映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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今回、ゲスト出演する3名、今現在持っている資料が少ない為、口調に違和感があるかも…。


外伝(みゆき編):B.A.B.E.L.所属の特務エスパー

 夜遅く、少年少女が見つけたのは一つの遺体。肺を鋭利な刃物で貫かれている少女の遺体だった。服装からおそらく地元の中学生であろうか。この時間なのだから学校帰りというのは考えにくい、そのため塾帰りであろうと少年は考えた。しかし、近くにカバンはなく、所持品もない。その場にあるのは少女の遺体以外には、あとは何かの宝飾品の欠片ぐらいだろうか。そこに、一人の女性が現れる。女性はその現状を見て、二人に指示を出す。それを受けて少女は、手を地面に付いて、夜の裏道を走っていく。普通の2足での走りよりも早そうに見えるのは彼女の身体能力が高い為、という言葉一つで片づけられるものではない。少年の方はと言うと、なぜか立ちすくみ、ただ指を額に置くだけである。女性は、そんな少年には目もくれず、少女の走って行った方向へと向かって行った。

 

 そんなことはさておき、この場所では一人の少女が命の危機に陥っていた。

 

「あの、えっと…」

「…」

 

 状況については以前伝えた通り、みゆきの首筋には剣が置かれ、後ろには少女がそれを構えて立っていた。みゆきは、無い脳を存分に働かせて、この状況を好転させるきっかけをどう作ろうかと考えていた。しかし…。

 

「…」

(だ、だめだ…何もいい考えが思い浮かばない…)

「ねぇ」

「え?」

 

 頭の中で大パニックになっている中、少女がみゆきに声をかける。

 

「もういい?あなたも、これ以上怖い思いなんてしたくないでしょ?」

「ちょ、ちょっと待って!!えっと…えっと……」

 

 まずい、この少女は本気だ。早く何か手を打たないと、笑えない話に…いや、笑うことができなくなってしまう。だが、彼女にはこの状況を好転させるウルトラCなどは思い浮かばなかった。今までプリキュアをやってきて、自分が死ぬかもしれないという事態に陥ったことなどほとんどなかった。だが、今現在彼女の隣にはそれが見え隠れするものが。どうすればいいのか全く分からない。だから、取りあえずできることと言えば、疑問を投げかけることだけ。

 

「ど、どうしてこんな事をするのかな…?」

「どうして…か」

「…」

「知っている?知らなきゃよかったっていうことが世の中にはたくさんあるっていうこと」

「…どういうこと?」

「知らない方が幸せ…知らないうちに死んだ方があなたにとっては幸せなのよ」

「生きるほうが何倍もハッピーに決まってるよ!」

「…」

 

 すずねは、その言葉に黙ってしまう。

 

「生きていたら、そりゃ落ち込むときとか辛いこととかたくさんあるけれど、でも生きていたらいつかはハッピーになれるんだよ!だから…」

「黙りなさい!」

「ヒッ!」

 

 すずねのその言葉に、思わず倒れそうになる。しかしもしそんなことをしてしまえば剣によって首筋が切れてしまう。だから何とかその場に踏みとどまる。 

 

「生きていれば生きているだけ、不幸になる。魔法少女はそういう物…それだけは教えておいてあげる」

(魔法…少女?)

 

 みゆきは、その魔法少女という言葉に聞き覚えはなかった。自分たちプリキュアは、たしかに魔法少女と言えば魔法少女であるが、分類でいうと伝説の戦士である。ここにおいて、すずねがなにか勘違いをしているということに気が付いた。

 

「もう、無駄話はおしまい。さよなら」

「ちょ、ちょっと待って!私、魔法少女なんてのじゃないよ!!」

「…」

 

 みゆきがその言葉を言うと、なんだかすずねの怒りがさらに増したような気がした。

 

「この期に及んで下手な嘘は見苦しいわよ」

「う、嘘じゃないって!確かに、私はプリキュアだけれど…魔法少女じゃなくて伝説の戦士だし!!」

「プリ…キュア?」

「そ、そうだよ」

 

 もう、これが最後の手段と言っても過言ではなかった。もしも、彼女が自分を襲った理由が魔法少女というものだと思ったからだとすれば、それが勘違いだと分かってさえもらえれば助けてもらえるのではないか。根拠も理論も関係ない。一か八かの大ばくちである。

 

「…だったら、そのソウルジェムはなに?」

「ソウルジェム?」

「えぇ、あなたの手の中にある物、それが魔法少女であるという証拠だわ」

 

 自分の手の中にあるものと言えば、先ほどの怪物が落とした宝石だけだ。これがソウルジェムという物なのだろうか。

 

「こ、これはさっき怪物を倒したときに落したものだよ」

「嘘、魔女が落とすのはグリーフシードよ。常識じゃない」

「ほ、本当の事だって!」

「話はこれで終わり」

「へ?」

「それじゃ、今度こそさよなら」

 

 最後の手段失敗。DEADEND直行ルート決定である。みゆきは、全身の筋肉が硬直したように感じられた。自分の死を意識したせいなのだろうか。体中の筋肉が、これから斬られるるであろう部分を守るために、集まっている感覚である。しかし、どう考えても、それは無駄な悪あがき。せめてすずねの言う通り痛くしないで殺してもらいたい。と頭の端で現実逃避のごとく自分の死の瞬間を思い浮かべていた、その時であった。

 

「カァ!カァ!」

「ッ!」

 

 それは空虚の空からやってきた漆黒の翼と体を持つ闇の狩人。

 

