俺はゲームをする時なんかに、ダメージに振り幅のあるスキルはあまり好きではなかった。なぜなら平均値以上のダメージを与えられることが滅多にないからだ。つまり、運が悪かった俺には、安定したダメージを与えられるキャラの方が合っていたんだ、固定ダメージとか割合ダメージとかが好きだった。
「おう、連れてきたぞ。パーティに入ってくれるってさ」
俺とメイルの話し合いは終わったため、レアとサリアの待つ机にメイルを連れて戻る。なぜか、メイルは俺の斜め後ろに隠れるようにして付いて来ているが、どうかしたのだろうか
「おお、それは良かった…おや?君はメイルじゃないか?」
「ん?サリアの知り合いだったのか」
意外だった、ザ・ぼっちだと思っていたサリアに知り合いが居たとは。だがメイルはどう見てもサリアにいい心証を抱いてはいない。
「以前に一度だけパーティを組んだことがあるんだ。いや、あの時はすまなかったな」
「いえ、その別に…」
以前なにかあったようだ。魔法職を戦士が守れなかったとかだろうか?
それにしても、親しげに話すサリアに対しておどおどと話すメイル、というかメイルってもっとキツい性格かと思ってたぜ。なんで俺には噛み付いてきたんだ。
「あの時は…」
サリアの話を要約するとこうだ
・サリアとメイルを含めた4人で簡単な討伐クエストに出かけた。
・遠距離職の魔法使いと近距離職の戦士が近くで戦うことはほとんどない。守る場合を除いてだ。
・順調に敵を倒していた一向だが、もうクエスト完了間近というところで事件は起こる。
・一匹のモンスターが前衛を抜け、メイルの方に向かっていき、サリアがそれに気付いたため剣を振り上げ、モンスターに振り下ろしたつもりだったらしい。どうして”つもり”だったかって?それは…
「サリアお前…パーティメンバーをプレイヤーキルしそうになるとか洒落にならんしょ…」
黙って話を聞いていた俺だったが、思わずツッコミの言葉が口から出てしまった。
話を聞いてメイルの態度に納得がいった。モンスターを殺そうとする目で自分を攻撃されたらそりゃトラウマにもなるわ。サリアも仲間を守ろうとした結果なのであまり責められないが。
というかその状況って俺達が初めてサリアとクエストに行った時と似てるな、あの時はカスるだけで済んだが、ツイてたんだな…。
「本当にすまなかったな、だが私も以前のままではない。昔のことは水に流して、これからは新たなパーティメンバーとして頑張ろうじゃないか!」
そう言って差し出すサリアの手を、メイルは若干躊躇したあと、握り返した。まぁ、メイルも恨んでいる、という風ではないから問題はなさそうだ。そしてレアとの挨拶も済ませ、俺はメイルに話しかける。
「それでメイルはどんな魔法が使えるんだ?」
さっきは遮られた質問をもう一度してみる。
「フフッ、私は水・風・地など基本的な属性は全て習得していますよ。でもその中で一番得意なのは…火の魔法ですよ!」
「へー、いいなぁ火の魔法かぁ、攻撃力ありそうだな」
これは思った以上に頼りになりそうだ。レアの話じゃDEXも問題ないみたいだし。ほんとになんでこの子がパーティを組んでいないのか不思議なくらい…
「火の魔法はダメージの振り幅が大きいが…そこにロマンがあるな!」
ATK脳のサリアが嬉しそうにメイルに同調する、あれ?なんだか嫌な予感が…
「そうなんですよ!しかも私は下は見ていません、常に上だけを見ているんですよ!」
「おお、素晴らしいな!」
意見が合い、楽しそうに話すサリアとメイル。だがなぜだろう…
とても嫌な予感がする。レアの肩を叩き、メイルのステータスをもう一度よく見るように言う。特に魔法に関するステータスだ。
「えーっと、特に変わったステータスは…あれ?」
「お、おい、どうした?」
「よく見ると魔法使いは魔法攻撃の最小値と最大値を振り分けることができるようです。最小値を上げればダメージは安定し、平均に近づいていくようです。そしてこの人のステータスは…」
おい…まさか…
「魔法に関するステータスを全て最大値に振っています。」
「は、はははっ…」
比較的、まともだと思っていた彼女は…
安定ガン無視のロマン砲魔法使いだ