映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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また、あなたを守れなかった……

 まどかは、自分が目の当たりにしている光景が信じられずにいた。つぼみが誰かに襲われるということはキリカから聞いた。だが、まさかそれがほむらだったとは。

 

「ゲボッゲボ…」

「つぼみちゃん!」

 

 その時、つぼみがせき込む。明らかに液体が混じった咳、もはや一刻の猶予もなかった。まどかはつぼみに向けて念話を送る。

 

『つぼみちゃん、私がほむらちゃんの相手をするから、その間に回復して』

『まどか…お願いします』

 

 まどかはつぼみに自分が持つグリーフシードを渡して、ほむらに相対する。傷の状態からして、ソウルジェムの穢れを取りながらでないとすぐに魔女になってしまうと考えたからだ。

 

「やっぱり、あの子は頼りにならなかったようね」

「あの子ってキリカちゃんの事?」

「そうよ」

 

 ほむらは、つぼみの時のように銃を向けることはせずに話を続ける。まどかはしかし、ほむらがどんな行動をとるのか予想できないため、何が起こってもいいように気をずっと張っている。まどかの顔から滴り落ちる汗が、彼女の心情を物語っている。

 

「どうして、ほむらちゃんはつぼみちゃんを殺そうとするの?」

「あなたには関係のないことよ」

「関係なくなんかない!」

「!」

 

 いきなり大声を出したまどかにほむらは思わず後ずさりする。

 

「つぼみちゃんも、シプレちゃんも…私の友達だもん…関係ないはずないよ」

「友、達…」

 

 そのまどかの言葉に、ほむらは顔をうつむかせる。

 

「うん、そうだよ。魔法少女だからとかは関係ない…つぼみちゃんは私の大切な友達だから…」

「…私だって」

「え?」

 

 ほむらはうつむいていた顔を上げ、その手にマシンガンを持ち構える。

 

「友達のためなら私だって悪魔にでもなんでもなるわ!!」

「え?」

 

 その顔は、まどかには悲しげに映った。そして、まどかの目線はほむらの足元へと移る。その瞬間、時が止まった。いや、動くものはある。ほむらは、構えたマシンガンを一度降ろして、まどかの横を通り過ぎる。その時、まどかの方を見て、悲しげに言う。

 

「ごめんなさいまどか…また、あなたを守れなかった……」

 

 そしてほむらは、蹲っているつぼみの方を見た。

 

 

 つもりだった。

 

「いない?」

 

 あったのは、地面から生えた茨だけ、つぼみの姿はどこにもなかった。

 

「茨…まさか!」

 

 ほむらは自身の足を見る。右足に絡みついている物、後ろを見るとそこには穴が開いており、そこから茨が自分の足まで続いていた。

 

「チッ!」

 

 ほむらは、盾からナイフを取り、茨を切ろうとする。しかし、一足遅かった。

 

「きゃッ!」

 

 女の子らしい声を出して、ほむらは後ろの穴へと地面に擦られながら引っ張られる。その時の衝撃でほむらはナイフを落としてしまう。そして穴のすぐ横にまで、すなわち先ほどまでたっていた場所に戻されたほむらは、すぐに立ち上がろうとする。しかし、それはかなわない事であった。穴と穴を点として一直線にモグラが通ったように地面が盛り上がっていく。次の瞬間、現れたのはやはり茨。茨は上に上にと伸びている。誰かが茨を引っ張っているのは間違いなかった。その誰かを確認するためにほむらは上をみる。そこにいたのはやはりあの少女であった。

 

「花咲…つぼみ…」

 

 ほむらがまどかと話していた間に身体を修復したつぼみは、ほむらに気づかれないようにこっそりと地面に茨を潜らせ、ほむらの足に絡めたのだ。つぼみにとってラッキーだったのは、ほむらはまどかのことに感情が高ぶり過ぎて足元にまで気がいかなかったことである。その為、茨をがんじからめに絡めることに成功した。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 つぼみは、ほむらを引き寄せる勢いを保ったままに、渾身の蹴りを繰り出す。空中で体勢を変えることのできないほむらは、それに当たる他なかった。

 

「っ!」

 

 茨は伸縮自在であるため、勢いを殺さずにほむらは地面に急激に落ちていく。

 

「え?あれ、ほむらちゃん?」

 

 時間停止が解けたようだ。まどかは、急にいなくなったほむらと突然遠くで上がった土煙に困惑する。

 

「まどか、気を付けてください。ほむらは時間を止めることができるようです」

「え、時間を?」

「はい、この茨を持ってください。どうやら、彼女に触れている物があれば、回避することができるようです」

「う、うん…」

 

 まどかは、つぼみが持つ茨を受けとる。それは、ほむらとつぼみを繋いでいる茨の中心付近から枝分かれした茨であった。まどかは、それを右腕にくくりつける。茨といっても棘がないため痛みなどはない。

 

「種を暴かれるなんて…失態ね」

「!」

 

 土煙の中からほむらが現れる。その回りの大きなクレーターからどれだけの力で叩きつけられたのかが分かるであろう。

 

「切ろうとしても無駄です。今度は先程のよりも強度を高めましたから」

「新人にあるまじき適応能力の高さ…流石プリキュア、とだけ言っておくわ」

 

 ほむらの言うことももっともであろう。相手の能力を考える冷静さ、それから考えられる対処まで、昨日今日魔法少女になったばかりの普通の少女ができることではない。そして、つぼみはほむらの言った一言が気になった。

 

「どうして、私がプリキュアだと?」

 

 確かにそうだ。まどかも考えていた。なぜほむら、それにキリカはつぼみがプリキュアであると知っているのだろうか。彼女達プリキュアは、ある特定のプリキュア以外は正体を明かしていないはず。

 

「…見ていたもの」

「見ていた?」

「ええ、見滝原総合病院…その駐輪場でね」

「あの時、ほむらちゃんもいたの?」

「えぇ」

 

 今日の夕方、つぼみが最後にプリキュアへ変身したときに結界の中にいたということだろうか。だが、そんな気配なかったような…。

 

「マミさんが言ってた。ベテランになると結界の外からでも中の様子がわかるって…」

 

 なるほど、それであったらほむらの気配がなかったことも理解できる。では、ほむらもまたベテランであるということだろうか。

 

「巴マミ…」

「え?」

 

 ほむらはまた悲しそうな顔をする。いや、ずっとそうな気がする。彼女は、悲しそうな目でつぼみ達を見て、なにかを諦めたような雰囲気を醸し出していた。相対してからずっとそうなのだ。つぼみと戦っているときも、まどかが現れた時も、時が止まったなかまどかを横目で見ていたときも、そして今も。彼女に見れるのは、諦めたような顔のみだ。

 

「私の能力を暴いたことは誉めてあげる…けど」

「えっ!」

 

 ほむらはそう言いながら右手にマシンガン。左手に筒状の機械を取り出す。つぼみは、先程ほむらを茨で囲った際に、爆風が起こっていたことを思い出していた。もしも、それが左手に持っているもののためであるとしたらそれは…。

 

「ま、まさかそれって爆弾ですか!?」

 

 このつぼみの問にはなにも答えず、ほむらはやはり冷たく言う。

 

「もう、手加減なんてしない」

「つぼみちゃん!来るよ!」

「は、はい!」

 

 つぼみ&まどかVSほむらの戦いが幕を開ける。


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