ヘタレ系悪役一家の令嬢に転生したようです。   作:eiho.k

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その47

 もう! もう! 本当にどうしてダンブルドア校長はこんなにもサプライズがお好きなのですか!

 私は憤りの全てを叩き込むようにキツくペンを握りしめ、思いの丈を便箋に綴ります。もちろん書くのは、ダンブルドア校長へ送るお手紙ですよ。内容的には私がお父様にお願いいたしまして、マグル界に別宅を手に入れましたよ──と認めて送ったお手紙のお返事の返事です。

 

 あのクリスマス休暇初日──というか帰宅途中の駅構内で、私は志貫徹いたしました。ええそうです。私は私のお願いをお父様に叶えていただいたのです。

 もちろん快諾していただいた──どちらかというと快諾させた(・・・)と言った方が正しいような気がしますが、それは瑣末なことですね。──なお家はですね、資金は何故かとっても増えていた私の貯金から購入いたしました。ええ、どうしてか、グリンゴッツの金庫の中で桁が3桁ほど増えていた私の貯金。始まりは私のおこづかいだけを貯めていたはずの貯金ですよ? ある意味貯金箱と同じようなもので、あそこまでの額になるほど、流石のマルフォイ家でもおこづかいでもらえるわけなどありません。

 家、それも多分豪邸と言えるようなお家が少なくとも2軒は買える。いえ、もしかしたら新築できるかもしれない額になったのがなぜか。それはお母様からの手紙で知りましたが、本当にどうしてそんなことをなさるのですかね、お父様は。いえ、スネイプ先生がお作りになったお薬は、とってもとっても素晴らしいものでしたし、それほどの価値があるだろうことも事実です。ですからとっても高額に取引されるだろうことも予測はできますよ? ですが、どうしてその売り上げが私の金庫に納められているのですか! こちらもお父様にしっかり抗議するべきだったのですが、私丸め込まれました。

 権利自体は、あの金庫内の額に満たないけれどそれなりの──多分1年は研究費に困らない程度の──額を渡している。だから問題ないのだ。なんてお父様はおっしゃいました。ヤブを突いて、別の問題が出てしまうのは困りますので、一応私もそれで納得しました。ええ、金庫内にある額は全て私の自由にしてよいと言質と共に書面でも残していただきましたからね。私からスネイプ先生に研究費にと幾ばくかお渡しすればよいでしょう。受け取ってもらえる気はとんとしませんが。ですが頑張って受け取っていただきましょう。ええ、お父様のというよりも、マルフォイ家全体からの迷惑料ですからね。ええ、主に吠えメールでの騒音被害の……。

 

 ええとですね。とにかくですね、そんなわけで私はさっくり別宅を手に入れたのです。はい、前もってお母様にお願いしておりましたので、別宅となるお家の確保ですとか、必要書類(お父様のサイン待ち)ですとかの準備はできていましたからね。とってもスピーディに進みましたね。とっても増えていた貯金の一部を使いまして、お家も元々手付けを払った状態にできていましたし。

 というわけでお父様のサインを頂いて、すぐに残金をお支払いして私のものにできました。といっても実際の名義はお父様なのですけれどね。

 

 そんな経緯で私のものとなったお家はですね、マグル界のとある閑静な住宅街の中の1つです。

 建て売りというか、分譲住宅と言えばいいのか。とにかくその住宅街の中で統一されたデザインの外観をしたお家ですね。でもですね、建て売りと侮ってはいけません。茶系の煉瓦仕立ての外壁も、それに映える焦げ茶の玄関ドアや窓枠などもとっても素敵なのですよ? ちなみに間取りはマルフォイ家よりも随分と小さくはありますが、家族4人で暮らす分には過不足ないお家です。より正確に言いますと、4LDKプラス階段下に納戸が1つ。ちなみに暖炉もあります。しっかりお父様から暖炉ネットワークに繋げられてしまいまして、自宅と直結になってしまっていますが、今の所──そうですね、私がホグワーツを卒業するまではお父様がこのお家にくることは禁止できていますからなんの問題もないでしょう。ええ、お父様がマグル界にきてしまったら、多分絶対何某かの問題を起こすでしょうからね。禁止するのが正解なのですよ。ええ、過干渉を避けたい、というわけではないのですよ?

