仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 この話を見る前に活動報告を見た方がいいかもしれません。いや、見なくてもいいかもしれませんが。
 因みに、今回のユウスケによるあるアクションは、毎年毎年死亡説が流れる俳優の映画のあるシーンを元にインスピレーションがわきました。
 あと、奴の言動はゲーム版を参照しているものの、若干自分勝手な考えによるところもあって過激になっている気もしなくはない。


SAOの世界2-11

「ッ!白、グローイングフォームか!?」

 

 ユウスケは、その時ようやく自分の身体が真っ白くなっていることに気が付いた。通常、変身した時に出現するのは赤い身体、マイティフォームである。しかし、ごくまれに白い身体、グローイングフォームになってしまうこともある。その条件として、病気やけがなどで体調が悪いとき、もしくは変身者の覚悟が足りない時。今回の場合は後者であろう。グローイングフォームは、他のフォームよりも力が劣るといっても過言ではない。だが、人並みの力と言うわけではなく、ギリギリ戦える程度の力は持つことができる。ユウスケは、近くにいた夏海に言う。

 

「しょうがない‥夏海ちゃん、こいつは俺が止めておくから、その間に逃がしてくれ!」

「分かりました、行きましょう!」

「え、うん…」

 

 その言葉に、詩乃を始めとしたその場にいた人間すべてがその場から離れていく。ユウスケは、リザードマンの腕を取り、その手に持った剣を振るわないようにした。

 

「クッ!すごい力だ!」

 

 すごい力、と言うよりも、ユウスケの方がいつもの力を出せていないだけである。だが、いつもと同じ力を出すことができないということはデメリット以外の何物でもないことは確かだ。グローイングフォームの身体能力は、確かに一般人のそれをはるかに凌駕しており、バスを手で押して動かせるほどの力を持っている。しかし、パワーはマイティフォームの半分程度に過ぎない為、通常の戦闘で使うには不都合なフォームであるとしか言えない。

 

「グアッ!」

 

 大きな力で腕を振られたことにより、ユウスケの身体は、その場にあった服売り場の服の山へと突っ込んでいく。リザードマンは畳みかけるようにユウスケへと近づいていき、剣を振り上げる。ユウスケは寸での所でそれから逃げ、わき腹へ二度蹴りを入れる。だが、リザードマンは意に返さず、今度は剣を袈裟切りにする。その攻撃を後ろへ跳んで逃げたユウスケは、自信の攻撃が通用しないことに動揺する。

 

「やっぱりこれじゃダメなのか…」

 

 なぜ自分がいつもの力を出せないのか、それは覚悟が足りないからと分かっている。戦うことへの覚悟、それがあれば、この目の前にいる敵一体を倒すことなど簡単だろう。あの時、SAO内で猿型のモンスターを倒したときと同じように。そこまで考えがいたった時、ユウスケはあることを思い出す。

 

「そうだ、あの時と同じなら…」

 

 先ほどまでは、少し冷静さを欠いていたが、一度落ち着いたことによって、周りをよく見ることができたユウスケは、リザードマンの頭の横あたりに、ある物を見つける。HPバーである。ユウスケが一度倒した、ドランクエイプと同じ位置にあるソレは、緑のラインが若干減り、4分の1くらい減っているところであった。

 

「この攻撃で4分の1か…いけるか!」

 

 行けるかどうか、分からないが、猪突猛進にユウスケはそれに向かってタックルを仕掛ける。すると、少しよろめいたようで、隙ができたリザードマンに対して更なる追撃を仕掛けていく。

 

「ハァ!うらぁ!」

 

 それを受けて、徐々にリザードマンのHPは減っていくが、決定打を与えることができない。リザードマンは、体勢を立て直し、またも剣でユウスケを斬るべく襲い掛かる。ユウスケは、それに対して後ろへと飛んで避ける。手すりが後ろにあるため、後方へと逃げることはできない。

 

「何かないか…こいつを倒すことのできる決定打…!」

 

 その時、彼は後ろを見た。そこにあったのは空洞。吹きさらしである。天井から一階まで続くその吹きさらしはしかし、階ごとに転落防止のためのガラスがある。

 

「やるしかない…ッ!」

 

 ユウスケは、リザードマンの攻撃を避けると、即座に後ろに回る。

 

「ハァッ!」

 

 そして、思い切りの力を込めて背中に一つ蹴りを入れる。その衝撃により、リザードマンは手すりを破壊して、吹き抜けのガラスの上へと落ち、その衝撃でガラスには放射状のヒビが入る。間髪入れずに、ユウスケは飛び上り、うつぶせになっているリザードマンめがけて落下。

