メダロット2 ~クワガタVersion~   作:鞍馬山のカブトムシ

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4.校内ロボトル大会【前編】

 四月中旬。ギンジョウ小学校最大の行事、ギンジョウ小学校校内ロボトル大会が行われる。

 イッキとロクショウは、このロボトル大会に向けて四人の人間にロボトルを挑んだ。実力はまだまだ未熟。ロクショウの実力と性能に頼って勝っている面が大きいが、イッキは何となくロボトルにおける戦略、ここぞというときの勘と勢いの乗り方が分かってきたような気がした。

 アリカは、イッキのロボトルの嵌り具合に呆れた表情をしてみせた。

 

「そりゃ、私だってロボトルはするけど。去年から今年にかけてのロボトル回数は、通算十八回ぐらいのものよ」

 

 イッキは自分が中途半端な人間と知っている。その自分が、こんなにも熱く物事に取り組めるのは初めてかもしれない。だが、イッキがロボトルに熱中するのはそれだけではない。

 それにはまず、ロボトル以外についても詳しい説明をしなければならない。

 メダロットを持つ者が、必ずしもロボトルをするとは限らない。精々十人に一人ぐらいの割り合いであり、それも、あくまでメダロットの体を動かしてやろうというのが大半。

 

 ロボトルには二種類ある。

 一つはスポーツとして、自分の手持ちのメダロットの体を動かす目的で行われるもの。前のイッキとアリカのロボトルはこの部類に入る。

 二つ目は、真剣ロボトル。これは、互いのメダロットの頭部・脚部・右腕・左腕のどれか一パーツを賭けて行われるロボトル。イッキは一万円でティンペットとパーツ一式を揃えたが、あれは例外中の例外。本来、男性型ティンペットは二万円、女性型ティンペットは倍の四万円もする。

 パーツも安くない。現在市場で出回っている一番安いメダロットは、サル型メダロットのモンキーゴングというメダロットだが、パーツ一式全価格六千円もする。

 イッキの新型ヘッドシザースのパーツは現在の市場価格では一式六万円。高額の部類に入る。

 後で配送先の勘違いも判明したが、ヒカルはわざとらしく知らぬふりをした。事情はどうあれ、仕入れる側にとっても決して安くない買い物。こんな高い物を勝手に仕入れてしまったのだから、平常から勤務態度に問題あるヒカルが店長に大目玉を食らうのも致し方ない。

 真剣ロボトルは、子供が持つにとってはお高い物を賭けて戦うのである。なけなしの小遣い貯めた。あるいは、一、二年分の誕生日とクリスマスプレゼントを我慢するのを条件に買ってもらった物。それが、奪われてしまうのである。

 そして、負けることは即ち、自分の友達や相棒と呼べる存在が無残な姿になるのを見ることになる。朽ち果てた状態の自分の愛機から、パーツをもぎ取り他人の手には渡すのは、正に苦痛と屈辱の二重苦だ。

 イッキはママから罰として、一年間お小遣い抜きとなった。

 自分が真剣に取り組めて、尚且つ、お小遣いを稼げる。この二つの条件に当て嵌まるのが、真剣ロボトルだった。イッキはこれまでの間、三人と真剣ロボトルをした。

 一人目は銀行勤めの若い女性。こちらは、すんなりと蝶型メダロット・レッドスカーレスの右腕を渡してくれた。

 二人目は男子高生。いかにも不良っぽく、ハリネズミ型メダロット・ソニックタンクの頭部を受け取る際、舌打ちされたのは怖かった。

 三人目は同じ小学三年生の男子。泣きながら蛇型メダロット・マックスネイクの左腕パーツを渡されたときは、自分がいじめっ子と勘違いされないか冷や冷やした。

 余談だが、メダロットにはスラフシステムという自己修復機能がある。これも語ると長いので、また別の機会に語ろう。

 イッキはレッドスカーレスの右腕をコンビニで下取りに出して、千五百円を手に入れた。メダロット社の規定により、コンビニやデパートではメダロットのパーツ単品買い取りシステム導入がされている。

