仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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 黛さん。あなた一夏のクラス代表祝い以降に出番ありましたっけ。資料少なすぎて麻帆良風口調になっちまったぜ。
 というか、あれおかしいな……これの前の世界のプリキュアの世界が100話突破記念だったのにこの話で通算200話目を突破するんですけれども……。


IS〈インフィニット・ストラトス〉の世界1-11

 ここは、この世界にあるはずのどこか。

 そこでは暗い部屋の中で一人の少女がパソコンと一人向き合って数多くのデータを打ち込んでいた。

 一方その隣では緑色というやや不気味でおどろおどろしい色の液体が、まるで培養装置の様なものの中に一滴、また一滴と溜まっている。

 少女は、その装置を見ると笑みを浮かべる。まるで愛おしい我が子を見るかのようで、そこにはちょっとした狂気を感じるほどだ。

 

「束さん」

「……」

 

 その時、何者かがその部屋に入ってきた。部屋があまりにも暗すぎるために、それが誰なのかははっきりとは分からない。しかし、声色から察するにまだ若い男のようだ。

 

「どうだったの彼? 見てきたんでしょ?」

「あぁ、俺が予想していた通りだったよ……あれじゃダメだ」

「そっかぁ……」

 

 少年は、がっかりしたように言う。そう、彼がIS学園の物陰から織斑一夏たち専用機持ちを観察していた男だ。

 この場所、研究所の持ち主である少女の名前は篠ノ之束。彼女もまたやっぱりというように返事を返した。二人とも、まるでその答えを知っていたかのように。

 

「それで、大ショッカーから頼まれていた研究の方はどうなってんだよ?」

「問題が山積みだよぉ。全く生物学は私の管轄外なのにねぇ束さんこのままじゃ死んじゃうよぉ」

 

 そう、彼女は、いや二人は士たち仮面ライダーの同一の敵である大ショッカーに所属している。と言っても前線で戦うわけではなく、兵器や武器の開発を主に行っている後方の部署に所属している。

 現在、彼女はある者を蘇らせる研究を命じられていた。蘇れば、たちまち世界中に災厄をもたらすその存在。ソレを蘇らせるための材料は以前のプリキュアの世界で手にいれていた。しかし、いくら天才科学者といっても専門はISなどの機械類。生物学のほうは全くの手付かずだったため、研究は難航を極めていた。

 

「けど、この部署へは束さんから来たいって言ったんだろ?」

「そうなんだけどね……」

「?」

「あっ、そうだ。いい物をプレゼントするよ!」

「え?」

 

 そういうと、束は机の引き出しを開いてあるものを取り出した。

 

「これって、待機状態のISか?」

「そう。……≪君≫の専用機。これで、思うままに戦って来てよ」

 

 束は、ISを手渡すと培養装置の先にあるもう一つの装置の液体の中に入っている灰色の腕を見ながら言った。

 

「最期の時まで……ね」

「……」

 

 最期。その言葉が何にかかっているのか。少年はうっすらと理解していた。だが、何も言わなかった。いや、言えなかった。

 その時、少年の手からーーが落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業全中止。並びに緊急時を除いたISの展開の禁止。それが通告されてわずか二時間後。

 ここはISの競技を行うためのスタジアム。世界で唯一のIS搭乗者育成機関であるIS学園には当然のようにソレが造設されていた。

 しかし、上記のようにISの展開禁止を宣言されているために今この場所には人っ子一人いない、はずだった。

 観客席を埋め尽くすのはこのIS学園に通う学生たち。学園内の9割ほどの子供たちの目線、そして歓声が今まさにスタジアムの中央に出ようとしている四人の男女に向けられようとしていた。

 

「すっげぇ、これみんな俺たちの試合を見に来てくれてるんだ!」

「なんだか、緊張してきました……」

「フフッ、いいじゃない面白くて」

「いいですねキバーラは、なんでも楽しく思えて」

 

 と、スタジアムの端に一つずつあるピットと呼ばれる場所で男女と一匹のコウモリがしゃべっていた。

 むろん、男のほうはユウスケ、女の方は夏海、そしてコウモリはキバーラである。一体何故二人と一匹がこんなところにいるのかというと。それは実況を担っている黛の言葉を聞けばわかるだろ。

 

『さぁ間もなく火花が切られます! 世界最高、最強の兵器ISVS異世界の戦士仮面ライダーの夢の対決! 実況は私! 新聞部所属の黛! そしてそして!!』

『はいはい! 解説は、麻帆良学園女子中等部3-A所属! 出席番号17番椎名桜子! 仮面ライダーのことは士先生たちと一緒に旅をしてきた私にお任せあれ!』

 

 そう。これは、ISと仮面ライダーの戦い。というよりもエキシビションマッチだ。

 提案した士によると、また海東大樹が襲ってきたときに備え、仮面ライダーと対戦の経験がない残りの一年生の専用機持ち二人に戦闘経験を持たせるための試合なのだとか。

 なので、ユウスケと夏海と対戦するのは……。

 

「あんたとタッグ組むのって初めてね。よろしく簪」

「はい鈴」

 

