仮面ライダーディケイド エクストラ   作:牢吏川波実

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プリキュアの世界chapter76 GOD SPEED LOVEのマリアージュ

 吾郎は目の前にいるライダーを見て、シェード時代の、頭の片隅にあった噂を引き出す。それは徳川清山が一人の、凄腕の殺し屋を雇っていると言うものだ。聞くと、それは黄金色に輝きを放ち、ターゲットとされた人物は自分がいつ殺されたのかもわからないほど、よしんば戦いに持ち込めたとしても戦う前にすでに敗北している、とまで言われるものだった。

 その噂には続きがある。徳川清山が、彼に殺しの依頼を送る方法はたった一つだけ。真っ青に染まった青いバラ、それをターゲットの下に送るという方法だ。

 そんな噂程度にしか聞いてこなかった、黄金の仮面ライダーが今、彼の目の前に現れたのだ。

「だが、ここは僕のいた世界じゃない。どうして……」

「私の友人の、そしてシェードにあだ名すものとあればどこにでも。そして……」

「!」

 

 豊臣が腕を上げたその刹那、銀色と銅色二人の仮面ライダーが現れた。仮面ライダーケタロス、そしてヘラクスである。確かシェードの№3と№4で、日本から離れていたはずの男たちだ。彼らもまた自分を殺しにきたと言うのか。

 

「この数年間あなたのことを監視していました。あなたは危険な存在です。ここで、抹殺してさしあげます」

「なに?」

 

 吾郎は『数年間、自分のことを見張っていた』というその言葉に、とんかちで肩を殴られた時のような衝撃を受けた。この言葉が意味するものとは、彼らは自分のことをいつでも殺すことができたというのに野放しにしていたという事だ。

 当初吾郎は、徳川清山が豊臣に自分の暗殺について依頼したのをここ最近のことだと考えていた。が、豊臣の話を信じるのならば、徳川はもう何年も前に自分の暗殺を依頼していたということになる。

 とすると、まさかあのテレビ局襲撃事件のすぐ後だったのかもしれないということなのか。だが、それならばわからないことがある。

 

「……どうして僕を殺そうとしなかった。何度でもチャンスがあったはずだ。それなのに、なぜ?」

 

 そう、先も述べた通り豊臣は自分のことを何故か野放しにしていた。結果シェードのアジトのいくつかが破壊され、徳川の作り出した改造人間の多くが倒された。にもかかわらずそんなことお構いなしに、まるで放し飼いにしている凶暴な家畜のような自分を自由に動かしていた。

 何故だ。その吾郎の疑問に、豊臣はフッと嘲るように笑うといった。

 

「わが友は、あなたのことを高く評価しているのですよ」

「なに?」

「わが友は、多くの人間を実験し、改造人間としました。その多くはこの大道のように怪物の姿となり、そして自らの感情を暴走させた」

「感情……」

 

 そういえば、大道はかなりのハイテンションで、陽気に野球用語を放したりしてとなかなかにぶっとんでいる性格をしていると思ったことがある。まさか、それが改造手術の結果だったとは全く知らないことだ。もしかしたら、大道もまた自分と同じように落ち着いた人間だったという事も考えられるが、今となってはわからないことである。

 

「だが、改造手術を受けた人間たちの中に、他の者たちとは違う性能を持ったいわゆる、突然変異とも言えるものが現れた。それが我々『仮面ライダー』」

「なに?」

「怪物にもならず、感情を暴走させることもない。そして、洗脳のかかりも薄い。それが、徳川清山が作り上げた最高にして最悪の失敗作だったのです」

「洗脳のかかりが薄い……まさか、僕が記憶を取り戻したのは」

「その通り、そして私に君への暗殺依頼が届いたのはそのすぐ後でした」

「やっぱり、だったらどうしてここまで」

「興味があったのですよ」

「何?」

「愛するものも、友も捨てて戦う孤独の戦士仮面ライダーG。たった一人でシェードという大きな組織と戦うあなたという存在に」

「……」

「どうして君はここまで戦うことができるのですか?愛のため?仲間のため?あなたは、あなたの愛する人が本当にあなたのことを待ち続けているとでも思っているのですか?あなたの友は、本当に」

「黙れ!」

 

 吾郎は叫び、立ち上がった。しかし、それが答えだった。

 そう、そうなのだ。自分の愛する人はもう40歳。一般的に見ればすでに結婚して、子供をもって、老後のことを考えていてもおかしくはない年齢。

 不安で仕方がないのだ。本当に自分のことを待っていてくれているのか。もしかしてもうすでにほかの自分の知らない誰かと結婚してしまっているのではないだろうか。もう自分のことなど忘れてしまっているのではないだろうか。

