映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
電話は鳴る。何度も、何度も、何度も、そして止まる。そして鳴る。何度も、何度も、何度も、そして止まる。
『!!!!』
『!!!』
外からは怒号が聞こえる。文字にするのもはばかられるほどのひどい怒号。その内、窓ガラスが割られ、大量の石が室内に投げ込まれる。毛布をかぶっている少女は、それに対して見聞きせず、ただじっと耐え忍んでいた。何時間経っているのだろう。ようやく外からの音は聞こえなくなった。少女は、被っていた毛布をとって、恐る恐る外を見る。二階からみる景色はいつも通り。道には沢山のゴミや瓦礫が散乱してひどいことになっている。ここから逃げたい。けど、もし自分が逃げたら、この家が、思い出がたくさんつまったこの家がどうなるのか分かったものではない。だから…彼女は…。後は、何も見えなかった。
「ちっ、ひでぇことしやがる…」
「一体、だれがこんなことをしたでランス?」
「…まぁ簡単に想像することができるがな」
空中にいる黄色い生物の質問に白衣を着て日焼けした、要するにチャラそうな医者のような風貌の男は、ぶっきらぼうに答える。おそらく、この家の主のしたことが許せなかった人が2割、面白半分に係わっている者が8割と言ったところだろうか。
「ここで分かるのはそれぐらいですか?」
「みたいだな…次は応接室だな」
そう言って、一組の男女と一体の生物は一階へと降りる。ここまで来るときにも思ったが、想像以上に室内が荒らされていた。おそらく、外を有らすのだけで飽き足らず、何人かは忍び込んで悪さをしていたようである。壁の傷、落書き、壊された絵、どこを見ても、いや目も当てられない状態となっている。
「結局、その織莉子ちゃんって子は…逃げちまったってことなのか?」
「分かりません…でも、ここにいないということは…」
「おっと、ここか?」
「だと、思います。まだ入っていないのはこの部屋だけですし…」
そうして、二人はある部屋へとたどり着いた。だが、もしもこの部屋の中も荒らされていたら…二人は、応接室の中へと入る。すると…。
「なに?」
「きれい…」
その部屋は想像よりもきれい、いやその家の中でもっともきれいであった。そこにあったのは、二つのソファー、ひとつのテーブル。そしてこの家の元主であった『美国久臣』の絵があった。無論、その絵も無事である。だが、なぜこの部屋だけ無事なのだろうか。他の部屋はすべてが荒らされていた。だから、情報をたどることができず、あまり情報を得ることができなかった。だが、この部屋であれば、超度6の接触感応能力者である賢木であれ容易に探ることができるであろう。今回、B.A.B.E.L.から彼が来たのは、ある一人の少女に頼まれたからである。本来ならば、日本に三人しかいない超度7の特務エスパーの少女の方が年齢的にも近い為、性格に難があるのはともかくとして来るのはそちらの方であっただろう。だが、彼女は3人の仲間と一緒に某県にある自衛隊の基地の方に行ってしまったため、暇を持て余していた賢木に白羽の矢が立ったのだ。話を戻そう。意を決した二人は、室内に入っていく…が。
「な、なんだ…!?」
「景色が…変わっていきます…」
そうこうしているうちに、彼女たちの景色が変化していく。一体、何が起こっているのだろう。その内、世界は明確な形となり、そこに現れたのは、いくつもの空中に浮かんだヒビの入った柱。パルテノン神殿にあるようなものがいくつも浮かんでいる。一体、自分たちはどこに来てしまったのだろうか。
我は、騎士
あなたを守る騎士
誰を守るのか
守る人がいない
だが、私は騎士なのだから、誰かを守っているのだろう
そう、騎士は守護する者がいなければ存在する意味などないのだから
だから私は守って見せる
例え、それが虚像とあったとしても
私はたった一人の騎士団なのだから
「何かが来るでランス!」
「な…おいおい、冗談きついぜ」
そこに来たのは、ひとつの怪物。チェスの駒を思わせる物。右肩だけにかかっている布、腕は細いが、鋭いそれは、どこか鋭利なものに見えた。よく見ると、一つ目である。人間ではないことは確かだ。
「おいおい、こいつは誰の催眠能力だ?」
催眠能力、通称ヒュプノはテレパシーを使い相手に暗示をかける能力で、主に幻覚を見せたりする能力である。強いものになると、視覚だけでなく痛覚などの身体的感覚も相手の精神に与えることができるため、これだけで相手を殺すということも可能な能力なのである。賢木は地面に触れ、接触感応能力を使用する。しかし、結局その場所の詳細を知ることはできなかった。
「どういうことだ?いくら催眠能力でも、少しぐらい…」
たとえ催眠能力であったとしても、少しぐらいは抜け道があるはず。だが、それすらも見当たらない。それどころか
(てか、なんだよこれ…憎悪、いや嘆きか?訳のわからないもの振り撒きやがって)
感じるのは負の感情だけであった。暗く、そして後悔が支配するそれはしかし、そんなものを振り撒いて敵はどういうつもりなのか。いやそれよりも、自分たちはいつ、どこで催眠にかかってしまったのだろうか。この周りはB.A.B.E.L.がすでに囲っている。そのため、侵入することも不可能。ならば外からだろうか、いや、自分と隣にいる女性は、本部から直接車で直行した。催眠をかけるとしたら本部か、それか車を降りてこの家の中に入るわずかな時間。場所的にも時間的にも自分たちに催眠をかけるなど困難である。では、いったいどうやって…。
「賢木さん」
「!」
隣にいる少女、四葉ありすが声をかける。
「考えても仕方ありません。今は、ここを何とかするべきかと…」
「…何とかするったって…」
「ともかく、あれをッ!」
その時、怪物は剣を振り挙げた。ギギギという音からかなりの重さのある剣であることが分かる。ありすは、賢木の身体を押し、自分はその反対側へと避ける。その時、剣が振り下ろされた。何とか、避けることができたが、その思い一撃は、地面をえぐってしまう。ありすは立ち上がりながら言う。
「あれを倒すしかありませんね…ランス!」
瞬間、空中にいた黄色い生物、ランスは煙と共にアイフォンのような物体へと変わる。
「ランス~~」
ありすは、キュアラビーズという宝石をランスの額にセットする。そして…。
「プリキュア・ラブリンク!」
「L・O・V・E」
ありすは、ランスが変化したラブリーコミューンの画面を触り、『LOVE』の文字をなぞる。すると、画面から、キュアラビーズに描かれているような矢の絵が画面に出現する。そして、彼女の身体を光が包み込み、普通の長さであった髪の毛も、長くふわふわしたような感じとなり、二つの髪飾り、リストバンドなどのアクセサリーが装着され、そして光がはじけたその時、黄色を主体とした衣装に身を包んだありすの姿。そして、左胸に宝石、腰にリボンが出現し彼女、四葉ありす改め…。
「日だまりポカポカ!キュアロゼッタ!」
キュアロゼッタ、トランプのクラブを名前の由来とした。ドキドキ!プリキュアのサブリーダーにして…。
「世界を制するのは愛だけです」
おそらくプリキュアメンバーで一番の金持ちであるそのプリキュアが…。
「さぁ、あなたも私と愛をはぐくんでくださいな!」
その場に舞い降りた。
超能力でできる事できない事が頭の中であいまいになってくる。あの漫画の設定もかなりややこしいのかもしれないと、思ってきた今日この頃。