映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に 作:牢吏川波実
「私どもの病院ではこの病気は…。」
「そう…ですか…」
ある病院の一室、レントゲンに写る小さな身体に写る大きな影を見ながら医師はそう言った。
「先生、ではもうふたばにはこれ以上道は残されていないのでしょうか…」
「いえ、可能性は低いですが…唯一…治る可能性がある病院があります」
「え?」
その病院は群馬にある病院であった。しかし、その病院でもなんとかなるかわからないほどの、病気のため一年、いや一ヶ月持つか分からない状態であった。だがそれでも希望があるのならと、その病院への紹介状を書いてもらった。それがふたばのためになる唯一の方法であるのならと。藁にもすがる思いだった。
それから3日後のある学校、その屋上で少女たちがお昼のお弁当を食べていた。一方の青い髪の少女えりかはもう一方の髪の赤い少女つぼみに元気がないことを見て、不思議がる。
「…」
「どうしたのさつぼみ、元気ないじゃん」
「えりか…じつはふたばが…」
「?ふたばちゃんがどうかしたの?」
ふたばというのは2か月ほど前に生まれたつぼみの妹のことである。ただ、なぜか一度だけ見ただけでその後は一切見なかったためいったい何があったのかと内心疑問に思っていた。
「ふたばが…病気になったんです……」
「病気?」
「はい、それもお母さんの話だと、もしかしたら死んじゃうかもしれないって…」
「え…」
そういうと、つぼみはせき止められたダムが決壊したかのように涙があふれ出てくる。自分では何もできないことに、役に立たない自分を許せなかった。そして、虚しかった。その哀しさをどこに持っていけばいいのかと行き場のない、怒りも覆っていた。そして、それを聞いたえりかはそんな親友に何も声をかけてあげられない自分に嫌気がさした。いや何をしてあげたらいいのか分からないでいた。だから…
「つぼみ…」
「…えりか」
ただ抱きしめてあげることぐらいしか思いつかなかった。言葉で何も伝えられないのだから、行動で示すほかなかったのだ。その時のえりかのぬくもりはただただ暖かかったことを後のつぼみは語っている。
そしてしばらくして、ようやくつぼみの気持ちが落ち着ていてきたころにえりかは聞いた。
「それで、ふたばちゃんは今どんな感じなの?」
「分かりません…ふたばは昨日、群馬の病院に行きましたから…」
「群馬…?それって確か…」
えりかは群馬という言葉にあることを思い出していた。そして一ヶ月後、彼女たちは群馬県の見滝原中学校との交流のためにその場所へと赴くことになる。それは応募制であったため、選ばれたのはひとえに彼女たちの人格も影響しているであろう。…成績だけで選ばれているのであればえりかは絶対に選ばれていない。すくなくともこれで交流が終わるまで妹のそばにいてあげることができるので、彼女にとってもそして彼女を誘い自らも来たえりかにとってもよかったであろう。
学校交流それは彼女にとって今までにないことであった。
(こんなこと今までなかった、まどかもすでに…、なんなのこの世界は…)
自分の転校と共に、入って来た彼女達、つぼみとえりか、今までそんな少女たちがあのクラスに入ってきたことなどなかった。いや、少なくとも彼女にとってはもうどうでもいいのかもしれない。なぜなら彼女の第一目的がこの世界に来てすでに達成できなくなっているのだから。通常ならすぐに次へと飛ぶのだが、ここ他に納得できないことが多い。なかでも、彼女が気にした不確定要素。それは都市伝説でありながらその存在が確定されているモノ。
「プリキュア…」
絶望しか知らなかった少女に今、希望がその手を伸ばす…のだろうか。
「はぁ、それにしても…」
さやかはそう言うと、クラス中の集団が集まっている3つの塊に注目する。
「ねぇねぇ前はどんなどころに通っていたの?」
「東京のミッション系の学校よ」
「ファッション部ってことはさ、服のこととかに詳しいの?」
「もちろん!今度何か作ってきてあげるからさ!」
「ねぇねぇつぼみさん放課後に買い物に行きましょうよ」
「いえ、あの、私はちょっと行くところがあるので…」
