映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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これ書きながら思ったのは、『どうやって倒そうかな…』ということです。タイマンして倒せる相手じゃなさそうだ。実際アニメで魔女の元ネタは一回も負けなかったし。


ぼくらの思い出

仲間達はもういない

母も兄も自分のために死に

13人の歳上の仲間たちはいなくなった

みにくい大人のために消えた光

もうこんな世界なんて要らない

こんな醜い世界で生きていけない

だから全てを焼き払おう

有象無象を焼き払おう

あのムシに似たあいつを焼き払おう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一人だけ生き残った自分を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼いてしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼくらの思い出を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

消してしまおう。

 

 

「はあっ!」

 

 使い魔がまた一匹弾け飛ぶ。結界の中は大多数が迷路となっており、直接魔女の所まで行けるのは極々まれである。魔法少女としては、魔女の居所にたどり着くまで、どれだけ力を温存できるのかどうかが勝率に関わってくる。そう考えるとつぼみは、かなり効率よく使い魔を撃退していた。いまのとこ彼女は、そんな大きな技を使わないで、ほとんど薔薇のムチだけでことを済ませていたため、現在保持しているグリーフシード2個もまったく使わないままであった。それにしてもこの結界は、何なのだろうか。当初、おもちゃ屋でできた毛会なのだから、おもちゃが大量に置かれている結界であろうと想像していた。しかし、いざ入ってみると、そんなものはあまりない。まるで洞窟のようであった。暗く、そして狭い道。だからところどころで突然出てくる使い魔を正確に捉えなければ、すぐに行く道が塞がれてしまう。そして…。

 

「ここですね…」

 

 彼女がたどり着いたのは、ひとつの扉であった。この奥に魔女がいるのだ。見ると、それはまるで仮面のようである。真赤な血で色付けされたようなその仮面には、15個の光が点々と置かれていた。これは、この魔女に関係のあるものなのだろうか。分からない。その扉が意味するもの、光が意味するもの、どれも分からなかった。その時…。

 

「え…?」

 

 光が一つ消えた。すぐにまた一つ、また一つと消えていく。つぼみは、それに嫌な感じがした。悪寒という物なのだろうか。その内、最後の光が消え、ドアが開いていく。

 

「…」

 

 招かれているのだろうか。それとも罠なのだろうか。しかし、どちらにしてもつぼみは魔女を倒すために入らなければならない。つぼみは意を決して、ドアの中へと入っていった。

 

「なに…これ?」

 

 つぼみの目に飛び込んできたのは、茶色に近い暗いオレンジの壁、そして中心には円形に無数のイス癌存在していた。普通の椅子から、パイプいす、ロッキングチェア、座布団まで、合計14個の多種多様のイス。それら一つ一つからは、悲しい気持ちがこもっているような、そんな気がした。異様な光景だ。今まで何回か魔女の結界の中に入ったが、ここまで異様なものは見たことなかった。

 

「…このイスはいったい…」

 

 つぼみは、赤い革のシートが張られた椅子に触れた。その時…。

 

「え?」

 

 椅子のすべてが回転し始めた。最初はそれほど早くはなかったが、その内、スピードがどんどんと上がっていき、そして空中へと昇っていく。

 

「い、いったい何が…」

 

 次第に、椅子が止まっていく。そしてその瞬間、壁の色が変化する。オレンジから真っ黒に、しかしそれでいてところどころに光が見える。いくつかの光は、まるで生き物のように動いて、そしてそれは遠くの方まで続いていた。全部下に見えるが、それが何なのかをつぼみが理解するまで数分かかった。

 

「これって…外の様子ですか?」

 

 綺麗だ。だがやはり分からない。なぜこの結界はこのような構造になっているのか。第一、魔女はどこにいる。見当たらない。どこにいる。どこだ。どこだ。どこだ。どこ…?

 

「…ハッ!」

 

 その時、後ろから気配を感じた。と、同時につぼみは横に跳ぶと、そこに向かって光の線が走った。

 

「っ!」

 

 間一髪逃れたと思ったがしかし、足が瞬間的に熱くなった。少しかすったようだ。だが、心臓やソウルジェムを貫かれるよりはよっぽどましである。これぐらいの攻撃であったら、つぼみの力で簡単に治すことができるのだから。そう、今のは魔女の攻撃。風景に溶け込んで身を隠していたのだろう。よく目を凝らしてみると、輪郭が浮かび上がる。

 

「これは…大きいですね」

 

 そこにいは、100Mぐらいであろうか、今まで見た魔女の中でも最上級に大きかった。全身の色が黒色のために、暗い夜空と同化して見えなくなっていたようだ。先ほどの攻撃は、避けることができたが、もしも直撃していたら自分はどうなっていたのか分からない。これほどの巨体で、攻撃力もあって、それを一人で倒すことなんてできるのだろうか。やはり、まどかを待つべきだったか。ここは、一度退いて…。

 

「!」

 

 と、考えていたがしかし、魔女は自分の都合なんてお構いなかった。つぼみは、魔女の身体から放たれるレーザーを避けながら、魔女へと近づいていく。

 

「ハッ!」

 

 跳びあがったつぼみは、それぞれの指の間に薔薇を挟むように両手合わせて6本の薔薇を出現させる。

 

「貫きなさい、『薔薇の銃弾(ローズプロイエッティレ)』!!」

 

 マミが考案、命名したそれは、言ってしまえば薔薇をダーツの矢として投げるものだ。それらは、それぞれ魔女へと向かっていく。しかし…。

 

「そんな、刺さりもしないなんて…どれだけ頑丈なんですかッ!」

 

