映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
全部消したんですが、もしかしたらその名残が何処かにあるかもしれません。
♪スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイルプリキュア! Let's go!♪
♪スマイル! スマイル! プリキュア! 一緒に!!♪
「届け! 希望の光!!」
♪スマイル! スマイル!プリキュア! 明日へ Jump!(Shine!) スマイルプリキュア!スマイル! スマイル!♪
『はばたけ! 光り輝く未来へ!!』
♪スマイル! プリキュア! おひさまみたいに 照らす笑い顔 消えないきらめき みんなが持ってる♪
『プリキュア! ロイヤルレインボー! バーストォォォ!!!』
♪一生懸命ススメ!♪
「花よ輝け! プリキュア! シルバーフォルテウェェェイブ」
♪おんなのこ!♪
「皆本!」
♪ひたいの汗さえ ダイヤモンド☆(サン! サン!)♪
「あぁ! ザ・チルドレン! トリプルブースト! 完全解禁!!」
♪負けない勇気束ねたら♪
「行くよ、葵、紫穂! ロゼッタ! 魔法少女の皆も!」
♪5つの光♪
「よっしゃ、さっきのやな!」
♪導く未来♪
「任せて!」
♪ハッピー! サニー!! ピース! マーチ! ビューティ! Let’s go!♪
「分かりました!」
「え、何?」
「さっきアリサさんの洗脳を解いたアレね!」
♪スマイル! スマイル! 笑顔のパワーで スマイル! スマイル! 世界はつながる♪
「アリサを……?」
「そう、そして今度はカガリを……」
♪大切なその瞳♪
「今度は、悲しみで終わらせたりなんてしない!」
♪曇らせない! Girls! let' go! スマイル! スマイル! プリキュア! みんなで!!♪
≪プリキュア!
♪スマイル! スマイル! プリキュア! 未来へFly!(Fight!)♪
「これって!?」
「力が吸われていく……でも……」
♪輝いて! スマイルプリキュア!♪
「ハァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
♪スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル♪
♪プリキュア!♪
スマイルプリキュアの五人が放ったプリキュア・ロイヤルレインボーバースト、キュアムーンライトが放つプリキュア・シルバーフォルテウェイブ、そしてザ・チルドレンと五人の魔法少女、キュアロゼッタの計九人が力を合わせて放つ奇跡の技、プリキュア・
様々な、色とりどりの光が、全て魔女となったカガリへと衝突した瞬間、大きな煙と爆発が起こった。やったか、いやまだだ。魔女の中からドス黒いオーラが溢れ出した。
負のオーラ、とでも言うのだろうか。この世の全ての負の感情を集めて煮詰めたかのような真っ黒なオーラが、光を押し返そうとしていた。
「くっ……うぅ!」
そして、その負のオーラは、彼女たちが放つ攻撃を通じて十五人の少女たちに直接攻撃を加えていた。身体ではない。その心にダイレクトに通じる電撃を浴びているような感覚。それは、想像を絶する痛みに変化して彼女たちを蝕み続けていた。
苦悶の表情を浮かべる少女たち。それを、カガリの身体を見つけだし、もしも結界が解かれた時に消えてしまうことがないようにと腕の中に抱く皆本はただ、見守るしかなかった。
♪スマイル! スマイル! スマイルプリキュア! おおきく広げた こころの画用紙♪
「無理だ……使い魔が魔女になった存在ならともかく魔法少女が魔女となった個体をソウルジェムに戻すなんて……」
その姿を見ていたQBの念話によるつぶやきは、彼女たちにも伝わっていた。もはや、感情がないなんて嘘ではないかと言うほどに、QBは今目の前にある状況に驚きと、そして動揺を隠せていない様子。そのため、彼女たちは初耳の、そして自分たちにとって衝撃的な情報を耳にすることが出来た。
♪七色スケッチ♪
「え、それじゃ……」
「ハッピーがソウルジェムに戻した子って……」
♪はみだし描こう 全量疾走ガンバ! おんなのこ! スペシャル仕様の♪
