因みに私自身としてはたった一言の言葉で言い表すことができると思います。
感想欄にてドシドシと私、もしくは私の小説のイメージをお待ちしています。
因みに私が思う私の小説の特徴は『残酷』。
一体彼がどこからやってきたのか、そもそも元から日本にいたのか、海を渡ってきたのか、日本政府は全くつかむことが出来なかった。レーダーにも映らず、目撃情報も全くない。そのISは、まるでステルス機のようにすべての電子機器の目をすり抜け、ディエンドの襲撃のために厳重警戒態勢であるIS学園のスタジアムにまでたどり着いたのだ。
そしてISは、スタジアムの上空からしばらく二人の仮面ライダーと、本来自分と共にIS学園に通うはずだった二人の様子を見ていた。
強い。仮面ライダーだけじゃない、鈴音も簪も仮面ライダーという異世界の存在を相手にして戦えている。だが、その強さは一体どこからきているのだろか。仲間からか、それとも自分で気が付いたのか。けど、これほどの強さを持っていたとしても少しの過ちでああなってしまうのだと知っている自分は、その二人の顔を直視することはできず涙が溢れ出る。
試合が終わるまでそこにいようかとも思った。けど、自分の目的からすると、彼女たちが強くなって何か不都合なことはない。むしろ好都合だ。ならば、デモンストレーションを行うのも悪くはないだろ。
彼は、一度深呼吸すると、上空から急転直下地面に向かう。そう、せめて地上の誰かが自分のことに気が付く距離まで。そして、その場所に付いた。都合のいいことに、仮面ライダークウガが上空を見上げている。これで、仮に自分が行動を起こせばすぐに気が付くことだろう。
そして、ついに始まった。IS、インフィニットストラトスの物語、その破壊の時が。
「あっ……り、鈴音ちゃん逃げるんだ!!」
「え? ……ッ!」
最初は、ユウスケの言う言葉の意味が解らなかった。逃げるとは、いったい何からだ。なにかのブラフ、自分が気を取られている間に攻撃するつもりなのか。いや違う。あの必死な声は、そんな姑息な真似をするときの声じゃない。それじゃ、本当に自分に何か危険が迫っているのか。けど、一体何が。
その時、鈴音は背後に聞いた。風切り音と共に何かが迫ってくる音を。
「クッ!!」
鈴音は振り向きざまにそれを直視した。なんだこの円形の物体は。だが、ソレはすぐそばまで自分に迫っており、このままだと自分に直撃することは確実。なんであろうと直撃してしまえば危険だと本能が察した。
鈴音は、その自らの野生の勘を頼りにしてそれを避ける。すると、円形の物体はブーメランのような軌道を描きながら上空へと戻っていく。鈴音は、帰っていく際の物体にも当たらないように注意しながら上空を見上げた。
なんだ、何かがいる。それは、観客席にいる者たちにも、そしてモニタールームにいる者たちにもはっきりと分かった。
『え? あれって?』
「海東……いや、違う」
士は、すぐに海東による再度の襲撃の可能性を考えた。しかしすぐに自らの考えを否定する。
仮面ライダーディエンドは、ディケイドと同じく常に空中に跳ぶことのできるライダーではなく、地上戦特化のライダーだ。あのように飛ぶということはあり得ない。それに、フォルムも違う。
今上空に見えるソレは、逆光で色合いまでは分からないが、機械的なシルエットでゴツゴツとしており、ディエンドのシルエットとは全くと言っていいほどに違っていた。
「ISか……山田先生。観客席の生徒に避難指示を」
「は、はい!」
千冬は冷静に目の前にいた山田にそういうと、続いて通信機のマイクを取ると現在試合中の二人に言う。
「凰、更識聞こえるか?」
『『はい!』』
「試合を中断しピットに戻れ、今門矢君をそっちに向かわせる!」
『ッ! だめです!』
「なに?」
ダメ、とはどういうことなのか。冷静に周りを見ていたであろう千冬はしかし、実は内心で焦り気が気ではなかった。別のクラスの人間とは言え、彼女にとって学園で自分の教えを乞う教え子であることは変わりない。そんな二人に何かあってはならない。彼女が冷静に見えたのは、ただその焦りを外に出していなかっただけなのだ。
