太陽よりも眩しい光に晒されて、閉じていた目を少しずつ開ける。そこには…
「ほー、こりゃまたいかにもファンタジーって感じの街だな」
西洋風の街並み、遠くにそびえ立つ城、物を売る露店、現代なら銃刀法で捕まるような武器を売る武器屋、現代では絶対に必要ない防具・盾を売る防具屋、二足歩行で歩く人型の動物…
「あれ?そういや女神様は…」
あたりを見回すと居た、というか俺の足元に居た。というか意識ないっぽいけど大丈夫か…?
「おーい、女神様ー?レアー?起きろよー」
「…ッ」
俺が声をかけるとゆっくりと瞳を開き、まっすぐにこっちを見て微笑む。そして、次の瞬間―
――バキッ!
俺の顔を見るや、一瞬で鬼のような顔をして右ストレートでぶん殴られた。女の子って結構力強いんだね。
「イッツツ…、なんでいきなり殴るんだよ…それでも女神かよ…」
赤くなった左頬を擦りながらレアの方を向く。
「こんなところに連れて来て、どうしてくれるんです!」
これ以上ないくらい怒った様子でレアが怒鳴りつける。
おい、こいつ、人の転生先を”こんなところ”って言いやがったぞ。
「しょうがないじゃんかよ、お前が信用ならなかったんだからさぁ」
「あーもう、どうしましょう…。人の転生先なんてどうでもよかったからちゃんと世界観についての説明を見てなかったです…!」
「この世界では女神と対話することができるアイテムがあったはず…それでなんとか他の女神とコンタクトを取って…うぅ...ちゃんと見ておけば…!」
俺の話を無視して一人でブツブツ考え事をしているレアを見ているととても女神には見えないな。どっちかっていうと引きこもりの女みたいだ。
「あのー、レアさん?考え中のところ悪いんだけど俺、お腹が空いて…」
恐る恐る尋ねてみる、だがこういう取り乱した女性は大抵…。
「はあ!?私は今忙しいんです!」
ですよね。案の定怒られた。しょうがない落ち着くまで待つか…
「お腹が空いたならその辺の草でも…!」
――グゥ
ん?誰のお腹の音だ?俺ではない。
「…ッ!」
レアが顔を真っ赤にして俯いている。なるほど。
「あのー、俺がお腹空いたからどこかでご飯食べない?」
恐る恐るもう一度聞いてみる。
「…仕方ないですね、早く行きますよ!」
人間は空腹だとイライラするというのをどこかで聞いたことがある。お腹がいっぱいになってレアの機嫌がよくなるといいんだが。
こうして、俺の異世界生活は、飯屋を探すところから始まることになった。