 何度も確かめたいと思った。会って話そうと思った。だが、そんなことをすればシェードに狙われてしまうことは確実。

 友も同じこと。学生時代から仲の良かった五人の親友達。そのうち、かろうじて三人とは連絡を取り合ってはいるものの、会うことはない。二人とは一度別れてから二度と会うことはなかった。

 

「確かに僕は孤独の戦士。でも、孤独でもなんでも僕の人生を狂わせ、彼女を危険にさらした。そして、僕のような人間を産まないためにもシェードと……悪と戦い続ける。そう誓った」

「哀れですね。自らを殺し、憎しみで戦い続ける男は」

「たとえ、憎しみで戦うことになったとしても、それが僕の力になるというのなら、喜んでその孤独を受け入れよう」

 

 哀れでもなんでも、もうそれしかなかった。そうやって戦うしかなかった。それしか方法はなかった。疲れ切った自分の心を救うためには、そうやって言い訳をするしかなかった。そうしないと戦い続けることができなかったから。

 吾郎は歩き始める。真っ暗闇の明日に向かって。吾郎はもう、振り返ることはできない。自分を、戦う理由を見失ってしまった吾郎は、もう、自らの手では帰ってくることのできない場所に来てしまっていたのだ。

 だから……。

 

「情けないことを言わないでください!」

「え?」

「憎しみで戦ったら、きっと負けてしまいます!」

「ブロッサム……」

「孤独が人を強くさせるのなら、愛はもっと強くすることができる。他人を愛するとは、そう言うことだ」

「天道……」

 

 その彼を助けることのできる人間が必要なのだ。

 彼を振り向かせたのは、キュアブロッサム、仮面ライダーカブト、そして……。

 

「仲間なんだろ?だったら信じればいい」

 

 鎧武である。

 

「どれだけ裏切られても、どれだけ離れ離れになったとしても、それが守りたいものなんだろ!」

「そうです。憎しみや悲しみは、確かに人を奮い立たせるかもしれません。でも、それであなた自身が守ろうとしたものを本当に守れるんですか!あなたが頑張って仮面ライダーをやって来れたのはなんのためだったんですか?忘れてしまったら、逃げることになるんです!昔の自分から!自分の誇りから!」

「お前の、仮面ライダーGとしてのお前の本当の戦う理由を思い出すんだな。吾郎」

「本当の戦う理由……」

 

 吾郎は思い出す。彼女の笑顔を、彼女と一緒に飲んだワインの味を、そして、別れるときの彼女の顔を。

 彼女がいたから自分は戦える。彼女を守りたかったら自分は戦えた。あの時の自分は、確かに強かった。自分の本来の力を超えた力、それを出していた。そう、自分は……。

 

「そうだ、僕は愛のために戦うライダー……仮面ライダーGだ」

 

 いつの間にか、彼はボトルを握っていた。それを見ながら彼はつぶやいた。

 そうだ、ついさっきまで自分は忘れてなかったではないか。なにも不安など抱えていなかったではないか。こうして、共に戦ってくれる仲間たちがいるではないか。自分は、孤独なんかじゃない。

 

「今、僕のヴィンテージが長い年月を隔てて、芳醇の時を迎える……」

 

 今ここに、仮面ライダーGは、吾郎は再び立ち上がった。豊臣によって忘却しそうになっていた愛のために。そしてその先に存在する友やあの人のために、彼はまた立ち上がることができた。

 

「いいでしょう。ならば、あなたたちをここで消してあげます。変身!」

 

 豊臣は、空手のポーズを取って右手を構える。すると、その手についてあるブレスに変身アイテム『カブティックゼクター』が着地するかのように装着される。その瞬間、金色の仮面ライダー、『仮面ライダーコーカサス』は再臨した。また、それと時同じくして、多数のシェードの改造人間たちも光に集まる害虫が如く集まってきた。

 

「みなさん。黄金のライダーを頼みます。周りの敵は私が露払いをします」

「何?」

「大丈夫なのか?」

「心配ないって!」

 

 鎧武の疑問に答えたのは、ブロッサムの相方的存在であるマリンである。

 

「こんだけ集まれば、なんとかなるっしょ!」

 

 マリンのその言葉と同時にプリキュア、戦隊、ライダー問わず多くの仲間たちがその場に駆けつける。

 それを見渡した吾郎は思う。確かに、自分は孤独の愛の戦士だ。しかし、今日は、今この場所だけは違う。自分は孤独を捨て去り、ただの愛の戦士として戦うことが許されている。ならば、自分は自分の最高の力を出すことができる。こんなに最高の居場所で、負けるはずがない。

 

「行くぜ天道!吾郎!」

≪カチドキ!≫

≪ロックオン!≫ソイヤッ!

