仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 さぁ、今回の世界死人が多いぞ。しょっぱなから主要人物の死が出てきます。果たして、一体誰の死が描かれるのか?


魔法少女リリカルなのはの世界前編
魔法少女リリカルなのはの世界1-1


―これまでの仮面ライダーディケイドエクストラは―

「私は、いったいどうしたらいいのでしょう?」「何故黙っていた、答えろ!!」「君は人間織斑一夏君にもらった、人間の心を持っているんじゃないか?」「誰かの笑顔を奪おうとすることは、絶対に許さない!」「あなたは怖かっただけ! 自分の生きる道すべてを奪われることが!」「誰かを守りたい人間には、必ず自分以外の誰かが必要になる」「「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」

 

《Master, are you okay?(マスター、大丈夫ですか?)》

「うん、まだ……大丈夫……」

 

 それはある誘拐事件から端を発したものだった。4日前、2人の小学生が誘拐された。一人はアリサ・バニングス、もう一人は月村すずか。

 

「なのは!!」

「なのはちゃん!!」

「アリサちゃん…すずかちゃん…」

 

 魔導師『高町なのは』は二人を助けるためにある研究所に乗り込んだ。なぜ研究所の者が彼女たちを誘拐したのかは分からない。ただ一つだけ言っておくと高町なのはは何とか友を取り戻すことに成功した。小学校のころからの友、いや親友と言っても間違いではない。しかしその当の本人が血だらけである。

 

「あんた大丈夫なのその傷!?」

「……ごめん……無理っぽい……かな?」

「そんな……いや! なのはちゃん!!」

 

 運が悪かった。少し前にある事件で大けがを負って、まだ完全に魔力を取り戻していない体で乗り込みに行ったのだ。そして今、魔力を貯水している臓器リンカーコアが負担をうけきれなくなり、いわゆる亀裂が入っている状態だ。さらに研究所の職員がもはや後戻りできないと思ったのか、研究所中に火を放ったのだ。最初はライターの方が大きいと思うぐらいの火種が今こうしている間にもそん所そこらで誘爆が発生し、大火災になっていた。

 

「それよりも……こんなところにいると……危ないよ……」

「何言ってんのよ! あんたを置いて行けるわけないでしょ!」

「そうだよなのはちゃん!!」

 

 そういうと彼女たちはなのはに肩を貸し、その場から脱出しようとする。デバイス『レイジングハート』が話しかけてくる。

 

《Master,received contact from FATE.(マスター、フェイトから通信が入っております)》

 

 フェイトとは彼女たちの親友の一人の名前である。二人が誘拐されたと聞き、彼女も含めて多くの人間がその研究所の場所を特定した。高町なのははその自分が調査していた場所と近かったために一番に着いたのだ。しかしそれが今になって間違いだと気付いたとしても後の祭りであろう。

 

「……つないで……」

『なのは!? いまどこにいるの!? 建物の中にいるな……………きて………出口が…れて……崩れる…』

《Communication was lost.(通信が途絶しました)》

「何今の!? どういうこと?」

 

《Maybe……I wonder if the road leading to the exit has collapsed.(恐らく……出口に通じる道が崩れたのかと)》

「そんな……うそでしょ!?」

 

 外に出ることができない。それが何を表すのか、彼女たちには容易に想像できた。ならば、魔法で瓦礫を破壊すればいい?否、研究所内部は火災によってもろくなっており、少しの衝撃でも崩れてしまうかもしれない状況だ。だが、方法は一つだけある。天井だ。天井を攻撃すれば、崩れても彼女たちに被害が及ぶこともないはずだ。しかし、その場合、外にいる人間が彼女たちの場所を把握しておかなければならない。先ほどの通信では場所までは報告することができなかった。ならば中から?否、中から魔法を使えるもの、それは一人だけであった。

 

「……」

 

その時、なのはが二人の肩から手を放し、レイジングハートを構えた。

 

「なのは、何するつもり!?」

「ディバインバスターで道を開くから、二人はそこから脱出して……」

「バカ、そんなことしたら!?」

 

