映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

42 / 82
待つつもりだった

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 まさか、そんなはずはない。そんなことを思いながら少女は走り続けていた。心臓は大太鼓が叩かれた時のように大きく鼓動を成して、冷や汗は南米のスコールのようになだれ落ち、そして頭はおそらく、何も機能していなかったのだろうと思う。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 久々に自分の家があった町に戻ってきた少女。勘当されて、二度と帰ってくるなと言われ、自分は師匠である少女の下に一時身を寄せていた。だが、そう言われたのは自分が愚かだったから。元々、自分の中のしたいことと、父親の中での願いの剥離が起こってしまったために発生した事。多分、ちゃんと向かい合って、話して、でもやっぱり怒られて、でも最後にはきっと、自分の考えを理解してくれる。今度こそ、父親の考えを理解する。理解したい。その一心でまたこの街へと戻ってきてしまった。だが、戻ってきて早々に、街を歩く人々の話し声が耳に聞こえた。信じたくはなかったのだが、その話を繋ぎ合わせるとこうなった。

 

『教会が燃えている』

 

 と。この街にある教会はただ一つだけ、彼女の家の教会だけだった。

 少女は急いで向かう。父、母、そして妹と一緒に何度も歩いたその道を。今日の晩御飯は何がいい?今日はどのくらいの人がお父さんの話を聞いてくれるかな?そんなたわいもない話をしながら歩いた道を。ただ、あまりにも短い道で、父や母の歩く速さについて行っていたらすぐについてしまって、もっと話がしたかったなっといつもいつも思っていたそんな道。それなのに、どうしてこんなにも長いのだろう。どうして、こんなに息を切らせては知らなければならないのだろう。今自分は何度地面を蹴ったのだ。どれだけの汗を流したのだ。どれだけ頭の中であのころの記憶を思い起こしていたのだ。どうして……。

 

 

 

 こんなに、こんなに身体が重いのだろう。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 もしもそうであれば、どれだけ走っても意味はない。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 もしもそうだったとしても、自分は勘当された身だから、あの家とは関係ない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 もしもそうで、助けられたとしても、自分は父親と話すことも、母親に抱き着くことも、妹に笑顔を向けることもできないかもしれな。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 恩で動かない人だってのは分かってた。自分の心情に合うことがなかったら例え娘であったとしても罰を与える。そんな誠実な人だった。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 叱る時にはよく叱ってくれ、でも最後には必ず笑いかけて、抱きしめてくれる。そんな笑顔を、もう一度みたかった。

 

「はぁ……」

 

 まだ小さいから。自分も一緒にいて、一緒に成長していきたかった。いつかは二人で父親の教会を継いで、父の教えを皆に広めて行こう。そう言って、一緒にりんごを食べて、それが自分にとっての一番幸せな時間だった。

 

「ッ!」

 

 もう、そんな三人は見れないんだと、彼女はその場所で気がついた。

 

 

 

「佐倉さん……」

「あっ……」

 

 気がつけば、杏子は焼け落ちた教会の中にいた。長椅子に座って、ステンドグラスを眺めてボーとしていた。そんな自分に声をかけてきた女性を、彼女は知っている。

 

「マミ……さん?」

「……」

 

 グラマラスで、大人の女性の雰囲気を持っている女性で、魔法少女の先輩である巴マミだ。自分は、彼女の下で新米の頃から教えを乞うていた。いわば、恩人である。父親に気がつかれないでここまで魔法少女をして行けたのも、彼女のおかげ。だが何故だろうか。自分が彼女の名前を呼んだ瞬間、彼女の表情が一瞬だけ変化した。自分は、名前を呼んではいけないほどの何かをしてしまったのだろうか。

 杏子は、マミの後ろに二人の少女がいるのを見た。一人は、青髪のちょっとまぬけそうな少女。一人は、緑髪の小さな少女。モモと同じぐらいの年齢だろうか。それから、一匹、空を飛んでいる生き物もいる。QBに似ている気がするが、だがどこか違う気がする。

 

「マミさん……後ろの二人は?」

「ッ!なに言ってんの杏子!私だよ!えりか!」

「えり……か?」

 

 知らない名前だ。だが、どうしてだろうか。一瞬だけ頭が痛くなった気がする。それに、彼女は自分の事をよく知っている様子だ。もしかして、以前父の話を聞きに来てくれていた信者なのだろうか。自分は見覚えないが、彼女の方は自分の事を知っているようなので、たぶんそうなのだろう。そう、彼女が考えていた時、緑色の髪を持つ少女が自分に話しかけてくる。

 

「杏子……」

「えっと……貴方も、信者の子……かな?ゴメンね、私覚えていなくて」

「うぅ……」

 

 女の子は悲しそうな顔をした。その顔を見て、杏子もまた悲しくなってイライラしだす。何故だ。どうしてそのような感情が生まれるのだろう。悲しいのはまだ分かる。しかしイライラしているのはどうしてだ。

