ヘタレ系悪役一家の令嬢に転生したようです。 作:eiho.k
私は可愛いものが好き。だけど、私自身は可愛いものがあんまり似合わない。だからかな、可愛い子を見ると友達になりたいと思うんだよね。
でも、たいていそういう子って、私みたいなのと友達になってくれなかったりする。なんだろ。やっぱ私のちょっとガサツなところが滲み出てたりするのかな?
そう、私は結構ガサツなんだよね。人によっては好意的に「元気がいい」とか「明るい」だとか言ってはくれるよ。でもさ、たいていそういう子たちって、裏ではねちっこく言ってたりするんだよね。
でも私自身はあんまりそういうのは気にしない方。だって人の意見て、結局はその人の考え方なだけで、全部の人がそう思ってるわけじゃないってことでしょ? だから人の意見を私はあんまり気にしない。だって気にしても意味ないし。
そんな私が気にするのは、自分にはなにが合っているのかってことだけ、かな。そ、人の意見に迷うより、これから先もずっと私は私でいるわけだから、自分のことに迷った方がずっと有意義でしょ? それで平気なはずじゃん? で、自分のことを考えるわけなんだけど、それには多少迷ったりする。
仕方ないよね。少しだけでもいいから、前よりいい自分になりたいし。
それで、戻るのが可愛いものこと。
まあさ、私は可愛い子だけじゃなくて、可愛いものを集めるのも好きなんだけど、それもイマイチできてない。というのも、なんか可愛いものに囲まれてる私って、私らしくないような気がしてさ。可愛いものに囲まれて過ごす、なんてできてなかったんだ。だからまあ、そんなわけで、私は可愛いものに飢えていたんだよね。
そんな時に聞いた、あの子のこと。すぐに飛びついた私はおバカなのかもしれないね。
一応私も知ってた。マルフォイ家がどんななのかってこと。父さん母さんも言ってたしね。知らないとは言わない。私には直接関係がないから、あんまり気にしてなかったけど。
そんな私にちょっとだけそのことが関係し出したのは、ホグワーツ特急の、コンパートメントの1つに入ったことが始まり。
私が入ったそこには、ちょっとカッコいいけど物静かそうな男の子と、気の強そうな、でも私と気の合いそうな女の子がいた。あ、女の子はアリシアで、結構キレイ系? な感じ。男の子はセドリックね。
まずさ、部屋に入ったら二人して無言。や、挨拶はしてくれたよ。でも無駄口なんか叩きませんって感じで、話はあんまり続かなかった。
で、ちょっとその空間が辛いかも〜なんて思いながら、部屋の中をこう見回してみたの。なんか話のきっかけになるようなこと、ないかなってさ。
で、気づいたのは私と、アリシアとセドリック。3人だけなのに、トランクが4つあること。あれ? もしかしてもう1人この部屋にいるってこと? て浮かんで、すぐに聞いたわけ。
そしたら教えてくれたのは、キャシーのこと。
やーもうびっくり。だってさ、それまで無言だった2人がだよ? 一斉に話しだしたんだ。それも1人の女の子のことで。2人して、さっきまでツーンとしてたのが幻なんじゃないかってくらいの勢いだった。
名前は後で教えてもらいなさいよって言って、どんな子なのかってことだけは教えてもらえた。
とりあえず1番は小さいこと。んでぽやんとしてるってこと。ついでに黒猫を連れたひらひらワンピの女の子ってことも教えてもらえた。で、私は聞いたわけ。「その子って可愛いの?」ってね。
うん、私の中で可愛いは1番大事な要素だったからね!
そんな私の言葉にさ、2人はすごい勢いで話しだした。うん。ホントにさ、さっきまでの無言な時間てなんだったの! って聞きたくなるくらいすごかったなあ。
アリシア曰く、ビスクドールみたいにキレイ目だけど可愛いと思うし、ちょこまかした感じで動くところも可愛い、とも言ってた。で、多分いろんなことを考えてるだろうけど相当のんびり屋だろうとも言ってたね。
それからセドリック曰くだと、とっても丁寧な喋り方をするけど、でもそれでも親しみやすい。おっとりしてて、お嬢さんって感じで笑うところは可愛いって言ってた。ほっぺた赤くしながら。……セドリックってさ、なんか意外とわかりやすかったんだね。ちょっと私の中の好感度は上がったよ?
ちなみにアリシアは笑うところは可愛いのとこで頷いてたけど、すぐにセドリックを睨んでた。なんでかわかんないけど。
で、それから少しして、アリシアはその子が戻ってくるのが遅いから迎えに行くっていて出て行ったんだよね。うん、確かに遅いよね。お昼ご飯も終わったのに帰らないなんてさ。
可愛い子だって言うしさ、私も心配になったけど、アリシアは1人でいいわって言ってスタスタ行っちゃった。で私はセドリックと残されたわけなんだけど……セドリック、言葉数がすっごい少なくなった。私からその子の話題を振らないとしゃべんないくらい。
そんなんじゃ好きな子に告白もできないんじゃない、なんて思ったけど、それは自分で気づかなきゃダメなことだろうし、言わなかった。優しさだよ?
少ししてアリシアがその子、キャシーを連れて戻ってきたわけなんだけど……や、もうびっくりするくらい可愛かった! 私の理想の具現化かってくらい。ちょ、家に持って帰りたいんですけどって思っちゃったのはおかしくないよね?
そんな可愛いキャシーがびっくりするくらい大きい子だって知ったのもこのコンパートメントで、実際のサイズを知った──というか測ったのは、寮の部屋でのこと。
キャシーさ、一度寝ると全然起きないみたいで、私とアリシアは結構寝てるキャシーを観察したりしてる。や、別に勝手にベッドの上に行ってたわけじゃないからね? キャシーのベッドで話してる途中で、突然ぱたんって寝ちゃうんだよ。なにコレ! 赤ちゃんみたいなんだけどってアリシアと盛り上がった〜!
ま、そうやって眠っちゃったキャシーのほっぺたをプニプニしたり、勝手にスリーサイズを測ったり、ちょっと添い寝したりしてた。うん、アリシアには、スリーサイズはやめなさいって言われたけど、だいたい週1で今も測ってる。
……2週に1回の割合で増えてるってどういうことですか?
うん、そんなことはいいね。
とにかく私は、そうやってキャシーのことを知っていって、キャシーがものすごく好きになった。元々可愛いから気に入ってたんだけどね。それがもっと深くなったというか。
だからかな。可愛いキャシーが可愛いまんまでいられるように、ちょっとだけお節介をやいたりした。アリシアと協力して男の子とか、陰口叩く子たちから遠ざけたりとかね。まあ、その時に使う、宿題手伝っては100パーセント本音なんですけどね。
そうやってすることがホントにキャシーのためになってるかって言えば、わからないってのが答え。でも、キャシーには笑っててほしいなって思う。だってそうしたらもっとキャシーは可愛くなると思うし。だからね、私決めたんだ! キャシーの可愛いを守るためならちょっとくらいの無理や無茶は問題なしにできることをしちゃうぞってね。うん、わかってる。私のできることってのが勉強以外のことだってね。
でもいいんだもん! 運動が得意な私だからこそ、いつか絶対箒使いを上手にして、キャシーを高い空まで連れて行ってあげられるはずなんだから。だからさ、それまでキャシーは誰の箒の後ろにも乗らないでほしいな。
そんなわがままなことをだいたい毎日考えるのが、ここ最近の私の日課の一つ。うん、1番の日課はキャシーを愛でることなのは変わらないよ?