 

 私はですね、そんなお家を手に入れた経緯ですとか、理由ですとかをダンブルドア校長へのお手紙に認めてお送りしたのです。お家を手に入れたその日のうちに。ええ、こういったご報告は早い方がよいですからね、引越しする日ですとか詳しい住所ですとかをお伝えしたのですよ。そうしたらですね、なんとその翌日夜である今夜にダンブルドア校長より返信が届いたのです。……驚きました。私、とってもとっても驚いたのですよ、ダンブルドア校長……。

 

 だってですね、引越ししたその日の夜ですよ? もちろんお引越し自体はですね、我が家の屋敷しもべ妖精であるドビーの姿現しでサクッと家具ですとかの移動も終わっておりましたし、小物の整理ですとかもドビーもですが私も頑張って終えることができていました。ちなみにお母様はこの家に置く家具の選別。お父様はその家具の代金を持つ。ドラコは私への応援で引越しに参加しています。はい、ドラコ以外は自宅で、ですが。全ての片付けが終わりまして、ドビーがドラコを送りました後、少し遅めの夕食を食べようか──としていたその時にですね、ダンブルドア校長からのお手紙を持ったとある方がいらっしゃったのですよ……。

 ダンブルドア校長、引越し祝いなのだとしてもサプライズにも程がありますよ?

 

「カサンドラ、まだ手紙を書いているのか?」

「…………ええ、そうですね。まだ(・・)書いておりますよ?」

「……ど、どうしてそんなに怒っているんだ? その、俺がなにかしたか?」

「うふふふふ……なにもしていないと言い切れる、とおっしゃりたいのですか?」

 

 私がお母様から教わった笑み──お父様に向けたものよりも多分ずっと冷たいものでしょうね──を声をかけていらっしゃったその方に向けます。冷たい笑みも向けますよね? 女性の私室にノックもなしにお入りになっていらっしゃるのですし、その前が悪すぎますしね。

 

 私の部屋のドアのすぐそばに立つその方も、ご自分が悪い自覚がおありなようですね。とっても顔色を悪くしていらっしゃいます。が、私は悪くありませんからね? 全てはあなたが──シリウス叔父様が悪いのですからね! ……いえ、元はと言えばダンブルドア校長が悪いのですかね?

 いえ、でもシリウス叔父様も悪いですよね? 私が購入した私のお家に、ダンブルドア校長のお手紙を持って暖炉ネットワーク──なぜかホグワーツと繋がっていました──から現れて、ドビー作のお夕食を灰まみれにしたこと。そしてなぜか! そうなぜかこのお家にお住まいになると決まっていたこと。そしてなにより勝手に外に出ようとなさったこと──私が怒っても仕方ありませんよね?

 暖炉から現れるその時に灰が舞ってしまうものでしょう。そこは仕方のないこととして認めてもよいですが、成人した魔法使いなのですから、暖炉ネットワークをご使用になるのではなく、姿現しにすればよかったのではないですか? ……いえ、姿現しはアレでしたね。場所を正確に浮かべられなければバラけてしまうのでしたね。……仕方ありませんね、やっぱり暖炉をお使いになったのは良しとしましょう。付随して食事をダメにしてしまったことも、遺憾ですが許しましょう。食べ物の恨みは恐ろしいですが、今回は許してあげるのです。ええ、私の心はネス湖より少し狭いくらいですからね。

 

 ですがここにお住まいになるだとか、我先に外に出ようとなさるのは許されることではないと思うのです。ええ、例えダンブルドア校長がお許しになっていたのだとしても、です。

 

 そうなのです。シリウス叔父様が持っていらしたダンブルドア校長からのお手紙に認められていたこと。それはなんとこの度私がこの家を手に入れたということで、計画を前倒しにすることに決めた、ということ。以前少しだけお話ししておりました、シリウス叔父様とかの方──某ウィズーリー家のペットのネズミさん──が関わる、『過去のポッター家事件』についての計画。ダンブルドア校長は犯人であるかの方を捕まえる事にしたそうなのです。というかもう実行済みであるとの報告でしたが。

