「なあ、これからはどうするんだ?」
部屋に運ばれてきた料理の一つを食べながら俺はレアに尋ねる。何気に箸がないって不便だな。
「そうですねぇ」
俺の倍のスピードで料理を食べ進めながらレアは返答を考えているようだ。
「とりあえずはギルドでのバッジランク上げですかね、衣食住に困らない生活って最高ですね!」
全面的に同意だが、女神が言うのはどうなんだそれ。
「やっぱそうなるよなぁ、でもさ、俺達って戦闘能力皆無じゃん?その辺どうすればいいんだろうな」
「それなら方法は二つありますよ」
ほう…正直、解決策に期待なんてしていなかっただけに助かる。まるでレアが女神に見える。
「一つ目は私たちがこの世界でのレベルを上げてステータスを上げ、スキルを修める。これはある程度、地道な作業になりますね。」
「二つ目は、私のオススメなんですが…パーティを組めばいいんですよ!」
あー、なんかこいつが言いたいことわかる気がするぞ
「強い人にパーティに入ってもらって、私達は付いていくだけ!それでクエスト終了、はいランクアップ!というわけですよ!」
駄目だこいつ…地雷寄生プレイヤーだ…
「おいおいおい、そのプランちょっと無理あると思うぞ」
「なんでです?」
「俺達にはメリットしかないが、相手にはメリットがないじゃないか。それにそんな高レベルプレイヤーをほかの人が放っとくと思うか?」
俺は、ぐうの音も出ない正論を言ったつもりだ。…がレアからは意外な言葉が返ってくる。
「それが私、偶然、見つけちゃったんですよ」
「私の女神の眼で見たところ合計ステータスがとても高い!なのに誰とも話をすることなくギルドに佇んでいる人を!」
「本当かそれ?なんでそんな人を周りが放っておくんだよ?」
「それはわかりませんが、合計ステータスはほぼ上限と言って差し支えなかったことは事実です!今を逃したら他のパーティに取られてしまうかもしれませんよ!」
「まぁ、誘ってみるのはタダだしな…」
どうしてこの女神が言うと信憑性ってのが薄いんだろうな。不思議だ。
だが、これからの方針が決まったのは助かる。目標もなく彷徨うのはごめんだからな。
あとは風呂にでも入って寝るだけ…ん?風呂?
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――ザーッ
ドクッドクッ
落ち着け…落ち着けよ俺…、別にすぐ隣の部屋で女の子が風呂に入ってるだけじゃないか…
しかも相手はレアだぞ?別に今まで意識してなかっただろっ…!
俺はベッドに横になって布団を抱きしめながら悶えていた。
「もっと防音性の高い設計にしとけよな…どうしても音に集中しちまうだろ…!」
と言いつつ、設計者に心の中でグッジョブと思っていることは内緒だ。
――キュッ
――ガラッ
どうやら上がってきたようだ、よかった。頭がおかしくなりそうだったぜ…。
「よう、レア。もう上がった…ブッ!」
レアの姿を見て俺は吹き出した。服を着ていなかったからだ。タオルを巻いてはいるが。
「お、おい。女神は服を着ないで寝るのが普通なのか!?ちょっとハイレベルすぎるぜそれは!」
「バカなこと言わないで下さい。着替えを脱衣所に持っていくのを忘れただけです。今日一日着ていた服をもう一度着ろと言うんですか?」
「でも、俺が部屋に居るだろ…」
「あなたは部屋で飼っているペット相手にも自分の服装を気にするんですか?」
おや?気のせいかな?俺のことをペットって言ったような気がするゾ?
「ですが、あまり汚らわしい目で見られるのは気分が良くないので、あちらを向いていてくださいね。所構わず欲情する猿だと言うなら仕方ないですが」
くっそ、馬鹿にしやがって…男は皆、狼だってことを体に教えてやっても…
「まだ何か?」
「スミマセン」
豚を見るような冷たい目で睨まれ、俺は壁の方を向く。
タオルを外す音、服が肌に擦れる音を聞いていると今、振り向いたらレアがどんな格好をしているのか気になる。だが流石に命と交換では割に合わないので自制する。俺が壁と向い合って数分後…
「もういいですよ、いつまで壁と話しているんですか」
この女神、言いたい放題である。だが、こういう冗談が言えるくらいには余裕ができたと考えれば、それも悪く無いな。さ、次は俺が入らせてもらうかな。