「カラス?」

 

 それは、すずねの顔へと飛び掛かる。すずねはそれに思わず反応してしまい、みゆきの首筋から剣を離してしまった。そして次の瞬間。

 

「ガウッ!!」

「チッ!」

 

 今度は大きな体を持つ獣がすずねに襲い掛かる。すずねは剣を盾にし、その突撃に対処するが、勢いに負けて後ろに立ち退いてしまう。この時点で、みゆきとすずねの相対距離は完全に離れたといえる。みゆきは、一連の動きによる風圧と緊張感から解放されたことによる効果で、地面に女の子すわりで座り込む。

 

「た、たすかった…?」

 

 そこで初めて、みゆきは後ろを見る。先ほどまですずねがいた場所、そこに少女はおらず、ただ一匹の狼がいるだけだった。だが、それも一瞬だけ、狼の毛ははじけ飛び、その中からみゆきより年上であろう少女が現れた。

 

「大丈夫!?」

「は、はい…なんとか…」

 

 こちらを気にしてくれた。どうやら味方のようだ。

 

「よかった…」

「とんだ邪魔が入ったわね」

 

 遠くにいる剣を持った少女。みゆきは初めてその少女を見た。長い銀色の髪の少女。だが、その目はどこか悲しげに見えるものだった。そこへ、一組の男女が現れる。一人は、高校生ぐらいの男の子、もう一人は大人の女性だ。

 

「大丈夫か、初音」

「うん、こんどは間に合った」

 

 どうやら先ほどまで狼だった少女は、初音といい、そして後から来た男女は彼女の仲間のようだ。そして大人の女性は、すずねに向かって何かの手帳を見せて言う。

 

「B.A.B.E.L.所属の特務エスパー『ザ・ハウンド』です!あなたを、この近辺で起きている通り魔殺人事件の重要参考人として拘束します!」

「特務…エスパー……」

 

 『特務エスパー』、それを説明する前に、まずB.A.B.E.L.について説明しなければなるまい。時は21世紀、世界は二つの人種に分けられていた。一つは、超能力を持たない人間たち、『ノーマル』。一つは、超能力を持つ人間たち『エスパー』。エスパーは物理法則を捻じ曲げることが可能な力をもち、質量・エネルギー保存の法則は無論、空間も光の速度も超えることができる。戦前から確認されていたそれは、時に平和のために使われ、時に犯罪に使われ、そして時に戦争に使われて何人もの何種類ものエスパーが生まれてきた。B.A.B.E.L.は、そのような超能力の研究を行ったり、天災、人災、事故での救助活動や超能力者が巻き起こす事件の数々を解決している機関である。そしてそこに属している高超度エスパーを『特務エスパー』と呼んでいるのだ。因みに、みゆきやプリキュアの仲間たちは全員ノーマルに値する人間だ。それに、みゆきのクラスにも何人かはエスパーがいたが、それらは超度1や2といった7まである超度の内でも小さいクラスの人間ばかりだった。そのため、今目の前にいるような高超度エスパーなど、みゆきは初めて見た。

 

「そう、彼女が見つかったの」

「やっぱり、あれはあんたがやったのか」

「…そうよ」

 

 彼女たちが見つけたのは、一人の少女の遺体。血の乾き具合からして、まだ近くに犯人がいるとは思っていた。しかし、それがまさかまだ年端も行かない少女であろうとは思わなかったが。

 

「どうしてあんなことを…」

「それを聞いて、どうするつもり?」

「どうもしません。ただ、あなたを逮捕するだけです」

「…止められるものなら、止めてみなさい…『炎舞』」

「!」

 

 すずねは剣を構える。剣には、5つの円形の模様が描かれており、その真ん中が淡い光を放つ。すると、すずねの周りに、炎でできた剣が多数出現する。

 

「合成能力者!?」

「しかも、見たところ超度は4か5…下手すればもっと…」

 

 ザ・ハウンドの担当指揮官、小鹿は驚愕していた。もしかしたら、目の前にいる少女は、自分の担当する明と初音よりも強いかもしれない。しかも、止められるものならという少女の発言からすると、おそらく自分の後ろにいる女の子を狙っているのだろう。2対1とはいえ、明は戦闘には向かないため初音に頑張ってもらうしかない。こんな状況で

、守り切れるのだろうか。そう考えていた。しかし、悩んでいても仕方がない。小鹿は、すぐに二人に指示をだす。

 

「初音ちゃん、まだ彼女の力はそこが知れないわ!気を付けて!!」

「分かった!」

 

 初音は、周囲の物質を念力で体に覆い、さらに『催眠能力』によって狼そのものとなった。といっても、ここは森のように木の葉や土が大量にあるわけではないからか、顔等いたるところで肌が露出したままとなっている。

 

「明君、私達で彼女を守るわよ」

「了解!」

 

 主だった戦闘能力のない二人は、みゆきを守ることにした。と言っても、戦闘能力がないということは、いざとなったらなんにもできない。そのため、小鹿はすぐに周囲を巡回している警察官たちに集合をかける。

 

「あ、あの…」

「大丈夫だから、初音ちゃんに任せて」

「初音はかなり強いからな」

「わ、分かりました」

 

 小鹿は改めてみゆきを見る。そして違和感を感じる。見たところ着ている服は外出用の服というより、寝巻のような服。何故そのような軽装でこのような場所にいるのだろうか。だが、今はそんなことを考えている暇はない。すでに初音と少女の戦いが始まろうとしていた。




次回、すずねVS初音。
魔法少女VS超能力者。

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