仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 終盤に考えていたある展開が大人の事情で没りました。
 いやぁ、出典の関係で一つ二つはあかんかなと思って見に行ったら3つ(和訳の関係で4つ)全部管理外でしたわ。ちなみに4つ中二つはリリカルなのはシリーズ関係作品の、一つはシリーズとは関係なかったんですけど、(和訳は除いて)某デバイスさんの声優が歌唱してるとのことで使用予定でした。


魔法少女リリカルなのはの世界1-7

「今回ばかりは心配したぞ妹よ」

「でも、怪我がなくて本当によかった」

「ありがとう、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 

 高町なのはの兄である高町恭也、そして高町美由希である。

 二人もまた、なのはが怪物に襲われたと聞いて士郎と同じように病院に駆け付けたのである。本当はなのはの母親である桃子も来たかったのだが、あいにく翠屋がちょうど混雑する時間帯にかぶってしまったために来ることが出来なかった。

 

「それで、襲ってきたのは前になのはが潰した組織の人間だというのは本当か?」

「うん。ミッドチルダでテロを起こそうとしていた人たち……大体の人たちは捕まえたんだけど、何人か逃がして……」

 

 ミッドチルダとは、時空管理局の本局が置かれている時空。つまり、管理局に所属しているなのはにとっては今の仕事場のある世界である。

 なのはが入院するまではこの世界と行ったり来たりの生活を送っていた。いや、半ばミッドチルダに移住していたと言ってもおかしくはないのかもしれない。たまに帰るときも、学校に通う時くらいで、学校が終わればすぐにミッドチルダにとんぼ返りするという生活、ひどいときは一週間くらいミッドチルダにいた事もあった。時空管理局での仕事のために。

 その間の学校の授業は、同じく小学校に通うフェイトと一緒に自主休校。授業であったことなどはアリサやすずかにノートに取ってもらって見せてもらっているために何とかついていけているが、しかし魔法のことを何も知らない学校側からは不良生徒のように見られている。

 話を戻そう。門矢士がドーパントを倒した直後、彼女は自分を襲ってきた怪物の変身者の姿をみた。そしてソレは、間違いなく自分がとある任務でつぶしたテロ集団のメンバーの一人だった。任務の後で取り逃した組織のメンバーの写真をよく見ていたので、見間違いというわけはないだろう。

 

「でも、まさか管理外世界の地球にまで来るだなんて……」

 

 そう、あの時取り逃した人間がこのような仕返しをしてくるなど、もちろん想像していなかったわけではない。しかし、まさか魔法と一切関係のないこの地球にまでくるなんて思ってもみなかったのだ。

 この世界、第九十七管理外世界である地球は、管理世界と違い簡単に次元を行き来することが出来ない。その為、この世界に来れるように手引きした人間がいるという事なのだ。

 もしかしたら、今後も自分のことを狙って刺客が押し寄せるかもしれない。そして、自分が襲われるという事になれば姉や兄、大事な人たちの命にまで危険が及ぶ可能性がある。それだけは嫌だ。

 

「ねぇなのは。私がボディーガードしてあげようか」

「え?」

「おい、美由希何を……」

「なのはの命を狙っているのが、その人だけとは限らないんでしょ。だったら、私も病院に泊まり込んで、なのはの事守るよ」

 

 と、姉の美由希は言う。

 美由希は、父から剣の技を教えられ、現在は兄の指導の下『趣味』の範囲で剣術の心得があった。だから、もしなのはに危険が迫っているというのならば、自分がなのはを守る。そう伝える。

 だが、なのはは首を横に振っていった。

 

「ダメだよ。もし、相手が魔法を使えるんなら……魔法を使えないお姉ちゃんじゃ手も足も出ないもの……」

 

 そう。美由希は魔法を使えない。美由希だけじゃない。恭也も、桃子もそして士郎も。高町家は、なのは以外に魔法の適性はなかったのだ。

 それに、美由希が剣術を使えると言ってもあくまで変質者であったり強盗だったりの地球の一般人に対しての護身のための物。魔導師やその道のプロに対しては全くと言っていいほどに歯が立たないのだ。

 美由希は、時空管理局に所属しているシグナムという女性とよく手合わせをしてした。もちろん魔法なしで。その場合でもシグナムとようやく互角に渡り合うことが出来るという程度なのだ。もしも、本気の魔導師が相手になればどうなることか、美由希にも容易に想像することが出来ていた。しかし、それでも譲れない者がある。