「そう、元は使い魔だった。使い魔は魂も持たない感情のエネルギー体だ。だからこそグリーフシードを返還させることができた。けど、魂を持った魔女を戻すのは……」
ハッピーがソウルジェムに戻し、そしてその魂を砕いた個体は元は使い魔、つまり本当の人間の魂じゃなかった。と、いう事は自分たちは殺人なんて犯していなかったのだ。
あの時、覚悟して、そしてその罪を受け入れるつもりだったのは、決して嘘ではない。しかし、結果的に自分たちが人殺しにならなかったことに複雑な気持ちを持つ六人の少女。
なるほど、そうなれば先日、自分たちが奏遥香を救えなかったことにも容易に説明が付く。そして、同時に魔法少女から魔女になった存在をソウルジェムに戻すことがとても難しいことであるという事も分かる。
あの時、自分たち五人の力を合わせても、彼女をソウルジェムに返すことが出来なかった。もちろん、今回は五人だけじゃなく、十人の仲間の力も合わせているし、自分たちの中の最強の技を出しているという違いもある。
だが、技を放っている中でも自分たちに対抗してくるような強い闇を抱えたカガリの魔女を元に戻すことが出来るという保証なんて全くないのも事実。自分たちが、彼女を救うのは難しいのではないか。そういう考えが、彼女たちの中に蔓延しようとしていた。
♪タフなハート?(バン! バン!)♪
「それでも……それでも!!」
でも、彼女は、彼女たちは諦めない。
♪友情エール受け止めて♪
「私は、目の前にあるハッピーエンドを、諦めたくない!!」
『うん!!!』
ハッピーのその言葉に呼応するかのように少女たちの力は高まっていく。命を救う、それがどれだけ大変なことか重々承知。ならは、この程度の試練は試練なんかじゃない。そう、これはハッピーエンドのための通過点に過ぎないのだ。
♪ひとりひとりが 奇跡を超える!♪
『ハァァァァァァ!!!!』
まるで、ハッピーエンドという意思が彼女たちの事を導いているかのように、その力はどんどんと増していき、負のエネルギーを押し返し、そしてついに魔女にまで到達した。
♪ハッピー! サニー!! ピース! マーチ! ビューティ!
「さっきよりも出力が上がった! これなら……」
♪Let's go スマイル! スマイル!笑顔のチャージで スマイル スマイル! 希望が羽ばたく♪
「どうして、こんなことが……何故、彼女達はたった一人の女の子を救うためにこんな力を……」
皆本の隣にいたQBは、目の前にある光景が信じられないというような表情を浮かべる。
先ほどまで、負のエネルギーという闇が、光を飲み込もうとしていた。あそこまで飲み込まれてしまえば、どれだけ頑張っても直に光の全てがのみこまれてもおかしくはないだろう。そう考えていた。
それなのに、今ではどうだ。光は、闇を押し返し、魔女の身体を包み込もうとする。よく見ると、魔女の身体もまた徐々に光を放ち始めていた。もしかすると、本当に起こるのか。魔女になった魔法少女が救われる。そんな光景が。奇跡が。
しかし何故だ。一体どうして彼女たちは諦めない。努力が必ずしも報われるわけじゃない。救いたいと願っても救うことが出来ないことなんて山ほど存在する。それを知っていて何故、彼女たちは前に向かい続ける。何故、彼女たちは闇に抗い続けることが出来る。何故、どうして。
♪ちいさいその手でぎゅっと♪
「世界が、ハッピーエンドばかりじゃないからだ!」
「え?」
そんなQBの疑問に最初に答えたのは、皆本だった。
♪夢をつかもう! Girls! let' go! スマイル! スマイル! プリキュア! みんなで!♪
「この世界に生きる人の数だけ人生がある。当然、その中にはサイアクな結末を向かえる人たちもいるだろう。けど!」
その言葉に続き、薫が―――。
♪スマイル! スマイル! プリキュア! 毎日Try!(Pride!) くじけない! スマイルプリキュア!♪
「私たちが、皆んなの明日を、未来を守って、それぞれの未来をその手に引き寄せる! それが、私たちがもつ、未来を切り開く力!」
かずみが―――。
♪スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! イェイ! スマイル! イェイ! レッツ! ゴー! レッツ! ゴー! スマイルプリキュア!♪