 千五百円。たった僅かな金額だが、自分とロクショウの力で本気で取り組み手に入れたお金。

 いけないことで手に入れたメダロットだったが、イッキに本気で物事に取り組む苦労、そして、その楽しさを気付かせた。

 今日と明日の休日の二日、校内ロボトル大会が開催される。優勝は期待してないが、僕とロクショウの実力を試す絶好の機会。仮に優勝すれば、賞状と男性型ティンペット一台が授与される。

 学校開催のイベントだが、参加費用には千五百円取られる。見物だけでも、一般・保護者は五百円。児童も二百円支払らわなければならない。学校はロボトル大会の行事に本腰だ。

 参加には、クラス担任の教師に参加する(むね)を告げる。事前にロクショウからパーツを売る許可を貰った。ロクショウも腕試しがしたいようだ。イッキは大会参加募集締切日の水曜日に担任のオトコヤマ先生に参加表明を申し出て、千五百円の参加費用を入れた封筒を提出した。

 

 

 

 昨年の大会参加募集人数は七十人。今年は六九人。中々の盛況ぶり。

 大会は午前の部で第一回戦。一回戦が済むと、一時間のお昼休み。午後の部で第二回戦が行われ、三十分の休憩をはさんだのち、第三回戦が行われる。続く日曜日。午前の部第四回戦、二十分の休憩をはさみ、そのまま準決勝戦。昼食摂取の時間も兼ねて一時間半の休憩のあと、決勝戦が行われる。

 準決勝と決勝になると応援の生徒の親が減る代わりに、一般の見物客が詰めかけてくる割合が高い。学校側は自治体と協力して、休憩時間の間に校内と周辺の見物客・交通整備を行う。

 

 

 

 イッキパパは仕事の都合で今日は来れない。明日は休めるから、今日勝ち残ったら応援に行くとパパは

言っていたが、それは無さそうだ。

 イッキの一回戦の相手は、スクリューズの一番手であるカガミヤマが対戦相手だからだ。

 スクリューズは三人いて、一番手カガミヤマ、二番手イワノイ、そして、キクヒメという女の子がリーダーを務める。イッキと同じ三年生でクラスが隣り合っている。イッキが羨ましそうにロボトルの光景を眺めていると、いつも決まってこの三人はイッキのことをからかった。

 三人は三年生の番格であり、イッキを含むメダロットを持つ同学校の生徒は、できる限りこの三人とは目を合わせないようにしている。

 スクリューズは常に三人がかりで対戦し、パーツを奪っては荒稼ぎをしているという噂がある。噂の真偽はともかく、この三人は個々の実力も高い。学校で、この三人の誰かと一対一でやりあって勝てるような生徒はあまりいない。

 

「ご臨終だねぇ、イッキ」

 

 声にドスを利かせて、スクリューズのリーダーキクヒメが声をかけてきた。少女ながら、声には一種の威圧感があった。茶髪に顔立ちからして、キクヒメはどこか日本人離れしていて、両親のどちらかは外国人だと聞く。

 キクヒメの右側に控える腕白い細めの少年が、半笑いな目付きで小馬鹿にしたようにイッキを見やる。

 

「いやー。メダロットを初めて一か月も経たない初心者ごときが大会に出るなんて。ほんと、身に余る行為っすよね姉御」

 

 焦げ茶色のジーパン、肩のラインに沿って白筋が入った深青色のティーシャツ、僅かに垂れた瞼《まぶた》と斜め上に逆立つ黒髪が目立つ彼は、スクリューズの二番手イワノイ。

 キクヒメの左側に控える少年がイワノイの意見に同意する。任天堂の某RPGの主人公を連想させる赤帽子を被り、日焼けがかった浅黒い肌に丸みを帯びた体型、閉じているのか開いているのか分からない糸目をした少年だ。

 

「うん、ほんとほんと。家事炊事洗濯に慣れていない奴が、適量も分からず洗濯機に洗濯剤をぶち込んで、洗濯物を駄目にするみたい」

 