≪カチドキアームズ!いざ!!出陣!≫エイエイオー!!

「キャストオフ」

≪cast off≫

≪change beetle≫

「あぁ!」

 

 カチドキアームズとなった鎧武は、『極ロックシード』を、ライダーフォームとなったカブトは『ハイパーゼクター』を、そして吾郎は再び『ボトル』を握りなおす。そして……。

 

≪フルーツバスケット!≫

「フッ!」

≪ロックオープン!極アームズ!!≫

≪大!大!大!大!大将軍!!≫

「ハイパーキャストオフ」

≪hyper cast off≫

「変身!」

 

 仮面ライダー鎧武極アームズ、仮面ライダーカブトハイパーフォーム、そして仮面ライダーG。その三人の後ろに立っているのは……。

 

「行くぜみんな!神と!」

 

 仮面ライダーゲンム、仮面ライダーアギト。

 

「速さと……」

 

 仮面ライダードライブ、キュアブロッサム、キュアマリン、レッドチーター、仮面ライダーオーズ。

 

「そして愛の力が、最高のアサンブラージュを作り上げる!」

 

 キュアハート、キュアラブリー、キュアピーチ、そしてキュアハッピー。

 アサンブラージュとは『寄せ集め』や『集合』といったフランス語、ワイン用語では総じて『調合』という意味を持った言葉だ。

 今ここに、三つの力を持った戦士の力が調合した。

 

「フッ!」

「ハイパークロックアップ」

≪hyper clock up≫

 

 瞬間、仮面ライダーコーカサス、そして仮面ライダーカブトの姿が消えた。それを合図にして、その場にいたすべての戦士たちが激突する。

 

≪大橙丸!バナスピアー!!≫

「フッ!そりゃッ!!」

「ハハァッ!神に逆らおうとは、愚かな者めが!」

「フッ!ハァッ!!」

 

 鎧武は二つの武器、剣の大橙丸、槍のバナスピアーの二刀流を用いる。ゲンムは、ガシャコンバクヴァイザーで、アギトはトリニティフォームとなりそれぞれの獲物で多数の敵を切り刻んで行く。それはまさに神が悪人たちに捧げる裁きの鉄槌の様だった。

 また、別の場所では。

 

「行くぜベルトさん!ひとっ走り付き合えよ!」

『OK!』

≪ドライブ!タイプフォーミラー!!≫

≪FOR-FOR-FORMULA≫

「「レッドの光の聖なるパフューム!シュシュッと気分でスピードアップ!」」

「アニマルパーフェクトモード!!」

「もう一度使わせてもらうよ、ミハル君!」

≪スーパー!スーパータカ!スーパートラ!スーパーバッタ!スーパー!タトバ!タ・ト・バ!スーパー!!≫

 

 ドライブはタイプフォーミュラーに、レッドチーターはアニマルパーフェクトモード、オーズはスーパータトバコンボ、そしてブロッサムとマリンはレッドの種を使用してスピードを向上させる。

 目にも止まらないスピードとはまさにこのことか。そう考える時間も与えない程のスピードをもってシェードの改造人間が次々と粉砕されていく。

 そして、もう一つの戦場では。

 

「食前酒は何がいい?」

「ハッピーメルローカベルネ?」

「シャトームーランペイラブリー?」

「フェスティピーチ?」

「それとも、シャトーカロンセギュール!」

「食後酒は……」

「「「「永遠の夢の中で……」」」」

 

 以上、Gとそれぞれの名前がついているワインを言いながら戦うプリキュア達。ちなみに、ハートの言ったシャトーカロンセギュールにはハートという名前が使われていないが、そのラベルに大きなハートが描かれていることが特徴的なワインである。そんな冗談のようなことというか、大人ならではの知識を手に入れたところが、彼女たちが本当に大人になったことの証明といっていいだろうか。

周囲の敵を一掃したGとプリキュア達だが油断は禁物。また先ほどのように突然の奇襲が入ることを予感する。

 

「はぁっ!」

 

 かくして、彼と彼女たちの想像は的中した。

 

「まさか、ハイパークロックアップを破るとは」

「同じ手は二度も食わない」

 

 再び仮面ライダーコーカサスがGを襲うが、それを予期していたGにとって、そして改造人間である彼にとってはどれだけの超スピードだったとしてもそれはもう普通に歩く虫と同じもの。多少は速かったものの対処できないスピードではなかった。

 

「吾郎さん!」

「君たちは他のライダーを!こいつは、僕が倒す」

 

