あと、ARの説明をしてますが…なんだかARの理解力が足りなくて劇場版を全否定している気がする…。
「なんとなく来てしまったけど…」
ユウスケは、ふと見つけたデパートに入店して、いろいろと歩き回っていた。のだが、そもそも目的があって入店したわけでないため、本当にブラブラと理由もなく歩き回っているだけなのだが。ふと、ゲーム売り場を見つけて、入っていく。そこには様々な種類のゲームソフトが置かれていた。当たり前のことではあるが。その時、ある物を見つける。
「アミュスフィア?」
アミュスフィアは、ナーヴギアを第一世代として見るならば、第二世代のVRゲーム機器である。リーファからは聞いていたが、実物を見るのは初めてだ。その横にはALOのパッケージが大量に置かれていた。少し向こうにARのゲームも置かれているが、そちらは規模は小さく、人気がないというのがわかる。AR、Augmented Realityの略称であり、日本では拡張現実感という名称が付いて回っている。VRが仮想的なものとするなら、ARは現実的なもの。現実世界に、リアルな幻想を投影することができる。流石に、触ったりすることはできないのだが、現実世界に現れた幻想と言うのは、VRよりも現実感を増すことができ、拡張現実と言うのは、現実に非現実的世界が拡張してきたという意味を併せ持っているのかもしれない。このことからして、ARはVRよりも高度な技術であると思われる。しかし、AR技術を使用したゲームには欠点があった。外で遊ぶことができないということ、具体的に言えば、歩きスマホの原理と言えようか。例えば、ARを利用してゲームを作ったとして、その場所が問題になる。道に作るなんてもってのほか。他の人の迷惑になる。そのため、作るとしたらアミュスフィアやナーヴギアのようにヘッドセット型のようなものに搭載するということだろうが、この場合は、本人はともかくとして、外からARのゲームをしている人を見たら、ただの変人になってしまう。ほか、モンスターが出現したということで、戦っている途中に道路に出て事故にあってしまうということも多発するなどの社会的な問題になったことによって、AR搭載ゲームの下火になり、当初ALOを追い抜くではないかと言われた人気も完全消滅してしまった。そういったALOのゲームは少数はあるものの、無論SAOはさすがにない。あのゲームは1万個限定の物であり、ほぼ全てが売れてしまった。さらにナーヴギアもその危険性から全て回収されてしまっていた。
「ALOにSAO…か…」
こうしてみると、本当にただのゲームだ。こんなゲームの中で何人もの人間が戦っている。何人もの人間が閉じ込められ、悲しみが広がっていくなんて、彼には想像もつかなかった。どうして、茅場昌彦はこんなことをしたのだろう。自己満足なのは分かる。だが、その理由はなんだ。自己満足であってもなにか訳があるはずだ。1万人の人生を台無しにするほどのことをする狂人のすることに理由を求めても無駄だとは彼にも思う。それでも…。
「キャァァァァァ!!!」
その時、叫び声が聞こえてきた。
「へぇ…それじゃ夏海さんは、その士さん達といろんな国に行ってるんだ」
「はい、前に言ったところで新しく仲間も増えて、それでこうして日常用品を買いに来たんです」
デパートの5階にあるファストフード店で夏海と詩乃はフレンチフライをつまみながら話をしていた。先ほど奇跡的な出会いをした二人は、その後仲良くなり、こうして自分たちの近況についての世間話を始めていた。とは言うものの、夏海は本当の話をいきなりしても信じてもらえないだろうし、混乱させるだけだろうから、いろんな国を周っているというだけにしている。
「でも、それじゃしばらく旅はできないかもね」
「え?」
「だって、ほら…この辺へんなシールドに囲まれてて、外に出ることできないじゃない」
「…そうですね」
詩乃の心配は杞憂であり、大当たりでもある。このシールドは、今までのパターンから言うと、おそらく士がこの世界に来なかったらなかったものだ。だから、自分達にはそのシールドをどうにかしないといけないという目的というか使命のようなものがある。本当にそのシールドがある限りは、自分たちは他の世界に行くことができないのだ。
「ほんと、いつになったら元に戻るんだろう」
「…でもいずれ全部元通りになりますよ…士君たちも頑張っていますし」
「士って人は…科学者かなんかなの?」
「いいえ…でも、士君は本当に頼りになる人なんです」
そして、夏海は手元にあったジュースのストローに口を付ける。詩乃はその様子を見て、ある仮説を立て、ニヤリと笑った。