と、言う風に今日学校に来た3人は3者三様の答え方をしていた。基本、ほむらはクールに質問された情報に答えていく。えりかはファッション部のことを聞かれてやたらとテンションが上がっている。そして最後につぼみは質問に対して、おどおどあたふたしていた。
「なんだか人気者になっちゃったわね」
「まぁ当たり前ですわね」
「ティヒヒヒ」
そう、転校生など新しく学校に来た者は基本クラスの人気者になるものだ。物珍しさもあるだろうが、クラスに新しい風が吹く事が楽しいのかもしれない。
「ま、でも少し助け船でも出してあげようか、特にあの子に…」
と、言いながらさやかは3人の内の一人のもとに近づく。それはつぼみであった。
「ちょっと、つぼみさん困ってるじゃんそんなにいっぺんに聞いても困るって!」
「あっそうか、ごめんねつぼみさん…」
「いえ、いいんです。私もこういうのには慣れていますから」
彼女、花咲つぼみは前の学校も転校して入って来た。そのため、こういうことになるのは初めてではない。しかし、現在彼女は精神的に疲れているため、少し対応に不手際が生じていた。
「そう?だったらいいんだけれど…あっ私は美樹さやか、よろしくね!」
「私は志筑仁美ですわ、よろしくお願いします」
「私は鹿目まどかよろしくね。つぼみちゃん」
「あ、はいよろしくお願いします」
「あっずるい!私はね…」
と、いった風にほかの女子も自己紹介をしていく。なんだかんだ言って、このクラスのコメディーリリーフのさやかたちが混ざったことによってようやくこのクラスになじむことができたようだ。と、それを見つめる一組の目があった。
「…花咲つぼみ」
それは暁美ほむらであった。そしてその次に来海えりかに目線を写してからまた女子からの質問に流暢に答えていく。まるで初めから問と答えがインプットされたコンピュータのように…。
そしてその後の授業はほむらの独壇場であった。まず、数学の授業では難しい公式をやすやすと解いていき、クラス中から拍手喝さいを浴びた。因みにえりかはというと、あまりに難しい問題であったため思考停止した。ほむらは次に体育の授業では県内トップクラスの運動性能をみせ、先生をはじめこれまたクラス中の注目を集めた。文武両道、才色兼備、大和撫子、それはこの少女のためにあるのではないかと思われるほどであった。そして放課後、クラス中の全員が帰る準備を始めていく。そしてつぼみもまた、帰宅する準備を早々に終えた。
「ではえりか、私はこれで…」
「え?私も一緒に行くよ?」
「いえ、今日は初日ですしそれに…私たちのことだけを考えてもらいたくありませんから…」
えりかもまたつぼみと共に帰ろうと言うのだが、実際今回来たのは学校交流の名目がある。そのため、表面上はそれを守らなければならないのだ。が、つぼみは今回自分の別の目的のためにこの街に来ているが、えりかにまでそれに縛られて欲しくなかった。えりかはえりかで普通にこの学校で友達を作ってもらいたかったし、えりかもそのつぼみの本心を察していた。
「…うん分かった。それじゃあまた今夜ね」
「はい」
そしてつぼみは帰っていった。そしてえりかもまた帰る準備をしている時に例のどことな~く似ている美樹さやかに声をかけられる。
「えりか、これからまどか達とモールに行かない?」
「モール?いいよ、この辺の裁縫屋も見ておきたいし」
「おっし、それじゃあ行こう!」
と、いう事でまどか、さやか、仁美そしてえりかでモールに行くことにする。しかし、それをこっそり見る影が二つあった。一方は興味深そうな赤い目で、もう一つは疑心暗鬼な黒い目で。
モールに着いた4人はいろんなショップを回って、そしてファストフード店でおやつを取ることにした。
そして彼女たちの話はえりかたちが来た明堂学園の話に移る。
「ねぇ明堂学園ってどんなとこ?」
「いい学校だよ。いろんな人がいるし、先生もいい人ばかりだし」
それはどの学校でも同じことである。色々な生徒、色々な先生それはどこに行っても同じことである。明堂学園に特別なことはない。ただ、自分たちが2年も過ごした学校の話なのである。
「へぇ~今度学校交流があったら応募してみようかな?」
