仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 今回中盤で自分でも驚くほどの長文説明の地の文が出ている気がしないでもない。
※修正しました。
 修正部分:リズベットの鍛冶職人関連の記述。鍛冶師の事をメイスと呼ぶのだと勘違いしていたため、その点の修正。


SAOの世界2-3

「ここか…」

 

 士がたどり着いたのは渋谷から少し離れた場所にある商業ビルである。リーファ達と離れた後、一度75層のボス部屋まで戻ってユウスケ、あやかと合流し、22層にある光写真館に戻ろうと思っていた。しかし、そんな矢先に、士は先ほど携帯を確認した際にメールがあったことを思い出した。それを見ると、発信者は夏海であり、どうやら光写真館は外の方に出てしまったらしいのだとか。そして、ユウスケ、あやかと共にそこにたどり着いたのだ。

 

「ただいま戻りました」

 

 あやかがそう言って写真館に入ろうとする。が、その時士はなにやら違和感を感じた。そして、その正体に気が付き、扉を開けようとするあやかを止めようと声をかけた。

 

「雪広、避けろ!」

「へ?」

 

 が、すでに行動に移っていた綾香を止めることはできなかった。結局、あやかは扉を開けてしまう。そして…。

 

「ゲフッ!」

 

 あえなく、頭上から落ちてくる粉が全身を包み込む砂塵の如く身体に纏わり、粉まみれとなってしまった。

 

「わ~い引っかかった…って委員長!?」

「ゲッ!まずいです!!」

 

 それを仕掛けたのは鳴滝姉妹だ。扉を開けた瞬間に粉が上から落ちてくるように設計していたのだが、本来それのターゲットは士の方であった。しかし、不運なことに、今回はあやかの方から入ってきてしまったため、こんな結果になってしまった。失敗どころか大失敗である。

 

「あなたたち…」

「「ヒッ!」」

「そこに正座なさい!!」

「「は、はい!!」」

 

 いったい何があやかの逆鱗に触れてしまったのだろう。いや、よくよく考えてみると全部だろうか。と、士とユウスケはそんな彼女たちを尻目に横をすり抜けていった。その際、士は一枚だけ写真を撮っていった。そして、いつもの部屋の扉を開く。これからの行動について思案しようとした時だ。

 

「さて…」

「あっ、おかえんなさい」

「おかえりなさい」

 

 彼が目にしたのは、クッキーを食べているリズベットとシリカであった。そして桜子。台所では栄次郎が何かの作業をしているようだ。

 

「お前たち、まだいたのか…」

「あはは…栄次郎さんのクッキーがおいしすぎてつい…」

 

 栄次郎の作るお菓子のおいしさは常軌を逸しているため、それはそれでしょうがないだろう。それはともかくとして、夏海がこの場所についてメールをしてきたということは彼女たちもここが現実であることは知っているはずだ。

 

「はいはい二人にもコーヒー」

「あぁ、夏ミカンはどうした?」

 

 そういえば、姿が見えない。栄次郎は言う。

 

「あぁ、夏海にはみんなの服を買ってきてもらってるんだよ」

「なるほど…」

 

 確かに、麻帆良組は着の身着のままの制服と、写真館に置いてあったわずかな服ぐらいしかない。それも写真を撮るためのものであるためかなり異質なものが多い。そのため、夏海には近くの服屋でいくつか買ってきてもらっているらしい。それを聞いた士は、コーヒーを受け取って近くのイスに座る。と、ここであやかがいないことに気が付いた桜子が聞く。

 

「いいんちょ…はなんか外から声が聞こえてくるね…」

「あぁ、あいつらは一体何をやってるんだ?」

「ええっと、本日の士先生イタズラタイム!…とか言ってた」

「ほんとあの二人はそう言うのが好きだね」

「まぁ…ははは」

 

 そしてコーヒーをすする。

 

「それで、ボス戦で何があったの?」

「…ユウスケ教えておけ」

「あぁ、実は…」

 

 ユウスケはボス戦で何があったのかを逐一話していった。

 

「あのヒースクリフが、茅場昌彦なんて…」

「びっくりしたけど…でも、それ以上に私の打った剣を折るなんてキリトめ…今度会いに行った時に文句言ってやろうかしら…」

「え?リズベットは、キリト君の知り合いなのかい?」

「あれ?言ってなかった?」

「私も一応…」

「へぇ…偶然ってすごいね」

 

 話によると、リズベットはキリトが折ったダークリパルサーを打った人物で、その材料を取りに行く際にキリトと行動を共にしたそうだ。シリカは隣で飛んでいるピナが一度死んでしまった時、復活させるアイテムを一緒に鳥に行ったということで面識があったそうだ。

 

「なるほど…お前たちが…」

「え?」

「いや、なんでもない」

 

