メダロット２ ～クワガタVersion～

３０．フユーンジャック

「分かっている？　七時半から七時四十分あたりよ」

　こくりと首肯。互いの時計の時間を合わせた。いよいよ、時が来た。出来れば、今日で最後でありたいものだ。

「健闘を祈るわ」

　君こそもと返した。

　もうろうに風景が歪み広がる。目が覚めてきた。そして―――。

「学校！！」

　がばと身を起こしたイッキは、部屋が和室で窓の外の色濃く茜がかった雲を見て、ここはどこだと混乱したが、今は冬休みで、自分はフユーンに滞在していることを思い出した。

　やれやれ。嫌がりながらも、遅刻してはいけないと本能的に学校へ行こうとする癖が抜けないな。何も考えず、ぼぅっと、自然に体が動くのを待った。ぐぐと手足を伸ばした。凝った血流が流れ、頭がぐらぎら揺らいだが、目覚めてきた。首を左右に振った。小さくこきりと音がした。

　えい！　と、布団の上で立って万歳をした。手を下げたら、筋肉が気持ちよく弛緩した。完全に目が覚めた。あくびを噛み殺し、冷水で顔を洗う。

「おはようございます」

　メダロッチから、トモエが声を出した。

　やるべきこともない。ママもパパもいない。思えば、初めてだな。友達はいるけど、ママやパパがいない正月を過ごすなんて。ふと、寂しい気持ちがもたげた。アリカの部屋などに行く気も起きない。暇潰しに、衛星放送を見ることにした。メダロット専門チャンネルか、アニメ専門チャンネルか。なんとなく、いまは頭を空っぽにしておきたいな。アニメ専門チャンネルを選択した。

　ちょっとしか読んだことないが、少年誌掲載にしては、いわゆる萌え色が強いアニメが放送していた。女の子たちが多い上、基本駄弁っていて、時折、小難しそうな話をしている。何故か恥ずかしくなってきたので、途中でメダロット専門チャンネルに変えた。

　CM中で、メダロット社の新作メダロット……「ベルゼルガ」の販売を伝えていた。

　前の花園学園の事件で悪いイメージを持たれ、あわや発売中止になるかと思われたが、メダロットファンと関連各社の強い後押しにより、一月の二日。子供たちがお年玉を貰い、お財布がほくほくの時を狙っての発売。

　ただし、購入の際には幾つかの試験をパスをしなければならない。対象年齢は一二歳以上。未成年が買うには保護者同伴。価格もパーツだけで二十万円と、目玉が飛び出るほど高い。オーダーの特注品だと、更に倍以上するだろう。今年の長時間バラエティの視聴者プレゼント企画にて、抽選で全国から二名選ばれる。

　イッキは応募しなかった。フユーン応募の件、花園の一件もあるが、メタルビートル・ヘルフェニックス・メイティンもいるのに、余計に欲しがるのはあまりにも欲張りで今居るメダロット達にも失礼と考えたから。

「欲しいのか？」とロクショウ。

「まさか。お前達だけで十分過ぎるよ」

　戸がノックされ、

「イッキ」

　と、アリカがイッキの断りもなく、勝手に入ってきた。同時にCMはメダロットとは関係無い物に切り替わった。　

「お早う。それとも、おこんばんわと言えばいいかしら？」

「アリカ」

「あんた、よく気持ちよさそうに寝ていたわね。病気にでもなったのかと思ったわ」

「気持ちよさそうって……覗いたの！？」

　アリカは悪戯っぽく微笑えみ、「そう、ね。ちょっと、覗いたわ。安心して、あんたの寝顔でフィルムを無駄にするようなことはしないから。そんなことより。イッキ、あんたどうしたの？　急に寝込んじゃって？」