 

「杏子……」

 

 もう一度、少女は自分の名前を呼ぶ。まただ、今度はより一層悲しくなって、やるせない気持ち、自分の事を許せない気持ちになる。そうだ。このイライラは自分のことが許せないからだ。だが、どうしてだ。どうして、自分は自分の事を許せないのだ。彼女達の事を忘れていたからか。忘れていた?彼女たちの名前を?違う、もっと大事な物を忘れているはずだ。もっと大事な、心の奥底にあるもっと大事な思い出を、忘れているはず。なのに何故、どうしてこんなに心がすがすがしいのだろう。

 ここは自分の家の教会で、昨日も父親の手伝いをしていたはずだ。だが、何故このようにボロボロになっているのだろうか。木片が大量に地面に落ち、ステンドグラスの大半が割れ、上からかかっていたシャンデリアも、いくつか落ちて、床の木と木の継ぎ目からは草木が生えてきて、まるで何年間も誰も立ち入っていなかったかのようだ。いや、そんなはずはない。自分は昨日確かにここいた。自分だけじゃない。父も、母も、モモも、皆一緒に笑っていた。なのに、どうしてだ。何故こんなに悲しんでいる。どうして、こんなに泣いているのだ。自分は……。

 

「佐倉さん……」

「マミさん、なんでだ?どうして、教会がこんな……父さんや、母さん……モモは?」

「杏子……」

「昨日みんな笑ってた!私に笑いかけてくれてた!綺麗で、私が自慢できる教会だった……なのに、どうして……こんなのって」

 

 その時だ。杏子の頭の中にある映像が浮かんだ。

 

「なんで、どうして父さんも、母さんも泣いてるの?モモ怯えなくていいからこっちに……なんで?なんでそんなに怒ってるの?悪魔?魔女?どうして!?私は父さんが喜ぶと思って!」

「佐倉さん落ち着いて!それはもう過去の話よ!」

「違う!こんなの父さんじゃない!だって父さんは……父さんは……」

『私は騙されていた……!お前こそ魔女だ!この……魔女!人心を惑わす魔女め!』

 

 違う違う違う!こんなのは違う!自分の知っている父さんじゃない!自分の知っている父は、もっともっともっと……もっと……。

 

「違う!なんで……どうしてこんなに悲しいのに苦しくないの……なんで、こんな父さんだったって納得できるの?なんで……違うのに、こんなの私の……好きな父さんじゃ……」

 

 父さんじゃない!!

 

「でも、父さん……」

 

 これが、自分の父親。受け入れたくない真実。自分のせいで不幸にしてしまった。自分がもっと話をしていれば、謝って、父さんの話をよく聞いていればよかったのに。そうすれば、こんな父親にせずに済んだのに。自分のせいだ。自分が父親を変えてしまった優しかった、微笑んでくれた、いつもいつも正しいことを言ってくれていたそんな誰にでも自慢できる父親を変えてしまった。自分の、一人よがりの願いのせいで……。

 

「ゴメンなさい……」

 

 もう、その言葉を聞いてくれる父は、母はいない。そうだ。あの時、自分は……。

 

「父さん!母さん!!」

 

 群がる人達を押しのけて、自分は教会の中に入って行った。燃え盛って、今にも崩れそうになっていた教会に。そして、自分は見てしまった。

 

 

 

 血まみれになって倒れている母親。

 

 

 

 首を吊っていた父親。

 

 

 そして……。

 

 

 

 柱に押しつぶされて見る影もなくなってしまった子供部屋……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!あぁぁぁぁっぁっぁああぁあぁああぁあぁぁあ゛あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛」

 

 どうして思い出させた。どうして……。

 杏子の叫びを聞いたマミは、焦りの表情を見せる。

 

「まずいわ……このままだと」

「杏子は一体どうしたですか!?」

「仁美の話だと、記憶を変えられてるんだよね!でも、これって……」

「記憶が、戻ってる?」

 

 仁美の話によると、織莉子という少女と一緒にいた四人目の魔法少女は、記憶を変えるかどうかという話をしていたそうだ。と、いうことは杏子の記憶が変えられた。いや、恐らく消されたと判断する方が早い。ここまでの杏子の口からでた話を統合すると、どうやら杏子の記憶はあの日、二年前の教会が全焼する前、つまり杏子が魔法少女であると父親にばれる直前にまで戻っている様子だった。しかし、今はどうだろうか。ゆっくりと杏子の記憶が戻って、彼女のトラウマを掘り起こしてしまったのだ。今の杏子は、父親に嫌われ、勘当され、自分の家が全焼し、家族が死んでいった様子という悲しい現実が一気に落石のように襲っている状態であるのだ。

