「やはりこの世界の魔法とやらでもだめだったか」
一人は浮浪者のような薄汚れたコートと帽子をかぶった40代半ばほどの男性であった。その近くを白い蝙蝠が飛んでいる。もう一人は、
「フン、ディケイド…か。確かに強そうだ」
もう一人は人間ではない外見であり、その声もエフェクトがかかり男なのか女なのかもわからない。性別があればの話だが…
「そうだではない、強いのだ」
彼はほとんどの世界でディケイドの邪魔をし、それぞれの世界のライダーを使い何度もディケイドを倒そうとするもことごとく失敗していた。今回もこの学園にいる魔法生徒の一人に目をつけ、先に接触しディケイドと戦うように仕向けた。
「わかっている鳴滝。兵隊ももらい、数の上でもこちらが上だ」
「甘いな、奴はそれでは止まらない。奴に勝つには…」
そうどれだけ頭数を用意しても彼はその世界のライダーたちとともに反抗してくる。今回もおそらく魔法使いと協力して、こちらに対抗することが予想された。
「フッ、そちらはもう対策が完了している」
「っ!奴に対抗する手段があるのか!」
「この作戦なら、ネギ先生達を孤立させることができる」
そう協力させなければいい話なのだ。怪物にはその手段があった。
「…わかった、期待しておこう」
「フフフ、なんだかおもしろいことになりそう」
白い蝙蝠「キバーラ」がそう言うとオーロラが現れ二人を飲み込んだ。これで魔法球の中に人はいなくなった。
「申し訳ございませんでした」
「またあいつか、毎度毎度。ワンパターンな奴だ」
桜咲はとりあえずエヴァの家でもらったメイド服を着て光写真館にやって来た。話をするのなら、この世界に来た元凶のようなここで話そうと思ったからだ。ここにはログハウスにいたメンバーの中ではエヴァ以外が来ている。エヴァは夏海からとりあえずの報告を受けた後、茶々丸に話の録音を頼み寝床へと戻っていった。真祖とはいえ吸血鬼だからか昼は眠いらしい。写真館の中はたくさんの写真が額縁に飾られていた。ここにきてネギが驚いたのは写真を撮る場所の背景ロールである。そこには自分の故郷のウェールズにある男性と女性の石像が描かれていたのだ。なぜロールがそれだったのか、それはおそらくこの世界を象徴するものだからだろう。今までの世界でもそうだったからだ。例えば、龍騎の世界ではその世界の仮面ライダー龍騎のパートナーであるドラグレッターが、響の世界では森の中に置いてある太鼓の絵であった。ウェールズの石像は、魔法使いとその従者を象徴するものという事で選ばれたものだろう。
「まあいいじゃないか、誤解も溶けたんだし」
「おまえなぁ途中で見失いやがって、夏海はちゃんと追いついたぞ」
士はため息交じりにそう言う。ユウスケはエヴァの家に行く明日菜たちに追いつくことができず、結果見失ってしまい先にこの写真館に帰ってきていたのだ。
「しょッ、しょうがないだろ」
しょうがないも何も、ユウスケより体力がないと思われる夏海は追いついたのになぜユウスケは追いつけなかったのだろうか。というより体力バカの明日菜に追いついたのが異常なのかもしれないが。いや今は別にどうでもいいのか。
「っでネギ、今は誰を待っている」
一通りネギと話し合い、魔法のことを詳しく聞いた。後は自分たちのことを話すと言ったところで、ネギが関係者が来るまで待ってほしいと言ってきたのだ。
「ああ、もうすぐなh「ネギ君」あっ、来ました」
入って来たのは見たところ30代後半ほどでひげを生やし、眼鏡をかけた男性であった。
「?あんた誰だ」
「初めまして、僕は高畑・T・タカミチ。この街で先生をしている」
高畑はこの学園で学園長の次に権力を持っているであろう人物である。その実力は相当なもので「デスメガネ」という異名も持っている。彼は、ネギからの電話を受けてこの写真館にやって来た。余談だが監視をする弐集院に電話をかけたのも彼である。監視の任務を代ろうと思ったらしいのだが、幸か不幸かそのおかげで弐集院は夏海を見失ってしまった。
「わかった、じゃあさっそく…」
「「「「「「「「「「お邪魔しまーす」」」」」」」」」」
「あっみんなも来ました」
士が話をしようとすると、10数名の少女たちと、一人の少年が入って来た。少年は見たことなかったがほかの少女たちは見たことがあった。彼女たちは士が副担任をする3-Aのメンバーであり、『白い翼』という組織のメンバーであった。白い翼はエヴァが顧問を務めるネギの父親を探す部活のようなもので、全員魔法のことを知っている。
「なるほどお前らもそっち側か」
「ん?士先生?」
士がいることに気が付いたのは体育の際頭を抱えていた長谷川千雨であった。眼鏡をかけた女性で裏の顔は『ちう』というネットアイドルである。彼女は平凡が好きといったら変だが、非日常なことが嫌いな部類であった。ネギたちとともに行動するようになり、少しは体勢が付いたのだが、それでもその深い信念までは変わっていない。
「ではここは先生の家ですか」
綾瀬夕映、いつもまずそうな飲み物を飲んでいる少女である。戯言ではあるのだが、いつの日にか乾汁やクスハ汁を飲んでもらいたいと若干熱望している。…誰がだ?と言われてしまえばそれは言えないが。
「んで、私たちに召集をかけたってことは何かあったの?」
朝倉和美、朝に士に質問をした報道部のパパラッチである。余談だが彼女の後ろには相坂かよという影が薄い幽霊がいるが士たちには見えていない。…いち生徒の存在を余談で片づけてしまうのもかわいそうだとは思うのだが…。
「はいはい、コーヒーですよー」