「もしかして夏海さん…士さんっていう人が好きなの?」
「ッ!ゲホッゲホッ!な、なにを言って…」
いきなりのその質問に、夏海はむせてしまい、変なところにジュースが入ってしまった。
「だって、士さんって人の事を話している夏海さん、いい顔していたもの」
「いい顔…」
「えぇ、乙女の顔っていうかさ」
それを聞いて、顔を赤らめる。確かに、自分は士のことが好きなのかもしれない。いや、好きなのだろう。士と旅をしていく中で育まれたものは、確かに友情と言うよりも愛情と言うべきものなのだろう。自分もいい年ごろである。いづれは、恋をして、結婚するのだ。その相手が士であっても悪くないかもしれない。と、そこまで想像して頭の上にでた想像図を手で払いのける。
(あぁ…これは図星か…)
詩乃はそんな彼女の様子をみて、やはりと思った。恋愛小説や恋愛ドラマを見てキャーキャー言っているお年頃。そんな少女はそう言ったことにも敏感なのだ。
「それで、実際士って人は、何をしている人なの?」
「え?ええっと…旅…人?」
「…それってニートじゃないの?」
「…そ、そんなことはありませんよ。ある世界では教師をやったり、ある世界では警察をやったり」
「いや、それはちょっとありえないでしょ…というか世界って何なのよ」
「…」
確かによく考えると、士はニートなのかもしれない。というか、今のところ彼が行った仕事の中で明確にお金をもらうことができたのは、ブレイドの世界でシェフをやっていたときぐらい。どの職についても、1週間以内に次の世界に行ってしまうので、しょうがないだろうし、ニートと言われてもしょうがないだろう。
「でも、頼りになる人です」
「…」
ここで、彼女の中で士と夏美の関係が恋人又は片思いという関係性から、ヒモとダメ男に騙される女性という関係図が思い浮かんでしまった。このまま夏海がダメ男に騙されたままではいずれ破滅してしまう。
「あの夏海さん…」
詩乃は、夏海を説得しようとした。その時…。
「キャァァァァァ!!!!」
「!」
どこからか叫び声が聞こえてきた。
「なに、いったい!?」
その言葉に答えるように、まず非常ベルが、その次に叫び声に似た大声が聞こえてきた。
「ば、化け物だ!蜥蜴みたいな化け物が入ってきた!!」
「化け物!?」
「もしかして、SAOのモンスター!」
「え!?」
「とにかく、急いで外に出ましょう!」
「う、うん!」
しかし、ここで注目してもらいたいのは、一番最初の男性の言葉。化け物が入って北である。なぜ、5階という高所にいるはずの彼が、化け物がデパートの中に入ってきたことを知っているのか、答えは簡単だ。
「ッ!」
「グルォ!」
化け物がすでに5階に来ていたからだ。
(化け物だって!?でも、今の俺は…)
ユウスケは、今自分がいる階にモンスターがいることを知る。だが、自分が行って、覚悟のない自分が行って…。いやそんなことは関係ない。当然のことだが、ここに警察はいない。今、ここにいる彼彼女らを助けることができるのは、自分だけだ。ごちゃごちゃ考えるのは、その後にしよう。
「見捨てる事なんてできない…そこにあるのは命だ」
そして、ユウスケは走る。焦っていたからだろう。彼が明らかに怪しいと思われる人間を見逃していたのは。そんな彼は、ユウスケが通り過ぎた後に発した。冷たく、凍えるような、声色で、誰にも、聞かれて、いない、はず、なのに、言った。
「イッツ・ショウ・タイム」
お前は、何人殺したのだ。
彼は、5階のフロア内を走ってソイツがいる場所を探す。把握するのは簡単だった。客が走る流れを逆走すればいいのだから。人波をかいくぐり、到着した彼が見たもの、それは逃げ遅れた多数の人達と、夏海、それから詩乃の姿だった。
「夏海ちゃん!それにあの子は…」
ユウスケは即座にいつも通り変身するポーズを取り、
「変身!」
ベルトの左にあるスイッチを押す。そして、変身が完了するのを待たずして、モンスター≪リザードマン≫へと飛び蹴りを繰り出す。
「ハァァァァ!!!ハァ!」
夏海さんと逃げている最中、化け物に出くわして、もうだめだと思った。その時、そいつが現れた。
「ハァァァァ!!!ハァ!」
「クウガ?」
「え?」
隣で夏海さんは、クウガと一言言った。彼女はそれを知っているのだろうか。その、白い鎧を纏った人間の事を。
この世界観にライダー怪人は別に必要ない気がしますので、そう言うのはまた今度。次の世界では全編に出てくる予定です。
気がついたらこれで50話目、終わるのはいつ頃になるのやら。