あのあと、原作通りにガラスは消えて、バーノンおじさんにはこってりと怒鳴られた二人は、物置に閉じ込められていた。
膝を抱えて何やら考え込んでいるハリーに、ジェシーはそっと寄り添った。
きっと、両親の事だ。自動車事故だと教えられているハリーとジェシー(正確にはハリーだけ)には、両親の記憶が無い。ジェシーは、記憶と知識があるため、どうということは無いが、ハリーは違う。
家族は、ジェシーだけなのだ。
いくら、兄弟が側に居てくれても、やはり、親の存在は大きい。
だから、ジェシーはいつも寝る前に行っているもう一つの日課を優しくハリーを包むように抱きしめながら、優しく、優しく言った。
「ハリー、愛してる」
それは、家族愛。双子として、たった一人の血の分けた兄弟への愛。
ジェシーはこれを、欠かしたことは無かった。
ハリーは、ゆっくりと自分を抱きしめているジェシーを抱きしめ返した。
「ありがとう。僕も愛してる。お姉ちゃん」
いつも甘える時、ハリーはジェシーの事を『お姉ちゃん』と呼ぶ。
だから、ジェシーもその時は
「私の可愛い弟」
と呼んで、思い切り甘やかしてあげている。
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それからも、居心地の悪い物置生活は続いて、やっと出してもらえたと思ったら、もう夏休みで次にはダドリー軍団のイジメが加速した。
ジェシーは、もうすぐホグワーツに入学できることを、ハリーはそんな強い姉を頼りに頑張っていた。
そして、7月に入ってしばらくたったとき。
「ダドリーや、郵便を取って来てくれるか?」
「ハリーに行かせろよ」
「ハリー、郵便を取りに行け」
「ダドリーに行かせてよ」
「ダドリー、スメルティングズの杖で突いてやれ」
ハリーが嫌々郵便を玄関に取りに行った。何枚か手紙を持って居間に戻ってきたハリーは何か黄みがかった分厚い封筒二通をじっと見つめていた。
あれが…、ホグワーツからの手紙。
だが、それらはすぐにバーノンおじさんによってハリーの手から奪われた。
後でハリーに相談されたが、自分たちにはどうにもできない。と、時を、ハグリッドの迎えをまつことにした。
とうとう痺れを切らしたバーノンおじさんは、一家で家を出ることを決意したようだ。
もうそろそろ…
どんなところへ行っても、届く手紙。
それに恐怖すら感じたバーノンおじさんはある荒波の中の小屋に拠点を移した。
日付は、7月30日。
ハリーは、「明日は最悪の誕生日なりそうだ」と行っていたが、それはどうかな?
その夜、ダドリーの金ぴかの腕時計を見て、一つのボロボロの毛布を二人で使いながら、カウントダウンをしていた。
「5ー4ー3ー2ー1」
バーン!
大きな音に、ハリーとジェシーは勿論、バーノンおじさん達も起きてきた。おじさんに至ってはライフル銃を持ってきている。
雷のなる中、大きなシルエットで現れたのは、ヒゲもじゃの大男だった。