 援護を表明した彼女たちを、その言葉で制したG。そう、こいつは、この男だけは自らの手で倒さなければならないのだ。

 

「ふっ!はぁっ!タァッ!」

 

 仮面ライダーGは、ソムリエナイフとコルクスクリューを模した一振りの剣を用いてコーカサスの攻撃を防ぎつつさらに追撃を行う。

 Gは剣の間合いを確保するためコーカサスの腹を蹴ると、息もつかせぬようにハの字に切り刻んだ。

 初めて反撃を受けた。こんなこと、ありえないことだった。今までの任務では、相手が自分のことを認識することもできないままに、時には自分が死んだことすらも気がつかないままに倒していた。一方的に狩るものと逃げる間も無く狩られる者と言う関係だった。そのため、反撃を受けたことなど一度もなかった。

 しかし、目の前にいる男はなんだ。確かに友の作った改造人間であるのだから、このスピードについてきたのは理解できる。だが、ついてこれるからといって攻撃できるか。反応速度、筋肉を動かす電気の速度、そして判断力、それら全てが通常の改造人間のソレを超えてしまっている。これが、仮面ライダーG。

 

「フッ!」

「はぁっ!」

 

 コーカサスは、右手でのパンチを繰り出した。しかし、その攻撃をしゃがむことで軽々と避けたGは、そのままソムリエナイフでコーカサスの腹を斬り後ろに回る。

 

「ぐっ!」

「……」

「ぐぉ!」

 

 コーカサスが振り向いた瞬間に、Gはその姿を見ないままコルクスクリューを突き刺した。

 性能が違いすぎる。なんだこれは、同じ改造人間であるはず。同じ男に作られたはず。なのにどうしてここまで押されているのだ。なぜ、ここまで強い。なるほど、友がこの男に興味を示した理由がわかる。先程、コーカサスが吾郎に興味があったといっていたが、それは徳川清山も同じこと。彼もまた吾郎の見えない底にある力に気がつき、そして危険視していたのだ。

 

「ありえない!この私が、負けるなど!」

 

 そう言いながら、コーカサスは腹に刺さったコルクスクリューを持ち、力尽くで引き抜いた。何という精神力の持ち主か。それに、剣が全く動かない。あまりにも力強い。顔は見えないというのに、鬼気迫る表情というのが分かる。

 

「フッ!はぁっ!」

「ぐあぁっ!」

 

 コーカサスはゼクトクナイガンを取り出してGを襲う。身動きが取れないGは、その攻撃から逃れるために自らの武器を手放すしかなかった。しかし、手放すと同時にかろうじて当たる攻撃を喰らい、Gは後ろへ吹き飛ばされてしまう。

 

「この私に武器を使わせるとは……」

 

 そう言いながらコーカサスはGの剣を遠くに投げ、再びゼクトクナイガンを構える。それは、武器を使用せずに徒手空拳のみで相手を暗殺するという美学を潰された怒り。

 

「許しません」

 

 だが、それが命取りだ。

 

「おぅら!はぁっ!」

 

 感情を見せてしまうということは、暗殺を生業とするものにとっては致命的なミスと言える。あまりにも劣勢に立たされてしまったが故に、コーカサスは自らの仕事の基本的なことを忘れてしまったのだ。

 大橙丸と無双セイバーを合わせた無双セイバーナギナタモードによる斬撃がコーカサスの身体を抉る。それだけでは終わらせない。

 

《バナスピアー!メロンディフェンダー!ブドウ龍砲!》

「ぐっ!」

 

 鎧武は、さらにベルトを操作して3つの武器、仮面ライダーバロンが主に使っていたバナスピアー、仮面ライダー斬月の主要武器メロンディフェンダー、そして最後にブドウ龍砲を出現させてコーカサスを攻撃する。

 コーカサスは、まるで複数人を相手取っているかのような感覚に陥りながらバランスを崩した。あの男は、その一瞬の隙を狙ったのだ。

 

「はぁ!」

 

 突如コーカサスの後ろに現れたカブト。コーカサスはそれに気がつき、振り向きながらの裏拳でカブトを攻撃しようとする。だが、それは防がれて、隙だらけな脇腹を蹴られてしまった。

 

「くっ!」

 

 吹き飛びされたコーカサスではあったが即座に立ち上がり、腰の左につけてあるハイパーゼクターのスイッチを押す動作をした。だが、ここで違和感が生じた。まさか、そう思いハイパーゼクターがあるはずの場所を見た。だが……。

 

「なに?馬鹿なッ!」

 

 そこには、先ほどまではあったはずのハイパーゼクターは影も形もなかった。

 

