再びアルスター城に戻った俺達は、入り口でメイドに迎えられ、部屋へ通された。メイドって生で初めて見た。
「こちらがワタル様、レア様のお部屋になります。ご自由にお使いください。」
案内された部屋はそれほど大きくはないが、住むには十分だ。それに、トイレも風呂も備え付けだ。とても楽だ。
……ん?今、俺とレアの部屋って言わなかったか?
「あの~、どう見ても部屋が一つしかないんだけど…」
嫌な予感がしてメイドさんに聞いてみる。
「はい、旦那様からのご命令により、お二人は一つの部屋で過ごしてもらうようにと…」
…ん?あれ?おかしいぞ。別に俺達は恋人や夫婦だなんて言ってないんだが。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!俺達は別の部屋にしてくれ!こんなに広い屋敷なんだからさ!空き部屋なんていくらでもあるよな!?」
「旦那様の命は絶対です。私たちメイドが勝手な便宜を図ることはありません」
そう言ってメイドさんは足早に去ってしまう。どうなってんだこれ…
「レアもおかしいと思うよな?」
「そうでしょうか?私は当然だと思いますよ」
「えっ」
お、おい嘘だろ…俺が気づいていなかっただけでレアは俺のことをそういう関係だと思っていたのか…!?ちょ、ちょっと待ってくれよ健全な男子には心の準備というものが…
「監視ですよ」
「へ?」
レアの口からはずいぶんと無機質な単語が飛び出してきた。
「つまり、私たちは国王から信用されていないのですよ。まぁ、姫様を助けたということで多少の評価はされているとは思いますが。それでもどこの誰とも知れない人間を屋敷内に住まわせるというのはリスキーなんです。」
「そこで、監視がしやすいように屋敷の隅の部屋に二人まとめて置いておく。手間が最小限で済みますからね、理解できましたか?」
レアは頭の悪い若者に説明をする役所の人間のように淡々と俺に話をしてくる。
べ、別に女の子と同じ部屋で緊張したり、何かを期待してたとかじゃないからな?勘違いするなよな。
「でも、その…お前はいいのかよ?男と一緒の部屋ってのは嫌じゃないのか?」
「問題ありませんよ。18歳で彼女どころか女の子と手を繋いだこともない草食系男子もとい、ヘタレ男子となら」
クッソォ…、何一つ間違ってないから言い返せねえ…
「ですが、ベッドはなるべく遠くに置いてくださいね。夜中に隣でモゾモゾされても困るので」
「な、何もしねーよ!少なくともお前ではな!」
こうして俺とレアの強制同棲生活が始められることになった。