 

「でも……」

 

 なのはは、大事な、たった一人の妹だ。妹を守りたい。そのために戦いたい。そんな願いですらもかなえてもらえないのだろうか。そんな、微かな望みすらも打ち消されてしまうのだろうか。

 それに、もしかしたらこれは自分の……。

 その時だ。

 

「なのは! 来たわよ!」

「なのはちゃん!」

「アリサちゃん、すずかちゃん。ようこそ」

 

 病室に現れたのはアリサとすずか。そしてその後ろにはフェイトやなのはの命を救った人たち、つまり麻帆良ガールズwith夏海の姿もあった。

 リムジンでこの病院にたどり着いた後、病室の外にいたフェイトから事のあらましを聞いた後でこの病室にたどり着いたのだ。

 この個室が広いとはいえ、あまり同じ部屋に大人数がいる状況はよくない。そう考えた恭也と美由希の二人はいったん病室の外に出ることになった。

 また後で、そう言って個室から出てくる一組の男女。しかし、その顔は暗い物があった。

 

「悔しいね、恭ちゃん……」

「……」

 

 恭也は何も言わない。多分二人とも同じ考えだから。同じ考えを持つ者同士でしゃべってもしょうがないだろうから。

 

「私にも、魔力があったら……なのはを助けられるのに……こんなことなら、もっとまじめに恭ちゃんから『御神流(みかみりゅう)』を教わってもらえばよかったかな……」

「いや、俺も……真剣に御神流に向き合っていれば……」

 

 二人の言う御神流とは、正式名称を≪永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術≫という名称の古武術だ。これが、彼女が恭也に習っているという護身のための武術の名称だ。しかし、その本来の実態は護身術という可愛い物ではない。暗殺術だ。

 代々から、恭也の実家、そして美由希の実家は暗殺術を受け継いできた。そして恭也はその御神流を父親の士郎から受け継いでいる。

 いや、受け継ぎ始めていたと言ってもいい。しかし、士郎が仕事中の大怪我によってその継承が中途半端なままで終わってしまい、さらには恭也自身も父の入院中家を、そして翠屋を経済的に守るために必死で御神流を極める時間を持つことが出来なかった。

 そして、そのまま時が経過し、結果的に美由希に教えられる御神流のソレが、完全にとまではいかないが護身術程度に剣を扱う程度のものとなってしまった。

 

「ねぇ、恭ちゃん……気が付いてた?」

「何がだ?」

「あの頃、なのはが寂しそうにしていたの……」

「……」

 

 あの頃、それはまさしく士郎が入院して翠屋を守るために家族みんなが奔走していたころの事だ。

 美由希自身、気が付いていたのだ。なのはが寂しそうにしているということを。彼女が、他人に対して心配をかけないように作り笑いをしているという事を。家族に対して悩みを打ち明けることも、寂しさを打ち明けることなく、ただただ家の中でじっと、時が経つのを待っていたことを。

 

「私も、忙しい中でなのはにかまってあげる時間を作ろうとした。でも……」

 

 足りなかった。いや、そもそも家庭の中で独りぼっちになってしまう状況という物がおかしかったのだ。

 自分たちは、そんなおかしな状況を作り出し、人格形成に影響を与える大事な時期のなのはに対して中途半端にしか接することが出来なかった。

 挙句果てに、なのはのそんな状況に対して、《かまってあげる時間》なんてものを作り出してしまった自分を恥じるようになったのは、美由希が高校生になってからの事。

 確かに忙しかったのは間違いないし、なのはと遊ぶ時間なんてそんなになかったのは事実だ。でも、自分は姉として本当に何もできなかったのか。もっと、なのはのためにできることがたくさんあったはずなのに、それなのに何もしなかっただけじゃないのか。

 気が付いてから、彼女はずっと自問自答していた。そして、今回のこの大怪我である。

 

「ねぇ、恭ちゃん……なのはが無茶してるのって……」

「そこまでだ……」

「え?」

「もし、なのはがあぁなった原因が誰かにあるとするのなら、それは……」

 

 気が付いてすらやれていなかった自分だ。全部、自分の罪だ。

 恭也は、ただそれだけ言うと一人その場から立ち去る。美由希は、その後姿をただ見ているだけしかできなかった。その、あまりにも寂しい後姿を。

 