「かつて、バッドエンドで終わらせないために頑張った子たちがいる! その子たちのせいで、新しい悲劇が生まれた。でも、だからってハッピーエンドを捨てたりしない! バッドエンドで終わってしまった子たちの人生に報いるために!」
一人の力なんて所詮微々たるもの。その力をどれだけ使おうとしても、巨大な岩の前では何の役にも立たない。
そして、一人の人間は、その大きな岩を、壁を感じて前に進むことを止めてしまう。立ち止まって、後ろを向き、絶望する。
所詮、自分にはできないことだった。なら、最初からあきらめてしまっていればよかった。そう考える人間も多いだろう。けど、それは違う。
例え大きな岩があっても、壁となって前に立ちふさがろうとも、その壁を壊す努力が、壁を壊すために何の行動もとらないという事はあってはならない。
何故なら、生きているのだから。生きている限り、人間は困難に立ち向かっていく物だから。
幾度となく苦難が訪れ、その度に挫折しそうになり、ひざを折りそうになり、下を向きたくなる時だってある。でも、それでも前に進む意志さえ持っていれば、必ず誰かがソレを見てくれる。
そして、その誰かは一緒に岩を押してくれる友となってくれるかもしれない。一緒に壁を破壊しようと言ってくれる仲間になってくれるかもしれない。
一人でも無理だったのなら二人で、そしてその行動を見てまた一人、また一人と一緒に岩をどかそうとしてくれる友が現れるかもしれない。
また一人、また一人、それが何度も繰り返されて、人は一人じゃなくなる。一人の夢は、未来はみんなの未来と変わっていく。
皆の未来が合わさって、皆で努力して、皆で挫折しそうになっている仲間を励まし合い、敬い、そして一緒に涙を流しながら成長して。
いつの日にか岩を押し倒すことが出来るようになる。ソレが、人間の未来という物。それが、可能性という物だ。
「何で君たち人間は諦めることを知らないんだ。何度無理だ無茶だと言ってもどうしてそれを乗り越えられるんだ!」
さらに続くQBの疑問に、マツリは笑顔で言う。
「繋がりの力があるからだよQB。目には見えなくても、音さえあれば、想いだって繋がっていく! それが、限りない未来に繋がっていく!」
スズネは言う。
「悲劇だけを生む力かもしれない」
♪スマイル! スマイル! 笑顔でいるから スマイル! スマイル! しあわせになれる 満ちてゆく♪
「でも、誰かの明日を守ることのできる、この力で! 私は、罪を償いながら、最期まで生き抜く!」
そして―――。
♪まぶしさを 分け合いたい Let't go! スマイル! スマイル! 笑顔のパワーで スマイル! スマイル! 世界はつながる 大切なその瞳♪
「皆、本当は願ってる! 全ての人が、命が! ハッピーエンドで終わって欲しいって! だから、私は戦う! 戦い続けて、皆のハッピーエンドを守る!! それが私キュアハッピーの……星空みゆきの、ウルトラハッピーだから!!」
♪曇らせない! Girls! Let' go!♪
ハッピーは、今この場所に。
未来を信じ、笑顔を信じ、互いを信じ合う心を持った十五人の少女たち。
どんな絶望的な未来が待っていても、友情と気合と、そしてほんの少しの勇気で切り開き、最悪な未来を乗り越える。
その先に、ハッピーエンドが待っていると信じて。
その先に、ハッピーエンドがあると信じている限り。
彼女たちの中に、ハッピーエンドという希望が芽吹く限り。
♪スマイル! プリキュア! みんなで!! スマイル! スマイル! プリキュア! 未来へFly!(Fight!)♪
「「「「「「「「「「「「「「ハアアアアアアァァァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――………」」」」」」」」」」」」」」
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
彼女たちは、決して未来を諦めることは無いだろう。
その時、光が彼女たちの身体を、そして魔女の身体を包み込んだ。
もう、決して光を見ることは無い。自分には闇しか訪れない。そう信じていたはずの魔女。
けど、その魔女は感じ取っていた。