そこに夏海の祖父の光栄次郎がコーヒーを持ってきた。大量に持ってきたところを見るといったい何杯分作っていたのかを知りたくなる。コーヒーが一杯分余っているのについては考えてはいけない…。
「あっありがとうございます」
「大体話は聞いたがな」
宮崎のどかが栄次郎にお礼を言い士は話を始める。話という言葉から、千雨はネギにおいまさかという視線を浴びせていた。
「それで君たちはいったい」
「私たちは別の世界から来たんです」
「べっ、別の世界ぃ!?」
高畑からの質問に返した夏海の言葉に少女たちの一人ハルナが驚く。別の世界という言葉を聞いて、こういう反応をするのは当り前であろう。
「それは、魔法世界のようなかい?」
魔法世界、それは裏の世界の人間にとって本国というもので通っている。つまり魔法世界とは魔法使いの根城のようなものなのである。
「いえその魔法世界ってのがどんなのかはわかりませんが違うと思います」
「俺たちは世界の崩壊を防ぐために旅をしていた」
「世界の崩壊…でござるか」
忍者風な長瀬楓がつぶやく。世界の崩壊というあまりにも物騒な言葉に一同はハッとした表情をしていた。そして士の言葉の一つに千雨は気が付いた。
「していたっていう事は、もう過去のことなんだろ?」
「ああ、そうだ」
世界の崩壊はないと聞き、一同は安心する。
「そうか。それで君たちはこの世界に何をしに?」
「わからん。あの背景ロールの気まぐれみたいなもんだ」
気まぐれで様々な世界を旅するのは大変なことである。下手をすると言葉が通じないという事もあり得るかもしれないのだ。しかも行先を変えることはできないため、自由に行き来することができるのは士が出現させる謎のオーロラぐらいだ。だが実はこのオーロラ、唐突に使えなくなったりするのだから想像以上にたちが悪い。そして士は高畑に疑問を投げかける。
「ところで、ネギの父親が英雄だとかって話は本当か?」
「ああ、僕たちの間ではそう通っている」
ネギの父親ナギは戦争を終わらせた英雄として半ば伝説と化している。彼は公式的には死亡しているが、6年前にウェールズでネギが目撃していたこともあり、実は生きているのではないかとも言われている。その言葉を聴き士は確信したかのように高畑に問いをぶつける。
「…だからか?」
「?」
「だから10歳のくせに先生なんてやらされているのか?英雄の息子だから」
「いや僕は…」
「確かににそういう見方もあるにはあるね。…みんな期待しているんだ。ネギ君がナギを超えることを」
そのみんなの中にはもちろん高畑も含まれている。彼だけでなく、麻帆良学園の先生は8割が期待していると言っても過言ではない。彼がナギのような、いやナギを超えるような英雄になることを期待しているのだ。しかし英雄というのはどこの世界でも神話のようなものだ。そもそも英雄というのは戦争などで勝った方から作られるものだ。負けた方に英雄など作られるわけがない。たとえ英雄がいたとしてもそれは以前の戦争の英雄などというパターンがほとんどだ。人のために戦ったと言って英雄にされ、その国のプロパガンダに利用されるのだ。英雄など所詮幻想に過ぎない。
「そのためにこいつの人生を破壊するのもお構いなしにか?」
「?どういう事アルカ?」
中国武術研究会の古菲には士の言っていることがよく分かっていなかった。
「ここで先生をするってことは、10歳という大切な時間の一つを捨てることと同じだ。普通は小学校に通っているはずだが?お前たちはそれを分かっているのか?」
ここで余談だがイギリスの義務教育は行きたくなければ行かなくていい。と表せるものであるそうだ。そのことを士は知っているのか知らないのかわからないが、たとえ知っていても士の性格から同じ反応を示していたであろう。
「ネギ君はイギリスで大学卒業までの勉強を終えていr「そういう事じゃない」…。」
そう、いくら大学前の勉強を終えているとはいえ…
「時間を奪ってまで、大事な子供時代を削ってまでするべきことなのかと聞いているんだ」
「…」
この言葉を聴きその場にいる全員は千雨を除いて考え込んでしまう。そうだ自分たちはいつもバカ騒ぎして、色々と問題も起こしているが、それも学生だからなのだ。大人だったらどれだけ怒られることか。自分たちは学生生活を送れるが、年下の少年のたった一度の人生の中での一つの時間を奪ってしまっているのだ。士の言葉がいつまでも彼女たちの中に渦巻いた。千雨はネギが来た時からネギが先生をするのはおかしいと思っていたためか、そんなことは思わなかった。むしろそれを考えてなかったクラスメートの反応に改めて驚かされた。
「…ネギ」
「…え?」
「お前はどうなんだ?」
「僕は…」
士はネギに質問を振る。そう誰が何と言おうと大事なのは本人の意思なのだ。本人の意思を無視して事を運ぼうとしても、絶対にうまくいかない。だからネギがどう思っているのかを士は聞いた。
「…僕はそれでもかまいません」
「…ネギ」
「だって…」
それでも構わない。自分の時間が失われても構わない。その理由を言おうとしたその瞬間。
「!!」
部屋の電気がいきなり切れた。周りを見てもそんなに電力を使っているような家電はなく、また雷なども落ちてなどいない。
「停電!?」
「いったい何故、とにかく外に出てみましょう」
「「「「「ええ!!」」」」」
夏海に促されとりあえずは外に出てみようと促され、栄次郎以外全員が外にでる。
ここからどんどん独自設定が増えていきます。因みに、数話前で士と麻帆良四天王がテニスをしていたのは、どちらもテニスをしているイメージがあったからです。ディケイドはともかく、なんで麻帆良組も何だろう?