映画 プリキュアオールスターズVS魔法少女まどか☆マギカ 悠久の絶望は永久の希望に   作:牢吏川波実

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指摘されてようやく気がつくクリアしなければならない問題の数々…。


僕たちには感情というものがないからね

「それにしても…」

 

なぎさの話が一通り終わったころを見計らってさやかが話を切り込む。

 

「やっぱり、本当なんだよね…魔法少女が魔女になるのは……」

「はい、QBの話を聞いていたときはまだ半信半疑でしたが、これで確信が持てました」

 

病院でQBに魔法少女の真実を教えてもらった時、QBの話が本当の事なのか証拠もなく、嘘を言っている可能性だってあった。しかし、なぎさの実体験を聞いた今なら確信が持てる。なぎさが嘘を言っている可能性もあるのだが、彼女たちが、少なくともつぼみとえりかは人を疑うということを知らないため頭のはしにもなかった。

 

「でも、魔法少女が魔女になる条件って何なんです?」

「確かにそうね…なぎさちゃんの事例だと、お母さんが亡くなったことが引き金みたいだけれど、決定的なことが分からないわね」

 

ここでまた、議題は暗礁に乗り上げてしまった。魔女になる条件、なぎさの事例だけでは個人差があることもとあるので確実と言えるものがなかった。ここでえりかが一つ提案をする。

 

「じゃあさ、QBに聞いてみたらどうかな?」

「QBにですか?」

「でも、教えてくれるかな?私たちあいつと敵対しちゃったようなもんじゃん?」

 

さやかの言う通り、先ほどまでは味方であったが、現在の状況からすると彼女達の認識では魔法少女の、否世界中の少女の敵である。果たして教えてくれるだろうか。

 

「とりあえず一度呼んでみましょう」『QBいますか?』

「何かようかいつぼみ?」

「「早ッ!!」」

 

つぼみが呼んだ途端に、空いていた窓からQBは出現。ここまでわずが0.05秒。

 

「QB…」

「やぁ5年ぶりだねなぎさ」

 

なぎさにとっては久しぶりであり、最悪の再会である。

 

「QB、魔法少女が魔女になる原因とか、それからQBがどうしてこんなことをしているのか教えてもらえないかな?」

「まどか、そんな馬鹿正直に言って答える奴いると思ってる?」

 

さやかの言い分はもっともな意見である。敵に情報を教えるような者がいるわけが…

 

「いいよ」

「いいの!?」

 

いた。

 

「あぁ、僕たちは聞かれたことには知っている限りの答えはだすよ」

「え、『たち』?」

 

つぼみには確かにそう聞こえた。

 

「そうさ。僕たちは世界中に多くの個体を持って、情報を共有しているんだ。そうでなきゃ、世界中の魔法少女すべてを管理することなんてできないだろう?」

 

管理。さしずめ、宇宙の支配者気取りといったところだろうか。なんとも上から目線で物事を語る生物である。

 

「サンタクロースと同じ理論って奴?」

 

えりか、それは少し違うと思う。

 

「あぁ、一夜で世界中の子供たちにプレゼントを配るのは一人じゃ無理ってのでしょ?」

 

さやか話に乗っかるな。

 

「でも、時差とかの関係で一人でもがんばれば配れるんじゃないですか?」

「「あっ、そっか!」」

 

なぎさの参戦により脇道どころか獣道にそれている。精神年齢小学生のはずのなぎさと話が合うというか、メルヘンチックでありながらずいぶんと現実的な話をするものである。

 

「QBって一人じゃなかったのね…」

「あれ?マミさんは一緒に暮らしていたんですよね?」

「今まで気が付かなかったんですか?」

 

つぼみ、シプレにそう突っ込まれるのも無理ない。マミは魔法少女になってから今日までほとんどQBと一緒に暮らしていたのだ。だから、自分と一緒にいるときほかの魔法少女たちはどうしているのだろうとか考えなかったのだろうか。

 

「え、私QBを妖精だと思っていたから、そこは不思議な能力を使っているのかと…」

「…」

 

この話を続けているとマミの威厳…いや、話の本筋に戻れなくなるのでこの辺でやめておこう。

 

「と、ところで本題。QBがまだ私たちに話していないことってなに?」

「そうだね、君たちの知りたい情報だと…」

 

ちょっと長いので、箇条書きにすると。

・QBは地球よりも高度な文明を発達させた地球外生命体である。

・QBは感情をエネルギーに転換できる技術を発明した。

・その技術と抽出したエネルギーで宇宙のエントロピー問題解決に役立てることができる(つまり宇宙の寿命が延びる)。

・しかし、肝心のQB自身は感情を持たない種族であったため、他力本願にならざる終えなかった。

・そのために目を付けたのが地球人、とりわけ第二次性徴期の女の子であった。

・人間という個体に興味を持ったQBは地球を拠点とすることに決めた。

・少女たちの魂をソウルジェムという宝石に加工し、後に少女の絶望によりソウルジェムがグリーフシードに変化する際に発生するエネルギーは莫大なものとなる。

・そして、ソウルジェムからグリーフシードとなるプロセスは不可逆性のものである。

・そのため、グリーフシードがソウルジェムに戻るといった現象が今回が初めてである。

・わけがわからないよ

 

「以上が、僕たちがこの地球に来た目的だよ」

「絶望が…エネルギーにですか……」

 

なるほど、なぎさが魔女になったのは、母を失って精神的にダメージを負ったからだったのか。とつぼみたちは納得した。

 

「やっていることは砂漠の使途と同じ…でも、残酷さで言えば全く違うです」

 