「何でもないよ。本当に、眠くてしょうがなかっただけだよ」

　イッキは、アリカにお昼の会食はどうだったかと尋ねた。すると、アリカは眉をひそめた。

「ああ、あの会食ね。スクリューズが煩かったわ。でも、それだけじゃない。あの会食の場から離れたのは、あんただけじゃない。コウジ君とカリンちゃん、私も離れたわ」

「どうして？」

　それはねと、アリカは声を潜めた。

「余所余所しかったのよ。あの会食」

「余所余所しい？」

「そう、何か変なのよ」

　アリカに言うところによれば、数名の乗務員に、妙に違和感のような既視感を感じた。気のせいかなと思ったが、派手な赤毛の女性乗務員からは睨まれたりもした。小さい、子供にしか見えない乗務員もいたようだ。

　自分だけではない、コウジとカリンも突き刺す不快な視線を感じた。居心地が悪くなり、三人もイッキより遅れて会食の場から離れた。

「考えすぎじゃないの？」

　アリカの不安な装いに、多少は気にかけたが、つい素っ気ない口調で返した。はっとしたが、遅い。

「なによぅー？　そんな言い方ないじゃないの」

「あー、ごめんごめん！　まだ、寝ぼけてて、つい。それで、アリカはどうしたいの」

「……どうもなにも……。三人組みたいに派手に動き回る訳にもいかないし。例えれば、かくれんぼな感じで、こそこそとね」

　ふっと、アリカは不敵な笑いを漏らした。

「本当に怪しいことをしている奴らは案外、堂々としているもんよ」

「アリカぁ」

　無駄だと分かってても、よそうよと言った。ジャーナリストモードのスイッチが押されたアリカを止めるのは、自分では無理だ。アリカは、取りあえず適当にぶらつくわと言って、部屋から出た。賑やかで嵐のごとくな人物が去った。ほぅと、息を吐いた。どこへ行っても、変わらないなアリカは。自分が気にしすぎるだけかな？

　一人というのもなんだので、メダロッチたちと一緒にテレビを視聴した。トモエはどれでも良さそうだが、光太郎はバラエティ。ロクショウはニュースや政治関連など、さすがに真面目な物を見たがり、チャンネル争いが起きていた。

「ロクやん。たまにゃ、アニメやこういう阿呆なもん見て頭を柔らかくしたほうがええで」

「若いからこそ、しょうもない物より為になる物を見たほうが良いと思うぞ」

　イッキとトモエはどれでもよく、リモコンを取り合う二人を和やかな気持ちで見た。結局、バラエティはよくある先輩が後輩を酷くなじる光太郎が嫌うタイプの内容だったため、ロクショウが望んだニュースや環境系番組などお堅い番組を観た。

　こんこん！　ドアがノックされた。開けると、今朝方案内した乗務員であった。

「天領イッキ様。広場にて、夕食の会が開催します。料理は七時から九時までの間、テーブルに供えられております。ご自由な時に訪れください」

　彼は静かにドアを閉めた。時計を見ると、六時を越えていた。人間一人とメダロット三体。だらだらと、居室で時間を潰した。六時五十分。部屋を出た。アリカを誘おうと思ったが、部屋をノックし、チャイムを押しても出てこない。先に行ったんだな。

　自分以外にも、ぽつぽつと人が集まっていた。コウジとカリンはイッキより遅れること一分。スクリューズは六分。

　ヘベレケ博士が夕食会の始まりを告げてから、数分後。ようやく、アリカが来た。

「遅かったじゃないか」

「気分転換にゲームしていたの。それにしても、ここって、ほんとに色々と充実しているわね」

　夕食会は昼食会より豪勢である。どれにするか目移りしてしまう。昼間と同じ、夜もバイキング方式である。乗務員に、好きに頼めないですかと聞いたら、一同会して集まる食事の会は明日の朝食までのようだ。