 今、彼女の体は魔力の放出に耐えられないそんなことは誰が見ても明らかであった。だが彼女は止まらない。

 

「それでも……私は……」

 

 二人に死んで欲しくない。彼女が動くのは唯それだけのためだった。

 

「いくよ……全、力……全……開ッ!」

 

 そして魔力が込められ初めた彼女に一つの影が迫った。

 

「!!」

 

 すずかである。彼女はその手にどこからか持って来た刃物状のものでなのはの腹部を突き刺したのである。

 

「す…すずか……ちゃん…」

 

 なのははその場に仰向けに倒れる。もう魔法を使う事は不可能であった。

 

「すずか……あんた……」

「ごめんね……私は、大好きな友達を犠牲にしてでもイキタイと思わない……」

 

 友達が自分のために命を懸けてくれえることは確かにうれしい。だが本当に死んでしまうのは嫌だ。ただその一心で相反する行動をとってしまっただけ。たとえ、それが自分の死を決定づけることになっても。

 

「すずかちゃ……ん……」

「……私もよ……なのは……」

「アリサちゃん……」

 

 アリサもまたすずかに同意をする。

 

「死ぬときは……私たちも一緒よ……」

 

 彼女はいや彼女たちはすでに覚悟を決めていた。もう出ることができないのなら、それならばせめて……。

 

「…うん……ごめん……ね……………」

《Confirmed the death of the master(マスターの死を確認しました)》

 

 そうレイジングハートは伝える。無機質な声、だがそこにもし感情があったとするなら、それは哀しみであったであろう。

 

「最期くらいありがとうって言いなさいよ……バカッ……」

 

 唯、一言つぶやくと彼女はなのはの右隣に仰向けになり、その手を握る。そしてすずかもまた左側で同じく彼女の手を握った。

 

「なのは……」

「なのはちゃん……」

 

 なのはが時空管理局という物に入った時かされた時、若干はこうなるだろうと考えたことがあった。だが、まさか自分たちの最期がこうなるなど、思っていなかった。数年前、高町なのはが魔法に出会って、危険なことをしていると知った時には心底怒ったものだ。もし死んだらどうするのか、なぜ自分たちに教えてもらえなかったのか、と。もし自分たちの知らないところで死んで、そして死因すらも教えてもらうことができないなんて考えただけで悲しすぎる。親友のはずなのに、それなのに、まるでなのはが遠くにいってしまったかのように、自分たちが置いて行かれたかのように感じられた。その時はいつも通り仲直りし、なのはは時空管理局という組織に入り、自分たちはそのサポートをするという事になった。それは、中学生になっても変わらないはずだった。だが、やはり彼女は離れて行ってしまうのだろう。それは、心理的な面ではなく、今度は物理的距離がだ。学業ではなく、仕事を優先することは彼女の性格からすると容易に想像できることであった。しかし、なかなか学校に来ない彼女、いつもいつも開いているその席を見ているとなんだかこみあげてくるものがあった。あなたの青春はそれでいいの?たった一度の人生を棒に振るの?あなたにはあなたの人生があるのに、それを名前も知らない誰かのために使っていいの?考えずにいられなかった。そんな時、なのはが大けがを負ってしまった。その時も、なのはが入院している病院によく通ったけど、何もできない。結局のところ、彼女の精神的支えは家族であり、共に戦う仲間たちであり、自分たちは唯の親友に過ぎなかったのだ。無力感にさいなまれながらすずかと一緒に帰っていた時、二人は誘拐され、そしてこの様である。けど、うれしかった。なのはが助けにしてくれたことが、そして同時になのはに来てほしくないと思っていた自分に気が付いた。また自分をおろそかにして、誰かのために命を懸けている。本当にそれでよかったのだろうか。誰かのため、誰かのため、誰かのため、そして……終いにはこれである。彼女の人生は何だったのだろう。こんな運命残酷である。せめて、一緒にもっと女の子らしいことをしたかった。夏には海に行って、花火をして、冬には雪合戦したり、凧揚げ…はちょっと古いかな。カラオケ行ったり、買い食いしたり、他にも……いろいろ……いろいろ……。