 杏子の記憶が戻った理由に、マミはこれが原因なのではないかという仮説を出していた。しかし、そのようなものを論じている暇はない。杏子のソウルジェムが徐々に濁りを濃くしているのである。このまま何もしないでいると、彼女のソウルジェムはすぐにグリーフシードへと変化し、杏子が魔女となってしまう。

 

「まずい、マミさん!グリーフシード!」

「ダメよ!」

「なんで!このままじゃ杏子が……」

「この状態でグリーフシードを使っても、すぐにまだ濁るだけよ。それどころか時間をかければかけるほど、思い出したくない記憶をさらに思い出して、さらにソウルジェムが濁るスピードが速くなるかも……」

「じゃぁ、どうするんですか!」

 

 どうするか。決まっている。杏子の記憶を完全に思い出させるのだ。彼女は、この2年の間に、家族を失った悲しみなどのトラウマを抑え込むことに成功したのだ。だからこそ、彼女は魔女にならずに済んだのだ。そして、一週間ほど前にさやかと一緒に魔女退治した時に少しだけ残っていた心の中のしこりも取れて、彼女は自分の中の魔法を取り戻した。つまり、至極当然ではある物の彼女が二年間の事を思い出せば彼女は助かることができるのだ。しかしどうする。短時間でこの二年のことを思い出させるなどというウルトラCをどうやって演出すればいいのだ。杏子と同じ幻術魔法を使える魔法少女を探す。いや、そんな当てどこにもない。ならば、杏子に魔法をかけた魔法少女が向かったというホオヅキに向かってその魔法少女を連れてくる。いや、協力してくれるとは限らないし、最初は協力してくれるそぶりを見せてくれても途中から裏切ってまた杏子にとってバツの悪い記憶ばかりを思い出させる恐れもある。どうすれば杏子を助けられるのだ。どうすれば……。

 

「杏子!」

「ッ!」

「杏子……ゆまの事、覚えてない?」

「ゆ……ま?」

 

 その瞬間、杏子は自分の頭の中に一組の男女の姿が浮かんだ。だが、自分の親の姿じゃない。男性は、腰から上と下に切断されて転がっており、女性はまるで顔に硫酸でもかけられてしまったかのように焼けただれて、着ているものから女性であると判断せざるを得ないほどだった。何だこれは、あまりにも凄惨な状況に、杏子は吐きたくなる。だがどうしたことか、頭に浮かんだ映像はそんなそぶりも一切見せずに、女の子を襲おうとしている魔女の前に立ちふさがった。戦いは比較的早く終わり、映像は小さな女の子、ゆまと名乗った少女に言う。

 

『おい、大丈夫か?』

『うん、ゆまは平気、でも……』

 

 どうして、自分はこんなに冷静なのだろう。父と母の姿を見た時にもあんなに取り乱したというのに。あんなに取り乱した?取り乱して、自分はどうした?そう、自分は人目につかない所に行って泣いて、父を、母を、そしてモモを呼んで、でも誰も答えてくれなくて、もう自分の知っている親と妹は自分の記憶の中にしかいないと知った。そして……。

 

「そうだ、私……生きたい……生きて、父さんが本当に伝えたかったこと……皆に……」

 

 自分はあの時誓ったのだ。父が本当に伝えたかったことを、自分のせいで汚してしまった父の思いを、皆に伝えると。自分は、父の話をよく聞いてくれさえすれば、皆は必ず父の事を認めてくれると。でも自分は急ぎすぎたのだ。たくさんの人に聞いてもらえれば必ず皆、受け入れてくれると信じてたのに、自分はQBに願いを叶えてもらうという反則をした。それは、本当は心の中で父親を信頼していなかったからじゃないか。信頼していたら、そんな願いを言わなくても、例え、皆が話を聞く機会を作らなくても、少しづつ、道端を歩いている人に、元々信者だった人たちに、罵声を浴びせられても、水をかけられても、根気強く説得すれば、年月はかかるだろうけど、いつかは父の話を皆が効くようになる。そんな世界が待っていたのじゃないか。本当は心のどこかで疑っていたのだ。そんな話聞いてもらえるわけない、こんなちっぽけなところで何を言ったとしても世界が変わるはずがないと。疲れていたのだ。罵声を浴びせられるのも、水をかけられるのも。イライラしていたのだ。どれだけみじめな思いをしていたとしても、ずっと笑っていられる父の事を。すべてが遅すぎた。杏子が、それらの事実に気がついたとしても、全てが遅すぎたのだ。そう、すべては子供であったが故に。