千冬は、その言葉を聞き、目の前のモニターをもう一度見る。すると、そこには所属不明のISが鈴音と簪を襲っている様子が映っていた。
「こいつッ! 私たちが狙いってわけ!?」
「ッ!」
黒いISは、先ほど戻ってきた鎌型の武器を手にし、鈴音に斬りかかった。
鈴音は、二振りの双天牙月を組み合わせて対処、だが押されている状況だ。パワーには自信がある甲龍が押し負ける。しかも、敵の武器の鎌は、それほど太いということもなくむしろ細い部類に入る。そんな物で自分が押されているなんて、信じられない。このまま組み合っていてはマズイ。何とかしなければ。そう考える鈴音を救ったのは、簪の春雷だった。
「ッ!」
春雷の光弾が迫る中、黒いISはモニターに映る危険を知らせる警告を見ると、鈴音を蹴飛ばして後ろに引く。
「ッ! はぁぁぁ!!」
第一射を外してしまった簪はしかし、黒いISに狙いをつけ休むことなく連射を始める。
だが、黒いISは急加速して避け続け、春雷から放たれる弾は地面に当たることはあれども黒いISに当たることは無かった。
しかしなんて機動力をしているのか。自分が、そしてISのセンサーが追うのでやっとだ。先ほど見せたパワーといい、既存のISでは出すことのできないほどの力を持っていることは確か。恐らく、箒の使っている紅椿と同じかそれ以上の力を持っていると推測される。ならばここで一つ問題が発生する。
誰がこれほどのISを作ったのか、だ。知っての通り、箒の紅椿は第4世代のIS。世界がまだ第3世代の開発で四苦八苦している中で姉の束直々に開発された高性能機体だ。その第4世代のISをそう簡単に作れたりするものか。
百歩譲ってどこかの企業が開発に成功したとしても、他企業の一歩先を行くことが出来たという事実を今の今まで公表しない理由が存在しない。
では、なんなのだこのISは。フルスキンのメットをかぶっているためにその顔が見えないが、人が操縦しているようなのでどうやら無人機ではないことは確か。いったい何者なのだ。
簪が底知れない不安を感じる中、それと同時に鈴音はなぜか親しい人間に久しぶりにあった感覚に陥る。自分はこの人間を知っているというのだろうか。一体どこで、いつ、出会ったというのか。
何故、こんなにも悲しいのか。
「鈴、簪……クッ!」
モニタールームにいる一夏は、苦戦する二人の姿をみて部屋を飛び出そうとしていた。そんな一夏を千冬は呼び止める。
「まて、織斑! どこに行く!」
「決まってんだろ! 二人を助けに行くんだよ!」
「無茶を言うな。白式はメンテナンス中で動けない」
「けど……このままここでじっとなんてしてられねぇよ!」
「……」
一夏の思いも分かる。だが、彼のISがメンテナンス中で動かすことが出来ないのは事実だ。
それに加えて、千冬は底知れぬ不安に襲われていた。このまま、彼を行かせるということ、本当にそれが正解なのかと。もしも、ここで彼を呼び止めなければ、自分は二度と彼の顔を見ることができない。そんな風に思うのだ。
だから千冬は願う。このまま、彼が戦場に向かうことなく状況が終了するようにと。このまま、何事もなくいつもの日常が続いてもらいたいのだと。だが、無情にもそんな彼女の願いは打ち砕かれてしまう。
「あ、あの織斑先生」
「……」
声をかけたのは山田である。山田は千冬のことを呼ぶと言った。
「先ほど、織斑君の白式だけはメンテナンスが終わったと連絡が」
「! 本当ですか、山田先生! 俺、直にとってきます!」
「待て! ……くっ」
一夏は、ただそれだけを言うと千冬が止めるのも聞かずに部屋から出て行ってしまった。
「おい、心配なのはわかるがちょっと過保護すぎはしないか?」
「……」
「……まぁ、俺も行くから心配するな」
といって、士もまた部屋から出ていく。千冬は振り返り、モニターに映るISを凝視する。この嫌な予感。自分の思い凄しであればよいのだが……。