　ロクショウが、人間の食への感心は何故だろうなとぼやいていた。コウジとカリンが、アリカとイッキたちのテーブルに近寄った。

「よう、イッキ。大丈夫か」

「イッキさん、ご無事でしょうか？」

「大丈夫だよ。ほんとに、眠たかっただけだから」

「そうか。それにしても、飛行機には何度か乗ったことはあるけど、こんな風に広い場所で広いテーブルで食べるバイキング方式の食事は初めてだな」

　確かに。飛行機には一度くらいしか乗ったことはないが、どんなエコノミークラスとて、このような会場形式の食事の場は提供できないだろう。正にフユーンならではである。

　オレンジジュースが入ったペットボトルを片手に、窓辺の際で下を見下ろした。上空もオリオン座など、星座や数多ある星々で輝いているが、地上も負けず劣らず建物のネオンで星と見紛いそうにほどきらきらと輝きを発していた。

　あの下では、道路やお店に高層ビルで働いている人もいれば、恋人同士で食事をしている人もいるんだろうな。友人や同僚の誘いで忘年会やカラオケで騒いだり、ロボトルしたり、メダロットとメダロッター同士がはしゃいだり。親子で、紅白や長時間バラエティを見てるんだろうな。

　微かな優越感。興奮に感動。今すぐ下に降りたいような衝動と寂しさに不安も混じった、奇妙で微妙な気持ちに浸った。なんていうのかな、こういうのは？

　いつの間にか、アリカとコウジとカリンちゃんが横にいた。アリカが綺麗よねと呟いたら、カリンちゃんはそうですねと答えた。

　ロクショウも、イッキの横に行って、下のネオンを見ようと思った。その時。

　……逃げろ……。

　人間で言うところの冷や汗が走ると言えばいいのか。ちょうど、そんな感覚が背中を襲い、背筋を伸ばして全身を一瞬、震わせた。

　な、なんだ！？　辺りを見回す。見慣れた顔に、見知らぬ顔。だが、自分の頭に信号を送っていそうな輩はいない。空耳が聞こえたとでも？　メダロットでもそんなものが聞こえることがあるとはな。取り敢えず、窓辺に行こうとしたら。もう一度、さっきより明瞭に。

　とっととその場から逃げろ！　このまぬけが！

「影口叩かず姿を現せ！！」

　広場に居る全ての視線がロクショウに注がれた。ロクショウは適当に一言申し訳ないと添えて、窓辺に寄った。

「どうしたんだよ、ロクショウ？　いきなり叫んだりしてさ」

　イッキは声を潜めた。

「誰かが、逃げろと言ってきた。おまけにまぬけとも言われた」

「あいつらか？」

　イッキはちらと、スクリューズを窺った。スクリューズはロクショウが叫んでも気にした様子はなく、メダロットたちと共に、談笑しながら夕食を貪り食っていた。ロクショウは「違う」と否定する。

「違う。彼らではない。大人の男の声だった」

「大人ねぇ。でも、大人といえば、ヘベレケ博士以外はみんな初対面だし」

「空耳ではなかったな」

「メダロットが空耳ぃ！？」と、アリカが小馬鹿にしたように言う。

　アリカのこの言葉に、ロクショウが同意したようにふっと笑う。メダロットが、機械が空耳なんてな。

　刻々と時間が過ぎていく。メダロッチの時計機能は、七時三三分を表示。まだ出ていくには早いな。そう考えたのも束の間、平和なひと時を打ち破り、非常事態が発生した。

　乗務員の一人。ぴんと伸びたアホ毛が目立つサングラスをかけた乗務員が博士の元に近寄り、肩を掴んだ。

　何かなと伺う博士に対し、乗務員は悪意に満ちた微笑みを浮かべた。

「なーに……こういうことですよ」

　乗務員は袖をめくり、時計を、いや、メダロッチを出した。彼に続いて、何名もの乗務員たちがメダロッチを出した。一斉にボタンを押す。メダロットたちが転送された！

「どういう真似だ！」

　博士は肩に置かれた手を振りほどき、剣呑に男を睨みつけた。

「おお、怖い怖い。そんな怖い顔しなさらないでくだされ。ちょっとした余興ですよ」

　更に更に。ロボロボ、ロボロボとやかましい金魚鉢連中までもご登場！

「ロボロボ団だと！？」

　一人が喚起する。イッキたち以外にもメダロッターはいる。が、しかし、乗務員たちによって取り押さえられた。その乗務員の中にも、他の乗務員に扮したロボロボや白いスーツを着た金魚鉢連中に捕えられた。