砂漠の使途、こころの大樹を枯らせ、世界を砂漠にするのが目的であった組織である。彼らはすでに、ハートキャッチプリキュアによって壊滅した。その砂漠の使途は、デザトリアンという怪物を使って暴れていたのだが、デザトリアンは元は心の花という人間が一人一人心の中に持っている花が枯れた人間から作られていたのだ。しかし、デザトリアンであっても、人間の心は持っていたし、プリキュアという存在がいたおかげで、何とか助けることができた。しかし、魔女はそれとはまったく違う。心を完全に閉ざし、そして最後には元同胞であった魔法少女の手によって知らず知らずのうちに殺されてしまう。そんな残酷なやり方、プリキュアという光の世界で生きてきたつぼみ達には理解できなかった。

 

まぁ理解する前に…。

 

「「ZZZ…」」

 

睡魔に敗北してしまった者たちがいるのだが…。

 

「えりか!起きるです!!」

「もう、さやかちゃん起きてよ!」

「う~ん、話終わった?」

「あっ、まどかおはよう」

 

コメディリリーフズ、起床。QBが話を始めて一分足らずで寝に入った二人であった。

 

「どうして君たち人間は難しい話を始めたら寝るんだい?わけがわからないよ」

「いや、流石にこんな時間だしさ~」

 

そういいながらえりかが時計を見るとすでに12時を回っている。いつのまにかマミの部屋に長居してしまったようだ。

 

「あら、魔法少女としてはここからが仕事始めなのよ?」

「えっ、マミさんもしかして今日も行くんですか?」

 

あんな出来事があって、こんな話を聞いた後だというのに、精神的に大丈夫なのだろうか。

 

「もちろんよ。それに魔法少女として新人の花咲さん達も鍛えなきゃ」

「よろしくお願いします。プリキュアとして戦っていた経験だけではどうにもならないこともあるでしょうし…」

 

つぼみの言う通り、魔法少女とプリキュアでは戦い方にかなりの違いがある。特に、プリキュアは肉弾戦主体であるのに対し、魔法少女は武器を数多く使うといったところであろうか。つぼみ達も浄化技を使う際、ブッロサムタクト、マリンタクトを使用していたが、やはりそれも戦闘の終わりの方に当たるため肉弾戦主体というのは変わりない。

 

「それじゃ、出かける準備するから少し待っててね」

「はい」

 

そういうと、マミは台所の方にティーセットを乗せたお盆を持って行った。その間に、つぼみ達は聞きたかったことをQBに聞く。

 

「QB、ひとつ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「なんだい、まどか?」

「QBはいつごろからこんなことをしていたの?」

 

こんなこと、つまり魔法少女への勧誘のことである。

 

「そうだね…君たち人間がこの地球に生まれてすぐ…だから500万年前からだね」

「そんな昔から…」

「そう、僕たちは地球にまだ人が生まれていない時代から数多くの恩恵を与えてきた。もし僕たちがいなかったら君たち人類はいまだに洞穴に住んでいたんじゃないかな?」

 

QBがかなり前から活動しているとは知っていたものの、現実的に500万年も前からと言われてもあまりピンとこない。しかし、もしそれが本当だとしても、人類が歩んできた歴史全てがQBのおかげにされるのは気にくわない。

 

「どうして…QBはこんなひどいことを平気でできるの?…心が苦しんだりとかはしないの?」

「…あいにく僕たちには感情というものがないからね。そもそも僕たちの文明では、感情という現象は、きわめて稀な精神疾患なんだ。すべての個体が、別個に感情を持ちながら共存しているような君たち人類はまったくもって驚きだよ」

「感情は精神疾患等ではありません」

「…」

 

QBによる感情の総評につぼみは言う。

 

「確かに、感情は脆くて、儚いものです。時にはそれで身を滅ぼすことだってあります」

「それでも、QBが考えるよりも感情は素晴らしいものなのです。感情があったから、他人を思いやる気持ちを持てたんです」

「お願いです、感情を見下さないでください。せめて、誰かの死を悲しむ心を持ってください…」

 

つぼみは、その言葉に怒りをこめながら、そして哀れみを含みながら言う。

 

「やっぱり、地球人は不思議な生き物だ。何故そうやって怒りをぶつけるのか到底理解できないよ」

「QBにも感情があったらよかったのにね…」

「僕らに…感情……」

 

えりかのその言葉に、QBは頭の中にある映像が浮かび上がった。

 

『ごめんね、Qちゃん……約束…』

『QB、あなたにもいつか、分かるときが来るよ』

 

QBが地球に来てから出会った二人。もう会うことのできない二人。けど、何故か頭から離れない二人。

 

「…べぇ……QB!」

「あっ…」

 

はじめての事だ。過去の事を思い出して、思考が停止するなど。

 

「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」

 

一人は約1万年ほど前。一人は5年前の記憶。生きた時も生まれた時代も違うはずなのに、何故その少女たちの事を思い出したのか。そして何だろう、頭を走るこのゾワゾワは…。

 

「皆、準備できたわよ」

 

それとほぼ同時にマミが台所の方から懐中電灯を持って現れた。そして、全員でいつもマミが魔法の練習に使っている橋の下に向かうことになった。

 

「あれ?」

 

その時、えりかがそういったのをつぼみは聞いた。

 

「どうしましたかえりか?」

「え、ううんなんでもない」

「?」

 

えりかは、先ほどのQBの話をまとめたまどかのノートをみていた。そこに書かれたあることがらに何か違和感を覚えたが、その正体がよくわからなかった。それが、おおきな矛盾であると知らずに。




独自解釈によって設定に矛盾がないかひやひやしています。
もうここからは、自分の想像力、創造力と皆様の観察眼との勝負になってくると思っています。
その最初の勝負、つぼみとえりかの武器ですが、納得してもらえるかな?

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