 

 正直ですね、意味がわかりませんでした。

 もちろん捕まえて欲しかったことは確かです。そしてシリウス叔父様についても、冤罪を晴らせるものならば、晴らして差し上げたかったですよ? ですがそんなに上手くいくはずはないと思っていたのです。ええ、ちょっとだけ思い出せるあのシーンで、ネズミからサクッと人間に戻っていらっしゃいましたし、簡単にはいかないだろうと思っていたのです。

 が、そんな私の予想とは裏腹にダンブルドア校長は、その……私の手紙を読んだその足でアーサー・ウィズーリーさん──フレッドくんとジョージくんのお父様ですね──と秘密裏にお話をしまして、サクッと、それはもうサクッとパーシーさんのペットであるかの方を捕まえたそうです。

 なんでもネズミにだけ罹る伝染病の予防接種を受けさせるから──と言って、パーシーさんから引き離し、ペットケージに入れたそうです。あ、もちろんその辺にあるケージではなく、魔法をかけたもので、その中では変身術は使えなくなるそうです。その上で忘却術をおかけになったということなので、つまり彼は自分の意思で人になることがもうできなくなったということ。ちなみにもう伝染病に罹患していたので、助からなかったと仰って、新しいペットであるネズミさんと、梟さんをセットでプレゼントなさったそうです。……ダンブルドア校長はウィズーリー家のお子様達にとって、とってもサンタクロースになったのですね。

 元々人であった方をネズミのままでいさせる。それが正しいことなのかは私にはわかりませんが、これでもしかしたらセドリックくんの死亡フラグが折れたかもしれませんよね? かの方が『下僕の肉』を投じなくなるのですし……。いえ、どう未来が変わるかまだわかりませんが、そうなるといいと願っておきましょう。最悪を予想するよりも最高を今くらいは考えておきたいですし──などと考えておりましたら、シリウス叔父様は私の部屋の中にしっかりお入りになり、その上で私のベッドに腰掛けて、私のお気に入りのクッションを抱きかかえながら寛いでいらっしゃいます。え? これは私、怒っていいのですよね?

 

「ダンブルドアの言った通りだな。カサンドラはよく考え事にふけって話が止まる、というのは」

「……そうですか、そんなこともお伺いになっていらっしゃるのですか」

「ああ。マルフォイなのにマルフォイらしくなく、闇陣営に染まることなど絶対にないだろう娘。俺に似たところもある──と言っていたか? まあ似ているよな。俺はブラック家から出たグリフィンドールでカサンドラはマルフォイ家から出たグリフィンドールなんだから」

「それは──とっても心外ですね」

 

 なんだかとってもイラっときたので、そう言い切ってまた笑みを浮かべます。ええ、怒っているのですよ、私は。

 

「ちょ、ちょっと待て。その……なんだ、なんでそんなに怒っているのか全くわからないんだが」

「まあ! 叔父様ったらおかしなことを仰いますね?」

 

 こてりと首を傾げつつ、私は指折り叔父様がなさったことを言い重ねていきます。ええ、ネス湖より少し狭いくらいの心ですが許しているだけであって、起きたことを忘れるわけではないのですよ?

 

「お夕食をダメにされたこと。この家で1人──いえ、ドビーと同居する予定でしたのに、そこに割り込むのだとおっしゃっていたこと。そして夕食時も過ぎた時刻であるというのに、はた迷惑にも隣家に突撃しようとなさったこと。ああ、その時は杖を掲げていらっしゃいましたよね?」

「あ、アレはその……」

「まあ、言い訳がおありなのですか?」

 

 百歩譲って隣家の方が知り合い、それもとても親しい間柄でしたら夕食後の時間にお尋ねしてもいいでしょう。ですが私は本日この家に越してきたばかりです。まだお隣にご挨拶には伺っていません。そしてですね、成人済みの魔法使いであろうと、マグルに杖を掲げて魔法をかけてはダメ、でしょう? シリウス叔父様は好戦的過ぎやしませんか?

 いくら隣家にお住まいの一家が、ハリーを虐げているダーズリーさん一家なのだとしても、ダメなのもはダメ、なのですよ!


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