メダロット2 ~クワガタVersion~   作:鞍馬山のカブトムシ

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エピローグ.パーツンラリー開催

「ねえ、ヒカル兄ちゃん。怪盗レトルトは死んだと思う?」

 

 コンビニのレジ打ち台で暇そうに眠たげな目で肘かけるヒカルに、イッキは怪盗レトルト一行について尋ねた。光太郎とトモエはいない。三ヶ月が経ち、メダロットを堂々と歩かさせられる日が来た。二人は今、思いっきり自由を満喫している。ロクショウも自由行動だが、くっついて来た。許可を得て、コンビニの経済誌を立ち読みしていた。

 

「ああ? んー、そだね。死んでるかもしれないし、生きてるかもしれないね」

「どっちだよ」

「どっちかもね」

 

 答えにならない答えを聞いて、肩を落とす代わりにわざとらしく溜め息を吐いた。フユーン墜落時、怪盗レトルトとレディは残っていたことをイッキは証言した。ヘベレケ死亡説が流布する中、かの怪盗二人組の死亡説も流れ出した。

 それはないとイッキは思った。あの二名に関しては、まず生きているだろうという強い確信があった。

 

「それにしても、君。騒ぎの渦中でもあるあの中にいて、よく助かったね」

 

 うんと言った。フユーンで起きたことをイッキは大体話したが、話さなかったこともある。自分とメダロット達が過去に行った事。過去から帰還してパワーアップを果たしたものの、ゴッドエンペラーは想像以上に強く、命懸けの戦いの末、破壊した事もごく一部を除いて話さなかった。言っても、誰も信じてくれる訳がないから。自分がもし、蚊帳の外にいて、その話を聞かされても、信じなかったことが分かるから。

 一部とは、アリカ、メダロット博士、ママである。ママにはふざけた感じで、僕らがゴッドエンペラーを倒したとだけ言ってみた。チドリは悟ったような眼差しで、そのとおりかもしれないわねと返した。訳を聞いても、さあなんでかしらとかわされた。

 アリカ、メダロット博士には包み隠さず明かした。二人とも信じてくれたが、話が壮大過ぎて、他に信じてくれる人はいないだろう。いずれも同じ答えだった。

 密かに、英雄願望を満たしたい想いがあるのか。そういう気持ちがないわけではないが、信じてくれる以外で何か納得したいものがあった。イッキはなんとなく、ヒカルに明かしてみることにした。ちゃらんぽらんで頼りないが、話しても問題が無さそうに思えた。

 

「ねえ、ヒカル兄ちゃん。少し、話したいことがあるんだけど」

「なんだい」

 

 イッキの真面目な表情と口振りから察して、ヒカルは背筋を伸ばした。イッキはぼそぼそと小声で、要所要所、掻い摘んだ形で真実をヒカルに打ち明けた。鼻で笑われるか、口だけ信じていると言う思いきや、ヒカルは思いつめたような顔で、イッキの顔を見た。

 

「君は自分の功績を人に多く知ってもらいたくて話したのかい?」

「違うよ。ただ……なんというか、人にちやほやされたいんじゃなくて、引っ掛かっている物を納得させたいんだ」

 

 ヒカルは表情を和らげた。

 

「そうか。それならいい。君を納得させられるかどうか分からないけど、僕のある友人の話をしてやろう。断っておくが、そいつの名前は明かせない。君を信用できないと言いたいのじゃないけど、名前を勝手に教えられるのを極端に嫌っているんだ。そこんところ理解してくれ」

「わかった」

 

 ヒカルはある友人とやらのことを語った。ヒカルによれば、彼は凄腕のメダロッターらしく、日本ばかりか世界の上位ロボトルランキングにランクインしているとのこと。彼は最初からメダロットに興味があったのではなく、ペットの犬がメダルを拾い、帰ってきたら、父親が強引にメダロットを持たせたのがきっかけでメダロッターになったようだ。

 当初は衝突ばかりで、折り合いも悪かった。彼のメダロットは、彼のことを全く信じていなかった。一時期は絶縁状態にもなったが、数ある事件を解決し、ロボトルをこなすうちに段々と仲が良くなった。最終的には組織犯罪を解決する功績を残し、時の人として持ち上げられた。だが、彼は大衆の目に晒されることを望まなかった。メダロットと一緒にいて、普通に暮らすのが彼の望み。

 ヒカルの友人は大衆の好奇心と嫉妬に晒されるのが耐えきれなくなり、人前から姿を消し、ひっそりと暮らすようになった。彼は人々が造り上げた英雄像を背負いきれる自信が無かったのだ。

 

「その人はどうしているの?」

「一応、元気にしているよ。今でもたまに会って、連絡を取り合う。イッキ君」

 

 真剣な表情と声で名前を言われて、イッキは背筋を伸ばした。そうしなければいけない気がした。

 

「もしかたら、そいつに重荷を背負う覚悟が無かっただけかもしれない。けどね、君の体験談を世間に公表して、世間が注目したとき、君はそれに耐え切れるかい? 芸能人のように、自分のキャラを造り続けられるかい?」

