ヘタレ系悪役一家の令嬢に転生したようです。   作:eiho.k

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その31

 目先の問題──クリスマス休暇に帰宅できるか──が片づいた私は、翌日ぐっすり眠って気分もスッキリです。ですのでこれからのことを考えることにしました。

 ちょっとした小さな問題は浮上してきましたが、皆さんと補習を受けられるというのはきっと楽しいことです。実際にアニメーガスの失敗ではないですが、猫耳猫しっぽ付きの姿は見られていますしね。まあ、アレを渡されたということが、補習の失敗を知られていたかもしれない──という疑惑は中々拭えないのですが、今は未来のことに目を向けることにしたのです。別に逃避ではないですよ?

 

 私が望む未来は、変わらず家族が少しでも幸せになれる未来です。まあ、それはヴォルデモートさんが打ち倒された後に、でもいいのですが。

 とにかくそれを考えるとですね、まずホグワーツにヴォルデモートさんの脅威が迫らないことが1番ですよね? となるとどうすることがよいのでしょうか。

 

 物語の中で1番にヴォルデモートさんの影が出るのは、今から2年後の原作スタート時です。その時にヴォルデモートさんの手下になっている方──は今は普通の方のように見えます。そうです。なんとクィリナス・クィレル先生は今はターバンを巻いていらっしゃいません。

 入学の時、スネイプ先生はすぐに見つけられたのですが、実は私クィレル先生は見つけることができなかったのです。後日その理由に気づいたのですが、ターバンを巻いていらっしゃらなかったからのようですね。ええ、私はあの方をターバンで判別していたようです。今のふわっとした金茶髪の髪の毛で、それなりに整ったお顔のクィレル先生を判別できていなかったのです。だって本当にターバンの印象が強かったのですもの。仕方ないですよね。

 しかもですね、今のクィレル先生はマグル学の先生なのです。闇の魔術に対する防衛術の先生ではないのですよ。初めての授業の時にはびっくりしましたね。てっきりクィレル先生がいらっしゃると思っていましたし。

 つまりですね、3年生からの選択授業であるマグル学の教授であるクィレル先生と、私は全く接点がないのです。その所為ですっかり忘れてしまっていたのですが、あの方は近いうちにヴォルデモートさんを後頭部に隠すのですよね。

 その正確な日がわからないことが痛いですね。これはダンブルドア校長への相談案件、ですかね?

 そうですよね、確かクィレル先生が学校をお休みになってから、ヴォルデモートさんを後頭部にお隠しになって、また学校に戻り闇の魔術に対する防衛術の教授になられる、はずですので。つまり単純な解決策は、お休みになった後に戻れないようにすればよいか、もしなんでしたらお休みを与えないようになさればよい、のかもしれませんね。もっともそれはダンブルドア校長がお考えになることですし、一生徒の私にどうこうできることではありませんよね。やっぱりダンブルドア校長への相談案件ですね。

 

 クィレル先生はダンブルドア校長にお任せするとして、残るはネズミですね。そうです、フレッドくんたちのお兄様であるパーシーさんのペット『スキャバーズ』になっている、ピーター・ペテュグリューさんをどうするか、です。ちなみに捕まえるのは簡単だと思います。どうやらうちのネロがですね、何度かちょっかいをかけているようなのです。フレッドくんから伺いましたが、結構な頻度でうちのネロってば追いかけているようです。ちなみにまだそれはパーシーさんにはバレていないようです。

 それにしてもネロは『スキャバーズ』が、普通のネズミとなにかが違うとわかっているのですかね? もしそうなら、本当にネロは普通の猫ではない疑惑が益々浮上しますね。まあ、とっても可愛いのであまり気にならないと言えば気にならないのですが。だって可愛いは正義ですからね!

 

 それはさておき、『スキャバーズ』はネズミですが、ピーター・ペテュグリューさんは人間です。サクッとネズミ捕りにかけるわけにもいきません。というか一応人間なので流石にかからないとは思うのです。

 それよりも考えるべきはピーターさんを捕まえた場合です。

 その場合の対処としては、シリウス・ブラックさんの無実を証明するために真実薬を使って自供させた上でアズカバンに入っていただく。その上で忘却術をかけること、ではないかと思います。ですが、それが私にできるかはわかりません。忘却術を使ったことがありませんからね。それができなければ、今のところはどこか出てこれないところに閉じ込めるのが1番ですかね? それともこちらもダンブルドア校長にご相談した方がよい、ですかね?

 いえ、それよりも先に、一応『スキャバーズ』を見てみるところから始めるべきですかね? 正直言うと私はまだきちんとパーシーさんとお話ししたことがありません。ええとですね、多分私はパーシーさんから遠巻きに見られているというかなんというかな状態なのです。ですから直接お話しすることは難しいかもしれませんね。となると『スキャバーズ』を見ることもできないでしょうか? いえ、ここで悩んでも仕方ありませんね。できるかできないかは試してみなければわかりませんし、今日の放課後はちょうどなんの補習もありませんから話しかけてみましょう。当たって砕けろ! ですよね。

 などと考えながらの私は、ただいま廊下を歩いています。ちなみに朝食の時間から悩んでいましたが、ご飯はしっかり食べております。マフィンは美味しかったです。そして今、呪文学の授業に向かう途中なのですが、私の両手はアリシアさんとアンジェリーナさんに握られております。ええ、あまりにも私がフラフラ歩くので、ということで強制的に握られました。ですが、いいのです。きっとそのお陰で転ぶ心配もないでしょうしね。まあ、お2人の背が高いので、私はもしかしたら『捕獲された宇宙人』のようかもしれませんが。気にしたら負けなのですよ。多分魔法界の方はご存じないでしょうしね。