「探しているものはこれか?」

 

 そういったカブトの手の中には、紛れもなく自分のハイパーゼクターがあった。カブトは、先程の一瞬の隙を見逃さずに、そして彼にバレることもなくハイパーゼクターをかすみとったのだ。

 

「これでもう、普通のクロックアップしかできないな」

「まさか、それが狙いで……」

 

 クロックアップよりも早いハイパークロックアップ。カブトもハイパーゼクターを持っているためできるそれができなくなること、それが意味することは、いままでその能力で多くの裏切り者を葬ってきた彼だからこそ分かっていた。

 

「吾郎、これを使ってくれ」

 

 一方、鎧武は吾郎にある武器を渡す。それは、先ほど出した武器の一つであるブドウ龍砲だ。

 

「これは……」

「俺の、大切な仲間の一人の武器だ」

 

 それは鎧武の仲間の一人、仮面ライダー龍玄の武器であった物。鉱汰が地球から離れたあとも地球を守るために、彼がいた街を守るためにいまも戦い続けている仮面ライダーの武器だ。

 

「わかった。大切に使わせてもらおう」

 

 仮面ライダーカブト、鎧武、そしてGは再び並び立つ。そして……。

 

「いくぞみんな!ここからは……」

「僕たちの最高のマリアージュ!」

「フッ……」

「いっくぜぇぇ!!!」

 

 その叫びを耳にしたからか、はたまた偶然か、4つの戦いの終止符が打たれようとしていた。

 

「ブゥン!!」

「ハァッ!」

「がぁっ!」

 

 フィロセキラワームと戦闘を繰り広げていたアギトそしてアクションゲーマーレベル0の姿のゲンムは、ついにその怪人を追い詰めていた。

 

「神にたてついた報い!地獄で後悔しろ!!」

《マイティ!クリティカルフィニッシュ!!》

「ハァツ!はぁぁぁぁぁ……」

 

 ゲンムは、ガシャコンブレイカー・ブレードモードにプロトマイティアクションXガシャットオリジンを装填する。アギトは、二降りの獲物を手放すと、頭部のクロスホーンを展開して構え、それぞれエネルギーが剣に、そして両足に収束していく。そして……。

 

「フォォぉぉぉぉ!!!」

「はぁぁぁぁ!!!」

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 

 ゲンムのマイティティクリティカルフィニッシュによる斬撃、アギトのライダーシュートがほぼ同時に直撃し、二人はフィロセキラワームを突き抜けて背後に回った。

 そして、改造人間は最後の力を振り絞るかのごとくにようようといった感じで振り向き言う。

 

「まだ、終わりじゃねぇぞ……ブォアァァァァ!!」

 

 巨大な爆発と共に、その最後の叫びは消えていった。それに動じないアギトは、ただ構えを崩さずにその場にたたずむだけであった。

 

「こっちも決めるぞ!」

《フォーミュラーフォーム!!》

《ヒッサーツ!フルスロットル!》」

「やるっしゅ!!」

「はい!」

「「集まれ!花のパワー!」」

「ブロッサムタクト!」

「マリンタクト!」

「「ハァッ!」」

「「集まれ!二つの花の力よ!」」

「アニマルバズーカ!」

《スキャニングチャージ!!》

「はぁぁぁぁ!!」

 

 仮面ライダーケタロスと戦うスピードチーム。ドライブはトレーラー砲を呼びスロットにシフトフォーミュラを、コンテナにシフトカーを2台装填する。ハートキャッチプリキュアの二人は、ブロッサムタクト、マリンタクトを呼び出し、エネルギーをそれぞれのタクトに集中していく。レッドチーターは、本来は五人であるかうアニマルバズーカを構え、オーズはベルトの右側についているオースキャナーでベルトに装填しているメダルをスキャンする。これで、それぞれが必殺技を放つ準備が整った。

 

「トレーラーインパクト!」

「アニマルオーガニックシューティン!シャットアウト!!」

 

 まずは、ドライブとレッドチーターの二人による同時攻撃がケタロスの身体を襲った。二色の太いレーザーのような攻撃を受け、それでもまだ立てるケタロスのことを少しは誉めてしまってもいいのかもしれない。だが、立っているだけならなにも話は変わらない。

 

「プリキュア!フローラルパワー!!フォルティッシモォォォォォ!!」

「はぁぁぁぁ!!!セイヤーーーーー!!!」

 

 ピンクと青、二つのエネルギーを纏った二人のプリキュアによるプリキュア・フローラルパワー・フォルティシモ、大きな羽が映えるオーズがスーパータトバキックを繰り出してケタロスに向かう。だが、ケタロスもただやられるだけではない。