 士は思った。なるほど、彼女たちがエギルの言っていたキリトがフラグを立てた少女なのかと。どうしてああいった感じの男は行く先々でフラグを立てていくのだろうか。あれか現地妻ならぬゲーム妻、いや階層妻といったところか。それが彼の人柄とか行動とかがもたらすものであるというのなら納得のいく。しかし、よく考えてみると本当に偶然に愛されているのだろう。いや、そうしなければ英雄として認められないのだろうか。例えば、シリカの例で言おう。シリカは希少なスキルのビーストテイマーを保持しているのであるが、彼女の友達であるピナは、その真は使い魔なのである。彼女がそのスキルによって手に入れることができた友達、それがピナなのだ。SAO開始時まだ小学生だった彼女にとってピナの存在は心のよりどころだった。そんな彼女がある層にてオレンジプレイヤーとその仲間に騙されて、危険なモンスターの多発する場所に入っていった。高レベルモンスターに襲われることは必然であっただろう。結果、シリカは回復のための結晶をすべて使い、ピナに備わっているHPの少量回復能力も焼け石の状態となって、ついにはピナは倒されてしまう。そのショックで一度は死を受け入れそうになった彼女であったが、そこに『偶然』通りかかったキリトに救われる。そして、『偶然』シリカが妹の直葉に似ていたという個人的な理由によって、ピナを復活させるアイテムを取りに行ったのだ。この二つの偶然、シリカと直葉が似ていたということはまだしも、偶然通りかかったというのは因果を操作しているとしか思えない。いくら、その周辺で暗躍していたオレンジプレイヤーの集団を追っていたという大義名分があったとしてもである。下手をすれば、シリカの後を追っていて、ピナが死ぬのを待って助けに入ったという英雄行為を狙っていたと言われても不思議ではない行動内容だ。だが、そう言った何もかもがおかしいと言える結果を引き寄せられる運を引き寄せられるのもキリトという一つのキャラの設定なのだと言ってしまえば終わりである。因みに、運だけでいうならそこでクッキーを食べている椎名桜子も負けてはいないのだが、彼女に至ってはあまりにも運が良すぎていつも一緒になって遊んでいる2人共々面倒ごとに巻き込まれないという弊害のために彼女はキリトのようになれなかった。もしかしたら、彼女もその素質はあったのかもしれない。

 

「それじゃ、それを食べ終えたら俺たちが家まで送るよ」

「はい、ありがとうございます」

「…私は、一度自分の店に戻ろうかな…」

「え?」

「あいつが折った剣、代わりを作らないと…でも、やっぱりダークリパルサーがいいだろうな…となるとあの素材を手に入れないと…でもあれだと一日たたないと…」

 

 とリズベットは自分の思考の中に入ってしまったかのようにブツブツと言い始めてしまった。そしてしばらくして、リズベットは士に言う。

 

「ねぇ、士…って言ったわね、あなた空飛ぶことできる?」

「…あぁ、一応な」

「そう、それじゃ、ちょっと付き合ってくれる?」

「どこにだ?」

「キリトが折ったダークリパルサー、あれをもう一度作るにはある素材が必要なんだけれど、それを手に入れるのは私じゃ無理なの。手伝ってくれない?」

「どうして俺も行かないといけないんだ?」

「少なくとも今の私のレベルだとちょっと厳しいのよ、お願い!」

 

 と、リズベットは手を前で合わせて拝むように頼んだ。リズは、SAOに置いて鍛冶屋を営んでいる。剣や防具といった先頭に必要な武器はモンスターを倒す、イベントをクリアするといった方法以外にもう一つ、鍛冶屋に作ってもらうという方法があるのだ。中でもリズベットの腕前は折り紙付きで、高位鍛冶スキルも持っているため最前線のプレイヤー達が何人も常連になるほどであるのだ。ここで余談だが、このパラメーターは、別に戦闘に限ったものではない。例えば、士やキリト達がであったニシダは、釣りに対するパラメーターを最大に、アスナは料理スキルを最大にしているのだ。そして、リズベットの場合、普通の鍛冶師が作る武器よりもより強力な武器を作れるようになるのだ。そして、鍛冶師が武器を作る際には素材と言うアイテムが必要となっていく。今回ダークリパルサーの素材となるアイテムを手に入れるには、第55層の西の山に生息する『ゼーファン・ザ・ホワイトウィルム』という白竜と戦う必要があるのだ。倒す必要はないのだが、それでも少しの間攻撃に耐えなければならない。今のリズベットのレベルで耐えれないかもしれない。だから前回はキリトが戦ってくれたことによって素材を手に入れることができたのだ。

 

「…まぁ、SAOのモンスターとこれからも戦いそうだからな、慣れておくのにいいだろう」

「よし!それじゃ転移門まで急ぎましょう」

「だったら俺も…」

 

 二人で行こうとしている中、ユウスケも手を上げるが。

 

「お前はだめだ」

「なんでだよ」

「お前、戦うのに迷ってるだろ」

「ッ…!」

 

 ユウスケは困惑、いや息を飲んだ。どうして分かったのかと。

 

「何年お前と旅を続けていると思っている。リズベットの事は俺に任せて、お前は覚悟を決めておけ」

「覚悟…」

 

 そして士はユウスケの肩をポン、と叩いてリズベットと共に写真館から出ていった。ユウスケは、自分がみじめだと思ってしまっていた。




 ここでクイズです。この世界に、主人公は何人いるでしょうか。
まぁ、簡単だわな。

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