 首を振るう。「そんなことに耐えられる自信なんてないよ。自分を殺し続けるなんて」

「そうだね。でもね、成長するにつれて、どんな人間でも自分を殺さなきゃいけない場面がくるもんだよ。だけど、必要が無ければ、無理して自分を押し殺すことも無いさ。見極めが肝心って奴だね。押す通すのも押し殺すのも。そうそう。僕なりに考えてみたけど、君の心の靄がわかったと思うぞ。ずばり」ヒカルは推理ドラマで犯人を指差すみたいにイッキに人差し指で向けた。「君は知ってもらいたかったんだ。自分の功績とかじゃなくて、物語の世界でしか味わえないような苦労と冒険や感動が実際にあったことを、自分一人の胸に閉まうのが惜しかったんだ。でも、妄想とか、夢の話だろと言われるのが怖かった。そうだろ?」

 

 目から鱗が落ちるとはこのことか。ヒカルの言ったことはイッキの胸にすっと、溶け込んだ。

 そうか。そうだったんだ。自分がしたことを自慢したいんじゃなかった。メダロットと暮らしてから、架空の物語でしか起こりえないことを多く体験した。楽しいことばかりじゃなかったし、嫌なことや怖い目にも遭った。それでも、終わった後、すぐにではないが自分の中で何かが培われた感覚。

 世界はこんなにも広くて、自分が思う以上に不思議な出会いや別れが一杯ある。自分の知ったことを自分以外の人にも知ってもらいたかった。だが、どうせ夢の中の話だろ? こんな一言で否定されるのが嫌だった。そして、昔の自分なら、表面では同意しながら、内心では夢を見すぎだと小馬鹿にしていたかもしれない。話したくても話せず、以前の自分なら多分、否定したと思う物語。自らではわかりえなかったもんもんとした思いは、ヒカルの言葉で解消された。

 

「ヒカル兄ちゃんて……案外、大人なんだね」

「褒め言葉として受け止めておくよ」

 

 頬をぴくりと引きつらせて、ヒカルは言った。イッキは一本十円のスナック菓子二本と週刊少年誌一冊をレジに置いた。話を聞いてもらい、話をしてくれたささやかな恩返しのつもりだった。慣れた手付きでレジを打ち、まいどありぃと、店長がいたら雷落ちること間違いなしの挨拶をした。

 ロクショウは少し待てと、イッキを外で待たせた。ロクショウはじっと、ヒカルを見上げた。顔に何かついているのか? ヒカルにそう聞かれても、ロクショウは何も言わない。

 私だけだろうか? イッキはもちろん、光太郎もトモエも気付いた様子はない上、自分も確証はなかった。ただ、ロクショウには彼しか思い当たる人物はいなかった。証拠はないが、ばらせば、警察やセレクト隊はすぐに彼の友人とやらの正体を突き止めるだろう。彼の友人と、かの二組の正体は知れ渡ることになる。

 しかし、彼にも事情はあるのだろう。彼が語らない限り、経緯は到底知りえないが、いつか彼の口から真実を語る日がくるだろう。勝利のきっかけを作ってくれた恩もある。

 

「あの日、フユーンでイッキの友人たちと他の方々を助けてくれた礼。そして、ゴッドエンペラーに手傷を負わせた強さを称賛したくてな。ありがとう」

 

 ヒカルは目を丸くして、なんのことやらさっぱりだと微笑えみながら首を微かに振った。

 

「君は君のマスター以上におかしなことを言うね。いちコンビニ店員のこの僕が兵器と戦って、おまけに人を助けただって? 冗談も大概にしてほしいよ。ほら、君の御主人が待ってるぞ」

 

 ロクショウが店を出て、自動ドアが開いたとき、ヒカルはいつもより大きな声でありがとうございましたと挨拶をし直した。珍しく、ヒカルは礼儀正しく溌剌とした調子で客である二人を見送った。二人は顔を見合わせたが、振り向いてヒカルにさよならと手を振った。二人が前を向いたら、ヒカルはその背に向けて小さく手を振り返した。

 

 

 

 三月二七日。遂に来るべきメダロット社開催の一大イベント。大規模メダロットパーツ競争争奪戦大衆大会、略称パーツンラリーが行われる。日本全国の各地都道府県から大勢のメダロッター達がこぞって参加をしにくる。海外からも多くのメダロッターが来日した。

 パーツンラリーの開催期日は二七日から三十日の四日間。他の機関へ配慮して、一日につき朝の九時から夕方の五時までの間の運営と定められた。メダロポリス・御神籤町・秋葉原と二つの都市と一つの町を舞台に、メダロット社の新システムを搭載した隠された新型メダロットのパーツを奪い合う。

 イッキたちやスクリューズなどのメダロッターは当然、新型メダロットパーツの奪取に燃えていたが、彼らのようなメダロッターたちは全体でいえば四分の一に過ぎない。大半のメダロッターの目的は自らの愛機に自由に運動する機会を与える為か、話のネタとして立ち寄ったり、メダロッターとメダロット同士の交流を目的として来ているのが殆どで、新型メダロットのパーツはついでに手に入れば、それで良しと考える者で占めていた。

 パーツンラリーの目的は新型メダロットのお披露目もあるが、世界中のメダロッター交流の場を作ることにより、落ち込んだメダロット市場を回復させる狙いもあった。

 開催日、イッキは六時半といつもより早く起床した。ジョウゾウは温かい紅茶を飲み、いつでも出勤できる準備は整えられていた。朝ご飯は、納豆に白米、卵焼きとゴーヤの味噌汁と、やや変わった組み合わせ。この朝ご飯で紅茶は合いそうにないが、そこは本人の自由であり、まだ紅茶やブラックコーヒーを飲めないイッキには、どうでもよかった。

