俺は小さい頃から公園で遊ぶのが嫌いだった。なぜなら遊具で怪我をするからだ。
――ハッ
「どこだここ…?ッ!」
俺は体を起こそうとしたが体を走る痛みによって起こすことは出来なかった。
「まだ無理をしてはいけません!右肩に矢が刺さっていたのですよ!」
「ハハッ、レアもたまには俺の心配してくれるんだな…、…!?」
冗談交じりに話しかけた俺は驚いた。相手がレアじゃなかったからだ。通りで優しいと思った。
「金色の髪…」
思わず口走ってしまうほどその少女の髪は美しかった。
「レアさん?ではなくてごめんなさい。あなたと一緒に警備(?)をされていた女性はそこで休まれていますよ」
目線を向けた先にはソファで熟睡しているレアの姿があった。もしかして俺の介抱を…?
「お疲れだったようで昨晩からずっとあの様子です」
よし、決めた。あとで殴る。
「昨晩は申し訳ありませんでした…。鍵を締め忘れた扉から愛犬が外に出てしまって、私が連れ戻しに行ってしまったばっかりに…」
なるほど、夜にあんなところに居たのはそういうわけか。
「まあよかったよ、君に怪我がなかったみたいで」
「良くはないです!」
身を乗り出して否定する。あまり近づかれると緊張してしまう。
「あなたが…ワタルさんが怪我をしているではありませんか!」
「あれ?なんで俺の名前…」
俺は街であった盗難事件のことを思い出す。
「君はあの時の…」
「はい、自己紹介が遅れて申し訳ありません。私はエレナです。」
確認する必要がないことをあえて確認してしまう。
「ははは…、エレナのお父様ってもしかしてその…」
「はい、私の父はこのアルスター帝国の…」
「国王です」
フフッ、寝てる女の子の顔って可愛いよな…
「ほら、レア?起きなよ~、起きなってば~」
ツンツン、とほっぺたをつついてみる。柔らかい。
フフフッ…
「起きろって言ってんだろコラァ!!!」
俺はレアの頬をつねりあげる
「痛たたたたっ!ちょ、ちょっとなんなんですか!もう!」
「『なんなんですか』じゃねーんだよ…、お前、人が肩から矢を生やしてる時にも熟睡してやがったな?」
「言いがかりです!証拠はあるんですか!証拠は!」
「証拠はないけど証言はあるぞ」
エレナが申し訳なさそうにこちらを見ている。
レアが睨みつけるので俺が間に入る。
「まぁそれは置いといて、これからエレナにこの世界のことを聞くからお前も聞け」
「はぁ…」
面倒そうにあくびをしながら椅子に腰掛けるレア、俺もその隣に座る。対面にはエレナだ。
まず何から聞くか…、俺がそう考えていると
「女神と対話するアイテム!それがどこにあるか教えて下さい。というか持っていたら下さい。」
――ゴンッ
「痛ったいですね!なにするんですか!もう!」
「ちょっとは段階を踏めよ、そして内容が図々しいわ」
「女神と対話する…聞いたことがありませんね…」
「しかし、そのような特別な物を探す時はやはりギルドの方がよろしいかと思います。あそこには国中のあらゆる情報が真偽を問わず集まってくるので」
やはりそうか、なら…
「なあ、国王の力でさ、俺達のバッジを一気にゴールドまであげてくれたりってできない?」
「あなたも十分、図々しいですよ…」
「それはちょっと難しいですね、ギルドは独立している団体なので、国内にあるとはいえ、国王の力が及ぶことはないのです」
「そっかぁ、一番近道だと思ったんだけどなぁ」
正直、結構期待していた。それだけに残念だ。
「ですが、ワタルさんは私の命の恩人です!私にできることならなんでも言って下さい!」
「うーん…、あっ、そうだ。俺達泊まるところがないんだ、もし使わない部屋とかあったら使わせて貰えないかな?」
「そんなことでよろしければよろこんで!」
エレナが机の上にあった鈴を鳴らすと使用人と思われる女性が二人部屋に入ってくる。そして、エレナと小声で話をして…
「では、部屋の準備を手配させましたので、しばらくお待ち下さい。」
「気を使わせて悪いな、別に物置小屋でもよかったのに」
「そういうわけにはいきません!」
Oh…、この子も割りと我が強いのかもしれない。
だが、兎にも角にもこれで宿には困らないな。ギルドも近いし拠点にはもってこいだ。