IS〈インフィニット・ストラトス〉の世界1-1
―これまでの仮面ライダーディケイドエクストラは―
「俺は、誰だ!」
「さぁ、殺しなさいシエスタ」
「生きることへの熱意……とかさ」
「いくら他人の事を知っているつもりだったとしても、他人の事を正確に知ることには限界がある」
「∞……無限の可能性だよ」
「俺は、ゼロの使い魔だからな!」
「……えぇ、信じるわよ!私のサイト!」
「さようなら、小さなルイズ」
「じゃあねルイズ。そして、カトレア……」
この雰囲気には何か見覚えがある。
周りを見渡すとどこもかしこも同じ制服をきた子供ばかりしか見えず、大人の姿は自分しか見えない。
それだけではない、彼の横を通り建物の方へと向かっていく子供達は、女ばかり。男性など影も形も見当たらない。
そのためか、やたらと周囲からの槍で突き刺さんが場狩りの視線を感じる。あたかも珍しい生き物を見ているかのようで、また自らを異物のように認識する者達の中心にいるだからかかなり居心地が悪い。
とはいえ、そんな女性たちを首から下げているカメラで撮っている彼にも問題があるような気もする。もしもこれで顔がイケメンじゃなかったとしたら完全な変質者だ。しかし、そんなことお構いなしに彼はカメラを少女達に向け続け、そしてその姿を写真に納めていった。というか、その行為自体が問題であると気が付いていないだろう。
「どこもかしこも子供ばかり……まるで、麻帆良のようだな……」
彼の脳裏に浮かんだのは、今も写真館で一緒に旅をしている少女たちの出身世界である麻帆良学園のある世界だ。あの世界に行った時も周りには子供ばかりだった。
あそこは確か学園都市だったからという理由があったが、先に見えている近未来的な建物が学校であるとするのならば、この場所もまたそうなのだろう。
しかし事前に知っていなければ学校とは思えないデザインの建物群である。まだ手前に見えている建物は分かる。少し変わっているが確かに学校のカタチをしているし、なにかスクリーンのようなものが空中に映し出されているというのも、近未来的な世界であることを考慮すればなんらおかしなことはない。
しかしその奥に見える建物はなんだ。サザエのように渦を巻いた形をした塔のようなもの。存在している意図すらも不明だ。観光スポットであるというのであればまだわかるが、学校にそのような物を作るはずがない。
なおかつ最もおかしなものが少し向こうに見えている楕円形の建物。自分の想像が正しければあの形をしている建物など一つしかない。が、そのようなものを学校が持っているとは到底想像がつかない。それも一つ二つだけじゃないようだ。
私立の金を持っている学校であればサッカー場や野球場は持っていてもおかしくはなく、あり得る話なのかもしれない。だが、何でもありだった麻帆良のことが基準となってしまうため、あの場所にもなかったものがあること自体がおかしいと感じてしまうのだ。いや、もしかしたらよく散策すればあったのかもしれないが。
とにかく、あんなもの基準にしてしまうこと自体が間違っていると彼が気がつくのは、果たしていつになることなのだろうか気になるところだが、そんなことよりである。
女性ばかりのなかポツンと1人だけいるこの場所においては異物の存在である彼のことが明らかになるまでそんなに時間は経たなかった。
「そこで何をしている?」
「ん?」
後ろからちょっとキツめと言えなくもない声で呼ばれた士。振り向くと、そこには長い黒髪をなびかせた大人の女性。この世界に来て初めて出会う大人だ。
スーツを着た恰好からして学校の教師なのだろうと思うが、しかし士はそれ以上になにか既視感のような感情を持つ。自分は彼女を知ってるのか。いや、違う。彼女に似た存在を知ってるのだ。だがそれがなんなのか、彼にはまだ分からなかった。
「別に? ただ、写真を撮っていただけだ」
「貴様、いったい誰の許可を得てここに入った?」
大多数の学校がそうであるように、この学校もまた関係者以外の立ち入りを許可していないのだろう。それが普通であり、当たり前であり、当然でなければならないのだが。
ともかく、このままでは警察に連れて行かれてしまう。面倒なことにならないうちに、士はこの世界に来た時に見つけた名刺と一枚の紙を胸ポケットから取り出した。
「ジャーナリスト、門矢士だ。取材の許可は取っている」
「ジャーナリスト……なるほどこの紙は本物のようだな……」
そう、今回の門矢士の役割はジャーナリスト。おそらくこの学校がよほど特別なのだろう。学校であれば、麻帆良の時のように教師という役割を与えればそれで十分のはずだ。しかし、ジャーナリストという職業でなければその場にいるだけで怪しまれてしまうのがこの場所の特殊性を表していると言えるのだ。そもそも彼女に一緒に見せた紙に≪この学校の取材を許可する≫といった文言が書かれていなかったらそもそもここが学校であると断定することもできなかっただろうが。
そういえば、と士は紙にこの学校の名前が書かれていたということを思い出した。
「『アイエス』学園……でいいのか? 名前は」
「何も知らないでここに来たのか?」
「あぁ、なにせ俺は記憶喪失だからな」
記憶喪失。完全に嘘ではあるが、少し前の彼であれば事実だ。とはいえこれは世界のことをよく知らない状態においては相手から情報を聞き出すためのいい目くらましになる。特に、『IS』という謎の単語、それぞれの世界の固有の言語がある場合にはそれを知らないために怪しまれる可能性が高い。そして色々あった挙句にまたも敵対して戦ってしまうというお決まりのパターンに繋がるという不都合を避けるためにはかなり有用な単語であるのだ。
「記憶喪失……か。いいだろう取材は許可する。だが、念のために私が同伴する」
「監視……というわけか」
「部外者の男を勝手に歩き回らせるわけにはいかないからな」
「大体分かった」
「言いそびれていた。私は織斑千冬……この学園で教師をしている」
「それじゃ、さっそく教えてもらおうか……ISってのが何なのかをな」
瞬間、授業の開始を告げるチャイムが鳴り響いた。気が付けば、周りから生徒は一人もいなくなっており、二人の険悪な空気だけが残されていた。そんな状況にもお構いなく士は千冬の写真を一枚撮った。
世界は偽物の生き方をしている人間と、本当の生き方をしている人間の二通りが存在する。
本当に自分のやりたいことを押し込めて周囲の生き方に合わせようとして身動きが取れなくなっているのが偽物の生き方をしている人間。
周囲に何を言われても自分が本当にやりたかったことをして生きているのが本当の生き方をしている人間。
この世界に本当の生き方をしている人間がどれくらいいるのだろう。
惰性で、それでもって緩慢で、そして退屈な生き方をしている人間がどれくらいいるのだろう。
正しい生き方をしている人間がどれくらいいるのだろう。
そして、その生き方を本当に正しいと判断できる人間がいるのだろう。
信じていた道がどれだけ曲がりくねっていても、まっすぐでも、間違っていても、合っていても、それが正解であるなどと教えてくれる者は誰一人として存在していない。
それなのに、どうしてその道を歩きたいと思うのだろう。
答えは簡単だ。偽物でも本物でも、どの生き方でも、それが人生であるのは変わりないからだ。
ー世界の破壊者ディケイド、いくつもの世界を巡りその瞳は何を見るー
ここ最近、前のような文章が書けなくなってきているきがする今日この頃。
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