 寝覚めのため、板チョコを割って頬張った。甘味が口内に染み込んでゆき、噛むたびに頭が覚めていく。

 朝ご飯を食べながら、チドリとイッキ、ソルティはわんと吠えて、ジョウゾウを見送った。ソファに座り、胃の物を少しでも消化したら、小さなバッグに水筒と財布、連絡先が書かれたメモを入れた。チドリは車で送ろうかと言ったが、断った。体が、足が動きたくてうずうずしていた。車で行くよりも、自分の足で駅まで行ったほうが落ち着く。

 

「行ってきまーす!」

「いってらっしゃい」

 

 家を飛び出すと、寄り道せず、真っ直ぐに駅へ直行した。駅に着くと、イッキはぜいぜいと肩で息をしていた。アリカは数分後、母親の運転で駅まで来た。

 子供料金の切符に反応し、改札口がちゅんちゅんと鳴るが、子供である二人は音をさして気にせず通過した。

 普段、空いている御神籤町駅発の電車も、今日ばかりは大勢の人でごった返し、珍しく満員電車の有り様だった。自然とイッキとアリカは肩をつけあう形になった。日本にくるまでの間、商品として箱詰めされた昆虫もこんな気分なのだろうか。息苦しくていらいらする。到底、恋愛系の創作物にあるロマンチックな気分には浸れそうにない。アリカも同じ気持ちだった。

 人混みに押し出されて二人は電車から降りた。大げさなまでに、息をついた。イッキは体を伸ばした。

 

「やれやれ。毎日、こんなおしくら饅頭はごめんだよ」

「都会の通勤時間帯だと、これが普通よ?」とアリカ。

 

 改札口を降りて、駅と繋がるデパート・メダロッターズの近くにある大型ドームと周辺が会場であり、参加の受付も怒っている。朝の八時二十分だが、さきの通勤ラッシュとは比べ物にならない人に加えて、当然、メダロットの姿もある。会場整理は人間以外にも、クリアダイビング・レディブースター・ランドローターら、変形機能付きのメダロットも整備係にいた。

 人混みが多すぎて、どこになにがあるか把握できない。二人ははぐれないよう、手を繋いで、ステージに近寄ろうとしたら、おいと声をかけられた。

 

「おい、イッキ。アリカ。一ヶ月ぶりだな」

 

 人混みを掻き分けて現れたのは、コウジだ。右手は誰かの手を握っていて、その誰かもひょいと顔を出した。

 

「お久しぶりです」

 

 やはり、カリンちゃんだ。奇遇だねと、イッキがいった。

 

「奇遇でもなんでもない。俺たちは予め、席を予約していたんだ。お前ら二人もこいよ」

「嬉しい申し出だけど、もう席はないでしょ?」

「そんなことはない。実はハチロウも来ているんだが、あいつ、両親の分も予約していたけど、生憎、二人とも仕事の都合でこれなくなったらしい。だから、頼めば座らせてくれるだろうし、ハチロウもお前達が隣なら喜ぶと思う」

 

 イッキは喜んだが、アリカは渋面を作った。事情が事情とはいえ、花園での一件は今だ、ハチロウに対するアリカの印象はよくなかった。コウジとカリンに案内されて、予約席に行ったら、マイキーを膝に抱くハチロウがいた。マイキーのパーツは以前と異なり、ピンゲンからペンタッチンにリニューアルしていた。一つ離れた席には執事のセバスチャンさんもいた。

「ハチロウ」コウジに呼ばれて、少し暗い顔をしていたハチロウは面を上げて、イッキたちの姿を認めたら、表情を明るくした。ハチロウの頭はスポーツ刈り。どうやら、前の手入れが大変な長い髪型より、このほうが気にいったようだ。と、アリカとハチロウの視線が合う。ハチロウは気まずそうに目を逸らしたが、ゆっくりとアリカの顔を見て、お早うといった。始めは固い表情のアリカも徐々に相好を崩し、笑顔とまではいかなくても、幾分、和らいだ顔でハチロウに挨拶をした。

 イッキは右に、アリカはセバスチャンの隣になる左に座った。イッキは交互にハチロウとマイキーを見た。

 

「本当に座ってよかった?」

「いいよ! 誰も座らない席を取っていても、無意味だしね。ママとパパが来なかったのは残念だけど、君らを招待したと思えば、元は取れたよ」

「なにその、間に合わせみたいな言い方?」

 

 アリカが噛み付いた。

 

「い、いや。別に変な意味はないよ。要は、嬉しかったってことさ」

「そういえば、ベルモットさんは?」

「ベルモットさんも来ているはずだよ。こういう賑やかな場所だと、あの人は椅子に座るより、立ち続けるのが好きだから、立っている人たちの中にいると思うよ」

 

 ハチロウは群衆のほうを差した。確かに、椅子にじっと座るより、ああして立つほうが楽しいと思えるタイプの人だろう。

 

「ボク、またイッキ君とアリカちゃんにあえて嬉しいよ。ロクショウ君たちも元気?」

 