 それ等の薔薇は、魔女に当たった物の、刺さらずに下に落ちていってしまう。魔女に通じないことは分かっていたが、しかし、まさか刺さらないとは。だが、つぼみは、次の行動へと移る。薔薇の銃弾が通らなかった場合に備えて考えていた第二の矢である。

 

「はっ!」

 

 つぼみは手の中の薔薇の茎を少しだけ伸ばし、針のようにも、槍のようにも見える形にする。『スピアローズカバニエル』、薔薇騎士の槍と名付けられたものだ。つぼみは、地面を蹴って一直線に魔女に近づく。

 

「はぁぁ!!!」

 

 今度は、力ずくで魔女に武器を差し込むつもりなのだ。つぼみの作戦、それは魔女の体内に茨を入れ、そこからマミの提案した技を食らわすことであった。正直ここまででかい魔女を相手にすると、基本的に攻撃範囲の狭いつぼみでは、若干の不利となる。その不利をものともしない作戦を、マミは考えだしてくれたのだが、しかし、その準備段階で塞がれてしまっている。彼女は、少し焦っていた。だから、敵の懐に飛び込むなどという悪手を取ってしまった。そう、敵の懐に飛び込むということは。

 

「ッ!」

 

 敵の身体から放たれるレーザーをまともに食らう確率が高くなる。

 

「クッ!あぁッ!!」

 

 無数のレーザーは、つぼみの右肩、両足の太もも、そして腹部の4箇所を貫いた。特に、腹部に至っては、同時に2、3か所を貫かれている。通常の人間であったら、このあたりでもう戦意喪失していておかしくもない。いや、死んでいてもおかしくない。しかし、それだけの攻撃を受けるのはもはや慣れっこである。彼女は暁美ほむら戦のそれと同じように痛覚を消し、唯一無事である左腕で茨を操り、地面に移動した。

 

「功を焦りすぎましたか…ハァッ!!」

 

 つぼみは、周囲を見渡す。見たところ遮蔽物などは見当たらない。ゆっくりと体を回復しておく時間などはないだろう。ならば、と彼女は地面に左腕をめり込ませる。

 

「茨よ、集いて我を守れ!『防壁荊(バリエーラスピーナ)』!!」

 

 その瞬間、茨は彼女の周りをドーム状に囲っていく。これは、前回ほむらと戦った際にほむらを捕縛するために使った技を、防衛用に変えたものだ。そしてその間に、つぼみは自身の身体を修復していき、この後どうするべきかを思案する。

 

(あの、魔女の力は相当の物…おそらく今まで出会った魔女の中でも断トツです。正面突破するには、あのレーザーが邪魔になる。でも、私はマミさんやまどかのような遠距離攻撃で致命傷を与えられるようなものは持っていないからたかが知れている。それに、あの装甲…このまままどかが来るまでやり過ごすという手もッ!!)

 

 まどかであったら、あの莫大な魔力と攻撃力で魔女の硬い防御も崩すことができる。そうすれば勝機は見えるのは確かだ。しかし、それまでやり過ごせればの話である。魔女は、茨のドームを破壊しようと攻撃を繰り返す。

 

「大丈夫、ちょっとやそっとの事じゃ壊れません」

 

 そう、つぼみの言う通り、この茨のドームはちょっとやそっとの事では壊れないのだ。つまり、ちょっとやそっと以上のことであったら壊れてしまうという意味なのだ。そして、運の悪いことに今回の敵は、そのちょっとやそっとの攻撃ができる相手であった。茨を突き抜けて、黒い鋭くとがった巨大な時計の長針のようなものが茨の外から出現する。

 

「ッ!そんな!?」

 

 それは、魔女の手。その攻撃は、何度もつぼみを襲う。このままでは、自分が出現させたドームが棺桶になってしまう。つぼみはすぐにドームを解体させようとする。しかし、それはできなかった。そもそも、彼女が操れるい茨は、自分に直接巻き付けてある茨ぐらいなのだ。しかし、それも先ほどの攻撃で切れてしまった。こうなると、もう、茨を操るなどできない。隙を見て、魔女が攻撃で開けた数個の穴から出なければならない。

 

「あそこなら…」

 

 つぼみは、一か所の穴に向かって左手を伸ばしながら跳びあがる。もう少しで茨を掴める。しかし、その魔女はそれをさせるほど甘くはなかった。

 

「ッ!」

 

 つぼみの目の前を先ほどの魔女の手が通り過ぎる。攻撃された。激痛がつぼみを襲うが、やはりまたも痛覚を消した。つぼみは、降り立つことも、受け身を取ることもなく地面に叩きつけられ、何回か転がって茨の壁に激突する。そして、つぼみは今自分が転がってきた方向を見る。あるのは魔女の手だけ。否、何かが落ちてきた。細い、棒のような物。少し曲がっているだろうか。一方向からは液体が吹き出しており、反対側は細いヒトデのようなものが付いており、一瞬孫の手のように見えた。

 

「あ…」

 

 いや、本当に手である。それは、魔女の攻撃によって引きちぎられた…。

 

「あぁ…」

 

 自分の手であった。

 

「っ!」

 

 つぼみは、左手のあったであろう部分を触る。何もない。右手を見ると、そこについていたのは大量の自分の血。それを見た瞬間、彼女の中で何かが弾けた。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 彼女の悲痛な叫び声は、結界中に響き渡り、そして露と消えた。




この小説内でのつぼみの扱い。
・妹が病気になる。
・妹のために魂を石ころにする。
・プリキュアになれなくなる。
・友達に嘘をつく罪悪感。
・プリキュアというだけで命を狙われる。
・肺に穴が開くなどの重症を負う。
ここに左腕切断っと…なんだか、つぼみに酷い仕打ちばかりしている気がする…。
ps.ネタバレになりますが、もちろん次回で腕は元に戻ります。

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