 意味不明な例えを話す彼は、スクリューズの三番手カガミヤマ。

 近くに三人のメダロットが見当たらない。スクリューズは試合直前に自身の愛機を呼び出すつもりだ。

 メダロッチとメダロットの本体には、「転送機能」がある。電波を受信することにより、何千メートルと離れたところにあるメダロットの本体を、メダロッチを通して瞬時に目の前まで送ることができるシステム。メダロットのこの「転送機能」も各分野における利用が試みられている。

 

「あんたがどの程度抗えるか見物だねぇ。カガミヤマ、たっぷりと可愛がってやりな」

 

 キクヒメはそう言うと、近くの売店へと足を向けた。イワノイ、カガミヤマも後に続く。

 これまでのところ全く負け無しで自信もついてきたが、イッキは自信を無くした。今まで無言だったロクショウが、メダロッチ越しからイッキに喝を入れる。

 

「イッキ、前と同じアドバイスを送ろう。がむしゃらになれ、イッキ。それに、この大会が始まるまでの間、私とお前は決して遊び呆けていたわけじゃない。勝つにせよ、負けるにせよ。あの三人には我々と対峙したらどうなるか、目に物を見せてやろうではないか!」

 

 常日頃は知的で落ち着きがあるロクショウ。だが、ロボトルとなると秘めたる魂が目を覚ます。

 ロクショウの言うとおりだな。今は勝敗を気にせず、全力で物事にぶつかろう。

 

「イッキ」

 

 チドリとアリカの二人がイッキを呼ぶ。

 ママとアリカとアリカの母親、三人は伴って校門を潜った。アリカの横にブラスがいないのを見て、イッキはママの横まで来ると、アリカにそれとなくブラスがどこにいるか聞いてみた。

 

「ブラス? 先に行ってもらって、見物の場所取りをしてもらっておいたの?」

「アリカちゃーん!」

 

 遠目から、ブラスが跳ねてアリカに手を振っていた。

 

「イッキ、あんた何よその自信無さげな顔は」

 

 ロクショウの喝で元気になったつもりだが、アリカや他から見ると、どうもそうではないらしい。本音を漏らせば、実はまだ怖い。

 

「あんた、一回戦の相手は確かカガミヤマだったわね。スクリューズがなによ! あんさんとロクショウなら、カガミヤマ程度なら一発ノックダウンや」

 

 アリカが大阪弁も交えた男っぽい声でイッキを激励するのを聞いて、アリカの母親が注意した。

 

「こら、アリカ。せめて口調ぐらい女の子っぽくしたらどうなの」

「別にいいじゃん、お母さん。じゃ、イッキ。三回戦で会いましょうね」

 

 アリカは元気良くブラスの元に駆け寄った。アリカの母親は、やれやれと首を振った。

 

「ほんと、あの子ときたら」

「いえいえ、子供はあれぐらい元気のほうがいいですわ。うちのイッキに見習わせたいくらいですよ」

 

 ママは僕の頭を撫で回した。イッキは撫で回すママの手を煩わしそうに払い除けた。

 

「ママ。こんな人前で」

「あら、いいじゃない? もしかして、これぐらいで禿げちゃうと心配しているの」

 

 チドリがもう一度イッキの頭を撫でようとしたら、イッキは逃げるようにアリカとブラスが座るシートに向かった。

 

「逃げられちゃいましたね」

 アリカの母親が笑顔で言う。

「ええ」

 

 今は撫で回せる高さにあの子の頭も、そのうち、自分の頭に手を伸ばすぐらいの大きさになるんでしょうね。ふとして過る感慨を消すように、大会開始十分前の放送が流れる。

 イッキとアリカが二人に早くくるよう促す。

 

「さて、あの子たち二人がどこまで頑張れるか。見届けさせてもらいましょうか」

 

 チドリの言葉に、アリカの母親は小さく相槌を打った。

 

 

 

