エグゼイド要素の代わりにエグゼの奴を持ってきた。と言えばどこの技術なのか分かると思います。
「ハッ!」
「ハァァァ!!!」
「ハァッ!」
「グルオォォォォォ!!!!」
その一撃と共に、一体のモンスターがポリゴン状となって消滅した。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「終わ…った?」
イルファング・ザ・コボルド・ロードを倒したプレイヤー達の顔に喜びはなかった。困惑、ただそれだけだ。
「お兄ちゃん!」
「スグ…アスナ…」
「向こうのモンスターは全部倒したよ…」
「そっか…」
別の場所でモンスターを倒していた二人が合流し、士は変身を解く。その時、懐かしい音が聞こえた。
「ん?」
「この音…サイレン?」
どこか遠くから聞こえてくるのは、紛れもなくパトカーのサイレンだ。キリトは、先ほどモンスターが出現した騒動によって乗り捨てられた車の上に乗って遠くの方を見る。
「間違いない…パトカーだ…」
「パトカーまであるって…ここ、本当にゲームの中?」
「違うな」
士がそう即答した。と、いうのも。
「携帯の電波が通じている。少なくとも、ここが現実なのは間違いない」
そう言った士の手にある携帯電話は、確かに電波が三本立っていた。携帯電話は、基地局と、ネットワークセンターがなければ通じることはない。それが通じているということは、この周辺にそれがあるという証拠と言える。と、いうことはここが現実の世界なのは確実であるということだ。茅場が気を利かせてゲーム内に基地局とネットワークセンターを作ってくれているのであれば別だが。
「現実…本当に、現実なのか…」
「俺たち…帰ってこれた…って言えるのか?」
帰ってきた。本当にそうだろうか。自分は茅場昌彦を倒していない。ましてやゲームをクリアしたわけでもない。そして、プレイヤーの恰好、これを帰ってきたと言えるのだろうか。そして、警察が何人も近づいてくる。
そんなことがあって3時間ほどたった当たりだろうか。事情聴取を終え開放されたキリト、リーファ、アスナの三人は警察署ロビーのイスに座っていた。あの後、警官隊に包囲されたプレイヤーたちは、それぞれ任意同行されて、警察の方で事情聴取を受けた。自分たちがゲームの中から出てきたなんてこと、最初は信じてくれなかったが、メニュー画面を出したり、ソードスキルを見せることによってようやく信用してくれ、そしてその後はしばらくゲームの中で何があったかを聞かれて、今ようやく解放されたところだ。取調室の外でぐったりしているキリトがつぶやいた。
「どうして俺たち、帰ってきちまったんだろうな」
アスナとリーファはそれに対して答えることができない。そもそも自分たちも現在の状況について疑問なのだから。そして、それは他のプレイヤーも同じく。
「だね…士さんなら何か分かるのかな?」
「あの人、急に消えちゃったものね」
警察に囲まれて警察署に連れていかれる際、士の姿を探したが、どこにも見当たらなかった。彼はどこに行ってしまったのだろうか。
「たぶん、あの人はプレイヤーじゃないから、ややこしいことになる前に消えたんじゃないか?」
なるほど、とアスナは思った。もしも、彼が事情聴取を受けて、そこで一人プレイヤーじゃないなんてことが分かってしまったら警察は返してくれないだろう。というか、平行世界から来たなんて信じてもらえないし、住民票とか戸籍とかないだろうから本人確認等でかなり面倒なことになる。彼もそう考えて、どこかに消えたのだろう。
「とりあえず、今は何の時間なんだこれ?」
「ここで待っててって言われたけど…」
三人、というより何人かのプレイヤーは事情聴取を受けた後、ロビーで待っているようにと言われたのだ。それからかれこれ十数分である。何がしたいのだろうか。待てよ、そういえばすでに帰ったプレイヤーは大人ではないか。クラインもエギルも、自分たちに一言二言メッセージを残して帰っていった。ならば、今残っているのは子供達と言うことになる。
「あっ…そっか」
「え?」
キリトは、何かに気が付いた。
「俺を事情聴取した警察は名前を確認するだけで住所を聞いてなかった。アスナやスグはどうだ?」