 ハチロウの膝に座るマイキーが喋った。

 イッキは、ロクショウもブラスたちも元気だよと答えた。

 ピンゲンより一回り大きいペンギン型のペンタッチンだが、新型のペンギンも相変わらず、老若男女問わず、心を癒してくれるメダロットとして人気がある。さして変化はないが、円らな瞳が子供向け番組のマスコットキャラ的なくりくりとまん丸い目の大きさに変化したのが最大の特徴だ。

 

「ラピも可愛いけど、マイキーも可愛らしいわね。触ってもいい、ハチロウ?」

 

 アリカから話しかけられて、ハチロウは一瞬、身を引いたが、すぐに笑みを浮かべて、マイキーをアリカに差しだした。アリカに撫でられると、マイキーは嬉しそうに頭を手の動きに合わせて揺らした。アリカとハチロウは、可愛いい仕草をみせるマイキーを見て微笑んだ。二人の間にあるわだかまりは無くなったと知り、イッキとコウジにカリンは安心した。

 ホッピンスターとワイアーニンジャはどうしているのとアリカは聞いた。マイキーは、あの二機とはとても仲良くやっていると答えたので、安心した。嫌な性格ではないらしい。

 時間に余裕があるので、飲み物を買いに行くとアリカは立った。イッキは水筒があるからと断った。アリカは三人からお金を受け取ると、適当な売店を探した。ブラスも転送し、ついでにネタは転がってないか探させた。一際、目立つ店の前で立ち止った。 

 服装からして、同じグループが経営しているらしく。店は数珠繋がりで、全員白いゴムスーツを着用しており、戦隊ヒーローのようなヘルメットを被っている。シールド部分は突き出て、耳当て部分は棘のように伸びていた。全員、金髪である。前後で五軒ずつ数珠繋がりしており、どの店の間にも大きなスペースがあり、その隙間で人とメダロットの一芸を披露していた。

 ヨーロッパの旅芸人の一座か? 売り物はお面にあんず飴、たこ焼きに焼きそばなど、えらく日本的だが、国柄に合わせているのだろう。

 ジュースとおにぎりを売る店で買うことにした。世界平和と書かれているが、売り上げを寄付でもするのか。アホ毛の男、刀傷があるたらこ唇の大男、スタイルが良い口紅で口を真っ赤に塗る女性、前髪の頭髪をきつく逆立つよう縛った、おしゃぶりを加えた男の子。四人も全員金髪で白スーツを着ているが、ヘルメットは被らない。どこかで見かけた気がする。

 

「あのー、すみません。ジュース三本とおにぎり二個ください」

「オーケー、ベリーマッチョ。ジューシーアンドおーにぎりね?」

 

 大男が対応した。それっぽいが、どうも胡散臭い話し方だ。アリカは大男に直接聞いた。

 

「世界平和と書かれていますけど、売り上げを寄付するのですか?」

 

 男は揉み手をしながら答えた。「そーですヨ。我らの世界せ……」

 突然、男は悲鳴を上げて飛び跳ねた。アホ毛の男が片手を上げて、謝った。

 

「オウ、ソーリーソーリー。ゴキブリいたから、踏もうとしたら間違えたね。えろうスンマヘン」

 

 足をさする大男の代わりに、釣り針のような形をした特徴的なアホ毛が会計を済ませた。

 

「私、あなたに会ったことありません?」

「ノーノー。ミー、あなた知りまへん。よくある顔ね、これ」

 

 その頭でと言いたかったが、ブラスに開催時間が迫っていると袖を引っ張られたので、戻ることにした。

 

「センキュー、ロボ」

 

 アホ毛男はがばと口を閉ざしたが、耳ざといアリカは聞き逃さない。

 

「今、ロボっていった!?」

「の、ノー。違うね。メダルロボットを呼ぶとき、いつもロボと呼ぶアルね」

 

 今度は語尾に中国人を連想させる語尾をつけた。戻るよう促したブラスも、疑いかかった時、拡声器がパーツンラリー開始十分前であることを告げた。二人は慌てて、引き返した。二人が去った後、アホ毛男が仲間たちから責められたことを知るよしはない。

 

 

 

 メダロット博士、ナエさんの他、株式会社メダロットの社長二毛作氏以下、数名のスーツ姿の男性たちが壇上に立った。ナエさんは派手すぎない、淡いピンクのOLスーツを着用。メダロット博士は帽子から革靴に至るまで、年期が入った渋い茶色のスーツという洒落っ気のある装い。ただ、いつものサングラスは相変わらず。本人がトレードマークとして長年身に付けていたためか、スーツとの違和感は感じられない。二人の白衣姿しか見ていない者たちにとっては、非常に新鮮で、別人かと見紛う。

 二毛作氏の開幕の挨拶から始まる。各関係者の挨拶終了後、メダロット博士とナエさんの挨拶も兼ねた新システム搭載の新型メダロットのお披露目の時。

 イッキたちはメダロットを出した。メダロット達自らが、自分達が身に付けるかもしれないパーツを見たがったのだ。

 決まりきった短い挨拶を済ますと、七名のコンパニオンガールが布を被せたカートを一台ずつ押して登場。その一人には、なんとキララまでいた。胸元をあまり強調しないかわりに胴回りを露出、腰や体のラインが程よく浮き出て、ブルマのようなズボンを履き、男性と年頃の男の子の心を浮き立たせた。ガールたちは笑顔を振りまく。イッキとアリカがいる方向を見た時、キララはウインクをした。

