベンを生むのは莉桜さんか!!」

 

走って眼魔の場所に辿り着くとそこには音符眼魔に捕らわれた中村がいた。

 

「神代!!」

 

「眼魔!! 莉桜さんを離せ!!」

 

『ならば交換条件です。貴様の持つ眼魂を全て寄越し、この女からベートーベンを生み出しなさい』

 

「くっ…………」

 

卑怯な手を使う音符眼魔にグッと拳を握り締める。

 

「ダメだ神代!! こんな奴の好きにさせたら!!」

 

「けど!! そうしないと莉桜さんが……ッ!?」

 

中村がタケルに目配せで指示する。

それを見たタケルは何かを察知し、頷いた。

 

「…………分かった。言うことを聞く」

 

四つの眼魂を眼魔の足元に転がした。

 

『いいですねぇ。では次はベートーベンをお願いしますよ』

 

「分かった」

 

印を描くと中村から発生した灰色の煙が収束し、ベートーベンのパーカーゴーストが誕生した。

 

『おお!! これはまさしくベートーベン!!』

 

音符眼魔がベートーベンに手を伸ばす。

その時。

 

「ふん!!」

 

『おごぉっ!!?』

 

「!?」

 

拘束が緩んだ隙に中村が音符眼魔の股間を蹴り飛ばした。

思わずタケルまで自分のを押さえてしまう。

 

『お、おがががごぐがが!!!』

 

「この莉桜様を利用しようなんて甘いんだっての」

 

悶絶している隙に中村が眼魂を回収してタケルの背後に隠れる。

 

「じゃ、後はよろしく♪」

 

「は、はい分かりました………ベートーベン!!」

 

タケルがベートーベンを呼び寄せ、眼魂に変化させる。

 

『き、貴様、それを寄越しなさい!!』

 

音符眼魔が足を踏み鳴らすと不協和音が二人を襲う。

 

「うぐうっ!?」

 

「な、なにこの音!?」

 

「だったら……ベートーベン!!」

 

ベートーベン眼魂を装填したタケルは変身する。

 

[カイガン! ベートーベン! 曲名! 運命! ジャジャジャジャーン!!]

 

ベートーベンゴースト。

その姿は燕尾服や鍵盤、スピーカーなどをあしらったものになっている。

 

「さあ。コンサートの開幕だ!!」

 

ベートーベンゴーストが指を振ると虹色のメロディーが相手の不協和音をかき消す。

 

「………おお。いい音!」

 

『ん、ぐおぉ!?』

 

そのままメロディーを音符眼魔にぶつける。更に胸部の鍵盤を弾き、より素晴らしい音楽が流れる。

 

「クレシェンド! フォルテ! アレグロ! フォルテッシモ!」

 

次々と奏でられる旋律を食らった音符眼魔は徐々に弱っていく。

 

「これが最高の音楽だ。分かる?」

 

『調子に乗りおって!』

 

向かってくる音符眼魔だが軽やかな動きでかわし、逆に拳を叩き込む。

 

「フィナーレだ!!」

 

[ダイカイガン!! ベートーベン!! オメガドライブ!!]

 

メロディーを音符眼魔にぶつけるベートーベンゴースト。そしてそのメロディーの楽譜に乗ってライダーキックを叩き込む!!

 

『ぬぉあああああ!?』

 

そして音符眼魔は撃破された。

 

「………ご清聴、ありがとうございました」

 

「カッコつけてる場合!? 急いで戻らないと試合終わるよ?」

 

「あ!! ………でももう俺は試合に参加できない………なら……!!」

 

◎◎◎◎◎

 

一方で試合は最終裏の野球部の攻撃。

理事長の監督によって3-2まで追い詰められ、満塁でしかも進藤の打順である。

 

「さて、どうするか………」

 

その時である。

 

~~♪ ~~~♪ ~~♪

 

「な、なんだこの音楽!?」

 

「これは………タケル君!?」

 

 

「まさか参加できないから応援歌を送るとはねぇ」

 

球場外、E組の勝利を願うベートーベンゴーストの旋律を聞きながら中村は笑った。

 

「この思いを届ける……我ら思う、故に我ら在り!!」

 

 

「神代君が見ててくれてるなら………俺達も応えないとねぇ」

 

「だな」

 

カルマと磯貝が進藤に超接近した前衛防御を取る。

振られたバットを容易く交わす二人に進藤は恐れ、理事長の戦略に付いていけなくなった。

全く力の入っていない打球をカルマがキャッチし渚にパス。更に三塁、一塁に渡し、トリプルプレーでゲームセット。

 

3-2でE組が勝利した。

 

「キャー!! やった!!」

 

「男子すごい!!」

 

と、タケルは人にみられる前に変身を解除した。

 

「よかったね。神代が居なくても勝ったよ」

 

「………皆、それぞれに出来ることがある。だからこそ俺も全力で戦うことが出来るんだ」

 

ベートーベン眼魂を握り締め、タケルも笑った。

 

 

 

神代タケルの所有眼魂

[01 ムサシ(対話済)][02 エジソン(対話済)][03 ロビンフット][05 ビリー・ザ・キッド]

[06 ベートーベン]

=五個




中村莉桜がベートーベンの理由は彼女が洋楽好きであることに由来します(名簿の時間参照)。
また、野球と言えば応援歌というイメージがあったのでベートーベンになりました。

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