 

「くっ!」

《clock up》

 

 ケタロスはクロックアップを作動させて高速に近い速さでその攻撃から逃れ、三人の攻撃が外れたように思えた。

 

「「はぁっ!」」

「はぁぁぁ!」

「なに!?」

 

 しかし、三人は突如方向を転換してケタロスを追った。時間の流れの違う世界にいるケタロスではあったが、レッドの種によってスピードが大幅に上がった二人のプリキュアと、スピードが上がるどころか時間停止能力すらも有するスーパータトバコンボではあまりにも相手が悪かった。

 逃げるケタロス、追うブロッサムとマリン、そしてオーズ。次第に追い付かれはじめて、攻撃を受け流すことで精一杯となる。しかし、それも限界を迎えようとしていた。

 

「くっ!ぐあぁ!!」

「「はぁぁぁぁ!!!」」

 

 ドライブとレッドチーター、二人の必殺技を受けたダメージは重すぎたのだ。大きな隙を作ってしまったケタロスは、ブロッサムとマリンの攻撃をもろに食らって大空高くへと共につれていかれる。

 

「「ハートキャッチ……」」

 

 だめ押し。二人のプリキュアが突き抜けた後一秒も満たないうちに、巨鳥がケタロスを襲った。

 

「セイヤーーーーーッ!!!!」

 

 急転直下、今度は先程とは全く逆、オーズの攻撃によって地上に向けジェットコースターの如く落とされていくケタロスは、地面に叩きつけられる寸前に叫んだ。

 

「我が魂は!シェードとともにありぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

《clock over》

 

 地面に大きなクレーターが作られたのは、その無機質な機械音が鳴り響くとほぼ同時であった。

 

「フッ!ハァッ!」

「やぁっ!ハッ!」

「ハァァ!どれだけ速くたって!」

「これだけ見てれば、もう慣れた!」

 

 仮面ライダーヘラクスと戦う愛のプリキュア4人は終始優勢に戦っていた。途中、ハート以外の三人がバラバラに戦っていたが、その三人をハートがまとめあげることにより、彼女たちの強さは十倍、百倍にも増幅されたかのようにヘラクスを圧倒していた。最初はクロックアップの速さを見切れても対処できていなかったが、もうすでにその速さに慣れたため、さしずめサンドバッグ状態となっている。

 

「はぁっ!届け!愛のメロディ!!キュアスティック!ピーチロッド!!」

 

 キュアピーチは、ピーチロッドを取りだし、また他の三人も必殺技を打つ体制になって並び立つ。ヘラクスは、その姿を見て恐怖しか感じない。まるで屈強なプロレスラーを何十人も相手にしているかのような。自分が殺してきた者たちにはここまでのプレッシャーを醸し出すような敵はいなかった。それは、その男がはじめて感じる恐怖、畏怖の念。今、数々の罪をおかしてきた男に愛による審判が下る。

 

「みんな、行くよ!」

「プリキュアピンクカルテット!」

「合体スペシャル!」

「パート2!!」

 

 パート2であるのは、これが以前別メンバーでの連携で放ったことのある技だから。その時のメンバーはキュアハート、キュアブロッサム、キュアメロディ、キュアハッピーの四人だった。なお、その際は諸々の事情があり、最終的にはカルテットによる攻撃にはならなかったのだが、果たして今回はどうなるのか。

 

「悪いの悪いの飛んでいけ!プリキュア!ラブサンシャイン……フレェェェッシュ!!」

「気合いだ気合いだ気合いだ!!プリキュア!!ハッピー……シャワー!!!」

「愛の光を聖なる力に!ラブプリブレス!!プリキュア!ピンキーラブッ!シュゥゥゥゥト!!」

 

 三人のそれぞれ、桃色の必殺技が明後日の方向に向かって飛ぶ。

 

「「「集え!三つの光!!」」」

 

 明後日だっていってるだろ。

 

「「「……集わない……」」」

 

 彼女たちの放った三つの必殺技は、前回と同じ流れであったこともあり、全人類の予想通り仮面ライダーヘラクスに当たるどころかそれぞれにぶつかってあらぬ方向に飛んでいった。だが、それはある意味で当然のことだろう。なぜなら、彼女たちは同じプリキュアであったとしても、それぞれの技の種類が違っていれば、それぞれに個性があるからだ。それをなんの準備もなしにいきなりひとまとめにして繰り出そうとしても、反発し会うということは必然のこと。

 

「大丈夫!!」

 

 だから、それをまとめあげる人が必要だったのだ。前回のそれは魔法使いプリキュアのキュアミラクルだった。今回の場合は、もちろんこのプリキュアである。

 