自分の事を救ってくれる光を。
誰かの事を思いやる、暖かい気持ちを。
もう、魔女の中から絶望は感じ取れなかった。
あるのは。
♪輝いて! スマイルプリキュア!♪
「これが、僕が探しもとめていたもの……」
「フッ……輝け!」
♪スマイル! スマイル! スマイル! スマイル! スマイル♪
「「「「「「「「「「「「「「「ハッピースマイル!!!」」」」」」」」」」」」」」」
♪プリキュア!♪
彼女たちとともに歩む、広大な未来予想図だけだった。
「ど、どうなったの?」
「カガリは?」
少女たちの視界が光から帰ってきたとき、その目の前にあったのは元の、路地裏の景色。同じ場所だ。同じ町並みだ。そして、同じ血だまりだ。
どうやら、結界から抜け出すことが出来たのは確実だ。となると、次に問題になるのはカガリの行方。
もしも、近くにソウルジェムがあれば、自分たちの浄化が成功したという事になる。けど、もしもグリーフシードが残されていれば、その時は―――。
「ッ! あれって……」
その時、カオルが何かを見つけたようだ。周囲の人間は、皆カオルが注目した方向を見る。果たして、そこにあったのは。
「ソウルジェム、カガリの……」
小さな光に包まれて地面にゆっくりと落ちるソウルジェムだった。そこには汚れなんて何もない。とてもきれいな色鮮やかなソウルジェムが、ただあるだけだった。
「それじゃ……」
「やった、やったんだ、私たち!」
「奇跡を、起こしたんだ!!」
奇跡、違う。これは必然だ。彼女たちが諦めるという事を諦めなかったからこそ起こる、必然の奇跡なのだ。
瞬間、爆竹が跳ね上がったかのように喜びに包まれる少女たち。カガリを助けることが出来た。ただ、そのことが嬉しくてたまらない。ハイタッチをし、クールで決めている女の子たちにも喜びを共有してもらいたいかのように抱き着く少女たち。
一人の女の子の命を救うことが出来た。ソレは今まで数多くの敵を倒し、世界を救ってきた彼女たちの中で、とても大切な思い出の一つとして刻まれることになるのだろう。
明日からは、きっとカガリの犯した罪に関しての調査やらなんやらが始まることだろう。その結果によっては、この時死んでいたほうが良かった。そう彼女が思うこともあるのかもしれない。もし、そうなるのだったらこの時の彼女たちの喜びはたんなる自己満足へと早変わりしてしまう。
だからこそ、今喜ぶのだ。後々あの時喜んでいたほうが良かったと、後悔する前に。
後悔する前に行動に移すことが出来るのが、人間という種の特権であるのだから。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「やった、やったよ……スズネちゃん……」
涙を眼に浮かべるマツリは、肩を大きく揺らして呼吸をするスズネに声をかけた。
これで、カガリとも一緒に暮らすことが出来る。スズネとも一緒に、三人で一緒に学校に行ったし、遊びに行ったりすることが出来る。涙を流すほどに、彼女が嬉しいのは当然の事なのかもしれない。
だが。
「……」
この時、スズネは一つある事を決心していた。
マツリの気持ちを逆なでしてしまうのかもしれない。でも、それでも向き合わなければ自分も前に進めない、そんなケジメを付ける時が来たのだ。
「スズネちゃん?」
「マツリ……私は、今まで取り返しのつかない事をしてきた……それでも、友達でいてくれる?」
取り返しのつかない罪。椿を殺し、数多くの魔法少女、仲間の千里の命までも奪った。そんな自分の事を許すまでは言わない。だが、そんな大きな罪を犯してきた自分と知ってもなお、それでも友達と呼んでくれるのか。
そんな、スズネの言葉にマツリはやんわりと優しい顔をして言った。
「……当たり前だよ。スズネちゃんは……スズネちゃんも……ずっとずっと、大切な友達だよ」
そして、マツリはスズネに向けて掌を向けた。スズネが、その手を取ってくれると、そう信じて。
でも。
「そう、それが聞けて……良かった……」
「スズネちゃん?」
スズネは、その手を取ることは無かった。
見ると、その目には涙がうかんでいた。ソレは、マツリと同じカガリを救うことが出来た喜びの涙なのか。
それとも、友との別れを悲しむ、惜別の涙だったのか。