「あなたは、何者ですか!」
「……」
簪は問うた。しかしISは答えない。代わりにそのISの背後から飛んできたのは手裏剣であった。
「しゅ、手裏剣? いえ、ミサイル!」
簪は、そのフォルムに一度面を喰らうが、そこから出ている熱源反応はその物体が手裏剣に擬態したミサイルであることを表していた。
簪は、避けても追いかけてくるソレから逃れようとブーストを加速させる。しかし、それまでの試合で疲弊した打鉄弐式では、ミサイルを振り切ることには無理があった。一つ、また一つと自分のすぐそばで爆発するミサイル。
そして、一つのミサイルが簪に追いつこうとしたその時だった。
「はぁッ!!」
地上から跳んできた青の戦士。仮面ライダークウガである。クウガは、ドラゴンロッドによって彼女に迫っていたミサイル一つを叩き落した。
それだけではない。さらに残ったミサイルを仮面ライダーキバーラが次々と斬り落とし、最後の一つは彼女に追いついた鈴音が叩き落とし、
跳びあがったクウガをその肩に乗せる。
「簪さん、大丈夫? けがはない?」
「は、はい……」
「よかった……」
「あなたは、何者ですか? どうして、いきなりこんなことを!」
キバーラは、簪と同じくISに向けてそう叫ぶ。だが、ISは何もしゃべることはない。ただただ空中に浮かんでいるだけ。
沈黙の時間が続く中、クウガはそのISのフォルムを観察する。色あいは全体的に黒いボディと赤いラインで構成されており、肩の砲は鈴音の甲音の龍咆よりもやや小さく、背中のブースターは四つ、いやもしかしたら内二つは簪の春雷のように移動して砲になる可能性もある。手持ちの武器は鎌型、黒い鉄の棒に紅いビーム状の刃が上下についている。まるで悪魔だ。そう、クウガは表現した。
「一体、なにが目的なんだ……」
≪目的……か≫
「しゃべった!?」
ボイスチェンジャーを使っているのか。声色の区別がつかない。だが、わざわざ声を変えているということは自分たちの知っている人物ということなのか。あるいは、後から声紋照合をされることを恐れているのかのどちらかだが。
≪しいて言うなら、俺は、お前たちと戦いに来た。このISを操縦するのは今日が初めてだ。慣らし運転に付き合ってもらうぜ≫
「俺?」
「今、俺って……言いましたよね」
「ってことは……あんた、男……?」
たった一言だった。しかし、その一言があまりにも衝撃的だった。
何度も言っている通り、ISの適性を持っているのは9割9分女で、男の操縦者は織斑一夏ただ一人だった。だが、今目前にいるISの操縦者もまた俺という一人称から察するに男。世界で二番目の男性のIS操縦者を相手にしていたのか、自分たちは。
≪だったらなんだ?≫
「いや……相手が男性でも女性でも、二人の事を襲おうとするんなら、俺が二人を守る!」
≪守る……守るか……≫
「え?」
≪守り切れるかよ!! あんたにもな!!≫
「ッ!」
来る。全員が身構えた瞬間であった。
「鈴ッ! 簪ッ!」
「ッ!」
「ハアッ!!」
現れたのは白式を纏った織斑一夏、そしてその背中に乗っていたのはソードモードのライドブッカーを手にした仮面ライダーディケイドであった。
ディケイドは、すれ違いざまにISを切ろうとする。しかし、ISは鎌型の武器でディケイドの攻撃を防ぎ、双方ともに一度離れる。
「みんな、大丈夫か!」
「「一夏!」」
「士!」
「士君!」
「俺の攻撃を軽々といなすとは、お前何者だ」
≪俺の名前か? 聞きたいか? ……本当は、もう少しだけ隠しておきたかったんだがな……≫
「ん?」
そういいながらISは地面にゆっくりと降りて行った。それを見て一夏たちもつられるかのように地面に降り立ち、ディケイドとクウガは乗せてもらっていたISからそれぞれ地面に降り立った。
≪聞け、このISの名前は【黒曜】。篠ノ之束の作った新たな第4世代IS≫
「束さんが!?」
『姉さんが!?』
