幸福と不幸は女神様次第!?   作:ほるほるん

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国王の依頼

 眩しい朝日、鳥の鳴き声。清々しい朝だ。体調もすっかり良くなったようだ。レアはまだ寝ている。

 

 「朝食までにも時間があるな…そうだ」

 

 俺はあることを考え、上着を脱ぎ、手を床につき、うつ伏せになる。腕立てだ。

 

 「最近体を動かしてなかったからな、軽くやっとくか」

 

 俺はそうつぶやきながら部屋の真ん中で腕立てを始める。1.2.3…

 

 数を数えながら黙々と腕の曲げ伸ばしを繰り返す。結構キツいな、修行で基礎的なトレーニングはさせられたから慣れたつもりだったが、やはりブランクのせいだろうか。

 

 「ふっ!ふっ!」

 

 最初はゆっくりとやっていたがどんどん気合が入ってくる。木の床がギシギシと小さな音を立てる。体からは汗が滲み始めていた。

 

 「もう…なんですか…?朝は静かにしてくださいよ…」

 

 レアが目を覚ましたようだ。というか起こしてしまったか。いかん、集中しててレアが寝てたことを忘れていた。

 

 「ハァハァ…おはよう、レア」

 

 俺は腕立てをしながらさわやかに声をかけた。が、

 

 「なにしてるんです…?」

 

 「ハァハァ…なにってその朝飯の前に運動を…ハァハァ…」

 

 「寝てる女の子の横でハァハァしながら筋トレしないでください!変態ですかあなたは!」

 

 心外だ、と思いながらも絵面的にちょっと危ない男に見えるかもしれないと思った。これからはレアが起きている時か、いない時にすることにしよう。

 

 

 俺とレアは食事を終え、ギルドに向かう準備をしていると、扉をノックし、メイドが一人入ってきて、俺に用件を伝える。

 

 「ワタル様、国王様がお呼びです」

 

 そう言われ、俺はメイドに付いていく。国王が俺に何のようだ?エレナ絡みか?それとも…。なんだか職員室に呼ばれた時のような気分だ。なぜか嫌な方にばかり考えが及んでしまう。

 

 一際大きな扉を開けると、玉座に国王が座っていた。エレナも居る。

 

 「よく来てくれた。実は君に折り入って頼みたいことがあってな」

 

 「はあ…」

 

 俺に頼みごと…?一体なんだろう。俺が疑問に思っているとメイドが俺に小さな箱を渡してくる。なんだこれ?

 

 「その箱を隣国のウォルダムの国王に届けてはくれまいか」

 

 荷物運び…?別に構わないがなぜ俺…?俺は湧いた疑問をそのまま国王に問う。

 

 「別にいいっすけど、ギルドでクエストとして依頼するんじゃダメなんすか?」

 

 国王は俺の問いにしばらく考え、答える。

 

 「詳しい理由はまだ話せないが、あまり公にしたくないことでな、それで君を頼ったというわけだ」

 

 ふーむ…内容を説明されずに依頼を受けるのはあまり気乗りしないが、世話になってる国王の頼みだしな、仕方ない。

 

 「いいっすよ、次に行くクエストも決まってなかったんで。あっ、でもいつも一緒にクエスト行ってる仲間も連れてっていいっすか?」

 

 「ふむ…君が信用している仲間なら良しとしよう。ではよろしく頼む。地図を用意させよう。あと必要な物があればこの金で買うといい」

 

 正直、歩く攻略本が居るから地図は必要ないが、せっかくだ、もらっておこう。

 

 「最後になるが、その箱は絶対に開けないでくれたまえ。分かったね?」

 

 国王が俺に釘を差す。そんなこと言われたら逆に気になるじゃないか。

 

 こうして国王からの依頼を受け、部屋を出た俺だったが、去り際にエレナが不安げな顔をしていたのが少し気になった。

 

 

 俺は玄関で待っていたレアと合流して、ギルドに向かいながら国王に依頼された内容を伝えた。レアは面倒くさそうだったが、国王に恩が売れるとあって、協力してくれるようだ。あとはサリアとメイルが一緒に来てくれれば心強いんだが…

 

 ギルドに到着した俺達は、早速二人に事の顛末を伝えた。すると

 

 「もちろん行かせてもらう。というか二人がいなくなったら私は誰とパーティを組めばいいんだ?」

 

 「その通りですよ、私たちにはもうこのパーティしか残されていないのですよ!」

 

 こいつら可哀想すぎる。でも付いて来てくれるならありがたい。

 

 

 「ここがアルスター城でここがウォルダムか、割と近いじゃないか。歩いていけない距離じゃないな」

 

 俺は地図を広げながら目的地を確認する。これなら問題なく行けそうだ、ナビ女神もいるしな。

 

 俺達は各自で準備をしてから街の出口に集まることにした。正直、何を用意すれば良いかわからなかった俺は、食料と水だけ小さめの鞄に詰め込んで出口で待機した。レアは特に何も持ってきていないようだ。

 しばらくするとサリアとメイルも集合した。

 

 「よし、じゃあウォルダムへ出発だ!」

 

 俺は未だ見たことがない他の国へ期待を膨らませながら一歩を踏み出した。


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