　ロクショウが、光太郎が、トモエが駆ける。コウジ、カリンも、アリカも続いて、メダロットを転送しようとしたが、カリンが腕を掴まれた。

「カリン！！」

　コウジはメダロッチを押そうとした指を離し、ロボロボに体当たりを食らわせた。ロボロボはカリンから手を離し、尻餅をついた。コウジは素早くメダロッチを押そうとしたが、一秒遅く。サボテンナの体を身に着けたゴーフバレットがカリンとコウジのそれぞれにガトリングを突き付けた。

　コウジは悔しげにメダロッチから手を離した。

「アリカちゃん！」

　ブラスがアリカに駆け寄ろうとする。だが、ブラスの背中が爆発した。背後から、クラゲ型プルルンゼリーがミサイルを撃ったのだ。ブラスは地に臥し、背中からメダルが外れた。アリカが悲痛な声でブラスの名を呼ぶ。

「おのれ！！」「みんなぁ！」

　イッキとロクショウ。二人でかかろうとする。そこへ、「よしな！」と痛烈に呼び止められた。キクヒメだ。

「まずはこっから逃げ……」

　キクヒメは言い終わらぬうちに、カガミヤマとイワノイを伴って、スクリューズは自身のメダロッチたちを使って扉前のロボロボを蹴散らした。

「イッキやん！　一度退くで！」

　光太郎が重力波を乱射。その隙に、トモエがイッキとロクショウの手を掴み、無理やり引っ張った。瞬時に思考を切り替えて、ロクショウは扉の前に立つロボロボメダロットを叩きのめした。

「みんな、必ず助けるからな！」

　そう叫んで、イッキたちは広場から脱出した。

「部屋は駄目だ！　下や！　一般客立ち入り禁止区域の方へ行くでぇ！」

　光太郎に誘導されるがまま、一行は乗務員専用口に入った。幸い、見張りはいなかった。よく分からず、ひたすら、下へと降りた。気が付くと、周りが機械だらけの煩い連続した機械音が鳴るところへと来ていた。この部屋も、外装と同じくらい赤かった。

「これからどうされるのだ」とロクショウ。

「ダイハードという映画を知っておるかい？　あれの要領だ。上を見てみい」

　光太郎は腕を上に向けた。太いパイプやら配線にダクトが沢山あり、人が入れそうな隙間もある。イッキは上を指した。

「ここを通るの」

「それしかあるまい」

　ロクショウとトモエも同意した。イッキは光太郎に乗せてもらい、上に運んでもらった。メダロットを収納するか、しないかでは、収納しないでおこうと決めた。

「前の妨害電波のときみたいなこともありうる。動きにくいかもしれんけど、わしらは出しておけ。ただ、わしはこのままだと目立つし、エネルギーも喰うから、脚部を多脚辺りに変えてくれると嬉しなあ」

　そこで、イッキは光太郎の脚部を高性能多脚であるトリプルゴッツンの物に変えた。

　一息つける余裕がない。さっきは無我夢中で動いたが、今頃になって、心臓がどきどきと鳴り出し、冷や汗が流れてきた。

　アリカが捕まった！　コウジとカリンちゃんが捕まった！　ヘベレケ博士が捕まった！　普通の乗務員や他の人たちも捕まった！

　もし、ここが地面であるならば、下水道だろうとなんだろうと、逃げ道はあるかもしれない。だが、現在が自分が居る場所は飛行機。まごうことなく空中だ。フユーンは巨大であるが、所詮乗り物。行ける場所や身を隠せる場所は限られている。おまけに、イッキは携帯を持ってない。親や警察。セレクト隊にすら連絡ができない。