「「「ハート!!」」」

 

 キュアハートは、別々の方向に飛んでいるキュアピーチとキュアラブリーの必殺技であるプリキュア・ラブサンシャイン・フレッシュとプリキュア・ピンキーラブシュートを、唯一一直線に仮面ライダーヘラクス向かっているプリキュアハッピーシャワーに合流させるように蹴り上げる。そして、それら3つが掛け合わされたところを見計らって、ハッピーは最後の一発を混ぜ合わせる。

 

「あなたに届け!マイ!スイートハート!!」

 

 キュアハートの必殺技、それが三つのバラバラだった攻撃の接着剤となり、ついにすべての攻撃が掛け合わされて、ヘラクスに向かていった。

 

「「「集った!いっけぇぇぇぇぇ!!!!」」」

 

 四つの桃色の光たちが一つの大きな奔流となり、一人の仮面ライダーへと向かっている。ケタロスは、その場から動くこともできずにその攻撃に無防備で当たってしまう。

 

「ぐあぁぁぁぁ!!!」

 

 全員の攻撃がバラバラで、まったく集まらなかったこと。それは、ピーチたちがただ無能だったからじゃない。彼女たちがみな個性的であったからこそそうなったのだ。それぞれがそれぞれ良さを持っているから、反発しあうことがあってもおかしくないのだ。その個性をひとまとめにする人間が必要なのだ。まとめることのできる人間がいれば、そこにある有象無象な個性も、大きな力とすることができる。この世界を変えていく力となることができる。そして、暗く見えなかった道に新しい希望をもたらすことができる。今、それぞれの個性が溶け合い、混ざり合い、そして今、大きな愛が生まれた。

 

「天に!」

「「「還れぇぇぇぇ!!!!」」」

 

 その瞬間、大きな爆発が起こり、仮面ライダーヘラクスは爆発四散。こうして、またシェードの仮面ライダーがこの世から消えた。残るは、ただ一人、いや正確に言えば二人だけ。

 

「クッ!グァッ!!」

 

 三名の仮面ライダーによる連携は、次第にコーカサスを追い詰め始めていた。それもそのはず。ハイパークロックアップを使用できなくなったコーカサスは、カブトの超絶スピードについて行けなくなっていたのだ。それに加えて、極アームズの鎧武の多種多様な武器による連続攻撃が、彼に反撃するチャンスすらも与えず、最後にGによるブドウ龍砲のダメ押しが、その勝敗を決定づけていた。

 

「まさか、これほどとは……」

 

 まさか、彼の好奇心によって逃していた獲物が、ここまでの力を持とうとは誰が予想できたであろうか。少なくとも自分と友は予想だにしていなかった。いや、そういえば彼はこの依頼の時にあるメッセージを送っていた。まさか、あれは……。

 

「なるほど、ここまであなたは予想していたというのですか……」

 

 あのメッセージ通りであるのならば、自分は捨て駒にされたも同然。自分もまたあの男の手のひらの上で踊らされていたに過ぎなかった。いや、あの男なら、あの男だからこそやりかねない。自分の目的を果たすためならば、暗殺者一人を捨ててもかまわない。そこまでの決断力と実行力を持った男だったからこそシェードは今や裏の世界ではショッカーや財団Xと並ぶほどの組織に成長していったのだから。

 失笑した豊臣は、ゆっくりと立ち上がると吾郎たちを見据えて言った。

 

「私を倒した褒美として、良いことを教えてあげましょう」

「いいこと?」

「私が、あなたの暗殺の依頼を受けたときに受け取った、我が友からのメッセージです。私が倒れれば己が脱獄するというね」

「なに?」

「元々、彼はすぐに脱獄することができた。しかし、外には私や多くの協力者がいたためにそのようなことをする必要がなかっただけのこと。しかし、真にシェードに徒なす者が現れ、そして脅威となった。だから、彼は直々にあなたを殺しに再びこの世界に足を踏み入れるのです。わが友は、私よりも強い。より強大、凶悪、そしてあなたを絶望させる力を持っています。あなたに……明日など来ない」

「ということは、あのテレビ局襲撃は……」

「その通り、単なる茶番です。シェードという組織の恐ろしさを世間に知らせるための、いわばデモンストレーション」

 

 あの事件が、多くの人々を、彼女を恐怖の真っ只中に陥れたあの事件が茶番だった。そう聞かされた吾郎は一瞬ではあるが、心の中に怒りが湧いた。しかし、どうしたことかそれがすぐ綺麗に無くなってしまう。何故なのか、それはもう吾郎の中で答えが出ていたからだ。あの事件では死者も何名か出ていた。そのことを考えると不謹慎かもしれない。しかし、こう言わざるを得ない。