 

「キャシー? そろそろ教室に着くけど考え事は終わったの?」

「え、あ、はい。終わりました」

「間に合ってよかったね。で、なにで悩んでたの? 私に何かできるなら手伝うよ!」

「そうね、できることがあるならね」

「あ、ありがとうございます、アンジーにアリー」

 

 私は少し……いえ、だいぶ照れながらお2人を呼びます。

 ええ、そうなのです。私お2人を呼び捨てどころか愛称で呼ぶことになったのです。いえ、心の中では未だに『さん付け』でお呼びしているのですよ? ですが声に出す呼び方ですと私の『キャシー』と同じように愛称で呼んで欲しいと言われたのです。こんな嬉しいことを断れるわけなどありません。という意気込みが強いからですかね、未だに照れてしまうのは。

 そんな照れを隠すように笑いながら続けます。押し切ることは大事、ですからね。

 

「お2人が手伝ってくださったらとっても心強いですが、今は授業ですね。お昼にお話ししてもよいですか?」

「もちろんよ。私たちから言ったんだから」

「そうそう! お昼楽しみだね!」

「ありがとうございます」

 

 お2人とお約束をしてから、呪文学の授業を受けます。今日はまた新しい呪文を習うのですよ。

 これまでの授業で習ったのは鍵のかかったドアを開ける『アロホモラ』、物を浮かべる『ウィンガーディアム・レビオーサ』。今日はその2つの復習をした後、足縛りの呪文をお教えいただけるそうです。どんな機会に使えるのか全くわかりませんが、新しい呪文というのはワクワクしますね。

 

 

 とっても楽しい授業を終え、私はアリシアさんやアンジェリーナさんだけでなく、フレッドくんにジョージくん、リーくんに連行されるようにして大広間へ向かいました。なんでしょうか。なにが始まるのでしょうか。なんてビクビクしていたのですが、なんのことはありません。皆さん私の悩み事を聞きたかったのだそうです。嬉しいけれど、背の高い皆さんに囲まれるのはですね、ちょっとだけ怖いのですよ?

 大広間で昼食を食べながら、どんな悩みなのかと聞かれます。はい、どうしましょうか。いえ、言えるものは1つですよ? スキャバーズに会うために、パーシーさんと交流がしたいのだ、ということだけ。ですがそれを真っ正直に言って平気なのでしょうか。ちょっとだけですね、あの時を思い出してしまうのです。そうです。『会いに行く予定の人がいる』と言ったあの時を。で、ですがきっと大丈夫ですよね? おかしなことなど起こりませんよね?

 ちょっとだけ戦々恐々としながら、私は皆さんの顔を見回します。はい、どなたも怖い顔はしていませんね。きっと大丈夫、ですよね。

 

「それで? 今日のキャシーが悩んでたのはなんなの? 教えてくれるんでしょ」

「ええ。そのですね……私、パーシーさんとお話がしてみたいなあと考えていたのです」

「パーシーさん? ていうと双子のお兄さんの1人よね」

「え? チャーリーさんじゃなくて、パーシーさんなの?」

「はい、そうなのです」

 

 私の言葉にアリシアさんとアンジェリーナさんが問いかけてきます。はい、その通りですがどうしてそこまで驚かれるのでしょうかね? フレッドくんやジョージくんまで驚いていらっしゃいます。ちなみにリーくんは普段通りにネロを撫でています。猫が本当にお好きなようですね。

 

「キャシー、本気でパーシーと話したいのか?」

 

 リーくんに撫でられて、目を細めているネロに見惚れかけていれば、フレッドくんからそう問われます。

 

「え、ええ。そうしたいのですが……ダメでしょうか」

「いや、ダメじゃないよ? ダメじゃないけど……なあ、フレッド」

「ああ、ダメじゃないんだけどちょっと難しいかもしれないな」

「難しい……。それは私がマルフォイだから、でしょうか」

「それもある。でもそれだけじゃないんだよ」

 

 なんだか言い渋るようなお2人に、私が厭われるだろう理由としてあげたのですが、どうやらそれだけではないようですね。……ええと、なんでしょうか。なんて考えかけると、フレッドくんとジョージくんの視線はリーくんに向かいます。

 

「ちょっとさ、パーシーにバレたんだよね」

「え、えと……それはネロが……」

「そう、それ。つい昨日かな、キャシーの補習中にネロがね」

「あー…確かにアレはちょっと騒ぎになってたかな。でもそこまで怒ってなかったみたいに思ったけど? パーシーさんネロがいなくなったら普通になってたし」

 

 ジョージくんの言葉にアンジェリーナさんが首を傾げています。ええと、騒ぎになるほどのことをネロはしたのですね。私、知らなかったのですが……。お詫びしなくてはダメなのではないでしょうか。

 

「あー…これは弁解とか、弁護とかじゃなくてだけど、一応言っとく。パーシーもさ、動物に対して理不尽に怒り続けるほど短気じゃないよ」

「そう、問題はキャシーがネロの飼い主だってことなんだよ」

「……それは、私がマルフォイ家の娘であるので、私の差し金でネロが襲ったと思われている──ということですね」

「うん、だいたいそんな感じかな」

 

 フレッドくんもジョージくんも苦笑いです。ちなみにアリシアさんとアンジェリーナさんは小声で『器が小さい』とかおっしゃています。多分そういう問題ではないと思いますよ、お2人とも。

 マルフォイ家の娘であることに全く不満はないのですが、こういう時はどうすればよいでしょうかね。はあ……わかっていたことですが、やってもいないことを疑われるのって、ちょっとだけイヤな気分ですね……。


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