　頼み綱がない。自分一人。今居るところは薄暗い。イッキは、自分がとても弱く、強くも何にもない子供だということに気が付いた。怖くなって、泣きそうになった。そのとき、優しく肩に触れる者がいた。ロクショウだ。

「心配するではない。この私が付いている。私だけではない、光太郎にトモエもいる。お前は決して独りではない。だから、そう何もかも終わったかのような絶望しきった表情を見せてくれるな」

　ロクショウの揺るがぬ自身に充ちた言葉。イッキは自分の内側で急速に温かい物で満たされた。

　そうだ。僕にはまだ、メダロットたちがいる。こいつらのおかげで、ここまで来れて、色んなことを掻い潜ってきたんだ。それに、メダロットだけじゃ戦えない。僕がしっかりと状況を見極めて、いざというときには指示を出さなきゃいけないんだ。

　イッキはうんと頷いた。さて、ひとまず落ち着いた頭で最初に考えたことは。

「スクリューズの奴ら。どうしてるかな」

　できれば、無事でいて欲しい。そして、願うことなら、メダロッ島の時のように手を組みたい。こんなときこそ、頼れる連中だ。

　スクリューズは壁際までに追いつめられていた。

「どうしやそう、姉御ぉ～」

「狼狽えるんじゃないよイワノイ！」

　キクヒメがイワノイを一喝した。

「なるようになる！　後はあいつに期待する。そんだけだ」

「そんなぁ～」

　キクヒメは飛び上がって、拳骨でイワノイの頭を殴った。イワノイはくーっと、歯を食い縛って頭を抑えた。

「ぐだぐだ言ってないで、とっととヒパクリトを転送しな！　こうなりゃ、とことん暴れてやろうじゃねぇえか！」

「うん、そうだそうだ。お洗濯は大事に」こんなときでもカガミヤマは意味不明な同意を止めない。

　ロボロボは四人。ゴーフバレット三機。ゴーフバレットより旧式のコフィンバットも三機。タコ型メダロットのカネハチ二体にカネハチまーく２。ユニコーン型のエースホーンに、緑の働き蟻のアンタッカーに赤色の兵隊蟻アントルジャーまでいる。キクヒメが口笛を吹く。

「種類と数は揃ってるね」

　ペッパーキャットは壁や敵を蹴りながら電流パンチで殴り。ブルースドッグは正確な射撃で脚部や腕を撃ち、怯んだところをキースタートルの鋼太夫とロールスターがビームとレーザーで止めを刺す。ヒパクリトはあっちこっち這い回り、相手を攪乱しながら斬りつけ、雪だるま型のフラッペことユミルは腕をぶん回しながら相手に突進！

　ゴーフとコフィンはぼとぼとと落ちて、下にいる味方の行動を阻害。カネハチたちの鎖付きの錨は当たらず、頭からの粘着性ある液体を味方やうっかり主人に引っかけてしまい、エースホーンはブルースドッグに両膝を撃ち抜かれたところを鋼太夫のレーザーが頭に直撃。蟻二体は無駄に右往左往して肝心の連携クロスアタック大砲攻撃ができない。

　スクリューズは最後まで果敢に抵抗した。ロボロボ幹部が更なる増援を持って駆け付けてきた際は、さすがに多勢に無勢であり、やられてしまった。

「ふむ。素晴らしい腕前だな。我がロボロボ団に入らんか？」

　首領のサケカースが素直に三人組の腕前とメダロットたちの強さを褒め称えた。キクヒメは腕を組み、実に堂々とした態度で「お断りだよ」とサケカースの誘いを突っぱねた。

「姉御ぉ！！」

　イワノイとカガミヤマが尊敬の眼差しでキクヒメを見つめた。かくて、スクリューズの短くも激しい抵抗は終了した。

　これで、イッキの一行は孤立無援となった。