 

「アリサちゃん……」

「何?」

「ごめんね、私のせいで……もし私がなのはちゃんを刺さなかったら……アリサちゃんは……生きれたかもしれないのに……」

「何言ってんのよ……いいわよそんなこと……」

 

 アリサが深く考え事をしていると、すずかが小さな声で語りかけて来た。今回のことはすべて自分の出自のせいだ。誘拐されたことも、このまま死にゆく運命となったことも。

 

「私……二人に隠していたことがあるの」

「え?」

 

 それはもう、秘密である理由がなくなってしまった秘密。

 

「私、吸血鬼なの」

「吸血鬼?」

「うん、正確に言うと夜の一族っていうね……だからたぶん私が誘拐された理由も……」

「……そっか……」

「ごめんね……誰かに知られると……皆から離れないといけない……だから……」

「馬鹿……いいわよそんなの……あんたも辛かったんだよね」

「うん……」

 

 例え、すずかがそんな宿命を背負っていても関係ない。彼女はアリサのそしてなのはの友達である。

 

「アリサちゃん……」

「何?」

「生まれ変わってもまた……友達になってね」

「……」

 

 その言葉をきいたアリサはなのはの手を握っていない方の手を逆側にいるすずかのほうにめいいっぱいのばす。そしてすずかもまた同じようにし、彼女たちの手はすべて繋がれた。それは彼女たちの友情の証であった。次、という物が本当にあるかどうかわからないが、もしも本当にあるとしたら、もし次の世界でなのはとすずかと友達に、親友になることができたなら。多分次はなのはも魔法という不思議な事件に合わずに、仕事に追われずに、自分の人生を大切にしてもらいたい。すずかも、普通の人間に生まれて、何物にも縛られずに、今時の女の子のようなことをできればいっしょにしたい。今回のように一生の友達でいたい。

 

「……当たり前でしょ……ばか……」

「うん……」

 

 すずかの目には涙が溜まっていた。それはおそらくうれし涙であっただろう。彼女達の中に死ぬことの恐怖は一切なかった。

 

《Requiescat in pace Suzuka,Arisa and Nanoha……》

 

 映像はそこで途切れた。それを見ていたフェイトはその瞬間泣き崩れ、はやてもまた部屋から出ていった。これはレイジングハートが最期に残した記録を何とか復元したものであった。フェイトたちが何とか研究所の中に入った時にはすでに3人は息絶えていた。死因は一酸化中毒、体が火事で焼けていなかったのは、最後の幸運といえるであろうか。パニック状態になったフェイトはしかし彼女達の遺体と共に外に出ようとした。その時、彼女は見た。アリサ、すずかそしてなのはがお互いの手を固く握りしめていることに。それはまるで生まれ変わっても自分たちは親友であると主張しているかのように。

 

 『友情』それは素晴らしくもあり、みっともない物であり、生きていくのに邪魔なものだ。それは時には絶大なるものになるであろう。しかし時にはとんでもない過ちを引き起こすものとなる。彼女たちの終わりは果たしてどちらだったのだろうか。

 

安らかにお眠りくださいすずか、アリサ、そしてなのは……

 

ー世界の破壊者ディケイド、いくつもの世界を巡りその瞳は何を見るー




 実はこの話、5年前に趣味で書いていただけで投稿しなかった【バッドエンド・ガールズ・リターン】という小説の第一話からほとんど原文ママで(…を……にしたり段落の最初に空白を入れたりしただけ)抜粋したものです。こちらも、これまでの菜那和玖実作品の例にもれず多重クロスオーバー作品の逆行物で、ネギま、なのは、まどか、プリキュアといういつもの菜那和玖実二次創作陣営総出演の話でした。
 魔力のない二人にレイジングハートの念話は届かないのではと五年経ってから思いましたが、そこはこの話オンリーの設定の剥離にしておきます。

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