とりあえず明堂学園のいいところの話を聞いていく中で、さやかがそうつぶやく。するとつかさずまどかが。
「さやかちゃんの頭じゃ無理だよ…あっ」
「なんだと、まどか~!」
そう言われると黙って置けないのが常なのか、日常なのか、ともかくさやかとまどかは椅子から立ち上がり追いかけっこが始まった。
「ご、ごめんってさやかちゃん!」
「まて~!」
だが、その顔は笑みがこぼれていた。
「ホント面白いね、あの二人って」
「あなたも相当だと思いますけれど?」
「へ?」
と、なんやかんやあってまた席に戻ってくる二人。よく店の人から怒られなかったものである。
「そういえばさ、転校生のほむら?あいつまどかのこと睨んでいたみたいだけれど?」
そうほむらはことある事にまどかのことを見ていたのだ。其れこそ、獲物を品定めするかの如く。
「そういえばそうですわね。どこかでお会いしたことがあったのですか?」
「いや、覚えがないってわけじゃないんだけれど…」
「なになに?どこで会ったの?」
「う~ん、夢で会った…ような?」
「…」
「…」
「…ゆ、夢?」
その一言に時が止まった。
「うん、なんだか今日の夢に出て来た子に似ているの…」
「はぁ~まどか、中二病はこじらせない方がいいよ」
「ちゅ、中二病じゃないよ!」
さやかのあんまりな発言に顔を赤くしながら怒るまどか。と、その時仁美がある一種の答えを発言する。
「でももしかしたら本当にどこかで出会っているのかもしれませんね」
「え?」
「昔、出会った時の記憶がまどかさんの深層心理の中に在ったという事もありますわ」
「そうなの…かな?」
昔出会ったというあいまいな記憶は実際頭の中から離れることが多い。しかし、脳という物は一度覚えたことは忘れることはないのだ。唯思い出すことができないだけなのである。その思い出せない記憶は時たま夢という形で本人の頭の中に流れてくる。それが印象的な記憶であればあるほど。
「夢…か」
そういえば自分たちが初めて変身した時も…とえりかは思い出していた。ということはほむらもまたそうなのだろうか。
「まぁいいじゃん。ファンタジックって感じでさ!」
「そうかな?」
そして今度はもう一人、つぼみの話に入る。女子の話は急に変わることがあるので、つくづく着いて行くのが大変である。
「そういえばさ、もう一人のつぼみって子は、えりかと同じファッション部だよね、友達?」
その言葉にえりかは深い笑みを浮かべながら言う。
「友達じゃないよ」
「え?」
「親友だよ。私とつぼみは!」
「そ、そう…」
その言葉に何かを感じたのかさやかは若干引いている。
「でもその親友の方は今日は用事があったみたいですわね」
「あぁ、ちょっと病院に行ってるの」
「病院?どこか悪いの?」
「違うの…そのつぼみの妹が…ね」
「え?」
その答えに何やら聞いてはいけないことを聞いたのじゃないかという不安があたりを流れる。そしてその空気を切り裂いたのは聞いた本人である仁美であった。
「なら聞きませんわ。これ以上は他人が口を出していい問題じゃなさそうですし…」
「そうだね」
「ありがとう」
そして、しばらくして食べるものもなくなり人心地ついたころに仁美が携帯の時計を見て、カバンを持ち立ち上がる。
「さて、それでは私はこれで」
「今日はピアノ?それとも日本舞踊?」
「今日は生け花ですの。もうすぐ受験だっていうのに、いつまで続けさせられるのか…」
「うわー、小市民に生まれてよかったわ」
「ミーツー!」
えりかもその言葉に同意する。とりあえずこれでお開きになることになった。
「私達も行こっか」
「それじゃあ帰りに裁縫屋に行ってもいい?」
「あ、そうだったそれが目的だったよね」
「確か、この辺だと見滝原駅の周辺が近かったよね」
そう言いながらファストフード店から出て、一階に降りていく。そしてモールから出たぐらいに仁美と別れる。
この話の中で、つぼみたちがプリキュアに変身するまでは、それ相応に隠しているつもりです。しかし、変身という言葉が地の文で出ているだけでもう隠している意味ないと思う。
語彙力を手に入れたい…。
あと、今更ですが、国内での交換留学なんてあるのでしょうか?