 試合台は警戒網を張ったグラウンド内部の中央。そこを、相撲の土俵のように土で盛り上げただけだった。

 一分で一回戦は終了した。飛行系パーツの脚部を装着した機体に、相手はランドモーターの対空攻撃パーツでこれを撃墜した。

 続く一回戦第二試合、天領イッキ&ロクショウ対カガミヤマ。カガミヤマは既にメダロットの本体を自宅から転送していた。

 カメ型メダロットのキースタートルこと鋼太夫(こうだゆう)。カメ型だけあって移動速度は鈍いが、その分装甲が厚い。また、両腕と頭部から発射されるレーザーはかなりの威力と速度を誇る。

 東はイッキとロクショウ、西はカガミヤマと鋼太夫。

 黒い紳士ズボン、白い半そでの紳士ティーシャツに蝶ネクタイという出で立ちで、鼻と口の間に立派に生やした髭を蓄えた初老の男性が、試合台中央で両者を交互に見やる。

 

「先ほども申し上げましたが。私、ロボトル協会公認レフェリーのミスター・うるちと申します。メダロットが機能停止、あるいはマスターがギブアップの意を表明した場合、一方の勝利とします。それでは、このロボトル合意と見てよろしいですか?」

 

 イッキとカガミヤマは一つ首を縦に振った。ロクショウと鋼太夫は睨み合っている。

 

「ロボトルファイトー!」

 

 開戦合図と同時に鋼太夫はいきなり左腕のレーザーを発射した。

 不安でしょうがなかったが、この試合は自分とロクショウが優位だと分かった。何故なら、周りは観客だらけで、格闘タイプのロクショウの攻撃は余程のことが無ければ安全だが、レーザーだとそうもいかない。人に当たっても死には至らないだろうが、何らかの被害は確実に出る。

 カガミヤマは威力と速度を高めた左腕の極細のレーザーの一発で決めたたかったようだが、そうは問屋が卸さない。ロクショウの脚部の一部であるスカート状のものを一部焦がしただけであり、ロクショウは全くの無傷で済んだ。

 

「ロクショウ、もう下手な作戦は要らない。正攻法で攻めろ」

「御意!」

 

 近づいては、チャンバラソードで一番装甲が厚い脚部を攻撃した。鋼太夫は腕を振るうなりして抵抗を試みるが、元来射撃タイプのキースタートルのパンチが当たるわけも無い。四回右腕のソードで攻撃して、ロクショウは鋼太夫の四本ある足を全て切断した。

 レーザーやビーム系の攻撃は、次の一発を撃つのに時間を要する。更に観客は高い壁から見下ろしての観戦ではないので、思い切った攻撃ができない。

 やけくそといわんばかりに三門レーザーを一斉発射。ロクショウはこれも難なく避わす。試合台に三つの風穴が開いた。無茶な攻撃で身動きが取れなくなった鋼太夫の頭部へ、ロクショウは左腕の必殺武器・ピコペコハンマーで叩いた。鋼太夫の頭頂部がひしゃげ、メダルらしき物体が弧を描いて飛ぶ様が見えた。

 

「鋼太夫機能停止! 勝者、天領イッキとロクショウ」

 

 マイクも使わず、ミスター・うるちの勝利者宣言は観客全員の耳に届いた。

 その後も消化試合は行われて、お昼の十二時五十分頃には一回戦が終了した。

 

「イッキ、ロクちゃん。二人とも意外とやるじゃない」

「アリカ、ブラスおめでとう。けどね、アリカ。あんな風にがなり声で叫ぶのは、できれば控えてちょうだい」

 

 イッキ、甘酒の両母親が自分の子供たちとその相棒の戦いぶりを褒めた。

 四人はピクニック用のシートに座り込み、昼食を取っていた。今日は特別に、チドリはイッキの大好物の一つであるトンカツを持ってきた。ここにカレーも加われば、イッキにとっては最高の食事である。

