幸福と不幸は女神様次第!?   作:ほるほるん

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いわくつき 【挿絵】

 ――武器屋

 

 「えーっと、二人は、っと…おっ、居た居た」

 

 というか赤い髪って目立つな。

 

 「どうだ?何か良さそうな武器は見つかったか?」

 

 店に並んでいる武器を眺めているサリアに声をかける

 

 「良さそうな剣を見つけたんだがかなり予算をオーバーしていてな、だが、明日からの生活費を削ればギリギリいけるかもしれないと考えていたところだ。厳しいか…?だがこの剣で敵を屠ることを想像すると…」

 

 限界ギリギリまでギャンブルにつぎ込むジャンキーみたいなこと言ってるな、こいつは。

 

 「お、おい、冷静になれよ。そんなに無茶して買う必要もないだろ」

 

 ムムム…と考えこんでしまうサリア。ちょっと長くなりそうだ、それじゃメイルは…

 

 店内を見回してみる。あいつは小さいからなぁ。あっ、居た

 

 少し奥の方にガラスケースに入った杖を眺めるメイルの姿があった。明らかに高価な杖だ。

 

 「これを買おうと思ってるのか?」

 

 俺が近くに来たことにも気が付かないメイルに声をかける。

 

 ハッ、としてこちらを見るメイル。そんなに良い杖なのか…?値段を見ると俺が持っていた硬貨全てを足してもとても足りない値段だった。

 

 「違いますよ、私のお金ではとてもではないですが買えませんよ。ただ…」

 

 「ただ…?」

 

 「見てくださいよ、あの魔法石の大きさ、そして輝きを…!」

 

 メイルが指差すところを見ると杖の先に確かに宝石のようなものが付いている。綺麗だ。

 

 「杖の魔法力は魔法石の大きさによって決まるんですよ。ほら、私のは小さいでしょう?」

 

 そう言って杖を見せてくれた、たしかに小さい、展示してあるものの10分の1くらいだ。

 

 「あぁ…あんな大きいのを使ってみたいですよ…想像しただけでおかしくなってしまいそうですよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 お前は元からおかしいよ、と言いそうになったが心優しい俺はやめておいた。そして、再び蕩けた顔をして魔法石を見つめるメイルを放っておいて、俺は自分の武器を選ぶことにした。

 

 「おーい、レアー」

 

 杖を眺めているレアに声をかける。レアも魔法使い志望なのか?だがよく見るとメイルが見ていたものとは系統が違うようだ。どちらかというと聖職者の使うスタッフのようだ。まぁ今回、レアに使う金は残ってないけどな。

 

 「なぁ、武器の性能を見てくれよ」

 

 はいはい、わかりましたよ。と言いたげな顔をこちらに向けるレア。

 

 「どれを見ればいいんです?」

 

 「そうだな…俺に大きい剣を扱うのは難しいだろうし、魔法を一から覚えるのも大変そうだ、だから…」

 

 俺は小さめの剣が置いてある方へレアを連れて行く。これなら俺にも使えるだろう。

 

 「この中で一番、値段に対する性能が一番高いものを教えてくれ。…銅貨3枚で買えるやつな」

 

 俺はトゲのある言葉をレアに向けて言ったが、レアは素知らぬ顔だ。横顔に右ストレートをお見舞いしたいのを我慢する。

 

 「これですね」

 

 乱雑に置いてあったいかにも不良品です。と言わんばかりの短剣の山から、レアが1本の黒い短剣を取り出す。たしかに見た目は悪くない、というかかなり良い物のように見えるんだが。なんでこんなに安いんだろうか。レアに聞いてみたがそこまでは分からないらしい。

 

 「これを買いたいんだけど」

 

 俺は会計所にレアが選んだ黒い短剣を置き、店主に購入の意を伝える。店主はその短剣を見て…

 

 「本当にこれでいいのか?店を出た後のことは自己責任だぞ」

 

 明らかに良くない意味を含んだ言い方だ、流石に気になる。

 

 「あの~、もしかしてこの短剣が安いことと何か関係があったり?」

 

 「あぁ、その短剣を使った奴らはみな不幸な目にあっている。怪我をしたり、病気をしたりな。と、まぁ、こういう話をするとみなその短剣を買わずにおくから、ずっと売れ残ってるってわけだ。優れた性能なのに勿体無い武器だよほんとに」

 

 不幸な目に…

 

 ――ニヤッ

 

 「よっしゃ、買ったぜ、この短剣!」

 

 「お前、俺の話を聞いてたのか?それを持っていたやつは不幸な…」

 

 「俺の幸運を舐めてもらっちゃ困るぜ!まぁここでは証明のしようがないけどな!」

 

 自信満々に答える俺だったが、店主からすれば頭のおかしい客に見えたかもしれない。

 

 「まぁ、せいぜい気をつけるんだな。ほれ、銅貨3枚よこしな」

 

 「ご忠告どーも!」

 

 俺は金を渡し、短剣を受け取り、腰に携える。おぉ、なんか冒険者っぽいぞ。武器と防具が揃ってこれでようやく普通のステータスってところか、だがこれで少しはクエストが楽になるだろう。

 

 店に入る前は気が重かった俺だが、無事に買うことができて良かった。あとはいつまでも武器を眺めてるサリアとメイルを連れてこないとな。


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