 先ほどの戦闘には参加していなかった簪と鈴音である。

 因みに言い出しっぺのはずの士がどこにいるのかというと。

 

『そして! 特別ゲストには、仮面ライダーディケイド! 門矢士&我らが織斑千冬先生!!』

 

 実況席、ということになっているがここはモニタールームである。彼女、彼らの目の前には多数のモニターがあり、そこにあらゆる方向から撮影されたスタジアムの様子がリアルタイムで送られてくる。また、試合中の生徒に指示を下すためのマイクもあり、さながらどこかのロボットアニメの指令室の様相を呈していた。

 そして、この場所にいるのは士や千冬だけではなく、士と一緒に旅をしている麻帆良組、そして一夏たち一年生専用機持ちの面々も一緒にその場所から試合を観戦しようとしていた。

 

「さて、どう見る織斑千冬?」

「そうだな。あの二人なら大抵の相手には申し分なく戦える。それは保障できるが、それは相手がISである場合の事。あの二人の仮面ライダーの力が未知数の今、どうともいえんな」

「まぁ、そうだろうな」

「お前はどうなんだ士、ISを相手にあの二人が勝てると思うか?」

「そんなこと、俺の知ったことじゃないな」

「『言うと思った』」

 

 と、士が無責任なことを言ったその横で、千冬と桜子は苦笑いを浮かべる。

 だが、確かに双方の戦力がよくわからないこの状況で、一体どちらが勝つのか、等と聞かれても答えに困る。だが、これだけは分かっている。仮面ライダークウガに変身するユウスケにとってこの戦いはかなり不利になるのだと。だが、空中戦に慣れるのも修行の内だと、ユウスケを見送った士は彼が一体どのような戦い方を繰り広げるのか、少々興味があった。、

 

『えぇなお今回の試合は、IS学園有志によって学食の食券を賭けたトトカルチョが販売されています。オッズを見ますと……やはりIS側の方が圧倒的有利!』

「まぁ、どんな戦力かもわからない仮面ライダーよりも自分たちの見知っているISに賭けたほうが安心できるからだろう」

 

 と、千冬は冷静に分析する。というか、賭けているのがお金ではないとはいえ、学生たちが賭けを行っていることについて無視するのは先生としてどうなのだろうか。

 

『さて、解説の桜子さんはどちらに賭けましたでしょうか?』

『はい! 私は、勝敗付かずに、さっき織斑君からもらった食券1枚を賭けました!』

『おおっと!! 意外や意外! 勝敗付かずは確かに選択肢の中にはありましたが、それに賭けてるのはごく少数。もし当たれば200倍になる超が付くほどの大穴です!』

「勝敗付かず……か」

 

 因みに、その勝敗付かずに賭けている少数という中には、士や鳴滝姉妹の名前がある。理由は当然桜子がソレに賭けたから。

 椎名桜子のラッキーを引き寄せる能力に関しては、これまでの経験からして信用できる。あまりにもラッキーすぎてそのラッキーを他人に手渡すアーティファクトが出来上がるほどだ。そしてそれは麻帆良組にとっても周知の事実である。そのため、桜子が賭けをする直前まで彼女のことを見張り、他の三人が同じ場所に賭けた、ということだ。

 だが、勝敗付かずとは一体何なのだろうか。引き分け、同士討ち、であるのならばわからないでもないが、勝敗付かずとはつまり勝ったも負けたもないということ。士は桜子の予感した何らかの出来事が、海東の襲撃ではないのかと考えていた。

 先ほど失敗したばかりなのにもう一度盗みに来るのかという疑問は沸くには沸くが、しかしそういう考えを見越して行動を起こすということも考えられる。とはいえ、そもそも神出鬼没で何を考えているのか分からない彼の考えを読み取ることは難しい。だからこそ、士はこのエキシビションマッチを開催しようと考えたのだ。

 このエキシビションマッチは単なる戦力の補強が目的ではない。海東大樹を牽制し、もしも彼がこの会場に現れたのならば、すぐさま対処ができるようにするため。今この場所には、この学園のほとんどの生徒、教師が集まっている。もしもこのような場所で悪事を働こうものなら即座に御用となることだろう。

 

『さぁ、お時間となりました! これより、エキシビションマッチ、凰・簪ペアVS夏海・ユウスケペア。勝利条件は、仮面ライダー側が、相手のエネルギーをともにゼロにすれば勝利! IS側は、二人の仮面ライダーの変身を解除させれば勝利です! 四人とも、準備をしてください!!』

「行くよ、夏海ちゃん!」

「えぇ、この姿になるのも久しぶりです」

「うふふ、さぁて可愛がってあげるわぁ」

「行くわよ、簪!」

「はい!」

 

 夏海が変身するのはあやか達麻帆良組と出会ったあのネギまの世界以来。その世界以降キバーラの行方が分からずじまいで、満足に戦うことが出来ず、前回のゼロの使い魔の世界では生身での戦いを強いられた。

 だが今回は違う。エキシビションマッチという体裁があるとは言え、今回は久しぶりに自身も仮面ライダーとなって戦うことが出来るのだ。夏海が手を前にかざすと、キバットバット三世よりも小柄なキバーラが指の間に収まるように降り立った。そして……。