 メダロット博士がさっと手を挙げるのを合図に、コンパニオンガール達は布を引き上げた。

 七体の内、三体のメダロットを見て、首を傾げる者たちは大勢いた。クリアダイビング・レディブースター・ランドローターの三体ではないか。これのどこが新型メダロットだ。だが、四体のメダロットには多くの注目が寄せられた。

 真ん中はクワガタ型、右はカブト型。更に右にいるのは、ウォーバニットやスミロドナッドの後続機だろうか。異なる点は多々あるが、無駄な物を省き、よりスマートに身が引き締まったというのが全体の第一印象だ。

 博士は順に、新型メダロットの機体名称を説明した。

 

「KWGクワガタ型の機体名称はドークス。KBTカブト型はサイカチス。右側にいるのはKLNライオン型ユニトリス。STGサーベルタイガー型エクサイズ。そして、残す三機は」

 

 ナエさんが袖をまくり、メダロットのボタンを押した。すると、三機の変形機能を備えたメダロットたちは新たなる姿へと変わった。クリアダイビングとレディブースターはスマートな水色の人型メダロットへ、ランドローターは機関車が人型化した姿へ変身。スカイカーゴ、オートクルーズ。機関車はヴェイパーレールと紹介された。

 

「それでは、私はこれから、ナエと一緒にある言葉を叫びます。会場にお集まりの皆様方、しっかりと聞いてください」

 

 博士とナエさんはある言葉を叫んだ。メダチェンジ!!

 驚愕すべきことが起きた。七機のメダロットはメダチェンジの言葉と同時に、一斉に変形した。

 人型機関車は完全なるSLへ。二体の水色のメダロットは、飛行機と高速艇へ。ドークスは重量感溢れる白く美しいクワガタムシ。サイカチスは武装したバギー車。ユニトリスは勇ましい猛獣フォルムへの車へと変化し、エクサイズは太い脚で四つん這いと、より野生らしさが増して、本物の肉食動物をみてるようだ。

 

「これぞ新機能、その名もメダチェンジ! 本当はメダロッチによる操作も必要ですので、声をかけただけでは変形しないのであしからず。

 従来の変形機能を備えたメダロットは、主に移動や運搬を目的とした物でありましたが、メダチェンジは違います。メダチェンジは従来の移動・運搬能力に、ロボトルにおける戦闘能力も加えられ、更に変形後の能力を大幅に上昇。あるいは、変形前とは異なる能力を与える機能。それが、メダチェンジです。残念ながら、この場で全てをご紹介することはできませんが、ドークスとサイカチスの二体にデモンストレーションを行ってもらいましょう」

 

 ステージ台と観客席に大きな間があったのは、このためであった。ステージから競りあがるように、二体のメダロットを模した模型が登場。

 

「模型はそれぞれ、ナイトアーマーという防御メダロットと同じ装甲があります。では、まずはドークスから」

 ナエさんが左腕のメダロッチから指示を出す。「ドークス。ターゲット右斜め前方三七度。ドライブA使用」

 

 ドークスが動き出す。六つの足で安定感のある素早い動きを見せる。ドークスの両脇から横幅に広いハンマーとギザギザのソードが出現。ソードがハンマーの先端にくっ付くと、ドークスは跳躍し、お辞儀でもするように頭と腰を模型へ曲げた。ハンマーが先に当たり、模型は上半身が大きくひしゃげ、目にも留まらぬ速さで先端のソードが目標である模型目がけて、上半身から下半身にかけて切り裂く。

 お次はサイカチスの番。サイカチスは華麗なドライビングテクニックを見せた。サイカチスはステージ台端の真横に着くと、手足から太いフックを出して、体を動かぬよう固定。サイカチスの肩にある排気筒と思われた物は砲台へと早変わり。そして、サイカチスは両肩から、ミサイルでも銃弾でもない、黒い砲丸を発射。模型の上半身と下半身に風穴をぶち開けた。

 一瞬の静寂を挟む。

 

「いかがでしたか」

 

 メダロット博士が静寂を破る。会場一体から怒涛のごとく、興奮の叫びと拍手が湧き上がった。負けず劣らず、アリカなどのジャーナリストたちがシャッターを切る。

「ぶったげまたもんやなあ」と光太郎。同意するようにトモエが言う。「私の盾でも防げないでしょうね」ロクショウも精一杯新型のクワガタに拍手をしたりするなど、意外な一面をみせた。

 イベント関係者。特に、メダロット社の社員たちは内心、ガッツポーズをした。集まった客とマスコミの反応は予想を上回る盛況。デモンストレーションは成功。幸先の良いスタートである。

 模型は片付けられて、引き続き、メダロット博士による演説が行われた。最後は報道を意識したパーツンラリーのルール説明だった。

 パーツンラリーは最終日まで参加可能。各所に隠された新型メダロットのパーツを合計して、順位を決める。

 一位にはパーツの他、賞金百万円と四名まで友人・家族ご招待の四泊五日のハワイ旅行。二位には賞金三十万円と賞金額範囲内の家電製品を任意で選択して一台プレゼント。三位には賞金十万円と熱海の一泊二日の旅行券が贈られる。パーツを一つだけ入手した人には、人数に応じて抽選を行い、四名には賞金五万円と新型メダロット。外れた人にも、一万円の商品券が進呈される。一つでもパーツを入手すれば、一回だけ、二割値下げした価格でメダルとティンペットが購入可能。