「え…確かに聞かれなかったけれど…」
「そうなの?私は聞かれたよ、色々と住所とか、電話番号とか…あっ、それからお母さんやお父さん、それからお兄ちゃんの名前とか」
アスナも自分と同じく、住所等は聞かれなかったのに対して、直葉は色々と個人情報を聞かれていた。そして、警察が手にしていた大量の紙の束。おそらくあれは…。
「あれは、たぶん…SAO被害者一万人分の個人情報の書かれたデータファイルなんだ」
「え?」
「だから、SAOの被害者である俺とアスナは本名と少しの個人情報だけで済んだけど、スグはそのデータには載っていなかったから念入りに聞かれたんだろう」
「それじゃ…待っててっていうのは…」
「そう言うことだろ…」
その時、警察署の入口から一人の女性が現れた。
その連絡をもらった時、何かの冗談じゃないかと思った。昨晩、茅場昌彦から、和人だけでなく直葉までもSAOに閉じ込められたということを聞いて出張中の夫に連絡を入れてから、一人寝ることもできずに夜を明かした自分の元に、警察から一本の電話をもらった。それによると、現在和人と直葉を警察の方で保護しているということだった。二人はSAOに閉じ込められているはずだと言うと、あっちでもよくわかっていないが、プレイヤーのほとんどがプレイヤーの姿のままで現実の世界に来てしまっているのだと聞かされた。もう、訳の分からない事ばかりであったが、取りあえず警察の方に向かうことにした。が、その時になってようやく外の様子がおかしいことに気が付いた。変なシールドのようなものに空がおおわれていて、地面や建物が変な着色されている。夢を見ているのだろうか。目覚めの悪い悪夢でも見ているのか。なんにしても、警察に向かわなければ、そう思って、彼女は車のキーを差し込んだ。
リーファはその女性を見てハッとなる。何だろう、たった一晩あってないだけなのに、なんだか懐かしく感じてしまう。自分がそれならばきっと隣にいる兄は、もっと感慨深いものがあるのだろう。2年間という言葉にしてもあり得ない数字の年数あのゲームに閉じ込められて、久々の再会なのだから。例え…。
「和人…」
「えっと…こんなこと言うとおかしいかもしれないけれど…ただいま…母さん…」
それが偽りだったとしても。
「キリト君の、お母さん?」
「うん、私たちのお母さん…だよ」
「え?」
気のせいだろうか。リーファはその時、『私たち』と言う言葉を強調していた。アスナはそう感じたのだ。
「和人…よかった、無事で…」
彼女は、キリトの顔を見て、声を聴いて、涙が出そうになった。だからだろうか、言葉少なにではある。しかし、それでも彼女が子供を心配しているのには変わらない。
「無事というか…まだ安心はできないって言ったほうがいいかも…」
「そう…でも、私…本当に、心配で…」
そういえば、少し白髪が増えただろうか、目の下のクマもかなりひどい。よっぽどストレスがかかっていたんだろうとキリトは思った。特に、昨日今日なんて、ひどいものではないだろうか。なぜなら、実の娘までも目が覚めないという状況に陥ってしまったのだから。
「俺のことは後でもいいから、スグにも声かけてくれよ」
「そうね…あの子もつらい思いしたみたいだし…」
この反応だと、警察からあらかじめ色々と聞いていたようだ。ある程度は省いたのかもしれないが、ALOから混線して、SAOに紛れ込んでしまったという話はしているのかもしれない。キリトと直葉の母親である桐ケ谷翠は、周囲を見渡す。そこに、キリトが言った。
「ほら、白い服を着ている女の子の隣にいる羽の生えた子がスグだから」
「ありがとう、和人…」
キリトの母親が直葉の事を認識できなかったのはしょうがない。SAOのプレイヤーと違って、ALOプレイヤーの直葉は、髪色どころか、顔までも変化している。そのため、現実で知り合いであったとしても、おいそれと見分けが付くことはないだろう。ともかくリーファも母のもとにゆっくりと近づいて話しかける。。
「お母さん…心配かけて御免…」
「ううん…それより、大丈夫?」
「うん、お兄ちゃんが一緒にいてくれたから」
「そう…本当に…本当によかった…」