 

「変身!」

「「変身!」チュッ」

 

 キバーラの口からハートマーク型の光が波立つように浮かび、次の瞬間その光は複数の花びらとなって舞い踊り、夏海の周囲を囲む。それら全てが夏海の身体に纏われた瞬間、白と紫の二色が基調となった仮面ライダーキバーラは再臨した。

 

「仮面ライダー……キバーラ! ハァッ!」

 

 仮面ライダーキバーラ、そしてIS『甲龍』を纏った凰鈴音、『打鉄弐式』を纏った更識簪、戦士達がフィールドへと舞い降りた。

 試合を観戦しようと集まった観客たちは、自分たちがよく知るISはともかくとして、果たして仮面ライダーという物がどのような力を持っており、どう戦うのか興味津々だった。と、ここで大多数の人間がおかしなことに気が付く。

 

『さぁ出てまいりました! ってあれ? えっと、ライダー側のユウスケさんって人は?』

 

 小野寺ユウスケ、仮面ライダークウガがその姿を見せてないのだ。一体どこに行ったのだろう。すべての人間の頭に疑問符が沸いたその時、試合会場にエンジン音が響き渡る。ISからか。いや、ISがこのような音を出すとは思えない。一体出どころはどこなのかと、観客全員があたりを見渡した瞬間であった。

 

「ハァッ!!」

 

 バイクに乗った赤を基調とした鎧を着た男が仮面ライダーキバーラが飛び出したピットと同じピットから飛び出してきたのだ。

 まさか、あれがもう一人の仮面ライダーか。その黛の疑問に対し、桜子が答える。

 

『その通り! 彼こそが、笑顔のために戦う仮面ライダー! 仮面ライダークウガです!!』

『え、でもどうしてバイクに? いや、ライダーなんて名前なんだからバイクに乗ってるのはいいとして、どうして飛ばないの?』

『あぁ、実は仮面ライダーっていうのは、確かに空を飛んで戦うっていうのも多いんだけど、大多数が地上戦主体で戦うの。クウガもその地上戦主体の仮面ライダーの一人なんだ』

 

 IS側の人間にとっては若干信じられないことではあるが、仮面ライダーは必ずしも常時空中を飛んでいられる存在ではないのだ。またフォームチェンジなどを用いることによって空を飛ぶ能力を使う仮面ライダーは多いが、通常フォームの時点で空を飛ぶことのできるライダーはそう多くもない。そして、クウガもまた今のこの状態では空を飛ぶことが出来ない。

 ならば、その状態になればいいのではないか。いや、それはしない。ユウスケはそう判断したのだ。この戦い、相手の二人に仮面ライダーとの戦い方を知ってもらうため、ということが目的になっているとはいえ、自分や夏海にとっても戦闘能力を上げるための戦いであるのだと彼は考えているのだ。

 まずもって、夏海は仮面ライダーとしての実戦経験がたった三回とかなり乏しい。しかもその内の一つは相手が自ら倒されることを望んでいたこともあって実際に戦ったと言えるのは二回だけ。そんな夏海に戦闘の経験を積ませることがこの戦いを仕組んだ士の目的なんじゃないかとユウスケは考えているのだ。

 かくいう自分も、空中戦の経験は数えるほどしかなく、いまだに慣れているとはいえない。確かにあの姿になれば簡単に空中戦をすることが出来るが、もしもそれが防がれた時のための対応策を考えておくことも大切だ。

 この戦いは、空中戦における自分の立ち回りを試すうえでは持ってこいの戦い。恐らく士は自分や夏海のそう言った諸々のことを考えてこのエキシビションマッチを仕組んだのだ。

 なお、その当の士はというと。

 

「で? 実際のところはどうなんだ?」

「ん? まぁ、そういう事だな」

 

 千冬に聞かれた士はドヤ顔でそう言ったが、当然何も考えていなかったのは言うまでもない。

 

『と、とにかく! これで役者がそろいました!!』

「空を飛べなくたって遠慮はしないわよ!」

「あぁ、手加減はなしだ!」

「よ、よろしくお願いします!」

「はい、私も胸を借りるつもりで戦わせてもらいます!」

 

 それぞれに言葉を交わす両者。この試合は、互いに勝っても負けてもメリットもデメリットもない正真正銘のエキシビションゲームであるからだろうか、あまり気負いせずお互いにリラックスしている。だが反面、両者の心の深い部分ではある同じ思いが渦巻いていた。

 負けたくないという勝負をする者すべてが持ち合わせている当たり前の感情が。

 

『仮面ライダーとIS、果たしてどちらが勝つのでしょうか! 安全の確保のため、観客席が強化シャッターで閉められ今! 決戦の火蓋が切られようとしています!!』




 なに、どうしてこの世界には昭和の仮面ライダーが放送されていた形跡があるのに黛さんが仮面ライダーを知らない感出してるのかって?
 理由は簡単。生まれる前に放送していた特撮番組を知っている方がおかしいのです。特に、平成になってそれ以上の展開がなくなればね。この世界ではナチュラルに平成ライダーの歴史が舗装されてるもよう。

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