 アリカはパセリに野菜サラダなど、意外にも青野菜系の料理を好む。

 食べて、出す物も出してリラックスしたあとは二回戦へと突入。

 二回戦の相手は五年生。一回戦で使用したパーツを全て別のに替えていた。

 脚部がラビゥオンバット、右腕は付けた機体の行動速度を高めるチャージドシーズのパーツで、残る左腕と頭部は何とソニックタンクのパーツだった。

 ソニックタンクとなら、一度手合わせたしたことがある。だが、この前と違ってこちらはソニックタンク一式で組み立てず、スピードがあるパーツを二つも装着している。

 純正では挑まず、右腕をマックスネイクに付け替えた。

 イッキはまずロクショウに索敵するよう指示を出した。記述していなかったが、実はロクショウにもセーラーマルチと同じ索敵の機能が備わっている。索敵しつつ、右の蛇を模した頭で相手の足を叩き、牙から直接、対メダロット用の有害な液を流し込み、相手の動きを阻害した。

 相手の左腕から放たれるナパームを避けつつ、ロクショウは相手の行動速度とパターンを分析した。二分経過、ソニックタンクが後ろに飛んだのを見計らい、ロクショウはダッシュした。頭部からのナパームを頭上ギリギリのところで回避し、ロクショウは相手を切り伏せて勝利した。

 この試合では全くの無傷とはいかず。一発、左腕にナパームを食らってしまった。

 運営委員会のメダロット、ホーリーナースとムーンドラゴーンの二体がロクショウの腕を治療した。スラムシステムを異常促進させてパーツの自己修復機能を高めさせる、いわゆる回復系のパーツを二体は備えている。

 損傷具合が浅かったため、五分後にはロクショウの左腕はすっかり元通り。

 

 

 

 第三回戦、これで前半戦は終了する。

 対戦相手はスクリューズの二番手イワノイ。使用する機体はシアンドッグの後続機、DOG型イヌメダロットのブルースドッグ。イワノイは名前を付けず、機体名称を名前としている。

 

「イッキ、仇を討とうなんて思わないで。ただ、滅多切りにしてくれるだけでいいから」

「イッキ、アリカちゃんの仇を討つのよ」

「イッキ君、適度に頑張ってね」

 

 アリカ、ママ、アリカの母親の三人の応援はバラバラだ。

 

「イワノイ! あたいらの力を今度こそ見せつけてやりな」

「合点承知の助だ姉御」

 

 キクヒメの啖呵に、イワノイはガッツポーズで応えた。前の第二試合で、ブラスはイワノイのブルースドッグに敗北を喫した。

 治療を施されたが、体中の弾痕跡が消えるには時間がかかりそうだ。痛ましいブラスの姿を見て、ロクショウに、イッキも珍しく燃え上がった。

 ロクショウがポーズを取る。クラウチングスタートの姿勢だ。

 

「何だぁ? まさか、真正面から突っ込む気か?」

 

 二人は答えない。

 

「あんま調子に乗るんじゃないぜイッキ。おいらのブルースドッグの実力は、そこらの同機種なんかとは比べ物になんねぇぜ」

 

 イッキはイワノイの挑発に全く乗らなかった。

 思えば、ことあるごとにメダロットを持ってないことでからかわれてきた。だけど、もうそうじゃない。今は、ロクショウというお堅いが最高の相棒がいる。

 イッキは一回戦でカガミヤマがとった戦法と全く同じことをやろうとしていた。試合開始合図と共に、全力の一撃をぶちかます。男のガチンコアタック。失敗すれば、待つのは蜂の巣。

 ミスター・うるちのロボトルファイトの叫びと同時に、ロクショウはブルースドッグに向かって疾風の如く駆ける。

 右腕を撃たれ、更に脚部に三発を食らって素っ転ぶロクショウ。観客の誰もが駄目だと思ったとき、ロクショウは勢い殺さず撃たれた右手を地面に叩きつけると、宙返りしてブルースドッグの顔面をぶん殴った。ぼっがーん!

 ブルースドッグは観客席まで吹っ飛んだ。審判がカウントを取る。

 

「エイト、ナイン、テーン! ブルースドッグ機能停止! 勝者、天領イッキ&ロクショウ」

 

 試合開始から十五秒で決着。今大会最速勝利。

 今度は数人だけでなく、イッキとロクショウは多くの観客から拍手と称賛が贈られた。決着の速さに何が起きたか分からず、イワノイは(とぼ)けた表情をしていた。

 


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