 

「そうか、なら徳川清山には感謝しないといけないな」

「なに?」

「あの事件があったから、僕はあの人にもう一度出会うことができた。あの、思い出のワインの味を思い出すことができた。何より!……仮面ライダーになることができた」

 

 元々徳川清山に改造された時点で、人間以上の力を手に入れた怪物となった吾郎。しかし、あの事件のおかげで吾郎は愛という感情を取り戻し、ただの怪物から仮面ライダーという一人の戦士になることができた。あの事件は、単なる茶番だったわけじゃない。吾郎が自らに宿った力を正しき行いのためにどう使うべきなのかを再認識させることとなった、彼にとって、そしてシェードにとってもターニングポイントであったのだ。そして今、吾郎の後ろには数多くの仲間がいる。

 

「徳川清山は、してはいけないミスをしてしまった」

「あぁ!吾郎が脅威だと思ったんなら、まだ洗脳状態にあるうちに倒しておけばよかった」

「おかげで、吾郎は仮面ライダーになることができました」

「そして……僕は多くの仲間を得ることができた。僕は仮面ライダーG……僕たちに……」

ソイヤッ《極スカッシュ!!》

「ハイパークロックアップ」

《Hyper Clock Up!》

《Maximum Rider Power》

《ONE・TWO・THREE》

 

 吾郎の言葉に呼応するように二人の仮面ライダー、鎧武はベルトのカッティングブレードを一度倒し、カブトは二度ハイパーゼクターのレバーを倒し、その先にあるボタンを押してカブトゼクターのボタンを押す。

 彼は自分に明日はないといった。しかし、それは間違いだ。なぜならば、そんなもの他人が決めるようなものじゃないから。天道総司のおばあちゃんが言っていた。

『明日は望まなくても勝手に来るもの、それでも明日を望むのは今を存分に楽しめていない大バカ者だけだ』ってな。

 だから言う。吾郎はベルトを操作しながら前を見据えて。未来を見据えて。今を生きるのみ。立ち止まらず。腕を振り。手を力いっぱいに握って。そして彼には、この世界にすむすべての生き物には絶対に……。

 

「明日はある」

「ハイパー……キック」

《Rider Kick!》

「ハァ!」

「ハァッ!!」

「スワリング!ライダーキック!!とぉ!!」

 

 三人は同時に飛び上がり、それぞれの軌跡を描きながらコーカサスに向かった。そして……。

 

「ハァァァァ!」

「セイッハァァァ!!!」

「ハァァァァァ!!!」

「グッ!!あぁぁぁ!!!」

 

 三人の仮面ライダーがコーカサスの身体を突き抜け後ろに出現する。そして、コーカサスは火花を散らしながらゆっくりと倒れ、大きな爆発が起こった。その爆炎の中に蜃気楼のように浮かび上がった『G』の文字。シェード最強の仮面ライダー、コーカサスが滅んだ瞬間であった。

 だが、それは同時に吾郎最後の戦いへの道が開かれたのと同じ意味を持っていた。豊臣の言葉が本当であるのならば、徳川清山が脱獄し自分のことを殺しに来ることだろう。それは、かなり厳しい戦いになるはずだ。果たして、自分はそれを切り抜けることができるのだろうか。

 

「吾郎」

「ん?」

「お前の強さ見せてもらった」

「はい!愛の力……それを信じていれば、絶対に吾郎は負けません!たとえ離れ離れになっても、私たちの思いはつながっているということ、忘れないでください」

「あぁ。どれだけ離れていても、それぞれの守りたいもののために戦っているかぎり、またどこかで出会う。その時は……共に戦おう」

 

 いや、できるはずだ。なぜなら、自分は愛のために戦うライダー。愛がなによりも強い力を持つというのであれば、必ず、どんな強大な敵にも勝つことができる。それを信じないで愛のために戦うライダーなどとは言えない。なにより、離れていても自分のことを応援してくれる人間がこれだけいるというのなら、絶対にくじけちゃならない。吾郎は、着脱式のヘルメットをとると、笑顔を見せて戦士たちの言葉に答える。

 

「……あぁ!」




 なに?神チームが自称神と神の使いから力を得たアギトなのは、ちょっと違うくないかって?まぁ、実際今回きているメンバーで本当に神様なのは鎧武だけで、他に神に関係しているのはゲンムとアギトだけだったからしょうがない。本当はキュアフェリーチェを入れた方がいいのかと思ったけど、諸々の事情で没りました。

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