俺はゲームをする時にはバランスよく進めていくのが好きだ。複数のキャラクターを連れていけるゲームならレベルを同じにして進めるし、キャラクターの性能を選べるならバランスタイプを選びたい。生まれつきそういう性格なのだ。それはどうしようもない。
「細かいダメージを何度も与えるより、一度の大きなダメージ与えたほうが心地よいだろう?」
まるで正論を述べているかのように持論を述べる、少女”サリア”。だが待って欲しい、一見、正しいかのように聞こえる彼女の意見だが。一つ問題がある。
「それって雑魚を倒すとき不便じゃね?」
「それはそれで問題ないだろう、なぜなら雑魚に対して高火力の攻撃を当て、粉砕することはとても心地よいだろう?」
あー、これは脳みそまでATK全振りしちゃった感じかな?確かに分からないでもないよ?レベル1の雑魚を相手に主人公が最終レベルで覚える必殺技とかぶち当ててダメージ見るのが楽しいってのはね?でも、それはゲームでの話、ここでは…
「命がかかってんだよぉぉぉ!」
俺は思わず叫んだ。
「なんで命かかった戦闘でわざわざ運ゲーやらなきゃいけないわけ!?通常戦闘が毎回運ゲーとかリセット不可避なんだけど!?」
「何を言っているのかよくわからないが…なに、心配するな、私はこうして生きている!」
もうやだ、会話のドッジボールって疲れるよね。
だがどうする…?DEXが低いことによる弊害のレベルは俺達にはわからない…以外と問題ないのか…?別に攻撃が当たらないことによる俺への直接的な問題はないわけだし…
俺は諦めたように笑顔を作りサリアに向けて…
「悪かったよ、サリア、俺が間違ってた。お前の戦士としての志の高さ、たしかに感じたぜ。これからよろしく頼む。そして、こいつは俺の仲間のレア、ほら、挨拶しろよ」
「よろしくお願いしますね」
作り物の笑顔だ、コイツ、外面だけは良いんだな。なんかムカツク。
「ああ!」
満面の笑顔を浮かべるサリアをよそに、俺は不安が募るばかりだった。
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俺達はクエストボードの前に居た
「どれにするか、もう初心者クエストは受けられないしな」
確認する必要のないことを口にしながら俺はクエストを見ていく。
「これはどうですかね?」
レアが一枚のクエストを差し出す。この流れ、以前もあったような…
【林道の側にできた巣の駆除】
林道の側の洞窟にピョコンの巣ができ、林道を通りかかった人々の荷を漁って困っています。
ピョコンの討伐数に応じた報酬、親玉を討伐された際は報酬を上乗せさせて頂きます。
※クエスト中に負った怪我には当方は責任を持ちません。
「私の女神の全知全能の力によるとですね…」
「あぁ、あの攻略本ね」
――ガンッ
痛い。本を開いてる時も殴れたんだな
「ピョコンというのは兎が丸くなったような生き物で、獰猛でもなく、ペットにする人もいるようなんです。つまり討伐とは名ばかりのクエストですよ。」
「ほう、そりゃいいな。サリアはどう思う?」
「問題ない、むしろ私の火力が超過しすぎて困ってしまうくらいだ」
こりゃ案外余裕なんじゃないか?サリアも自信あるみたいだしな。
「よし、じゃあ行くぜ!」
クエスト用紙を受付に堂々と提出し、俺達は依頼された林道へと歩き出した。足取りはとても軽い。