 なお、例えば、最もパーツを入手しても二つで、他は一つという状況の場合。優勝はパーツを二つ得た人物に決まり、二位から三位、四名の四位を抽選で選ばれる。二八個のパーツが二八人に行き渡った場合、特設会場にて、ビーチフラッグ形式のスポーツで順位を決める。一つのパーツを入手した者が半分以下の場合、バトルロワイヤル方式で各メダロッターは一体のメダロットを転送して、残りが四体となるまで戦い抜く。

 他にも細かな規定があり、あらゆる事を想定して、ルールは作られていた。

 ルール説明が終わると、コンパニオン達は射撃パーツを持たないメダロットに運動会で使われる音を上げるだけの銃を手渡した。

 会場の四方が騒がしくなる。ステージ台の中央から、ミスター・うるちが出現した。会場の四方からは、メダロット協会公認レフェリーたちが出没していた。うるちは空気を読んで、挨拶を短く済ました。

 股を大きく開き、右手を真上に伸ばす。

 

「それでは、日本&世界各国の皆様。長いことお待たせしました。……パーツンラリー大会スターァトォ!!」

 

 ロボトルファイトの合図と同じポーズで、ミスター・うるちはパーツンラリーの開催を告げた。ステージ台のメダロットたちも一斉に空へと開始合図の銃を撃つ。大半の者は歩いたが、イッキなど、元気に溢れる者たちは会場から外へと駆けだした。

 

「ここからは敵同士よ。一位は私が頂くわよ。イッキ、あんたにも負けないから」

 アリカはいち早く、外に出た。コウジ、カリンが後に続く。

「こっちこそ。イッキ、アリカ。お前らには負けないぜ」

(わたくし)も頑張ります」

 

 ドームから出たら、四人は別々に行動した。別行動間際、アリカはイッキに警告した。

 

「気を付けなさいよ。ロボロボ団は出ないと思うけど、どんな手段を用いてでも、パーツを奪おうという危険な奴が出るかもね。そういうのって、都会の片隅や人の中に紛れてやらかすものなのよね」

 

 イッキたちは一旦、階段の上に行くことにした。途中、スクリューズとすれ違った。キクヒメ、イワノイ、カガミヤマ。セリーニャ、ブルースドッグ、鋼太夫はイッキを挑発しようと足を止めたら、大勢で固まって走る集団に飲まれてしまい、そのまま流されて行った。

 上って周囲を見渡すと、見知っている顔を多く見つけた。ベルモットとスタフィ。キクスイがいた。ハチロウがこちらに気付き、セバスチャンとマイキー共々を手を振る。萩野さんの両親がいる。間には、香織ちゃんがいるはず。シャンデーさんもいた。嬉しくないことに、謎の中国人少年メダロッターのリョウまでいた。間一髪、隣の茂みに身を隠したので、姿を見られずに済んだ。

 セレクト隊のバスでは、部下に指示を出すアワモリ隊長とトックリ副隊長の姿も見受けられた。

 きょろきょろと頭をあちらこちらへ向けていたら、背後から、ヘイ! イッキと名前を呼ばれた。

 懐かしい声の正体は、振り返らずとも誰だか分かった。自分の名を呼んだ者は思ったとおり、カシャッサ君である。エイシイストのアルコ・イリスもいる。もう一人、ジョー・スイハンと、意外な人までいた。

 

「カシャッサ!? いつ、日本に来ていたの? それと、ジョー・スイハンさんとお知り合いなの!?」

「日本に来たのは昨日の夜さ。ジョーさんとは、アメリカに行ったとき、家が近所で知り合ったんだ。日本の新型メダロットを一緒に見に来ないかい? 君らと会えると思ったかもしれないしね。まさか、この場で会えるとは思わなかったけど、アリカも元気にしているかい?」

「もちろん!」

 

 カシャッサとジョーは、三月二九日までメダロポリスにあるホテルに泊まる。明日、必ず遊びに行くとイッキは二人に約束した。探す時間は多少、失われるが、少しぐらいなら構わないや。

 少々、ぐずつき過ぎた。そろそろ、行こう。イッキは自分のメダロットたちを見た。

 

「よし、皆行こう!」

「合点しょうのちのすけや」ちゃきちゃきの大阪弁で応じる光太郎。

「お祭り騒ぎはいるだけで興奮しますね」とトモエ。

 最後に、ロクショウと目が合う。ロクショウは心得たように腕を組んで頷いた。

「最善を尽くそう!」

 

 イッキとメダロットたちは第一のヒントがあると記された、メダロッターズへ向かって進んだ。四人は前へ前と突き進み、いつしか、道行く人々に紛れて見えなくなった。

 季節は春。日本では、別れと始まりを象徴する時季でもある。人とメダロットの熱気でも吸い取ったのか。桜は満開に咲き誇る直前まで成長していた。ちらほらと、自らが開花した歓喜と他の生き物たちを祝福するように花びらを降らす桜もあった。

 パーツンラリーのイベントより数日後には、イッキたちは四年生に進級する。その頃にはちょうど、イッキのメダロッター歴は一年目を迎え、ロクショウはイッキのメダロットとして一年目。光太郎は十一ヶ月目。トモエは数ヶ月目になる。