 

「ハァァ!!」

 

 その衝撃でまず一枚目のガラスが完全に割れ、ユウスケとリザードマンはともに落下していく。

 

「ハァァァァァァァ!!!!!」

 

 そして、一階落ちるごとにガラスを割り、一階落ちるごとにガラスを割り、最終的に、デパートの一階に落ちる。その瞬間、割れたガラスが宙を舞い、ライトの光を反射して一瞬だけではあるが、ダイアモンドダストのような煌めきを見せた。リザードマンの上にのっかった風になったユウスケは、飛び降りて、距離を取り、リザードマンが動き始めてもすぐさま戦闘できるように体勢を立て直した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…ッ」

 

 リザードマンの身体が、一瞬だけ動きを見せた。しかし、そいつにできたのはそれだけだった。リザードマンのHPゲージは、徐々に減っていき、そしてその色を透明にした瞬間、またもガラスの割れる音がして、その体が砕け散った。

 

「はぁ…はぁ…はぁ……ぐっ!」

 

 その時、ユウスケの身体が崩れ落ちる。いくら変身し、身体能力が向上していたといっても、不完全なフォームで、無理をしすぎたせいか、体にもダメージを負ってしまっていた。

 

「ユウスケ!」

「ユウスケ?…あの店の前にいた?」

 

 その時、夏海と詩乃の二人が、駆け寄る。どうやら、ちょうど5階から降りてきていたころであり、ほかの市民は全員避難しているようだった。

 

「な、夏海ちゃん…詩乃ちゃん、大丈夫?」

「私は平気です、でもユウスケは…」

「大丈夫…こんなのなんとも…!」

「ユウスケ?」

 

 なんともない。そう言おうとしたその時、目前から足音が聞こえる。

 

「いやぁ~面白い物を見させてもらったぜ…興奮して体がぶるっちまったぜ」

 

 現れたのはポンチョを纏い、頭にフードをかぶった男。少しだけ見える顔のタトゥーから見ても、普通の人間でないことは明らかだ。

 

「とはいえ、せっかく苦労して連れてきたモンスターを簡単に倒しちまって…面白さは半分だ…」

「!それじゃ…あのモンスターはあなたが…!?」

 

 夏海はそう聞く。だが、ソイツはただほくそ笑むだけで何も言わない。

 

「お前は…何者だ!」

「おーおー、俺らも有名になったと思ったが、まだその程度だったか…俺は、殺人ギルド≪ラフィン・コフィン≫のボス…PoHだ」

「PoH?」

 

 ふざけた名前だ。だが、それとは裏腹にソイツが醸し出している殺気は、恐ろしいものがある。そして、殺人ギルドという言葉にも引っかかった。

 

「ギルド…ということは、お前はSAOのプレイヤーなのか!?」

「ご名答…だが、ただのギルドじゃねぇ」

「なんだと?」

 

 殺人ギルド、≪ラフィン・コフィン≫。通称、笑う棺桶はゲームオーバーが即座に死へとつながるSAOにおいて、公然とプレイヤーキル(PK)を行う快楽殺人集団である。その殺人の方法も多種多様にわたり、一つ解決策を見出しても、またすぐに新しいPKの手口を開発するという繰り返しにより、100人近くのプレイヤーを死に追いやったとされる。そのギルドにはトップ3が君臨していた。赤眼のザザ、ジョニー・ブラック、そしてリーダーのPoH。今から三か月前、このまま彼らを放って置いたら攻略に支障が出てしまうと判断した≪血盟騎士団≫、≪聖竜連合≫を始めとする大手ギルドとさらにソロプレヤー合わせて50名になる討伐隊が組まれ、ある情報筋からもたらされた情報によりアジトの場所が判明したことも踏まえて、彼らのアジトを急襲した。しかし、その情報が漏洩していたために、激しい戦いとなってしまい、結果討伐部隊11人、ラフィン・コフィン21人が死亡という凄惨な騒動へと発展し、POHを除く12人が捕縛されたことで事実上壊滅したものの、全プレイヤーに恐怖と、心に残る悪夢を刻み込んだSAO史上最も最悪なギルドである。なお、この討伐隊にキリトも参加し、この戦いで2人のプレイヤーを、そしてのちにラフィン・コフィンの残党1人を殺害、キリトは合計3人のプレイヤーを殺してしまった。また、噂によると、そもそもアジトの場所をリークしたのはPoH本人で、あったとも言われている。突拍子もないうわさであった物の、それまでの彼らの狂気ともいえる行動から、やはりと思うプレイヤーも多かった。