 海鳴という街は、よく言えば普通の、悪く言えばなんにも特産物のない平凡な街だ。

 しかし、海に面した自然に溢れた街というイメージからか、この街に移住してくる人は後を経たない。いわば、自然自体が特産物であるかのように。

 だが、自然あふれる場所であるのならば、他にもたくさん。この街以外にも多くの街が存在する。おそらく、この街には住んでいる人間にもわからない何かの魅力、あるいは別の何かがあるのだろう。

 人々を惹きつけて離さない。そんな力が。そして、事件を呼び寄せる、恐ろしき力が。

 士、そしてユウスケの2人はそんな街の中でバイクを走らせてある場所に向かっていた。

 一通り士郎と話、なのはの元に向かうと言うので一旦別れた2人は、その後しばらく屋上でたあいのない話をしていた。その時だ。かすかになにかの光を海鳴の街に見たのは。

 電気が発行したのか、それともなにかが爆発したのか。よくわからなかったがしかし何かが起こったのは間違いなかった。2人は、とにかく原因を探るために自分たちのバイクに跨りその光が見えた場所に向かっていたのだ。

 そして数分後、2人はようやく目的の場所に辿り着いた。

 

「ここだよな、さっきの光が見えたのって……」

「……」

「士?」

「妙だとは思わないか?」

「え?」

「何故人が誰もいない」

「あっ、そういえば!」

 

 2人が辿り着いた場所。そこはとても静かなビル街のど真ん中だ。行き交う人も誰も居らず、先程までの人々の話し声や喧騒も無くなっていた。

 そう、静かなのが問題だ。いくらこの日が休日であったとしても、全員が全員仕事が休みというわけではないし、仕事をしていなかったとしても買い物客や休みの日の外出などで人がごった返していてもおかしくはないはず。ビル街であるのならば、特にだ。

 それなのに、どうして人っ子1人としていない。何故誰の声も聞こえてこない。まるでこの街が突然ゴーストタウンにでもなってしまったかのように人の気配が一切しなくなってしまった。

 

「何があった、この街に……」

「士、こんな時にカメラなんか……」

 

 だが、士にとって幸運なのは、こんな昼間から人が誰もいないビル街というレアな状況に陥ったこと。これは、被写体としてはちょうど良いのではないか。なんとも、状況と場合に不釣り合いなことに、士は1人その様子をカメラに収め始めていた。

 

「それは、僕が結界を張ったからです」

「ん?」

 

 背後から声が聞こえた。それは、この異常な空間に入り込んでから初めて聞くユウスケ以外の他人の声。あまりにも静かな中に聞いた声であるからかやや響くかのように聞こえてきた。

 士は背後から聞こえてくる声に向け、反射的に顔を向ける。すると、そこにはブロンズヘアーをした1人の少年の姿があった。おそらく、なのはやフェイトと同じくらいの年齢であろう。だが、服は少しこの日本には不釣り合いな衣装。遊牧民の服と形容してもいい格好をしていた。

 

「お前は?」

「初めまして、僕はユーノ・スクライアといいます。なのはの……友達です」

「なのはちゃんの?」

「はい……」

 

 まぁそうだろうなと、士は思っていた。こんな《結界》なんていう代物を作り出せる存在がただの人間であるわけがない。士は、そんなことも考えていなかったであろうユウスケを尻目に一枚、ユーノの写真を撮った。

 ユーノ・スクライア。この世界における最初の大事件であるジュエル・シードをとある遺跡で発掘し、事故によりこの地球に落下した21個のソレを責任感から全てを回収しようとした少年。そして、なのはを魔法を与え、魔法少女とした人間。今はその卓越した知識量、そして情報処理能力を元に、時空管理局ないにある管理世界の全ての情報が保管されているという無限書庫での仕事に就いている。

 

「なのはを助けてくれて、ありがとうございます。僕からも礼を言わせてください……」

「あ、いや……」

「お前、それを言うためにわざわざこんな結界なんてものをつくったのか?」

 

 結界、正式には結界魔法、封時結界とも言うらしいが、それは通常空間から特定の空間を切り取ってしまう魔法である。この魔法を使うことによって街中でも、魔法の事をしらない一般人が事件を目撃したり、事件の被害にあわないようにしているのだという。そのため、魔導師の中でもポピュラーな魔法であると言えるのかもしれない。士やユウスケが目撃した光は、彼がこの結界を作った時の作った時の魔力の光であったのだ。