キリトは、そんな二人の姿を見て、取りあえず思った通りではないものの、直葉を母に会わせることができたことに安堵する。それは、兄としての正しい感情であった。
「うれしそうだね、キリト君」
「あぁ…当たり前だろ」
「ふふっ…」
アスナは桐ケ谷家を見て、自分の家族も同じように喜んでくれるだろうかと思った。いや喜ぶに決まっている。家族なのだから、心配していないわけないのだから。その時、一人の警察官がアスナのもとに近づいていた。
「えっと、すみません結城明日菜さんですね」
「え?はいそうですけれど…」
「実は、連絡先に電話させてもらったのですが、どうやら現在関東地方にいないようででして…」
「そうですか…」
それを聞いて、無理もないのかもしれないとアスナは思った。父と兄は「レクト」という会社の重役と社員であるため、出張が多いから今この場所に来ることは難しいだろう。母は大学の教授をしており、平日のこの時間帯に呼び出すということは困難だったのだろう。そういえば、なんだか警察官の言い回しがおかしかったような気がする。
「関東地方にいないってどういうことですか?」
「えぇっと…まぁ、我々も把握できていないのですが…」
そう言うと、警察はタブレットを取り出した。アスナ、それからキリトもそのタブレットに出現した地図に注目する。
「これって?」
「なんだこれ、変な線が引いてありますけれど…」
それは、関東地方の地図のようだが、キリトの言う通り、その地図には見たことのない線が引いてあった。東京を囲み、埼玉県、千葉県、神奈川県の半分ほど、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県も少し範囲に入っているだろうか。若干円形にも見えるそれは一体…。
「実は、現在この東京を含めた関東地方の大部分は、謎のシールドによって閉鎖空間、陸の孤島となってしまっているんですよ」
「…え?」
一瞬、頭の回転が追い付かず、次に耳を疑った。陸の孤島とはどういうことなのだろう。そういえば、先ほど空の様子がおかしかったのだが、あれが謎のシールドと評されている者なのだろうか。いや待て、そういえば建物の色もおかしかったがそれも関係があるのだろうか。だが、彼らにはそれについて 解決する手立ては一切なかった。と、アスナがここで聞く。
「関東地方が陸の孤島になっているって…それじゃ、私の家族が迎えに来れないというのは…」
「はぁ、皆さんいずれも出張だとか、外部講師などに行っておりまして…家はお手伝いさんくらいしかいないそうなのですよ…はい」
「はぁ…そうなんですか…」
とりあえず、子供より仕事を取ったというわけではなかったようで少し安心したような気がした。その後、屋敷のほうから執事が来るという説明を受けたが、家族のいない家に帰ってどうするというのだろうか。ともかく、今後の事を考えると頭が痛くなりそうだ。
「なぁ、アスナ…家に来ないか?」
「え?」
アスナは、その言葉にキョトンとした表情で驚いた。
「家に帰っても誰もいないんだろ?だったら、一日ぐらい俺の家によって行ってもいいだろ?」
「え…それは…うん…」
その提案はアスナとしてはうれしい。うれしいのだが、男性が彼女を家に連れていくというシチュエーションと言うのは、ちょっぴり恥ずかしいものがあった。自分はゲームの中でキリトをホームにしている場所にまで連れて行ったのだが、あれはゲームの中の話で抵抗も何もなかった。キリトはそう言ったものはないのだろうか。ともかく、うれしい提案であることは変わりない。
「それじゃ、ちょっと母さんに話してくる」
「うん、いってらっしゃい」
そしてキリトは翠のもとへと向かって行った。アスナは変容した空を室内から見上げて思う。これから先どうなってしまうのだろうかと。
呼称表とか欲しい、っていうか桐ケ谷家の母親の登場って自分が持っている奴だったらほぼ3巻だけ?…まぁ現実の方にいる人だからしょうがないけれど、口調とかが曖昧な感じです。
士の携帯電話所持についてですが、仮面ライダーディケイド本編で携帯電話を持っている描写が見当たりませんでしたが(そもそも、仮面ライダー全般が劇中で普通の携帯使っている姿ってあったっけ?)、取りあえず持っているということで。