 彼らが四年生になるその日から。いいや、彼らだけではない。彼らと彼らと関わり合う者たちの手で、新たなる物語が紡ぎだされることになる。

 楽しい事。悲しい事。辛い事。感動する事。出会いや別れもあるだろう。でも、大丈夫。彼には彼を認める者たちがいて、彼自身も自分を認めたから。

 そして、いざというときにはメダロットがいる。

 

 

 

        *——————————————————*

 

 

 

 原作:メダロット2 KUWAGATA VERSION(ゲーム)

 ゲーム製作会社:イマジニア

 原案・原作者:ほるまりん

 

 二次創作した奴:鞍馬山のカブトムシ

 

 

 

      メダロット2 ~クワガタVersion~ 《終》

 

 

 




 
 最後の後書きと原作との比較。
*原作との相違点
・フユーンはハイジャックされない(ゲームでは乗る前からヘベレケ・ロボロボ団の物と分かった上で、イッキたちは乗り込んでいた)。
・下水道に降りてロボロボ団アジトに行かない(花園学園の事件に前後して、下水道のアジトに何度か出向く)。
・フユーンのイベントで過去に行くわけではない(下水道のイベントで過去の世界に行く)。
・名無しの白衣がゴッドエンペラーのリミッターを外した(ゲームでも何者? な人。ある意味真の黒幕)。
・「神子様」ではなく本当は「勇者様」(そのままやったら、あれなものになりうるので、扱いからして変更)。
・アワモリが首にならない(ゲームでは資格なしと見なされ、セレクト隊を首になり、トックリが隊長に昇格した)。
・名無しの白衣の代わりに、白玉が逮捕(白玉が名無しの白衣の役もしたため)。
・パーツンラリーで得られるパーツが異なる(ゲームでの次回作、メダロット3のメダロットたちが登場。ゲームどおりなら、ゴッドエンペラー・ベルゼルガ・ワンダエンジェル)。

と、本当はまだまだありますが、ここまでとします。
たまに原作との相違点を出したのは、少しでもメダロットという物を知ってもらう為でしたが、人によってはただの原作破壊と思う人がいるかもしれません。しかし、台詞から行動まで、何から何まで完全にゲームどおりやっただけなら、プレイ動画を見ればいい話。
やや言い訳がましいですが、ゲームを原作とした面白い小説は、全てがそうではありませんが、プログラミングされたゲームではできない「活字」だからこそできるストーリーを見せていたので、自分もそれに倣い(あやかり)ました。アワモリや白玉など、原作ではその後、碌な目に遭わないキャラクターたちの救済処置ができるのも。
因みに、上記の相違点にある「あれ」とは、ハーレム的展開のことです。
カシャッサ、萩野香織、キエとトトラといったオリキャラも出しましたが、メダロットの物語を壊さない程度の出番に留めるよう、心がけました。

自分がこのメダロットを原作とした小説(二次)を書こうと思ったのは、メダロットの小説が無いからでした。
有名なのを挙げれば、ドラゴンクエストシリーズや宮部みゆきによる「ICO」がある。他にも、あまり知られていませんが、風来のシレンにも小説版があり、シレンを知っている人にも、知らない人でも十分楽しめるほどの出来栄えでした。
しかし、メダロットには小説版がない。カービィやドンキーコングなど、アクション主体のゲームなら仕方ないですが、メダロットはRPGに分類される。しかも、漫画・ゲーム・アニメなど多岐のジャンルに渡ってメディアミックス化を果たし、一躍有名となった。にも関わらず、今だ、どこかの出版社からメダロットを小説化をした物が出てこない。
いくらネットで探しても見つからず、絶望した思いをした。しかし、ある日、見方を変えて、自分で書こうかと思った。そこで、今は亡き「小説家になろう」にあった「にじファン」に掲載させてもらいました。今だからこそ明かせるが、正直、にじファンが無くなったことがきっかけで、自分の作品を今一度、全体的な加筆修正や推敲ができたので、にじファンが無くなったことはショックでしたが、ある意味では、自分の作品を見直す機会を与えてくれたので、矛盾しているが、感謝もしています。
にじファンが消滅せずに最終回を迎えていたら、メタビー(ロクショウ)が戦っている最中に昔のことを突然思い出し、覚醒して、そのままメダフォースぶっ放して終わり。と、見るに堪えない終わりを迎えているところだった。

・登場人物の設定一部紹介(主にメダロット)