 本来この結界には魔力のあるものしか入ることができない。しかし、今回の場合はユーノが士とユウスケの2人を結界内部にいれれるように許可を与えたことによって入ることができたのだ。

 だが、そんな大層な物をわざわざ自分たちと話をするためだけに作ったと言うのか。士の言葉に、ユーノはゆっくりと首を振ると言った。

 

「僕たちがこの街に来たのは、なのはを守るためです」

「なのはちゃんを?」

「はい」

 

 なのはを守るために、一般人から目を盗む結界を作り出した。と、言う事はいるのか、今この街に敵が。ならば、こんなところでのんびりと話をしていては仕方がないのではないか。そう士は思った。

 

「実は……」

「ユーノくん」

「あ、はやて……」

 

 その場に、新たな登場人物が現れる。車椅子に乗ったこれまたなのはと同じくらいの歳の女の子だ。

 

「敵はだいたい倒したで、もうちょっとしたら結界を解いてもええよ」

「わかった」

 

 はやて、と呼ばれた少女はいくつかの情報をユーノに話した後、士の元に向かうと言った。

 

「初めまして。私は八神はやて。なのはちゃんの友達や」

「はやて……ってたしか闇の書事件って奴の……」

「そう言うことや。なのはちゃんと同じく、私も魔導師やらしてもらてます」

 

 八神はやては,先程のフェイトの話の中にも出てきた人物だ。確か、なのはが遭遇した第二の事件である《闇の書事件》。その闇の書、正式には夜天の書というらしいその本の持ち主であり、やはりこちらも時空管理局に所属している。本、とは言うもののその実態はなのはが持っていたレイジングハートと同じくデバイス。つまり、魔法の杖と同じものらしい。

 闇の書事件。それは、主であるはやてのために闇の書の守護騎士と呼ばれるプログラム4人が多くの世界の動物や人間を次々と襲った事件の名前。たとえ、それがはやてを悲しませるかもしれない行為であると知っていても、それをはやてが望んでいないと知っていたとしても、そうするしか方法を見つけられなかった悲しい事件。そして、はやての友となるべき者を失わせてしまったというなのはの後悔の一つとなった哀しい事件でもある。

 ちなみに、八神はやては車椅子を使用しているのだが、これは闇の書と彼女の発展途上であったリンカーコアとの結びつきの関係で彼女の身体を侵食していたために発生した麻痺によるもの。そのため事件が解決した今その身体の麻痺はほとんど取り除かれようとしているのだが、長年足を使用していこなかったことで筋力が低下しており現在はリハビリ中。車椅子を使用しているのも念のためであり、近々車椅子生活から完全脱却できるかもしれないという段階に向かっているのだとか。

 

「で、その闇の書の主がどうしてここに?」

「……実は今、この第九十七管理外世界の裏社会に《ある物》が出回っとるんや」

 

 聞けば、はやては時空管理局のなかでも捜査官。つまり、探偵のようなものをしているらしく、今回はその任務の最中に自分の守護騎士であり家族でもあるヴォルケンリッターの4人と一緒にこの世界に来たのだとか。そして、その4人が一通りの敵を倒し終えたので、はやてが一人友達を助けてくれた二人に会いに来たという事らしい。

 

「ある物、だと?」

「そう……これや」

「ッ! それって!」

 

 八神はやてが懐から取り出したもの。それは、2人にも見覚えのあるもの。いや、見覚えがあるどころか、自分たちは先程そのアイテムを使用して変身した者と戦ったばかりだ。

 

「せや、ガイアメモリ……魔法は使われてへんけど、物によってはロストロギア級の代物や」

 

 ガイアメモリ。人間をドーパントという怪物の姿に変化させるアイテムで、その依存性が高い性質から麻薬とも言われてしまうアイテム。それが、この世界に蔓延しようとしていた。

 だが、一体誰がそのような危険な代物をこの世界に持ってきたというのか。そして、ガイアメモリでいったい何をしようとしているのか。

 謎が謎を呼び、さらに謎が深まっていく中、事件はさらに混迷をきわめる事態に陥っていく。




 私の認識だと、魔法少女リリカルなのははA'sからStrikerS迄の間に10年の間があってその間に何があったのかは断片的にしか明かされてないはず。
 だから、役職とか所属とかあとはやての車椅子とか、設定がちゃんとしたものが見つからない……。
 そのため、分からない部分はたぶんこんな感じかな、という想像でやらせてもらってます。

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