全員が、特に一夏と箒が衝撃を受けた。だが、納得ができる。既存のどのISと比べても一歩上を行く技術で作られたその性能の正体。何のことは無い。ISの製作者である篠ノ之束がかかわっていたら当然のことだ。だが、まさか本当に束がかかわっているとは想像もつかなかった。
あの束が見ず知らずの相手にそんな好待遇を用意するはずがない。と、いうことは目の前にいるのは束の関係者。少なくとも、千冬や一夏並みに親しい人物のはず。だが、何故そのような人物がIS学園を襲おうというのか。
≪そして、俺の名前は……≫
男は、そういいながらISを一度待機状態にさせる。青白い光に包まれたその身体。元々の機体の色が黒という真逆の色だったためか、他のISと同じはずの光なのに菜緒の事白く光り輝いているように見え、他のISと比べて待機状態になるまでの時間がかかっているような気もする。それはまるで、これ以上の姿を誰にも見せたくないかのように姿を見せたら都合でも悪いかのように長く、そしてゆっくりとしたスピードだった。
もう、後には戻れない。その姿を見た瞬間すべての幻想が終わる。すべての未来が費える。すべての絶望が彼彼女たちに襲い掛かる。
立ち止まれない、後ろには決して進むことが出来ない残酷な真実が、この世界に住む者たちにどのような影響を与えるのか想像もできない。しかし、一つだけわかることがある。それは……。
「え?」
「な、なんで?」
「おい、嘘だろ?」
彼らが目にしているのは紛れもない事実であるということだ。
彼女たちが目にしたのは、見知っている顔だった。いや、見知っているなんてものじゃない。目前にあるのは今自分たちと一緒にいるはずの人物の物。つい先ほどまで一緒に学園生活を送っていたはずの物なのだ。
何故彼がそれを持っているのか。どうしてこれほどまでに頭が痛むのか。彼にはまだわからないことだ。
誰も何も言うことが出来ない。あまりにも衝撃的な事実。そして、ついに彼の口がゆっくりと開かれた。そう、彼の名前は。
「織斑一夏だ」
世界最初の男性IS操縦者であった。
「一夏さんが、二人!?」
「まさか、ワームか!」
「ワーム?」
「わぁ、む……あぁッ!?」
「一夏! どうしたの、ねぇ!!」
クウガの放ったワームという言葉。ディケイドと共に来た方の一夏はその言葉を聞いた瞬間に頭が割れるかのように痛み始めた。
止まらない。止まることはない。何だこの記憶は。なんだ、この悲しみは。なんだ、俺は、何だ。
「ワーム? 違うな……俺は……」
つぶやいたもう一人の一夏は、そういって悲しみを含んだ笑みを浮かべるとさらに身体が変化する。そして、今度衝撃を受けたのはその姿を知っている異世界からの旅人だ。
「えッ!?」
「なんだと……」
「あらあら、これは予想外ね」
「そんな、それじゃ!? こちらにいる一夏さんは!?」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「い、一夏?」
『こっちだ、死にたくないのなら急ぎたまえ』
『分かった。行こう』
『えぇ、カトレア、エレオノール行きますよ』
『……絶対に戻ってくるから……』
『ほら、カトレア行くわよ!』
ニガサナイ!!
ニガサナイ!!
ココハドコダ?
『ば、化け物!!』
! 人間、殺ス!!
『う、うあぁぁぁぁ!!!』
『あ、あぁ……』
アレハ……
『殺さないで、お願い、殺さないで』
殺サナイデ……殺サナイデ……
『ッ……』
ッ!
『や、ヤベェ!?』
グアァァァァァ!!!!
……
……
……
「俺は、誰だ?」
そう、か。思い出した。俺の正体を。
まだ一部朧げな場所はある。だが自分が何者であるのかをようやく思い出すことができた。
だが、もしこの記憶が本物であるとするのなら、もしも俺がそうであるのなら、俺は、俺は……。
その時、オリムライチカだった者の姿が変化していった。
目前にいる一夏の影が言った
「俺は、オルフェノクだ」
士たちと一緒にいた一夏だった者が言った。
「俺は……ワームだ」