 年月は人を変える。どれだけ尊い志を持った人間であったとしても、長い年月を隔てて現実を見させられれば代わってしまう。それでも変わらないのは、変わりたくないと思う頑固者か、変わらなくても何とかなるという能天気な人間か、それとも、どんな現実にも臆さない真に志を持つ人間か。だがどれにしたって大きな志を掲げても、それを実現させる人間など一握りだ。だが、年月が人を変えるのであれば、誰かが人を変えることもできるはず。それがどれだけ遠くにあったとしても、時間をかければ、きっといつかは人を変えてみせることができる。そう信じて動く人間もいるのだ。だが、自分が代わることと、他人を変えることは全くと言っていいほどに違う。何故なら、相手も自分と同じ人間なのだ。その道中、もがき、苦しむことがあるだろう。そんな時こそ、振り返ってみるのだ。そうすれば、そこには何がいるのか。自分がその志を持った理由、その時の嬉しさ、楽しさ、そして潔さ。それら全てが見えるはずだ。だが、それらはすべて過去の者。今の自分には関係ない。今、その道を歩いている自分には関係ない。年月が人を変えようとも、自分という人間その者を変えることはできない。あの時の志を持った自分を変えることはできない。その自分を連れ出すことはできないだろうけど、その時の思い出は持っているのだから。だから人は努力できるのだ。その時の自分に笑われないように。

 

「本当は、いくらでも待つつもりだった。待ってて……親父の話を聞いてくれる人が現れるまで、待つつもりだった」

 

 けど、そんなときにアイツが現れたんだ。断ればよかった。だが、自分の心の中にいる父の志を否定する気持ちが現れて、悪魔の契約を結んだ。幼かったから、自分は父を完全に信頼できなかったから。

 

「悪いのはQBでもなんでもなく、あたしの弱い子供の心だった……だからその時に決めたんだ。親父の信念をたくさんの人に語り継ごうって……あたしのように馬鹿な考えを持って、親や、兄妹や、友達を不幸にさせたらいけないって……守っていこうって決めたんだ。だから、あたしは……」

 

 

≪生きたい≫

 

 

 生きて父の思いを明日に繋いでいきたい。自分のように馬鹿な考えをして親しい人達を悲しませるような人間を産み出したくない。だから自分は生き続けて、自分の近くにいる人間だけでもいい。たとえ独善的で、嫌われてもいい。守って、父親が求めた世界を少しでもいいから実現させようと子供達を教え導く。そのために、自分は……。

 

「生きるって、あの時決めたんだ……。だからあたしは……!」

「杏子……」

「ゆまを……助けたんだ……」

 

 杏子は、ゆまの身体を抱きしめる。それは、殴られたかのような頭の痛みを和らげたいと思って取った、一種の防衛本能なのかもしれない。当然、それだけで痛みが和らぐなどという事はない。だが、どういうわけかゆまの身体を抱くことで、徐々に彼女の頭の痛みは和らいでいった。今の今まで忘れていた。いや、違う。記憶を操作されるまで心の奥底に仕舞っていたあの時の気持ち。どうして自分は生きようと思ったのか、何故自分はゆまを助け、一緒に行動しているのか。ようやく彼女は思い出すことができた。

 

「杏子、思い出したの?」

「あぁ……全部な」

「佐倉さん」

 

 杏子がゆまの身体を離した瞬間、マミが話しかける。

 

「マミ……」

「マミさんって呼んでもいいのよ?さっきみたいに」

「前に言ったろ……あたしにはそんな資格……っていうか恥ずかしいというか……その……」

「もう照れちゃって」

「うるさい!」

 

 マミは、それよりもと言ってグリーフシードを杏子に手渡す。みると、杏子のソウルジェムの濁りがかなり溜まっていた。間一髪と言ったところだろうか。杏子がソウルジェムの穢れを取っている間にえりかが言う。

 

「でも、なんで杏子は記憶を取り戻したの?」

「そうね、魔法のかかりが浅かったって可能性もあるわね……」

「どういう事?」

「例えば、佐倉さんの幻術の魔法。あれと記憶操作は、どちらも相手の心に介入している魔法ともいえるわ。だからもしも、佐倉さんが記憶を操作される瞬間に無意識でも抵抗していれば、魔法のかかりが浅くなるという事も考えられる」

「?なるほど」

「それに、あたしは一週間前にさやかと一緒に魔女退治に言った時、似たような魔法をかけられてるからな。それで免疫みたいなのができたんだろ」

 

 杏子とさやかが一週間前に対峙した魔女。それもまた、杏子の記憶に介入してくるような魔女だった。その時も、杏子は魔法を打ち破って、現実の世界でのことを思い出すことができた。今更ではあるが、あれもまた自分の中の魔法が作用したんじゃないのかと思った杏子は、ふと昨晩一緒に魔女退治に出かけたさやかの事を気に掛ける。

 

「なぁ、そういえばさやかは?」

「あぁ、そっちはつぼみとまどか、それからなぎさに探して貰ってるから」

「探してもらってる?」

 

 その言葉に、マミとえりかはうなづいていった。

 

「実は、美樹さんは昨晩から行方不明なの」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。