俺はレアと街道を歩きながらふと気になったことを聞いてみる。
「なあ、レア、レアは女神なんだよな」
「そうですよ、今更なぜその確認を?」
レアはこちらを見ずに答える。
「だって女神っぽいところがないから」
レアが俺の方を向く、怒った顔でだ。
「失礼な!天界に居た時ほどではありませんが女神の力を使うことができます!」
プンプン怒りながらレアが俺の言葉を否定する。
「例えば?」
俺はあまり期待していない目をしながらレアに尋ねる。
「見ていて下さい」
レアが両手を前に出し、本を持つような仕草をする。すると光が集まり本のような形を象る。
「ここはアルスター帝国、この世界の地図上では中心のやや西に位置する、比較的大きな国、人口は…」
レアはまだ知らないはずの情報を次々に話していく。なるほど、つまり…
「歩く攻略本か」
思わず口から零れた。
「そんな軽いものではありません!神聖な女神の力なんですよ!」
褒めたつもりだったがさらに怒らせてしまったようだ。
「でもそれなら情報収集する必要なくないか?」
念のため、確認をしてみる。
「制限された女神の力ではその世界の基本的な情報しか知ることはできません。なのでその世界の核心に迫る内容を知ることはできません。」
「まあ、そのくらいの制限がないとヌルゲーだもんな。それでも助かるよその力。ちなみにどれくらい細かいことまで知れるんだ?」
「地名や物の名前・使い方、人の名前・地位くらいまでですね。その他、聞きたいことがあれば聞いて下さい。」
舐めてたが意外とこの女神、役に立つんじゃないか?これは嬉しい誤算だ。
「すげーなレア!他には他には?」
「…」
「…」
お互い口を閉ざし、静かな時間が流れる。
「…あれ?聖なる力で敵を攻撃!とかは…?」
「欲張りですね!これだけできれば十分凄いでしょう!私は女神なんですよ!戦闘能力なんてあるわけないじゃないですか!」
うーん、この女神…やはり駄目かもしれんね
レアと話をしながら街道を歩いていると遠くに大きな建物が見えてきた。
「なんだあれ?」
「ギルドですよ」
「ほー、いいなギルド!異世界っぽいな!」
ギルドに向かおうとした時、走って来た青年とすれ違いざまに肩がぶつかる。
「おっと、すまない大丈夫ですか?」
幸運は高くてもこういうことはあるんだな、と思いながら青年に質問をする。
「そんなに急いで何かあったのか?」
青年は少し暗い顔をして
「ああ、料理屋の近くに住んでいた爺さんが火事で亡くなったらしい…、だからその火事の後始末を手伝いに行くところなんだ」
「普段なら誰か家族が一緒にいるからそんなことはまず起こらないんだが…、たまたま用事が被って少しの間だけ一人にしている時に…」
「そうなのか、悪い、呼び止めちまって」
「別に大丈夫さ。もう火は止まってる」
そう言って青年は俺達が歩いてきた道を走っていった。
「怖えーなぁ、そういう事故って気をつけてても起きるからな」
俺は当たり障りのないコメントを残しながら、歩き出した。
数歩遅れて歩き出したレアは何も言わなかった。