 

「殺人ギルド…お前は、人を殺してなんとも思わないのか!」

「何故だ?」

「何故…って…」

「今の世の中、こうしている間にも世界のどこかで人が一人死んでるってのによ…そいつらが死んでお前は心が痛むってのかぁ?」

「ッ!」

 

 狂っているとしか思えない発言。人の死というものを軽く見ている男の発言。命の大切さ、尊さをまったく理解していない人間。いや、しようとも思わないのだろう。そんな人間、初めて…いや、前にも見た。茅場昌彦、彼と同じだ。だが、ユウスケはキリトがヒースクリフと戦った時と同じ感情、そして失敗をしようとしていた。

 

「ふざけるなッ!」

「…」

「どんな人の命だって命だ!それを奪っていい理由、誰にだって存在しない!!」

「ッ!」

 

 その言葉を聞いて、詩乃は動揺する。そして、頭に思い浮かんだのは、自分の罪。

 

 撃つぞぉぉぉ!!!!

 

 がぁぉぁぁ!!!

 

 やめて、その眼をやめて!いや、どうして、私は守ろうとしただけ!違う…違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う、違う、違う、違う、違う…違う、違う違う違う違う違う!違う!違う!違う違う違う違う違うぅ違う――――…私は…私は、もう誰にも死んでもらいたくないって、お母さんを…守っただけなのに…。そうじゃない。それは…私がもう誰にも目の前から…お父さんのようにいなくなってもらいたくないから…。私が…私…。

 

 心臓の鼓動が大きく、そして高らかに鳴り響く。寒気?違う、これは何なのだろうか。おびえているだけ。両腕を両腕で持って、その震えを止めようとする。だが、止まらない。目を見開き、ひざまずいて、ただうつむく。押さえないと、止まれ、呼吸が、汗が、こんなの…。

 

「詩乃ちゃん!?大丈夫ですか!?」

「私は…守ろうとしただけ…私は…」

 

 違う

 

「!」

 

 お前は

 

「やめて…やめて…」

 

 どれだけの綺麗事を並べようと

 

「やめて!やめて、やめて…」

 

 殺人者だ

 

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」

 

 人殺し

 

「…」

 

人殺し

人殺し

人殺し

人殺し  人殺し  人殺し  人殺し  人殺し  人殺し 人殺し 人殺し 人殺し 人殺し 人殺し 人殺し 人殺し

 

 

人殺し

 

            人殺し

 

人殺し

 

 

 

 

 

 

 

痛ェ…。よくも

 

 

 

 

 

俺を殺したな

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!あ、あぁ…」

誰も、私の気持ちなんて分かるわけないんだ

 

「し、詩乃ちゃん?」

 

 ユウスケは、突然叫んだ詩乃に驚く。一体どうしたというのだろうか。

 

「あぁ?なるほどなぁ…」

「え?」

「お前、人…殺したことあるだろ?」

「ッ!!!」

「なっ!」

 

 不思議なことに、そう言われてなぜか急に心が落ち着いた気がした。

 

「その反応…図星かぁ?」

「そんなこと…詩乃ちゃんが…」

「う…うぅ…」

 

 彼女のその反応は、彼の言葉が真実であると肯定してしまった。

 

「まぁ…そんなことは関係ねぇ…」

「!」

 

 PoHはそう言うと、中華包丁のように四角い長方形の刃を持ち、ところどころに小さな穴の開いた剣らしきもの(友切包丁≪メイト・チョッパー≫)を取り出す。

 

「…やっぱりさぁ、重要なことは自分でやるもんだよなぁ…うん。俺がちゃんと殺さないとだめだったよなぁ~。MPKなんて達成感も何もありゃしねぇからなぁ…」

「!」

 

 MPKとは、プレイヤーキルの方法の一つでモンスターを誘導して、プレイヤーを殺す≪モンスタープレイヤーキル≫の事である。

 

「だからさぁ…楽しい叫び声を聞かせてくれよ…≪白の戦士≫様よぉ!」

「くっ!」

 

 今、戦いが始まった。




 と、いうわけでデパートの中でクウガVSPoHの戦いです。ゲームと原作とでは口調がちょっと違うと小耳にはさんだのですが、今の自分の持っている資料では、ゲームの口調を雑に再現することしかできません。
 因みに、この戦いは1,2話ぐらい他の場面を映してから再開されます。

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