クワガタバージョンの主役機ヘッドシザースの名称は、メディアで共通し、更には新作メダロットにおいては、ついに機体正式名称になった「ロクショウ」にしました。
トモエは、にじファン時代、こうしなければいけないルールがあると勝手に思い込み、アンケートなどたわけた恥ずかしいことを一回だけしました。そのアンケートとは、メダロットの名前を決めるというものでした。全く募集意見が寄せられなかったカブトに対し、クワガタは案外募集が来たので、選択する楽しみがあった。恥ずかしいと書いたアンケートですが、意見を寄せてくれた方々には感謝をしております。名前の由来は巴御前です。
光太郎に関しては、別です。自分はゲームをプレイする際、二番目か四番目のメダロットには、かなりの確率で何故か「きんえもん」や「こうたろう」と名付けていました(昔のゲームのため、漢字変換できない)。名前に由来はないです。本来、クワガタでは手に入らない射撃型のクマメダルにしたのは、相性的に合う強いパーツが多く、クマ自体もゲームでは入手当初からレベルの割りには熟練度が高めであり、何よりも、実はラスボスであるゴッドエンペラーのパーツとは一番相性が良いメダルでしたので、カブトでも使用する人が多い一枚のはず。
他、「じゅうりょく」に分類される攻撃は格闘系に対して非常に強く(攻撃の分類は概ね、格闘と射撃の二分類にされる)、ロクショウへのメタ的な意味でも、クマメダルにしました。
昔のメダロットでは、格闘は格闘(クワガタ)。射撃は射撃(カブト)。と、入手できるメダルの能力がとても偏っていたので、小説内では戦闘のバランス保つ為にも、本当は登場しないはずの、カブトバージョンでも有用性が高い射撃系メダルのクマを選んだ。
カブトの方のフェニックスメダルは、カブトの方の後書きを見ていただければ幸いです。
他に、コウジのメダロットであるビーストマスターのムラクモは、漫画版メダロットのムラクモノミコと名付けられたビーストマスターがモデル。スミロドナッドのラムタムも漫画版からです。アーマーパラディンのドゥは、アーサー王の円卓の騎士の一人から。キクヒメのセリーニャも漫画版から。キースタートルの鋼太夫という名前はオリジナル。イワノイが自身の愛機(ブルースドッグ)を機体名称で呼ぶのは、アニメが元です。
アリカのセーラーマルチのブラス。カリンのセントナースのナースちゃんという名前は、アニメです(ただし、ゲーム・漫画版でもセーラーマルチはブラスという名前)。
人間キャラは、オリジナルキャラを除けば、ゲームを含む各メディアで描かれた人物像を参考にしました。

・どうでもいい制作秘話

自分が最初に制作した方のメダロットの小説は、クワガタバージョンです。自分はカブト派でもなければ、クワガタ派でもありませんが、メディアの大半というか、殆どが主人公の相棒=カブト型でした。どうせやるなら、誰もが思いつきそうでやらなかった、主人公の相棒=クワガタ型からまずやってみようと思った。投稿日時では、カブトの方が先で、最終回の投稿もカブトが先ですが、締めを飾る意味で、カブトよりも後にクワガタの方を投稿しました。
やりそうで誰もやらなかった主人公イッキとクワガタ主人公メダロットの絡みは、自分でも楽しかった。
全ての話を先にクワガタから書いた訳でもなく、カブトから先に話を作り始めた時もありますが、おおよそ七割の話はクワガタから先に書き上げていました。どちらかを先に作り、誤字脱字の修正並びに、台詞や展開。一部、登場人物を変える。こんな作業の繰り返し(それでも、間違いが非常に多く見られましたが……)。

一番難しかったのは、ロボトル(戦闘)シーン。使用メダロットから攻撃の手段まで全く違うので、戦闘描写は苦労した。
どのロボトルも好きですが、あえて、個人的ベストを三つ。
一位は、花園学園での対ベルゼルガ戦のロボトル。この戦闘シーンは、ある有名なゲームを題材にした小説の戦闘シーンをリスペクトしたもの。自分にメダロットの小説を書くきっかけをも与えたものでもある。今見ても、良心に咎められるあそこのくだりは思わず涙ぐんでしまう(元になった小説のほうがである)。
二位は、「天領家御一行連続ロボトルデイ」にて書いた、二回目となる対カリンちゃん戦。暴投した野球ボールという降ってわいたラッキーパンチで逆転勝利を収める展開。ちょっと強くなったからって、油断して戦って痛い目を見るなど、漫画・アニメのメダロットで描かれそうなシーンや勝ち方を上手く描写できたなと思えた。
三位は、イッキと主人公機の初ロボトル。イッキが初めて持ったメダロットで、初めて挑むロボトルのシーンは、自分にも、ここから物語が本格的に動き出したと実感させた。

なんだか、後書きまでしっちゃかめっちゃかで、こうして下手な内容の後書きをタイピングする今も、よく完結させることができたなと、自分でも不思議でならない。しかし、一応、当初からの予定どおり、三十話以上四十話以内で終わらせる目標はギリギリの線で達成でできたから、そこは満足。
終わり方としては、人によっては「俺たちのなんとやらはここからだ」に見えるかもしれません。最後に一つ、余計な言い訳をするなら、物語のこの締めは、自分(筆者)が見せる物語はここまでであり、物語の中における彼らの人生はまだまだ続く。こんな締め方をしたつもりです。
続編があるような書き方をしましたが、仮にまた、メダロットの小説を作るにしても、イッキではなく新作のメダゲーの主人公になると思います(あくまで、仮にで、制作する気はないです)。
自分としてはもう、一番思い出深いメダロット2をてがけ、プロには到底及ばなくとも、ある程度は満足のゆく小説にできただけで十分。続編制作の可能性はゼロではないですが、天領イッキが主人公の小説はこれで終わりです。

これまで読んでくださった方々。お気に入り登録してくれた方々。感想をくれた方々。もしかたら、最新話であり最後でもあるこの話を読んでくださった方々。メダロットという作品自体を生み出してくれた方々に、お礼を申し上げたいと思います。

長いことご愛読していただき、真にありがとうございました!
そして、メダロットという作品を生み出してくれてありがとうございました!

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